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総選挙2016公約達成 石神1話

石神×大人翻弄 「意地悪な眼差しに囚われて」

【パーティー会場】

ここは、とある婚活パーティーの会場。

(すごいな、こんなに盛況なんだ‥)

潜入捜査のため、婚活中の女性を装いパーティーに参加中。

(連日これだけの参加者が集まれば、参加料だけでも相当な額になるよね‥)

参加者から徴収したそのお金が、裏組織に流れているとの情報を掴んでの捜査だ。

情報の裏付けを取るため、石神さんと共に潜入している。

(それにしても、この回転寿司方式のお見合い、なんだか疲れるな‥)

2分間で1分ずつという流れで、お互いをアピールしあう。

上から目線の人や、全くしゃべらない人など、2分が長く感じて辛い。

しかし、周囲を見渡すと今回は有名なサッカー選手や小説家も参加しているようで盛況だ。

奥の盛り上がっているペアを盗み見ると‥

「な、なんですか‥?」

「アナタのこと好きになっちゃったかも‥って言ったら、信じる?」

「え!?」

(すごいやり手だ‥ちょっとあの人は‥ダウトだな)

チリリリ~ン♪

2分経過の合図が響き、私は肩で大きく息をする。

(ふぅぅ‥次の人はどんな人?)

男性1

「うわっ、キミ可愛いね!」

次に私の前に座った人は、やけにチャラそうな人。

(やっぱりこういうタイプの人も参加するんだ‥)

さっき見たチャラそうな男性に若干近いものを感じる。

男性1

「なんか面白いよな~。本当に回転寿司みたいだよね」

サトコ

「そうですね‥」

男性1

「寿司ネタなら何が好き?俺はアナゴ!」

サトコ

「そ、そうですか‥」

その男性はペラペラとどうでもいいようなことを話し、あっという間に2分が経った。

(こういうタイプの人って、ある意味ラクかも‥?)

そう思っていると、次の人は逆に落ち着いた感じの人だった。

男性2

「どうも。東堂法律事務所で弁護士をしております、西條と申します」

(弁護士さんか‥さすがに大人な感じ)

サトコ

「初めまして。長野と申します」

偽名を名乗り、それらしく挨拶する。

男性2

「長野さんは‥普通のOLさんなんですね」

相手の情報が簡単に書かれたシートをちらりと見ながら言う。

サトコ

「はい。あすなろ商事という会社で営業事務を‥」

男性2

「聞いたことのない会社、それもただの事務員さんでは」

「幸せになるにはお嫁に行くのが手っ取り早い‥というお考えですかね」

(なっ‥何この人!?)

普通のOLをバカにするだけでなく、女性そのものを蔑視した態度にカチンとした。

その後もネイルにケチをつけたり、事細かにダメ出しをしてくる。

男性2

「外見だけで男が釣れると思ったら、大間違いですよ?」

(もう、なんなの~!)

チリリリ~ン♪

ムカムカとしているうちに、次の人の番になった。

???

「失礼します」

サトコ

「はいっ!」

(えっ‥)

怒りが収まらないまま返事をした私は、思わず息をのんだ。

(い、石神さん‥!)

石神

ずいぶんと元気がよろしいようで

フッと小さく笑ってからかわれ、カーッと顔が熱くなる。

(最悪のタイミングで石神さんの番になっちゃった‥)

恥ずかしさで俯きそうになったその時、ふと隣の女性の視線が気になった。

(この人‥石神さんのことジッと見てる‥)

ポーッとした目で、名残惜しそうに石神さんを見つめている。

気付けばその隣、またその隣の女性も、同じような視線を石神さんに注いでいる。

(す、すごい‥)

どうやら石神さんは、これまで話してきた女性たちを虜にしてしまったらしい。

石神

いい人は見つかりそうですか?

サトコ

「え‥あ‥」

(怪しい人物、気になる情報はあったか‥という意味だよね)

サトコ

「いえ、残念ながら今のところはまだ、これといった方には巡り合えてなくて‥」

石神

そうでしたか。実は私もです

サトコ

「そうですか」

上手く話を合わせながら、他愛もない会話をする。

(でも、いつも思うけど、石神さんと初対面のフリをするのって難しいな‥)

そう思いながら、ついジッと見つめてしまう。

すると、石神さんは情報ひとつ変えずに言う。

石神

髪に何かついてますよ?

サトコ

「えっ?」

慌てて取ろうとすると、スッと石神さんの手が伸びてきた。

サトコ

「っ!」

耳の辺りの髪に触れられ、ドキッとしたその瞬間、ぐっとインカムを耳の奥まで押し込まれる。

(何かと思ったら‥)

私のインカムが緩んでいたのが見えたらしい。

石神

取れました

ないはずの糸くずを取ったかのように、ふっと柔らかく微笑まれた。

サトコ

「あ、ありがとうございます‥」

なんとか話を合わせるようにお礼を口にした。

でも、心臓はバクバクと脈打っている。

(突然手が伸びてくるからビックリしちゃった‥)

予期せぬことに動揺しまくる自分が、少し情けない。

(それより、つい見つめちゃったりして‥ダメだな私‥)

(もしかしたら、石神さんはそれを注意するためにインカムに手をやったのかも‥)

石神

どうかされましたか?

冴えない表情をしていたのか、すぐに突っ込みが入った。

<選択してください>

A: 何でもないです

サトコ

「いえ、何でもないです」

石神

そうですか。てっきり私のことが気に入らないのかと‥

サトコ

「そ、そんなことありません!」

(あ‥)

思わず声を上げてしまい、周りから注目されてしまった。

石神

やはり元気がよろしい方ですね

(やっちゃった‥)

B: こういう場は苦手で

サトコ

「どうもこういう場は苦手で‥」

石神

では、なぜ参加されたのですか?

サトコ

「そ、それは‥」

(仕事だってわかってるのに、そんなこと聞くなんて‥)

石神

私はあなたのような女性に出会えることを期待して参加しました

石神さんは私を喜ばせるというより、少し意地悪な笑みを浮かべている。

(い、石神さんってば、私を動揺させて楽しんでる‥?)

C: 緊張してしまって‥

サトコ

「なんだか緊張してしまって‥」

石神

それは私のせいでしょうか?

サトコ

「いえ、そういうわけでは‥」

石神

では、この場の雰囲気に飲まれてしまって‥とかですか?

サトコ

「はい‥そんな感じです」

石神

そんなことではせっかくのこの機会に、何も成果を得られませんよ?

(うわ‥これって暗に私を叱ってるんだよね?)

サトコ

「なんだかすみません‥」

石神

何を謝ってらっしゃるんでしょうか?

サトコ

「あ、えっと‥」

石神

私の部下にもいるんですよ、そうやってすぐに謝る者が

(そ、それって、私のこと?)

石神

やる気はあるんですが、それが裏目に出て空回りということもしばしばで‥

(うっ、やっぱり私のことだ!)

石神

まあ、しゅんとする姿も、時には可愛いんですけどね‥

(えっ‥)

チリリリ~ン♪

石神さんがニヤリと意地悪な笑みを浮かべたその時、2分経過の合図が鳴った。

(か、完全に踊らされてしまった‥)

チャイムに救われたものの、ドッと疲れを感じる。

石神

短くも充実した2分間でした。あなたと出会えてよかった

サトコ

「わ、私もです‥」

フッと優しく微笑まれ、またもドキッとしてしまう。

(仕事上の演技だってわかってる‥わかってるけど‥)

石神さんの余裕があるからかいに翻弄され、すっかり心が乱されてしまった。

(まだドキドキしてるよ‥)

何事もなかったかのように隣の席に移る石神さんをチラリと見ながら、ふと思う。

(石神さん、他の人にもあんな感じなのかな?)

想像すると、なんだか少しモヤッとする。

???

「あれ、ちょっと疲れてる?」

サトコ

「あ、いえ!大丈夫です」

ハッとして見上げると、爽やかな好青年という印象の男性がにこやかに微笑んでいた。

(今度はこの人か‥)

石神さんに乱された気持ちが落ち着かないうちに、次の人の番になってしまった。

朝田

「初めまして。俺、朝田っていいます」

自分の胸元に付けた名札を指差しながら、にっこりと笑う。

(気さくな感じの人だな‥)

同じ軽い感じでも、先ほどのチャラい人とは全く印象が違う。

サトコ

「長野と申します」

「すみません‥疲れてるわけじゃないんですけど、ちょっとボーっとしてしまって‥」

朝田

「わかります。初対面の人と次から次へと話さなきゃいけないのって、案外大変だよね」

共感するように言ってくれ、内心ホッとする。

(この人、物腰も柔らかそうだし、モテそうだな~)

他人事のように思っていると、その人がフッと微笑んだ。

朝田

「でも君は、なんだか話しやすくてホッとする」

(え?)

朝田

「話し方かな?表情も柔らかで可愛いし、何かいいね」

サトコ

「あ、ありがとうございます‥」

反射的にお礼を言ったものの、なんだかくすぐったいような変な気分だ。

(褒められるのは‥単純に嬉しいけど‥)

朝田

「感じがいいって、よく言われない?」

サトコ

「全然!特に職場なんてホント、女扱いさえされなくて」

朝田

「へぇ、意外。じゃあ、今まで出会えなかった分を埋められるくらい褒めようかな」

サトコ

「えー?」

(ふふ、おかしな冗談を言う人だな)

朝田

「ほら、そうやって笑う顔、本当に可愛いよ」

サトコ

「え‥」

朝田

「今のは戸惑ってる顔?」

「その目もいいね」

(いや、そんな‥ホント言われたことないし‥)

朝田

「君の目、すごくキラキラしてるよね」

「目が逸らせなくなっちゃうな」

朝田さんは、本当に次々と私を褒めちぎりだした。

(じょ、冗談じゃなかったんだ‥)

褒められることに慣れていない私は、恥ずかしくて視線を逸らしてしまう。

(魅力的な瞳なんて言われたら、余計に目を合わせられないよ‥)

朝田

「ごめんね、いきなりこんな不躾な視線を送るのは失礼だね」

サトコ

「あ、いえ‥」

思わず顔を上げると、パッと視線がぶつかった。

(あ‥)

朝田

「‥やっと目が合った」

朝田さんは、はにかむように微笑んだ。

(その笑顔‥天然たらしだな~)

嫌味や計算高さは全く感じない。

朝田さんは、本当に素で女性を喜ばせてしまう感じだ。

(でも、不思議と石神さんの時みたいにドキドキしないな‥)

(冷静に分析しちゃうっていうか‥)

(やっぱり好きな人じゃないと、心にまでは響かないのかな)

チリリリ~ン♪

褒められて嬉しいという感情以外は何も特に感じないまま、2分が経過した。

サトコ

「もう時間ですね」

朝田

「名残惜しいな」

真っ直ぐに目を見て言われ、どう返そうか迷う。

<選択してください>

A: でも時間ですから

サトコ

「でも、時間ですから」

朝田

「あっさりしてるなぁ。そんなところもいいけど」

(またそんなこと言って‥)

サトコ

「本当にお上手ですね。女性を褒めるのが」

朝田

「え?そうかな?全く無自覚‥」

サトコ

「ふふ、そんなところもいいけど」

朝田

「あはは、言うね」

朝田さんの言葉をそのまま真似ると、朝田さんは楽しそうに笑った。

B: 楽しかったです

サトコ

「とても楽しかったです」

朝田

「俺も。何を話したかよく覚えてないくらい」

サトコ

「ふふ、ずっと私を褒めてくれてましたよ?」

朝田

「そっか、そうだったね」

「まだ褒め足りないくらいだよ」

サトコ

「もう充分です」

朝田

「遠慮深いんだね」

朝田さんは、冗談っぽく言って微笑んだ。

C: ありがとうございました

サトコ

「今日はありがとうございました」

朝田

「こちらこそ。とても楽しかったよ」

サトコ

「私もです」

朝田

「本当?ならよかった」

朝田さんは、ホッとしたように微笑んだ。

サトコ

「それじゃあ」

朝田

「残念だけど、これでおしまいか」

「今までで一番早く感じた2分間だったよ」

臆面もなく言うと、朝田さんは爽やかに微笑んで隣の席へ移った。

【ホール】

(ふぅ‥やっと終わった‥)

(たくさんの人と話して、結構労力使ったな‥)

その割には目ぼしい情報もなく、これといった成果がなかった。

今日の捜査はいったん終わりとなり、公安学校へ戻ることに。

(潜入捜査だし、石神さんとは初対面の設定だから一緒に帰れないんだよね)

残念に思いながら会場を出ようとした時だった‥

???

「長野さん!」

背後から大きな声がして、反射的に振り向く。

朝田

「お疲れ、また会えたね!」

サトコ

「‥は!はい!」

手を挙げて駆け寄ってきたのは、朝田さんだった。

(危ない、朝田さんって私のことだった!)

偽名だったせいで、少し反応が遅れてしまった。

(学校に戻るまでは気を抜いちゃダメだ!帰るまでが潜入!)

そんな反省をしていると、朝田さんが思いがけないことを言ってきた。

朝田

「よかったら一緒に帰らない?」

サトコ

「え?」

朝田

「ここで会えたのも何かの縁だと思うし」

サトコ

「あ、でも‥」

朝田

「それにもう暗いし、女性の一人歩きは危ないよ。駅まで送らせて?」

(いや、普段の方がよっぽど危ない目に遭ってるんだけど‥)

仕事柄、ついそんな風に思ってしまう。

朝田

「ほら、行こう」

ぼんやりしているうちに、サッと手を取られてしまった。

(え、えええ‥!?)

朝田

「俺、車で来てるから、なんなら家まで送るよ?」

サトコ

「い、いえ、そんな‥一人で帰れますから」

朝田

「そんな遠慮しなくて大丈夫」

ニコッと笑うと、朝田さんは少し強引に私の手を引っ張って歩き出した。

(ちょ‥ちょっと待って‥!)

爽やかな笑顔とは裏腹に、私の手を引くその力は、男そのものだった‥

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