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潜入捜査は蜜の味 颯馬2話

【教官室】

キャバクラでの潜入捜査終了後、颯馬さんと教官室で合流した。

サトコ

「さっきの指名は、颯馬さんが手配してくれたんですね」

颯馬

すぐに本部へ情報が渡せるよう、事前に公安職員と段取りを決めていました

サトコ

「そういうことだったんですね」

「新人の私に指名が入るなんて、おかしいと思ったんですよね」

颯馬

おかげで、残りの時間は接客しなくて済んだでしょう

ネクタイを緩めながら、ふっと柔らかに微笑む颯馬さん。

その色っぽい仕草と視線に、ドキッと鼓動が高鳴る。

颯馬

おや?お酒がまだあまり抜けてないようですね

(え‥)

指先で頬に触れられて初めて、自分が赤面していることに気付く。

(お、お酒のせいだけじゃないんだけど‥!)

焦る私の目の前に、颯馬さんはお水を差し出した。

颯馬

どうぞ

サトコ

「あ、ありがとうございます‥」

(ふぅ、捜査中とは違うドキドキを感じちゃった‥)

お水を飲んでひと息つき、パソコンに向かう。

(報告書こそは、きっちりとまとめないと!)

捜査自体には若干の後悔が残るために、報告書作りには気合を入れて臨む。

捜査の過程を細かく打ち込んでいると、ふと手が止まった。

(あれ、ここってどう書けばいいんだっけ‥?)

記入の仕方に迷い、颯馬さんに聞いてみる。

サトコ

「すみません。ここの記入の仕方なんですが‥」

颯馬

どこですか?

(ち、近い‥)

後ろから覗き込まれ、その距離の近さにまたもドキッと鼓動が跳ね上がった。

と、ほのかに甘い香りが漂った。

(これって‥香水‥?)

先ほどのキャバクラで、同じ香りを嗅いだことを思いだす。

(そういえば颯馬さんも、キャバ嬢たちに囲まれてたもんね‥)

仕事だから仕方ないと思いつつ、少し気になる。

颯馬

サトコが記入するのはここまでで大丈夫ですよ

サトコ

「え、あ、はい‥わかりました」

颯馬

‥疲れましたか?

サトコ

「え?」

颯馬

少しボンヤリしていたようだから

(香水に気を取られてたのバレてる‥!?)

サトコ

「い、いえ!あの、今回の潜入捜査では助けてもらってばかりだったなって‥」

誤魔化すつもりで言ったものの、実際にその通りだった。

(本当にもっとしっかりしなくちゃ‥)

サトコ

「今回だけじゃなくて‥いつも助けられてますよね‥」

反省の気持ちを吐露すると、颯馬さんは私の後ろに立ったまま続ける。

颯馬

確かに今日は、いきなりヒールで転んだ時にはどうなるものかと心配しました

(ですよね‥)

颯馬

ですが、あれがあったからテーブルにつけたのも事実です

最初の水割りの飲みっぷりで相手の心を掴むことにも成功していますし

サトコ

「それはそうかもしれないんですけど‥」

颯馬

しかし、計画外の行動を取るのは、基本的に論外ですからね

サトコ

「はい‥すみません」

颯馬

今後の捜査では十分気を付けてください

言いながら、颯馬さんはマウスを持つ私の手を上からギュッと握ってくる。

(‥颯馬さん?)

叱られているのに手を握られている状況に、私は戸惑う。

颯馬

捜査といえど、サトコがむやみに触られるのは‥

(え‥?)

小さな呟きに、ふと思い出す。

(そういえば‥)

あれはキャバクラで退席した時のこと‥

【キャバクラ】

男A

「もう行っちまうのか!」

サトコ

「すみません、呼ばれてしまって」

男A

「まあ、ちょうど俺の酒も飲み干したとこだし、行ってこい!」

サトコ

「ありがとうございます。ごちそうさまでした」

すんなり解放され、ホッとして笑顔を見せた瞬間、グッと手を掴まれた。

男A

「また戻って来いよ!待ってるからな、ララ」

ニコッと笑ったと思ったら、酔った男は掴んだ私の手にキスをした。

(はぁ‥後で手、洗っとこ‥)

【教官室】

(もしかして颯馬さん、あの時のことを気にしてくれてる‥?)

マウスを持った私の手に重なる、颯馬さんの大きな手を見て思う。

(私が香水で嫉妬を感じたように、颯馬さんも妬いてくれたのかな‥)

そんな期待を抱いたその時、後ろからふわりと抱きしめられた。

サトコ

「颯馬さ‥んっ‥!」

振り向いた瞬間、柔らかなキスに唇を塞がれた。

(急にどうしたの!?しかもここ、教官室なのに‥!)

不意打ちのキスに戸惑うも、拒むことなんてできない。

私は自然と目を閉じ、颯馬さんに身をゆだねてしまう。

颯馬

あの場でも、できればこうしたかった

(え‥)

短いキスのあと、颯馬さんは私を抱きしめたまま囁く。

颯馬

助けられてると貴女は言いましたが‥当然です

サトコは、唯一無二のパートナーなんだから

サトコ

「‥颯馬さん」

クルリと椅子を回転させられ、颯馬さんと向き合う。

誰もいない深夜の教官室で、お互いを見つめる視線が甘く絡み合う。

颯馬

今後の潜入捜査は、キャバクラ以外の場所にしてもらいたいものです

サトコ

「そうですね、任務は選べませんが、あんなに飲まされるのはもう‥」

颯馬

あんなにベタベタ触られるのも、もう勘弁だ

サトコ

「え、あっ‥」

サッと腰を抱かれ、椅子から引き上げられる。

立たされたと同時に抱きしめられ、再び唇を塞がれる。

(今日の颯馬さん、なんかすごい情熱的‥)

それだけキャバクラでの潜入捜査にモヤモヤしていたということかもしれない。

颯馬

サトコは、俺だけのNo.1でいてくれればいい

色気を含んだ悪戯っぽい微笑みに、私はコクンと小さく頷いた。

Happy  End

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