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特捜×公安コラボ 加賀1話

加賀さんの命令で、捜査の手伝いをした帰り。

サトコ

「無事に終わって良かったですね」

加賀

テメェのせいで時間食ったがな

サトコ

「すみません‥見つかりそうになって、焦っちゃって」

加賀さんのお叱りはあったものの、何とかやり遂げることができた。

加賀さんも、ひとつやり終えて少し肩の力が抜けたらしい。

加賀

‥腹減った

サトコ

「そういえば、晩ごはんまだでしたね。何か食べていきますか?」

加賀

そうだな‥

そうだな、と言いながらも、加賀さんは近くの居酒屋へと入って行った。

(あれ?ごはんは!?)

(もしかして、今日は飲みたい気分なのかな?)

加賀さんを追いかけて、私も居酒屋のドアをくぐった。

【居酒屋】

加賀さんが好きそうな料理を注文して、ゆったりとお酌する。

(一応、野菜が入ってる料理も頼んだけど)

(加賀さん、恐ろしいほど手を付けてないな‥)

サトコ

「‥野菜よけますから、ちゃんとこっちも食べてください」

加賀

‥チッ

サトコ

「栄養が偏ると、頭が回りませんよ」

「捜査にも影響が出るかもしれないし」

加賀

そんなくだらねぇミスはしねぇ

???

「たまには違うところもええなー」

???

「正直なところ、モンステの方がよかったけどな」

???

「しかし、こちらの店員は美人揃いですね。私としては嬉しい限りです」

(ん‥?向こうのテーブル、ずいぶんと賑やかだな)

(‥あれ!?あの人たち、どこかで見たことがあるような)

それは、いつぞやの旅行中に偶然居合わせた、特命二課の人たちだった。

サトコ

「加賀さん!見てください。あれ‥」

加賀

喚くな

目にも止まらぬ速さで加賀さんの手が私の顔面をつかみ、ぐぐっと力を加える。

サトコ

「痛い!加賀さん、砕けます!」

加賀

差し障りねぇだろ

サトコ

「人として大事なものを失っちゃいますから!」

桐沢

「ん?」

加賀さんのアイアンクローが炸裂し、思わず大きな声が出てしまう。

すると向こうのテーブルの人が振り返り、こちらに気付いた。

桐沢

「なんだ、加賀じゃねぇか」

加賀

‥チッ

テメェが騒ぐから、気付かれただろうが

サトコ

「か、加賀さんがあんなに力を込めなければ、大声出しませんでしたよ」

加賀

あ゛?

サトコ

「申し訳ございませんでした‥」

(加賀さん、人付き合い嫌いだもんね‥見つかりたくなかったんだろうな)

(まあ、愛想のいい加賀さんなんて加賀さんらしくないけど)

桐沢

「そっちの子は、氷川だったか」

サトコ

「はい、お久しぶりです。氷川サトコです」

野村

「やっほ~、赤‥」

加賀

‥‥‥

サトコ

「わーっ!もうその名前では呼ばないって‥!」

野村

「冗談だってば。久しぶりだね、サトコちゃん」

サトコ

「覚えてくださって光栄です‥いろんな意味で」

(でももう、赤パンツのことは忘れて欲しい‥)

二課の人たちとは、加賀さんと出かけた京都旅行でバッタリ会い‥

それからしばらく、行動を共にしたという経緯があった。

野村

「で?加賀はまた、かわいい訓練生を連れ回しちゃってるの?」

加賀

捜査の帰りですよ

八千草

「加賀さん、ご無沙汰してます」

浅野

「‥‥どうも」

京橋

「これは、奇遇ですね」

花井

「‥加賀さん、なんでこんなに野菜残してるですか」

なぜか、二課の人たちがお酒を持ってぞろぞろとこちらのテーブルに移ってくる。

加賀

‥おい

「すみません」と手を挙げ、桐沢さんは近くにいた店員に声を掛けた。

桐沢

「申し訳ないですが、こっちのテーブルに移っても構いませんか?」

天王寺

「隣の席とくっつけてまおう」

花井

「おい瑛希、そっち持て」

八千草

「はーい!修介さんも手伝ってください」

あれよあれよという間に、テーブルをくっつけられて一緒に飲む流れになった。

(‥二課のみなさん、公安課じゃ考えられないくらい社交的!)

(加賀さん、大丈夫かな‥)

加賀

‥‥‥

(全然大丈夫じゃない‥機嫌悪そう!)

桐沢

「お前、相変わらずだな。もうちょっと愛想よくできねぇのか」

野村

「俺たちと仲良くしておいたほうが、何かと便利じゃない?」

加賀

‥必要ないです

天王寺

「噂には聞いとったけど、びっくりするほどの頑固者やな」

花井

「まあ、愛想がよかったら加賀さんじゃねぇだろ」

サトコ

「ですよね。私もそう思います」

加賀

テメェ‥

サトコ

「うそです!いや、うそではないですけど!」

野村

「加賀、ダメだよ~こんなかわいい子いじめたら」

桐沢

「そのくらい気に入ってるってことだろ」

加賀

‥‥‥

桐沢さんと野村さんに挟まれて、加賀さんが小さくため息をつく。

でもその表情から、心の中で盛大に舌打ちしているのがわかった。

(あとが怖いから、ちょっと黙ってよう‥)

京橋

「で?今はどんな事件を追ってるのですか?」

加賀

言えるわけねぇだろ

花井

「お前みたいな、精神的な痴漢を追いかけてるわけじゃなさそうだな」

サトコ

「精神的な痴漢‥」

京橋

「まあ確かに、聞いたところで私たちが協力することはまずないですからね」

京橋さんの言葉に、確かにと頷いてしまう。

(管轄を超えて公安と二課が協力‥なんて、聞いたことないもんね)

八千草

「でも、ふたりって結構一緒にいること多いよね」

「もしかして、こっそり付き合ってたりして?」

サトコ

「!?」

みなさんいい具合にお酒が入っているのか、楽しそうに私に絡んでくる。

(きっと、加賀さんに絡んでもいい反応が返ってこないからだろうけど)

(こ、こういう質問は困る‥!)

天王寺

「まあ、ええから飲め飲め」

野村

「そういえばサトコちゃんって、加賀の専属補佐官なんだっけ?」

八千草

「ワオ!いいなぁ~、僕もそうやって世話してくれる人が欲しい」

花井

「加賀さんの補佐官は大変だろう」

サトコ

「色々と勉強になります。捜査にも参加できるし、現場のこともわかりますし」

京橋

「勉強に専属、お世話とくれば、次は調教ですね」

サトコ

「調教!?」

天王寺

「アカン。始まったで」

浅野

「‥‥‥変態」

サトコ

「‥‥‥」

(前にも思ったけど、二課って変わり者の集まりなんだな‥)

(はみ出し二課って言われる所以が分かった気がする‥)

【廊下】

お手洗いから戻ると、加賀さんが二課の人たちに囲まれているのが見えた。

(なんか、不思議な光景だな‥加賀さんって普段、教官たちともあまり飲まないし)

(飲み会でも、いつも室長とふたりで静かに飲んでる感じだもんね)

サトコ

「はぁ‥それにしても、ちょっと飲み過ぎちゃったかも」

「京橋さんは全然飲んでなかったけど、他の人たちはいい飲みっぷりだ‥」

(それに、天王寺さんがどんどん勧めるから私もちょっと飲み過ぎた‥)

(教官たちと飲むのとはまた違った楽しさというか、賑やかさがあるな)

加賀さんの表情も、教官たちに見せるものとは少し違う気がする。

微笑ましく想いながらトイレから戻ろうとすると、飲み過ぎたせいか少し足がフラついてしまった。

桐沢

「おっと」

不意に耳元で声がして、逞しい腕に包まれる。

桐沢

「大丈夫か?飲み過ぎちまったんだろ」

サトコ

「あ‥桐沢さん」

すぐに体勢を戻そうとするも、桐沢さんの発した一言で時が止まってしまう。

桐沢

「‥お前、こんな細っこい身体でよく頑張ってるな」

サトコ

「えっ、そんなことは‥!」

桐沢さんの一点の濁りもない優しい言葉に、思わず頬が熱くなるのを感じる。

桐沢

「顔、赤いぞ。やっぱ飲み過ぎたんだな」

「向こうで、少し休んでるか?」

心配そうに覗き込まれ、吐息がかかりそうなほどの距離。

微かに香る、加賀さんとは違う煙草の匂いが鼻孔をくすぐった。

サトコ

「だ、大丈夫です!」

「失礼いたしました!」

桐沢

「そうか?」

「あいつら、すぐ調子に乗るからなぁ‥悪ぃな」

(桐沢さん‥無自覚で人をドキドキさせちゃうタイプの人だ)

心を落ち着かせようと、すぐ元の話に戻す。

サトコ

「い、いえ、すごく楽しいです。二課のみなさんは、仲が良いんですね」

桐沢

「まあな。公安はそうでもねぇのか?」

サトコ

「そうですね‥主に加賀教官と石神教官が、たまに、こう‥バトルするというか」

桐沢

「ああ」

ふたりが犬猿の仲というのは二課まで伝わっているのか、桐沢さんが苦笑する。

桐沢

「個性的な上司に囲まれて、お前も大変だな」

サトコ

「いえ、二課のみなさんも‥」

言いかけて、慌てて首を振った。

サトコ

「な、なんでもないです」

桐沢

「ハッキリ言っていいぞ。変なヤツばかりだって」

サトコ

「そ、そこまでは‥」

桐沢

「とにかく、あいつらは飲んだらそれだけ飲ませようとするからな。無理すんなよ」

優しい言葉に、少しだけ驚いてしまう。

桐沢

「どうした?」

サトコ

「いえ‥公安の雰囲気とは、やっぱり違うなと」

「教官たちは、『酔ったら捨てて帰る』とか、辛辣なので‥」

桐沢

「ハハ、想像できるな」

(なんというか‥桐沢さんのにじみ出る包容力、すごいな)

(室長もどっしりして安心できるけど、基本は放置で『好きにしろ』って感じだし)

さすがに二課を率いる “ボス” なだけあって、相手に自然と安心感を与える雰囲気を持つ人だ。

ふと視線を感じて振り返ると、いつの間にか加賀さんが席から離れてそこに立っていた。

加賀

‥‥‥

サトコ

「!?」

「か、加賀教官‥?」

桐沢

「どうした?心配で見に来たのか?」

加賀

‥くだらねぇ

私たちの方にチラリと視線を寄越すと、加賀さんは横を通り過ぎて行った。

その視線が気になって、思わず加賀さんを目で追う。

(なんか、お怒りだった‥?)

(私、何かしたっけ‥?余計なことは言わないようにしてたんだけど)

桐沢

「ハハ、相変わらずみてぇだな」

サトコ

「えっ?」

桐沢

「いや、いい刑事になれるように、頑張れよ」

意味深に笑い、桐沢さんはテーブルに戻っていった。

【加賀マンション 寝室】

二課の人たちとの飲み会が終わると、加賀さんの部屋にお邪魔した。

サトコ

「みなさん、本当にザルでしたね」

加賀

ああ

サトコ

「それにしても‥お会いするのは、京都旅行以来でしたっけ」

「加賀さんは、本庁で会ったりするんですか?」

加賀

さあな

スーツを脱ぎ捨てて、加賀さんがベッドに座ってネクタイを緩めた。

サトコ

「加賀さんも、かなりお酒勧められてましたもんね」

「大丈夫ですか?お水、持ってきますね」

キッチンへ行こうと部屋を出ようとする前に、後ろから手を引っ張られた。

ベッドに引き寄せられて、あっと思う間もなく押し倒される。

サトコ

「ど、どうしたんですか‥?」

加賀

‥二課の連中は、どうだった

サトコ

「どう、って‥?」

聞き返しても、加賀さんはそれ以上何も言ってくれない。

(加賀さんが何を考えてるかわからない‥)

(‥のは、いつものことだけど)

サトコ

「えーと‥みなさん、お酒強いですね」

加賀

‥‥‥

(どうしよう浮かばない、あとは‥)

そんな時ふと、廊下での出来事が頭をよぎった。

サトコ

「‥あ、すごく、優しかったです」

加賀

‥‥‥

(ハッ‥今、表情が険しくなった!?)

(まさか、地雷踏んだんじゃtねでも、どうだったってきかれたから答えただけなのに!)

加賀

‥誰と比べてんだ

サトコ

「はい?」

加賀

優しいってのは、誰と比べた?

サトコ

「ええ!?く、比べてなんて‥」

「一般論と申しますか、みなさんいい感じの人だったなと!」

加賀

ほう‥

まだまだ躾が足りねぇようだな

サトコ

「足りてます‥!もう、充分すぎるほどに!」

「だいたい、加賀さんと比べたらどんな人だって優しいし‥」

加賀

今なんつった?

サトコ

「なんでもないです!」

加賀

‥‥‥

私の顎を持ち上げて、加賀さんが顔を近づける。

いつものような強引なキスをされるかと思いきや、

まるで唇をなぞるような優しい口づけが落ちてきた。

(え‥?)

ついばむようなキスに、うっとりと身体の力が抜ける。

いつも私を翻弄する指が今日は静かにブラウスのボタンを外して、隙間から直接肌をなぞった。

サトコ

「ん‥加賀、さん‥」

加賀

‥‥‥

そんな中、優しかった指が突然、意地悪に動き出した。

安心して身を委ねた私をあざ笑うかのようなその手つきに、熱を帯びてゆく身体。

口を塞ぐような深いキスに言葉さえも奪われてしまう。

サトコ

「っ‥‥‥!」

「---加賀っ‥さっ‥」

加賀

黙れ

いつものようにピシャリと言われ、手を押さえつけられる。

でも心なしか、そのキスはやっぱりいつもより穏やかだった。

(どうしたんだろう‥?いつもと、違う‥)

しかしそれを問う余裕すら、加賀さんの手と、いつもより優しい唇に奪われる。

本当の理由はわからないまま、加賀さんの愛情を一身に受け止めたのだった。

【教官室】

翌日、加賀さんに呼び出されて教官室を訪れた。

加賀

やっと、ヤツの足取りがつかめた

サトコ

「ヤツ‥?」

東雲

公安が、前々から追ってたテロ組織 “Wizard” 」

後藤

以前はおとなしかったが、最近は手段を選ばず危険性が増している

石神

大物政治家を狙っているという動きもあったが‥

加賀

歩が、その組織の幹部に関する情報を掴んだ

石神

今はどこに?

加賀

ヤツ‥黒崎は現在、『西堀会』と接触している

石神

和光組の直系組織『西堀会』か

加賀

今週末、西堀会主催のとあるパーティーに参加するらしい

(『西堀会』‥日本最大規模の指定暴力団・和光組の直系組織ってことは)

(札付きのワルの巣窟だよね)

(手を動かしているのはそういう下っ端たちだって聞くし‥)

東雲

兵吾さん、不法な取引の疑いで少し前から潜入捜査してるんだ

サトコ

「最近の潜入はそれだったんですね‥」

加賀

黒崎はそのパーティーで、拳銃や麻薬の取引を行う算段だ

石神

なるほどな

ではWizardの拠点が分かり次第、石神班も追跡を開始して加勢する

加賀

ほぅ‥手柄の横取りか

石神

くだらないことを言うな

根拠のない勘に頼っている奴じゃ心許ないだけだ

颯馬

横取りするつもりはないので、是非お力添えさせてください

私はブツの流れをSに追跡させますので

後藤

俺は歩からの情報が来次第、犯人を追跡できるよう待機しておきます

加賀

‥足引っ張んじゃねぇぞ

石神

お前こそ身勝手な行動は慎め

この捜査、上からの指示は聞いているんだろうな?

加賀

チッ‥

巨大テロ組織の尻尾がやっと見えたって時に上の顔色伺う暇はねぇ

(テロ組織か‥大量の武器がテロ組織に流れたら、今後大勢の犠牲者が出る可能性は高い)

(でもその幹部を追えば、テロ組織を追い込めるかもしれない‥)

手柄と捜査方針を巡って意見を戦わせる班長たちを尻目にそんなことを考えていると、

不意に声を掛けられた。

加賀

テメェも一緒に来い

サトコ

「パーティーに潜入捜査ですか?」

「私でいいんでしょうか‥?」

東雲

適任‥かはわからないけど、サトコちゃんしかできない仕事があるんだよ

加賀

周りはヤクザだらけだ。気を抜くんじゃねぇ

東雲

前科持ちや射撃の腕のいい奴がごろごろいる組織だからね

加賀

そのパーティーで、ヤツに発信器を取り付ける

加賀さんが、東雲教官から小型の発信器を受け取る。

加賀

テメェは、それまで黒崎の気を逸らせ

サトコ

「わかりました。頑張ります」

加賀

頑張るんじゃねぇ。やるんだ

発信機の取り付けに成功すれば、あとは泳がせておくだけでいい

東雲

そうすれば黒崎が、テロ組織の巣窟に帰ってくれるし

その間に、パーティーで取引されたブツが流れて行って

テロ組織の構成員やテロ計画も特定できるって訳

まぁ一番厄介な仕事は、兵吾さんがやる。キミは黒崎の気を逸らすだけ

「簡単なお仕事でしょ?

(うぅ‥教官たちにとっては簡単かもしれないけど、私には一大事だ‥)

(でも加賀さんが言った通り、やるしかない‥『できません』じゃ済まないんだ)

加賀

目的は、取引された後のブツの流れを見届け、ヤツが属するテロ組織の所在を掴むこと

そして、組織自体の機能を停止させることだ

黒崎の確保じゃねぇ。そこを忘れんな

サトコ

「はい‥やってみせます!」

(ちょっとした捜査のお手伝い‥っていうのとは違って、今回はかなり重要な任務だ)

でも加賀さんは、私が『できる』と思って任せてくれたはずだ。

(加賀さんの期待に応えられるように‥)

(それにテロ組織を壊滅させて今後の犠牲を防ぐためにも)

(しっかり気を引き締めて頑張らなきゃ!)

to  be  continued

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