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脱出ゲームご褒美ミニストーリー ~加賀~

【加賀 マンション】

(‥これは、夢じゃないだろうか)

私は今、キッチンに立つ加賀さんを見るという、とてもレアな光景を目の当たりにしている。

(あの加賀さんが、料理してる‥)

(‥ほんとに?フリじゃなくて?)

恐る恐る、加賀さんの後ろから手元を覗き込む。

すると、すかさず盛大に舌打ちされた。

加賀

邪魔だ。うろちょろするんじゃねぇ

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サトコ

「す、すみません‥でも加賀さん、できれば包丁をこっちに向けるのは、やめてもらえると」

加賀

‥‥‥

サトコ

「ひぃっ!」

加賀

何もしてねぇ

(でも今、ものすごく冷たい目で見られた‥!)

暴言と鋭い眼光には慣れてるけど、凍てついた視線には耐性がなくて、心が折れそうになる。

それでもめげずに、もう一度まな板を覗き込んだ。

サトコ

「それで、何を作ってるんですか?」

加賀

邪魔だっつってんだろ

サトコ

「だって、加賀さんが料理をしてくれるなんて、レアすぎて‥」

「あの‥あとで夢じゃないって分かるように、写メ撮ってもいいですか?」

加賀

テメェ‥消すぞ

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(消す!?写メを!?それとも‥私を!?)

加賀

テメェが言い出したことだろうが

ぶつぶつ文句を言いながらも、加賀さんは手際よく料理を続ける。

そう。これは私が加賀さんにお願いして、実現したことだった‥‥‥

【寝室】

加賀さんを救出したあと、マンションに戻ってきた。

玄関のドアを閉めるなり寝室に連れ込まれて、ベッドに押し倒される。

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サトコ

「か、加賀さ‥」

加賀

褒美だ

私の両手首を掴んで頭の上でまとめると、もう片方の手で自分のネクタイを緩めた。

加賀

ひとつだけ、願いを聞いてやる

サトコ

「え‥」

加賀

どうしてほしい?言ってみろ

(こ、この流れはマズイ!)

(何をしてほしいか言わないと、加賀さんの思うつぼだ‥!)

射抜くような視線に負けそうになりながらも、必死にお願い事を考える。

(願い事、願い事‥そうだ!)

サトコ

「じゃ、じゃあ‥私、加賀さんの手料理を食べてみたいです!」

加賀

‥‥‥

その瞬間、加賀さんの表情がものすごく険しくなったのを見逃さなかった。

【キッチン】

規則正しい包丁の音で、ハッと我に返る。

加賀

駄犬が‥空気も読めねぇのか

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サトコ

「うっ‥」

(それって、『こんな願い事しやがって』って意味だよね‥)

(加賀さんが私に何を言わせたかったのか、なんとなくわかってたけど)

でもそれだといつもと同じになってしまう。

『加賀さんが願いを叶えてくれる』という貴重な貴重な権利を、なんとか行使したかったのだった。

(咄嗟に『手料理』なんて言っちゃったけど、でも私にしては機転がきいていた気がする!)

(前に加賀さんが料理するって聞いて、ずっと食べてみたかったし)

以前、教官たちの命令で、加賀さんにインタビューさせられたことがあった。

あのとき加賀さんは、場合によっては室長におつまみを作らされることもあると言っていたのだ。

サトコ

「加賀さん、本当に普段から料理しているんですね」

「包丁とか器具の使い方が的確で‥手慣れてる感じがします」

加賀

うるせぇ

サトコ

「もがっ」

小さなお鍋を混ぜていた菜箸で、口の中に何か突っ込まれた。

(これ‥豚の角煮!?味がしみてて、すごく美味しい!)

(お肉も柔らかいし、こんな短時間で一体どんな魔法を‥!?)

加賀

美味いか

サトコ

「‥‥‥!」

まだ口の中にお肉が入っていたので、必死に何度もうなずく。

私の反応を見て、加賀さんは満足げに笑った。

【リビング】

そのあと、リビングで待つように言われ、椅子に座って待機する。

すると、加賀さんがキッチンから運んできた料理をテーブルに並べた。

(さっき食べさせてくれた豚の角煮に、冷奴‥それに、カレー!)

(すごい‥この短時間にこんなに作れるなんて‥私より料理上手!?)

加賀

食え

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サトコ

「はい!いただきます!」

早速料理をいただくと、味付けは少し甘めだった。

でもどれも、すごく美味しい。

サトコ

「この冷奴も、ちゃんとタレや薬味が乗ってるし‥」

「美味しいです!加賀さん、ありがとうございます」

加賀

ああ

(それにしても、見事に野菜が入ってないな‥)

(まさかカレーにすら、ニンジンひとつ入ってないとは‥)

サトコ

「加賀さん‥野菜が嫌いなのは重々承知ですけど」

「でも玉ねぎとかは、溶けることで甘みが出るんですよ」

加賀

だからどうした

サトコ

「じっくり炒めればすぐルーに溶けちゃいますから、やっぱり野菜は入れた方が‥」

加賀

食わなくても死なねぇ

(出た、加賀さんの常套句‥)

(死なないかもしれないけど、身体は弱くなる気がする‥)

でもせっかくの食事を没収されそうだったので、それ以上言うのはやめておく。

美味しくいただいていたけど、ふと、加賀さんはまったく箸をつけていないことに気付いた。

(もしかして、おなか空いていないのかな‥?)

(だけど閉じ込められてる間、何も食べてないはず‥)

不思議に思いながらも、出された手料理を完食した私だった。

【寝室】

後片付けを済ませて寝室を覗くと、ベッドで本を読んでいる加賀さんを見つけた。

サトコ

「リビングにいなかったから、きっとここだと思いました」

加賀

‥‥‥

本から顔を上げると、加賀さんが自分の隣を指でトントンと叩く。

来い、という意味だと分かり、いつも空けておいてくれているスペースに座った。

サトコ

「ごちそうさまでした。本当に美味しかったです」

加賀

よかったな

サトコ

「はい!加賀さんが料理するって聞いてから、ずっと食べてみたかったんです」

「室長はいつも、あんなに美味しい料理を食べてるんですね。羨ましいです」

加賀

いつもじゃねぇ

サトコ

「え?」

加賀

上司とはいえ、普段から作ってたら気色悪ぃだろ

(確かにそうだけど、室長に言われたら加賀さんならちゃんと作ってあげる気がする‥)

それはそれで、なんとなく微笑ましい。

ふたりの姿を想像して笑っていると、加賀さんがパタンと本を閉じてサイドテーブルに置いた。

サトコ

「あ、もう寝ますか?」

加賀

あ?

サトコ

「そういえば加賀さん、ごはん食べてなかったですけど、おなかは‥」

私の言葉を遮るように、加賀さんが両手首を掴む。

そのまま私を押し倒しながら、ブラウスのボタンに手を掛けた。

サトコ

「え!?」

加賀

寝るわけねぇだろ

今度は、テメェが俺を満足させる番だ

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サトコ

「ま、満足って‥」

(待って‥この状況、さっき帰って来たときと同じ!?)

サトコ

「今日は、加賀さんを助けたご褒美をくれる約束じゃ‥!」

加賀

くれてやっただろ

‥散々焦らしやがって

何か言おうと開きかけた口を、加賀さんがキスで塞ぐ。

すぐに舌が絡まり、反論など許されるはずもない。

(しかも、こんな激しいキスされたら‥っ)

加賀

‥飯はいらねぇかと聞いたな

これからテメェを味わうのに、他のもんは必要ねぇ

サトコ

「っ‥‥‥」

ボタンを外されて、手で押さえつけられたまま唇で肌を攻められる。

手を拘束する力は優しくて弱いのに、抗うことができない。

(私を味わうため、ごはんを食べなかったって‥)

(つまり、今の加賀さんは‥飢えた獣!?)

噛みつくようなキスに翻弄されて、吐息しか零れない。

その夜は、私が食べた料理の味付け以上に甘く、加賀さんに美味しくいただかれたのだった‥

Happy  End

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