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加賀 Season2 カレ目線3話

【ホテル】

内容も伝えないまま、サトコをホテルへと連れ込んだ。

そこは、とある政治家がスパイに国家機密を流しているという情報があった場所だ。

サトコ

「加賀さん、盗聴器はありません。盗聴されている心配はないようです」

「隣の部屋の音声、拾えますか?」

何も指示せずとも、サトコはひとりで判断してひとりで行動している。

それも、これまでの教訓を生かした的確な動きだ。

(ようやく、少しは使えるようになったか)

まぶたの裏に、サトコが公安刑事になった様子が思い浮かんだ。

自分の下で、パートナーとして働くのもそう遠い未来ではないだろう。

(‥悪くねぇ光景だ)

情報の受け渡しと思われるやり取りが済み、隣の部屋から政治家たちが出て行く。

ドアのそばで貼ってそれを確認していると、歩から通信が入った。

東雲

兵吾さん、録音データ、確認しました。通信切ります

加賀

ああ

歩がインカムを切ったことを確認すると、サトコの腕をつかんで抱き寄せる。

驚くサトコを黙らせるために、キスで口を塞いだ。

サトコ

「かっ‥」

加賀

喚くな

(主人の指示がなくても、それなりにやれた褒美をやらねぇとな)

ベッドに押し倒して、さらに奥を求める。

すでに通信が切れているとは知らないサトコの目は、戸惑うように揺れていた。

サトコ

「い、インカムっ‥」

加賀

聞かせてやれ

サトコ

「!」

加賀

テメェが発情してる声をな

サトコ

「ぁっ‥」

誘惑に負けじと、必死に俺の身体を押し戻そうとする。

だがその抵抗は弱々しく、手を押さえつけてやるとあっさり力を抜いた。

(テメェの扱いには、慣れてる)

(この程度でそこまで感情を表に出すなんざ、刑事失格だ)

そう思うのに、サトコの反応が面白くてキスを続ける。

わざとインカムのスイッチを切ってみせると、サトコは今まで通信が入っていたと勘違いした。

サトコ

「鬼畜‥!」

加賀

あ゛?

サトコ

「だって、ひどいですよ‥!」

「東雲教官に聞かれたら、なんて言えばいいんですか!」

加賀

発情してました、って言やいいだろうが

サトコ

「言えません!」

(刑事見習いとして、ようやく半人前になったってとこだが‥)

(こういうところは、いつまで経っても成長しねぇな)

部屋に入って来たときの、俺の指示なしで動くサトコのギャップを感じる。

だが、その姿は誰にも知られたくない、などというくだらない独占欲を覚えたのも事実だった。

【花の家】

母親が倒れたという一報を受けたサトコだが、実家に帰るとは言わなかった。

(訓練を優先する、か‥この2年の間に、刑事としての自覚が出て来たってことか)

それに関しては、褒めてやりたいという気持ちもある。

だが布団に入っても、サトコは弟からの連絡を待っているのか携帯を気にしている様子だった。

(‥帰りてぇんだろうな、本当なら)

携帯を確認するために伸ばした手は、微かに震えている。

その小さな身体をこちらに向けさせると、腕の中に閉じ込めた。

サトコ

「加賀さん‥」

微かにつぶやいたあと、サトコがすがりつくように抱きついてきた。

サトコ

『‥きっと、母は喜ばないと思います』

『だから‥残ります』

気丈に振る舞っていたが、親が倒れても無情に仕事や学校を優先できる性格ではない。

しばらく黙っていたサトコは、そのまま腕の中でおとなしくなった。

(‥寝たか)

そっと身体を離すと、頭を撫でてやる。

この小さな肩で色々な感情を受け止めているのだと思うと、抱きしめる腕に力が入りそうだ。

(他のヤツの前で平気なフリすんのは、好きにすりゃいい)

(そうしねぇと崩れ落ちそうになるときもある。だが‥)

俺の前では、それを許すつもりはない。

情けねぇ面で無理やり笑顔を作られるくらいなら、弱音を吐かれた方がマシだ。

サトコ

「ん‥っ、ぅっ‥」

夢を見ているのか、サトコが俺のシャツを握る手に力を込めた。

サトコ

「おかあ、さん‥」

加賀

‥‥‥

サトコ

「ごめ‥行け‥くて‥」

もう一度、包み込むようにその身体を抱き寄せる。

背中をさすってやると、サトコはようやく、身体の力を抜いた。

(こいつにはまだ、刑事としての経験なんざほとんどねぇ)

(親の死に目にあえねぇような仕事だと‥頭ではわかってるかもしれねぇが)

眠りは浅いらしく、時折身体を震わせては再び力を抜く。

仕事を覚え始め、ようやく半人前に近くなってきた姿を思い出しながら、その頬を撫でた。

(刑事としても女としても、やっと成長してきたが)

(‥身内が絡むと、そういうわけにはいかねぇか)

それを批難するつもりはない。人として当然の感情だ。

だが‥この仕事は、それさえも許されない場合がある。

(‥結局は経験を積むしかねぇ)

(慣れるしか‥ねぇ)

加賀

‥こいつを責められる立場でもねぇな

小さくつぶやき、サトコの額に唇を押し当てた。

自分も、サトコが腕を撃たれたとき‥咄嗟に、犯人確保を優先できなかった。

(もし俺が、今のコイツの立場だったら)

(倒れたのが、サトコだったら‥)

そんな、らしくもないことを考えてしまう。

ため息をつき、バカな考えを振り払って、再びサトコの髪を撫でた。

(経験を積んで、現場を味わって、少しずつ学んでいくしかねぇ)

(それまでは‥俺が守ってやる)

きっといつになっても、サトコは俺の中で “守るべき存在” だろう。

その気持ちを変えるつもりはなかったし、

ましてや、以前サトコが言ったように、守られるつもりなどさらさらない。

サトコ

『私は、守られてるだけじゃ嫌なんです』

『加賀さんについていきたいんです。‥支えたいんです』

(‥いつになることかな)

(そんな日は、永遠に来ねぇだろうが)

今はただ、サトコの母親が無事に回復することを祈るしかない。

サトコの髪に頬を寄せ、束の間の眠りに身を任せた。

to  be  continued

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