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恋人は公安執事 第三夜

公安流・お嬢様の癒し方★0時を過ぎたら ~加賀の場合~

【リビング】

加賀さんにアイアンクローされたまま、その手から逃れようとジタバタする。

そのうち、午前0時を告げる鐘の音が聞こえてきた。

(0時‥!加賀さんの仕事が終わる時間‥)

加賀

ようやくか

手を離されて、やっと自由が戻ってきた。

サトコ

「苦しかった‥」

加賀

テメェがくだらねぇこと言うからだ

サトコ

「仰る通りです‥」

(はあ‥でも、さっき帰ってきたばっかりなのに)

(これで今日がもう終わっちゃうなんて、寂しいな‥加賀さん、もう帰っちゃうよね)

加賀さんにわからないようにため息をついた瞬間、身体が宙に浮いた。

サトコ

「へ?」

加賀

執事の時間は終わりだ

サトコ

「え!?ちょ、ちょっと待っ‥」

私はそのまま加賀さんに担がれて、寝室に連行されていった。

【寝室】

私をベッドに降ろすと、覆いかぶさるようにして加賀さんが見下ろしてくる。

サトコ

「かっ、加賀さっ‥」

加賀

帰って欲しくなさそうだったからな

サトコ

「うっ‥」

(完全にバレてる‥)

恥ずかしくて俯くと、まるで私のすべてを暴くように、加賀さんが顔を覗き込んできた。

加賀

どうしてほしい?

サトコ

「え‥」

加賀

テメェの口から言え

素直な言葉なら聞いてやる‥お嬢様

サトコ

「ず、ずるい‥です」

顎を持ち上げられて、加賀さんの顔が近づく。

サトコ

「‥一緒に、いてください」

「離れたくない‥0時が過ぎても、ここにいて欲しいです」

加賀

上出来だ

満足げに笑うと、加賀さんがゆっくりと、私に体重を預ける‥

その背中に手を回して、執事の時以上に意地悪な加賀さんに身を任せたのだった‥

公安流・お嬢様の癒し方★0時を過ぎたら ~颯馬の場合~

【リビング】

颯馬さんと晩酌したあと、ソファで目を覚ました。

(私、あのまま寝ちゃったんだ‥)

(ん‥?毛布がかけられてる)

そっと起き上ると、隣で颯馬さんがソファにもたれかかって目を閉じていた。

(寝てる‥?颯馬さんが油断するなんて、珍しいな)

颯馬

‥‥‥

‥サトコさん?

サトコ

「ふふ、颯馬さんも寝ちゃったんですね」

颯馬

すみません‥貴女の寝顔を見ていたら、つい

眠そうに目を細める颯馬さんは、いつも以上に色気が漂っている。

(男の人なのに、綺麗だし‥なんか、今さらだけど緊張してきちゃった‥)

颯馬さんの手が伸びてきて、静かに髪を撫でられる。

大きな手で撫でられると気持ちよくて、つい、颯馬さんに寄りかかった。

颯馬

それにしても‥酔うと危険ですね、サトコさんは

サトコ

「え?」

颯馬

俺以外の男の前では、絶対、あんなに飲まないで

(‥ “俺” ?)

聞き返そうとした時には、もうソファに押し倒されていた。

サトコ

「そ、颯馬さっ‥」

颯馬

甘えてくれるのは嬉しいけど、俺以外にもしてるのかもしれないと思うと心配だ

サトコ

「颯馬さんっ‥なんかいつもと違いますよ‥!?」

颯馬

ええ。だって、ほら

颯馬さんの視線を追いかけて時計を見ると、とっくに0時を回っていた。

颯馬

今の俺は、執事じゃない‥ただの男だから

(そういえば、さっきからずっと『お嬢様』じゃなくて『サトコさん』って‥)

颯馬

今度こそ、口移しで飲ませてあげましょうか

形のいい唇が残りのお酒を含み、そのまま深く口づけられる‥

穏やかな執事の颯馬さんとは正反対の、激しい夜になりそうな予感がした。

公安流・お嬢様の癒し方★0時を過ぎたら ~東雲の場合~

【リビング】

東雲

だいたいキミって、お嬢様の自覚が足りないよね

お嬢様って、もうちょっとおしとやかで上品な立ち振る舞いできるものでしょ

サトコ

「仰る通りでございます‥」

ひたすら東雲さんの嫌味を聞いていると、0時を告げる鐘の音が聞こえた。

東雲

はい、勤務終了

パッと私から離れて隣に座ると、東雲さんが目の前のパンケーキを食べ始める。

サトコ

「ええ!?それ、私のじゃ‥」

東雲

このパンケーキは、キミのだなんて言ってないよね?

サトコ

「そ、そんな‥」

ナイフとフォークで、東雲さんがふわふわのパンケーキを頬張る。

羨ましすぎる光景を隣でじっと見つめていると、東雲さんがチラリと私を見た。

東雲

なに?そんなに見られてると、食べにくいんだけど

サトコ

「す、すみません!つい‥」

東雲

仕方ないな。ほら、口開けて‥あーん

サトコ

「えっ!?」

東雲

いらないなら、オレが全部食べるけど

サトコ

「いります!お願いします!」

口を開けると、大きく切られたパンケーキを口に突っ込まれた。

サトコ

「もごっ」

東雲

あーあ、だらしない

口の端にシロップがついてますよ、お嬢サマ

(もとはといえば、東雲さんが‥!)

文句を言おうとした瞬間、その顔が近づいた。

私の口の端のシロップを舐めるように、東雲さんの唇と舌が動く。

東雲

あま‥

サトコ

「っ‥‥‥」

東雲

さっきので、もう疲れは取れたんでしょ?今度はオレの番

(お、オレの番って‥!?)

ドキドキする私を連れて、東雲さんは寝室へ向かった‥

【寝室】

私の腕を引っ張り、もつれ合うようにしてベッドに横になる。

東雲さんはそのまま私を抱きしめて、まるで抱き枕のように頭を撫で始めた。

(し、心臓がっ‥)

東雲

疲れた‥

サトコ

「いつも色々と、ありがとうございます‥」

東雲

‥うん。執事とか、ほんと怠‥

なんでキミなんかのために‥ホント、生意気

声が小さくなり、東雲さんの唇が頬に触れる。

(え!?)

慌てて顔を上げると、本当に疲れていたのか、東雲さんは眠ってしまっていた。

(寝てる!?今のキスって‥もしかして寝ぼけてたの?)

(じゃあ、今度は私から‥キッスを!)

思い切って近づくと、東雲さんの口が動いた。

東雲

ああ、そういえば‥片付けよろしくね

サトコ

「片付け!?」

東雲

オレのかわりにやっといて‥ヘンタイさん

サトコ

「なっ‥!」

(や、やられた‥!)

(っていうか、東雲さん、起きてたの!?)

寝言かどうかもわからないまま、素直に頷くしかない私だった‥

今夜も、午前0時を過ぎた執事の素顔にドキドキしたアナタ‥

アナタが好きなのは、0時までの執事のカレ?それとも‥‥

End

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