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カレらが執事になったら 2話

公安流・お嬢様の癒し方★0時まで ~後藤の場合~

(はあ‥今日も、もうこんな時間かぁ‥)

(ゆっくりお風呂に入って、疲れを癒そう!)

【玄関】

後藤

おかえりなさいませ、お嬢様

サトコ

「ただいま帰りました。今日は後藤さんが出迎えてくれたんですね」

後藤

ああ。疲れているだろう‥先に風呂にするか?

サトコ

「え‥?」

(後藤さん、お風呂に入りたいこと予測しててくれたの‥!?)

後藤

お嬢様が好きな、入浴剤も入れておいた

サトコ

「ありがとうございます!先にお風呂に入りたかったんです」

(後藤さんは無口だけど、私がしてほしいことを先回りしてくれるんだよね)

(入浴剤も入れてくれてるなんて、周到だな‥じっくり温まってこよう)

【リビング】

お風呂から上がると、部屋が綺麗に片付いていた。

(今朝、急いでたから結構ぐちゃぐちゃの状態で家を出たんだけど)

(後藤さんが片付けてくれたのかな。助かっちゃった)

ソファに座って牛乳を飲んでいると、後藤さんがタオルとドライヤーを持ってきた。

後藤

‥濡れたままだと、風邪を引く

サトコ

「あ、すみません。ありがとうございます」

受け取ろうとする私の手をかわして、後藤さんが髪を乾かし始める。

サトコ

「そ、そんな‥自分で出来ますから!」

後藤

いいから、じっとしてろ

サトコ

「はい‥」

(後藤さん、たまに素の口調が出ちゃうみたいだけど‥)

(そういうところが、意外と接しやすいな‥)

髪を乾かしてもらい顔を上げると、鏡越しに後藤さんと目が合った。

(な、なんか恥ずかしい‥)

乾かし終わって、恥ずかしさを隠すかのように後藤さんの傍を離れる。

サトコ

「あ‥私、明日の準備しなきゃいけないんだった!」

後藤

仕事のか?それなら、俺が‥

サトコ

「いえ、大丈夫です!自分でやりますから、休んでてください!」

「えっと、明日は打ち合わせがあるから、大き目のバッグと‥」

クローゼットに手を掛けた瞬間、慌てたような後藤さんの声が聞こえてきた。

後藤

待て!そこは‥

サトコ

「え‥?」

ドサドサドサッ

サトコ

「わーっ!な、雪崩が!」

後藤

‥すまない

クローゼットの中から落ちてきたのは、私が散らかした服やバッグだった。

サトコ

「も、もしかして‥ここに全部詰め込んでたんですか?」

後藤

片付けは苦手なんだ‥

(そうだったんだ‥執事にも苦手なことあるんだな)

(それにしても、後藤さんなんだか可愛いかも‥)

ちょっとだけ、親近感が湧いた夜だった。

公安流・お嬢様の癒し方★0時まで ~石神の場合~

【リビング】

仕事から帰ってきて風呂に入り、食事を終えた私はテーブルに仕事の資料を並べた。

(明日までにまとめて来いって、編集長に言われたんだった‥)

(ちょっと時間かかりそうだけど、頑張るしかない!)

石神

仕事か?

後ろを通りかかった石神さんが、資料を覗き込みながら尋ねる。

サトコ

「はい。明日には持って行かなきゃいけないんです」

石神

そうか‥仕事熱心なのはいいことだ

石神さんが眼鏡を押し上げ、その奥の瞳がキラリと光った。

(な、なんか嫌な予感‥!?)

しかし、石神さんは何も言わず、キッチンへと入って行った。

(あれ‥?気のせいだったのかな)

(でも石神さんがああやって眼鏡を押し上げるときは、たいてい何かあるんだよね‥)

サトコ

「っと、それより、仕事仕事!」

資料作成を始めようとした時、甘い、いい香りがして思わず手を止める。

テーブルの上に、石神さんがホットココアの入ったカップを置く。

サトコ

「わあ‥美味しそう!」

石神

仕事で疲れているだろう

疲れた時には、頭にも糖分が必要だ

サトコ

「ありがとうございます!やる気が出てきました!」

張り切って資料作成の続きを始めると、石神さんも自分の仕事に戻った。

サトコ

「うーん‥」

暫くすると、資料でまとめるのに難しいところが出てきてしまった。

石神

どうかしたのか?

サトコ

「このグラフなんですけど」

「こっちとこっちのデータを合わせた場合って‥」

真剣に聞いてくれていた石神さんが、ひとつうなずいて席を外す。

そして戻ってきたと思ったら、大量の参考書を抱えていた‥

サトコ

「な、なんですかそれ!?」

石神

お前はそもそも、経験値が足りない上に、基礎がなっていない

これとこれを、同じようにデータ化してみろ

サトコ

「ええ!?仕事でもないのに!?」

石神

同じことを繰り返せば、自然とやり方が見えてくる

すべての物事において、基礎は何よりも大事だからな

サトコ

「は、はい‥」

(まさか、仕事じゃなくて勉強することになるなんて)

(先にお風呂に入っちゃったせいか、眠くなってきたかも‥)

石神

おい

サトコ

「は、はい!」

石神

まだ終わってないぞ。寝るのはまだ早い

サトコ

「はい‥」

(うう‥)

(石神さん、仕事にストイックだけど‥まさかここまでスパルタだとは)

結局、参考書を読み終わるまでは眠らせてもらえない私だった‥

End

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