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聖夜 加賀1話

【カフェテラス】

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(もういくつ寝ると、クリスマス‥)

(今年のクリスマスは‥きっと、何かが起きる予感がする!)

それは、数日前に加賀さんから送られてきたメール。

そこには短い文章で、『24日空けとけ』とあった。

(24日‥つまり、クリスマスイブ!)

鳴子

「サトコ、なんかご機嫌だね~」

サトコ

「えっ?わ、わかる?」

鳴子

「わかるよ~。幸せオーラ出まくりだもん」

「もしかして‥ついに彼氏でもできた!?」

サトコ

「え!?い、いや、そんな、まさか」

「もうすぐクリスマスだな~。って思ってただけだよ‥」

鳴子

「あー、確かに。この時期って意味もなく浮かれちゃうよね」

サトコ

「そ、そうそう。ハハハ‥」

さり気なく鳴子から目を逸らしつつ、加賀さんからのメールを思い出してまたニヤけてしまう。

(去年は、納会があったり黒澤さんに連行されたり、色々あったけど)

(今年はついに、加賀さんと恋人らしい時間が過ごせるんだ)

鳴子

「でもそういえば、クリスマス前に期末試験があるよね‥」

サトコ

「うん‥かなり難易度が高いらしいって聞いたけど」

鳴子

「それをクリアできなければ、24日は丸一日、補習だって」

「ほんと、教官たちが考えることって鬼だよね‥」

サトコ

「うん‥たまには、平和なクリスマスとか年末年始を過ごしたい‥」

きっと加賀さんからの『空けとけ』というメールは、その意味もあったのだろう。

(『補習なんざ食らったら、どうなるかわかってるな?』っていう、無言の威圧を感じる‥)

(でも私だって、クリスマスは加賀さんと一緒に過ごしたい!そのためには勉強頑張らなきゃ)

鳴子

「それにしても‥私たちが恋人とふたりきりのクリスマスを過ごせるのはいつの日か‥」

「私は結局、今年も千葉さんたちとの訓練生クリスマスだし」

サトコ

「そ、それはそれで楽しいと思うよ‥」

鳴子

「サトコは行かないんだっけ?」

サトコ

「うん、誘われたけど‥よ、用事があって!」

鳴子

「そういえば、訓練生クリスマスでプレゼント交換があるんだけど」

「何にするか、全然決まらないんだよね」

(プレゼントか‥私もまだ、加賀さんに何をあげるか決めてない‥)

鳴子

「ちなみにサトコは、今まで一番嬉しかったプレゼントって何?」

サトコ

「うーん、なんだろう‥子どもの頃にもらったぬいぐるみとか‥?鳴子は?」

鳴子

「私は、手紙かな~」

サトコ

「手紙?」

鳴子

「クリスマスに、心のこもった手紙をもらったことがあるんだよね~」

「すごく嬉しかったな。今でも大事に取ってあるんだけど」

サトコ

「へえ‥そういうの、ステキだね」

(手紙かあ‥私も、加賀さんからもらえたら‥)

(‥いや、加賀さんがそんなピュアなこと、してくれるはずがない‥)

ちまちまと便箋に想いをしたためる加賀さんを想像して、やっぱりあり得ないと感じる。

淡い期待を振り払い、加賀さんへ贈るプレゼントに頭を悩ませる私だった。

【個別教官室】

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死に物狂いで頑張った結果、なんとか試験をクリアすることができた。

サトコ

「失礼します!加賀教官、いらっしゃいますか!?」

加賀

うるせぇ

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サトコ

「すみません!でも見てください!」

試験の結果を見せても、加賀さんの表情は緩まなかった。

加賀

これくらい、当然だ

まさか、補習覚悟で受けたんじゃねぇだろうな

<選択してください>

A: 絶対に大丈夫だと思ってた

サトコ

「そ、そんなバカな‥絶対大丈夫だと思って臨みましたよ‥」

加賀

そのわりに、目が合わねぇな

サトコ

「うっ‥補習は免れたので、許してください‥」

(実は『もしかしたら補習かもしれない‥』って不安だった、なんて言えない‥)

B: そうだったらどうします?

サトコ

「そ、そうだったら、どうします‥?」

加賀

どうなると思う?

サトコ

「私の命が危ないと思います‥」

加賀

その通りだ

(補習にならなくてよかった!今ここで存在を消されるところだった‥!)

C: 褒めてください!

サトコ

「頑張ったんです!褒めてください!」

加賀

この程度でか

サトコ

「褒められて伸びる子なんです!」

加賀

今まで、褒めた覚えはねぇが

(それはつまり、私は全然伸びてないと‥!?)

加賀

そういや、今回の試験を作ったのは成田だったな

サトコ

「あ、そうなんですか?道理で意地の悪い問題ばっかりだと思いました」

「みんな泣いてましたよ‥参考書にもどこにもない問題ばっかりだって」

(私は、加賀さんや他の教官たちから日々しごかれてるから、なんとかクリアできたけど)

結構な数の人たちが、24日は補習で潰れることになったらしい。

加賀

‥仕方ねぇ。たまには褒美でもやるか

サトコ

「褒美?」

「‥って、ご褒美って意味ですか!?」

加賀

他に意味あんのか

サトコ

「ないです!ご褒美ください!」

思わず加賀さんに駆け寄ると、口の端を持ち上げて笑われた。

加賀

何が欲しい

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サトコ

「えっと‥」

(しまった‥)

(加賀さんがご褒美をくれるなんて想像もしてなかったから、これといって思いつかない)

(‥あっ、そうだ!)

サトコ

「それなら、手紙が欲しいです!」

加賀

手紙?

サトコ

「はい!加賀さんからの、心のこもった手紙が」

鳴子の言葉を思い出して、軽い気持ちでそう伝えてみる。

(私も、クリスマスにピュアな手紙が欲しい‥!)

(‥なんて、加賀さんがそんなの、くれるはずないよね)

サトコ

「すみません、冗談なので‥」

加賀

奇遇だな

サトコ

「え?」

加賀

ちょうど、テメェにこれを渡そうと思ってたところだ

ぽん、と頭に乗せられたのは‥なんと、封筒だった。

(え‥!?まさか、これ‥)

サトコ

「加賀さんからの手紙‥!?」

加賀

さあな

サトコ

「開けてもいいですか!?」

返事を聞く前に、封筒を開ける。

でも、そこに書かれていたのは‥『招待状』の文字だった。

サトコ

「‥へ?」

加賀

24日、上層部との付き合いでパーティーに出席しなきゃならねぇ

面倒だが、難波さんにも『行っとけ』って言われたしな

サトコ

「ま、まさか‥24日のお誘いって」

加賀

パートナー同伴が条件だ。テメェも来い

(そんな‥てっきり、ふたりきりのクリスマスイブを過ごせると思ってたのに)

(でも、パートナーか‥当たり前のようにそう言われるのは、嬉しいかも)

イブをふたりで過ごせないのは残念だけど、“パートナー” という言葉が少しくすぐったい。

改めて招待状に目を通すと、気になる箇所を見つけた。

(パーティーには、ダンスタイムもあるのか‥)

(きっと、社交ダンスだよね‥高校の頃の体育の授業で創作ダンスをやったのが最後だな‥)

加賀

‥踊れんのか

“ダンスタイム” の文字で私の視線が止まっていることに気付いたのか、加賀さんが眉をしかめた。

サトコ

「‥当日までに、訓練しておきます!」

加賀

‥‥‥

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サトコ

「そんな顔しないでください‥」

「あ‥でも、パーティーってドレスコードありますよね」

加賀

ああ‥

サトコ

「ドレスは、友だちの結婚式用に買ったのがあるんですけど」

(そういえば、靴はヒールが低いのしかない‥)

(加賀さんのパートナーだし、ヒールは高い方がいいかも)

【ショップ】

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パーティー用のハイヒールを買いに行くと告げると、加賀さんがついてきてくれた。

サトコ

「うーん、どんなのがいいかな‥加賀さん、好みとかありますか?」

加賀

なんでもいい

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(言うと思った‥)

(でもきっと、大人っぽいほうがいいよね。かと言って、あまり派手じゃないデザインで‥)

加賀

これでいいだろ

サトコ

「えっ?」

加賀さんが差し出したのは、まさに私が探していたようなデザインのヒールだった。

(けど、ヒールが‥思ったより高い!)

(いや、上層部のお付き合いのためのパーティーだし、このくらいじゃないと‥)

加賀

履いてみろ

サトコ

「は、はい‥」

近くのソファに座り、ヒールを履く。

立ってみると、普段よりも少し高い目線がなんだか新鮮だった。

サトコ

「すごい‥加賀さんの顔が近いです」

加賀

‥ガキか

じっと見つめられて、いつもより近いその距離がくすぐったい。

鏡に映っている自分は、高いヒールを履いて背伸びしているようにも見える。

<選択してください>

A: 似合ってますか?

サトコ

「どうでしょう‥似合ってますか?」

加賀

‥‥‥

(そこは、肯定してほしかった‥)

加賀

パーティーでミスしなきゃ、問題ねぇ

サトコ

「そうですよね‥転んだりしたら、一大事だし」

(ダンスしてもフラつかないように、当日まで練習しなきゃ)

B: こういうのが好み?

サトコ

「加賀さん、こういうのが好みですか?」

加賀

あ゛ぁ?

サトコ

「なぜご立腹!?」

加賀

テメェがくだらねぇミスしなきゃ、なんでもいい

(それってつまり、当日はしっかりパートナー役を務めろ、ってことだよね)

C: 今にも転びそう

サトコ

「い、今にも転びそう、なんですがっ‥」

加賀

‥‥‥

サトコ

「そんな呆れた顔しないでください‥!こういうの、慣れてないんです!」

加賀

なら、無理して来なくていい

サトコ

「い、行きます!無理してでも行きます!」

(せっかく加賀さんが選んでくれたし、これにしよう)

さっそくレジで購入すると、加賀さんのところへ戻った。

サトコ

「ありがとうございました。ドレスにも合う色だし、パーティーにはこれを履いていきますね」

加賀

ああ

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サトコ

「帰り、何か食べて行きませんか?選んでくれたお礼に、スイーツ奢ります!」

「この前、ちょっと奥まったところに甘味処を見つけたんですよ」

加賀

ほう‥大福はあったか?

サトコ

「“至福だいふく” っていうのがありました!」

「中に、生チョコが入ってるそうですよ」

加賀

‥邪道だな

どこの店だ

サトコ

「ちょっと遠いんですけど‥ナビしますね」

(邪道だ、とか言いながら、行く気満々だ‥)

(そうだ!加賀さんへのクリスマスプレゼントに、何かお菓子でも作ろうかな)

いいアイデアにほくほくしながら、駐車場に停めてある加賀さんの車に乗り込んだ。

【スタジオ】

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加賀さんと一緒に和スイーツを楽しんだ後、なぜか寮には戻らず‥

連れて来られたのは、鏡張りの広いスタジオだった。

サトコ

「加賀さん‥?なんでこんなところに」

加賀

ここでしっかり、テメェを躾け直してやる

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サトコ

「し、躾‥!?」

ゆっくりと、加賀さんが私を追い詰めるように歩いてくる。

じりじりと後ずさると、背中が鏡にぶつかった。

(な、なんで‥!?私、何かした!?)

加賀

脱げ

手が伸びてきて、加賀さんが私の背中のファスナーを下ろした。

サトコ

「‥えっ!?」

加賀

こんなもん着てちゃ、邪魔でできねぇだろ

サトコ

「じゃ、邪魔って‥」

(鏡張りの部屋‥ふたりきり‥)

(服を脱ぐ‥まさか加賀さん、そういうプレイを‥!?)

to  be  continued

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