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聖夜 石神3話


石神さんに手を引かれるのを頼りに、私は足を動かした。

石神

着いたぞ

しばらくすると、石神さんのそんな声に足を止める。

石神

目を開けてくれ

サトコ

「はい‥」

ドキドキしながら、ゆっくりと瞼を開ける。

すると‥‥‥

サトコ

「わぁ‥!」

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コテージの周りには、たくさんのキャンドルが飾られていた。

入り口に続く花道のように置かれたキャンドルの明かりが、コテージを優しく照らしている。

サトコ

「綺麗‥」

目の前の光景に目を奪われていると、石神さんは私の顔を覗き込んだ。

石神

教会のキャンドルライトとまではいかないが‥

お気に召しましたか?

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サトコ

「っ‥‥‥」

まるで王子様のように微笑む石神さんに、鼓動が高鳴る。

サトコ

「‥もちろん召しました!」

石神

日本語は正しく使え

石神さんは苦笑しながら、私の額をコツンと軽く叩く。

<選択してください>

A: 石神さん、王子様みたいですね

サトコ

「石神さん、王子様みたいですね」

石神

は‥?

私の言葉に、石神さんが目を丸くする。

サトコ

「優しくて、かっこよくて‥石神さんはいつだって、私にとって王子様のようなものです」

石神

‥何を子どもじみたようなことを言ってるんだ

そう言いながらも、石神さんはほのかに頬を染めていた。

石神

でも‥お前にそう思われるのは悪くない

サトコ

「!」

石神さんは私の手を持ち上げると、手の甲にキスをする。

(い、今のは‥)

優艶に微笑む石神さんに、心臓がさらに大きく脈打った。

B: すごく嬉しいです

サトコ

「すごく嬉しいです」

繋いでいる手に力を込め、満面の笑みで伝える。

石神

そうか‥

それなら、よかった

口元をほころばせる石神さんに、私の胸に温もりが広がる。

私たちは手を繋いだまま、優しく揺らいでいるキャンドルの明かりを眺めた。

C: お礼にキスをする

(何か石神さんにお礼がしたいな‥)

サトコ

「あの、石神さん」

石神

なんだ?

私は石神さんに向き直り、そっと背伸びする。

石神

そして石神さんの唇に、触れるだけのキスをした。

サトコ

「‥お礼です」

石神

お前な‥

石神さんは頬を薄っすらと赤く染め、私の頬を優しく撫でる。

すると、ゆっくりと顔が近づいて‥

サトコ

「ん‥」

キャンドルの明かりが見守る中、私たちはもう一度口づけを交わした。







【コテージ】

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サトコ

「美味しいですね」

石神

ああ

私たちは暖炉のある室内で、クリスマスディナーを堪能する。

窓からは、キャンドルの輝きが見えた。

(石神さんとこうしていられるなんて、夢のようだな‥)

サトコ

「‥私、憧れていたんです。キャンドルナイトに」

石神

そうだと思った

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サトコ

「え‥?気づいていたんですか?」

石神

まあな

(いつ気づいたんだろう?)

首を傾げるも、微笑みで返された。

それから料理を食べ終えると、私は注文していたプリンの箱を取り出す。

石神

その箱は‥!

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サトコ

「このプリン、かなり人気なんですよ」

石神

知っている。いつか食べてみたいと思っていたんだ

嬉しそうに目を輝かせている石神さんを、少しだけ可愛いと思ってしまう。

(ふふ、注文してよかった)

プリンを取り出そうと、箱を開ける。

石神

ん‥?なんだ、それは

サトコ

「え?」

(あっ、これは‥!)

プリンの箱には、前もって買っておいたアートアクアリウムのチケットが入っていた。

(驚かせようと思って、入れていたんだ)

石神さんはチケットを手に取り、じっと見る。

石神

‥準備、してくれてたんだな

サトコ

「は、はい。石神さんは熱帯魚が好きだし、どうかなって思って」

石神

そうか‥ありがとう

(アートアクアリウムには行けなかったけど‥)

今の石神さんの微笑を貰えただけで、充分だった。

プリンを食べ終えた私たちは、ソファに座りながら窓の外を眺める。

(一時はどうなるかと思ったけど‥)

私の隣には、石神さんがいる。

(今年は一緒に過ごせてよかった)

私は胸に温かい気持ちを携えたまま、プレゼントを取り出した。

サトコ

「石神さん、よかったら受け取ってください」

「メリークリスマスです」

石神

ありがとう。開けてもいいか?

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サトコ

「もちろんです」

石神さんは包装紙を破らないように丁寧に解き、箱を開ける。

石神

ネクタイピンか‥

サトコ

「はい。ネクタイピンの贈り物には『あなたを見守ります』という意味が込められているんですよ」

「今は見守られてばかりですが‥」

「もっと成長して、いつかそうなれたらいいと思っています」

石神

サトコ‥

ありがとう。大事に使わせてもらう

石神さんは優しく微笑みながら、箱を取り出す。

石神

‥これは、俺からだ

石神さんから受け取ったのは、手のひらサイズの箱。

(何が入っているんだろう?)

ドキドキしながら箱を開けると‥

サトコ

「わぁ‥可愛い!」

箱の中から、花をかたどったキャンドルが出てきた。

花弁の一枚一枚が精巧に作られている。

サトコ

「‥あれ?」

キャンドルの端に、『Dear サトコ』と書かれていた。

(この文字、見覚えがある‥)

サトコ

「あの、石神さん。これって‥」

石神

俺の手作りだ

サトコ

「やっぱり!」

石神さんが頑張って作っているところを想像するだけで、頬が緩む。

石神

キャンドルには、願いを込めて火を消すと

その願いが叶う、という欧米のジンクスがあるそうだ

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サトコ

「それじゃあ、火を点けて一緒に消しませんか?」

石神

ああ

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電気を消して、キャンドルに火を点ける。

私たちは手を重ねて、キャンドルを一緒に持った。

サトコ

「それじゃあ、せーので消しましょう」

「いきますよ‥せーのっ」

(ずっとこうして、ふたりでいられますように)

願いを込めて、キャンドルに息を吹きかける。

火が消えると、辺りは再び暗闇に支配された。

(願い、きっと叶うよね)

幸せで胸がいっぱいになりながら、ふとあることに気付く。

石神さんは私の望み通りのクリスマスを準備してくれ、もてなしてくれていた。

(すごく嬉しいけど‥もてなされてばかりで、申し訳ないな)

サトコ

「石神さん、今日はありがとうございました」

「次は私がおもてなししますね」

石神

お前はそのままでいい

石神さんはキャンドルをテーブルに置くと、暗闇の中私に向き直る。

窓の外のキャンドルは燃え尽きたのか、ひとつ、またひとつと消えていく。

サトコ

「でも‥私も、石神さんのために何かしたいんです」

石神

サトコの気持ちは嬉しいが‥俺のためばかり考えすぎだ

今日は‥お前のために何かしてやりたいと、ずっと思っていた

石神さんは、私の頬に手を添える。

石神

いつも我慢をさせているのに、サトコは我儘を言わないからな

‥お前の願いを、叶えてやりたかったんだ

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サトコ

「ん‥」

唇に、小さなキスが落とされる。

石神

俺にとって、サトコの笑顔が1番嬉しいからな

サトコ

「っ‥」

(私と同じように、石神さんもそう思ってくれていたのに‥)

(私、石神さんのためって言って‥ずっと自分の事ばかり考えてたんだ)

自分の願いが石神さんにとっても、大切‥‥

そんな当たり前のことが、見えていなかった。

<選択してください>

A: 石神さんも我儘言ってくださいね

サトコ

「石神さんも我儘言ってくださいね。私ばかりじゃ不公平です」

「私だって、たまには石神さんからも甘えて欲しいですから」

石神

そうか‥

石神さんは少し考える様子を見せて、私の腰に腕を回す。

そして‥

サトコ

「んっ‥」

唇が重なり合った。

石神さんの熱が口内で溶け合い、絡め取られるように深いキスを繰り返す。

サトコ

「石神、さん‥」

石神さんが満足するまでそれは続き、唇が離れると、ふたつの熱い吐息が漏れた。

B: これからはたくさん我儘を言います

サトコ

「これからはたくさん我儘を言います」

石神

なんなら、今言ってくれても構わないが?

サトコ

「えっ、今‥ですか?」

石神

ああ。我儘でもしてほしいことでも、なんでもいい

サトコ

「してほしいこと‥」

(石神さんからしてほしいことは‥)

石神

何か思いついたか?

サトコ

「え、えっと‥」

(口にするのは恥ずかしいけど‥)

私は思い切って、口火を切る。

サトコ

「キス‥してほしいです」

石神

それだけでいいのか?

サトコ

「っ、石神さん意地悪です」

石神

お前の口から聞きたいんだ

鼓動が早鐘を打つのを感じながら、おずおずと言葉にする。

サトコ

「たくさん‥愛してほしいです」

石神

‥分かった

石神さんは私の腰に腕を回し、抱き寄せる。

C: これからは気を付けますね

サトコ

「これからは気を付けますね」

石神

ああ。お前の願いは、なるべく叶えられるように努力する

サトコ

「ふふっ、私って幸せ者ですね」

「こうして石神さんと一緒にいられるだけで満足なのに、こんなによくしてもらえて」

石神

本当に満足なのか?

サトコ

「え‥?」

石神さんは私の耳元に唇を寄せて囁く。

石神

俺と一緒にいるだけで、本当に満足なのか?

サトコ

「っ‥」

チュッと音を立てて、耳にキスが落とされた。

サトコ

「い、石神さ‥」

石神

嫌か?

サトコ

「い、嫌じゃないです!」

「けど、恥ずかしくて‥」

石神

‥恥ずかしがるお前も、可愛いな

誘われるような声音に、心臓が高鳴る。

石神さんは私の腰を引き寄せると、額にキスを落とした。

密着した身体から、石神さんの温もりが伝わってくる。

少しだけ緊張しているのが分かったのか、石神さんは私の頬を撫でた。

サトコ

「今日の石神さん、なんだか強引です」

石神

‥誰がそうさせてるんだろうな

吐息が肌にかかり、熱を持った。

視界の端で、最後のキャンドルが明かりを消す。

石神

サトコ‥

私たちは見つめ合い、どちらからともなくキスをした。

唇が重なり合った瞬間、想いが繋がったような気がして‥これ以上にない幸福で満たされる。

私たちは愛を囁き合いながら、お互いの熱を深く求め合った。


【寝室】

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サトコ

「う‥ん‥‥」

瞼を開けると、目の前に石神さんの寝顔があった。

(私って幸せ者だな‥)

昨日のことを思い返すだけで、温かい気持ちが胸いっぱいに広がる。

サトコ

「あれ‥?」

ふと枕もとを見ると、手紙が置かれていた。

(これ、もしかして‥!)

丁寧に封を切って手紙を取り出すと、石神さんの几帳面な字が並んでいた。

石神

改めて手紙を書こうとすると、どう書けばいいのか迷うな

だが、以前サトコから手紙を貰って嬉しかったから‥こうして、筆を執った

(石神さんらしいな)

悩みながらも手紙を書いている姿を想像して、微笑を浮かべる。

石神

『お前と出会ってから、色々なことがあった

俺は他の奴に比べたら分かりづらくて、お前に不安を与えることもあるだろう

だが、お前を他の奴に渡すつもりはない

俺の人生にお前がいないことは、考えられないからだ

サトコ

「石神さん‥」

言葉のひとつひとつが、私の胸を打った。

未来を予感させる手紙に、目元が熱くなる。

(いつも石神さんが見守ってくれてるように‥)

(私も石神さんのことを守れるパートナーになろう)

そんな想いを込めて、眠る石神さんの唇にキスを贈る。

唇を離すと、石神さんがかすかに微笑んだように見えて‥

私の心は温かい幸せで満たされていったのだった。

Happy  End


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