【教官室】
千葉
「失礼します!」
「後藤教官、こちら、訓練生全員分の課題になります」
後藤
「ああ、ご苦労」
千葉
「ん?な、何ですかこれ‥!?」
課題の提出にきた千葉が突然、後藤の机の上を見て目を丸くした。
千葉
「こ、このおびただしい数の付箋は一体‥」
後藤
「ああ、これか。色々と予定を書きこんでいる」
後藤のデスクPCに貼られた大量の付箋。
向きもバラバラなら、そこに書かれた文字も謎の記号のようなものが並ぶ。
千葉
「予定って‥これで分かるんですか?」
後藤
「別に特に困ったことはないが」
千葉
「そ、そうなんですか‥すごいな」
後藤
「本当は石神さんや周さんのように手帳にまとめたいんですけどね‥」
驚きを隠せない千葉をよそに、後藤は颯馬に向かって呟く。
後藤
「何度か挑戦したことはあるんですが、ものぐさが祟って続いたためしがないんですよ」
颯馬
「向き不向きですよ」
後藤
「ですかね。とりあえず、この付箋スタイルが一番自分に合っているみたいです」
千葉
「いや‥これはある意味スゴイ能力かと‥」
「でも、颯馬教官の手帳というのも、すごく興味ありますね」
颯馬
「ご覧になられますか?」
千葉
「いいんですか!?」
千葉が身を乗り出すと、颯馬は目の前でスッと手帳を広げた。
千葉
「すごい‥字も配置も綺麗ですね‥無駄がない‥」
「非常に勉強になります」
黒澤
「印刷かと思うくらい文字の大きさも揃ってるし、記号も駆使されて簡潔に書かれてますね~」
いつの間にか黒澤も現れて首を突っ込んでいる。
千葉
「石神教官もこんな感じなんですか?」
颯馬
「彼は私よりさらに明確に暗号化しています」
千葉
「暗号化‥ですか?」
後藤
「機密情報を扱う公安としては、その辺りは慎重になるものだ」
颯馬
「石神さんが記すのは基本、数字と記号だけです」
後藤
「俺のこの付箋も、もちろん機密情報など書いていない」
千葉
「ですよね、こんな無防備に機密情報を晒すわけないですよね」
後藤
「無防備で悪かったな‥」
千葉
「あ、いや‥すみません!」
颯馬
「歩などは、オリジナルのプログラムで管理していますよ」
千葉
「自作ですか!」
颯馬
「流通している既存のアプリ等は信用していないのでしょう」
千葉
「因みに加賀教官は?」
颯馬
「彼はもっぱらデスクのカレンダーに書きこみですね」
そう言われ、千葉と一緒に加賀のデスクを覗く。
千葉
「本当だ。卓上カレンダーに直に書かれてますね」
「しかも殴り書き‥」
「スケジュール管理も皆それぞれ、性格によるというか‥」
「色々やり方があるんですね」
難波
「ま、全部覚えりゃいいだけの話だけどな」
千葉
「え?」
難波
「脳ミソひとつあれば事足りるだろ?」
ひょこっと現れて豪快な一言を残すと、難波はそのまま出て行った。
後藤
「‥室長は特殊だから、真似しない方がいい」
千葉
「は、はい‥」
難波の能力の底知れなさを感じ、あっけにとられる千葉だった‥
Happy End