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彼氏力チェック 東雲

お題:落ち込む彼女の慰め方

【グラウンド】

加賀
もっと早く走れねぇのか。クズ共
タイムを縮められなければ、どうなるか分かってんだろうな?

加賀教官の厳しい罵声を浴びせられながら、私たちはグラウンドを必死に走る。

(お···お腹が空きすぎて力が出ない···!)

加賀
おい、そこのクズ!もっとスピード上げろ

サトコ
「は、はい!」

(でも、こんなことぐらいでへこたれる訳には···!)

そう、私が無理して食事制限をしている理由は···

数日前の放課後ーー

黒澤
あれ···?サトコさん、なんか雰囲気変わりました?

加賀
肥えただけだろ

サトコ
「!?」

颯馬
加賀さん、女性にそれは言い過ぎですよ
黒澤がせっかくオブラートに包んでいたのに、台無しですよ

サトコ
「颯馬教官まで···」

東雲
······

【グラウンド】

(東雲教官に至ってはコメントすらしてくれなかったし···きっと呆れられてる)
(確かに、最近ウエスト周りもお肉がついたような自覚はあった···)
(こんな身体、教官に見せられないよ······!)

心の叫びとともに最後の力を振り絞り、私はなんとか完走することができた。

加賀
テメェ···ふざけてんのか?

走り終わり、グッタリしている私のところに鬼の形相をした加賀教官が歩いてくる。

サトコ
「な、なんの事でしょうか···?」

加賀
俺の授業であんなクソみてぇなタイム出しといて、許されるとでも思ってんのか?
罰として50周追加だ

サトコ
「ええっ!あ、あんまりです···!」

加賀
じゃあ遅くなっても仕方がない正当な理由でもあんのか···?
くだらねぇ理由だったら···わかってんだろうな?

サトコ
「ご、50周走ります!!」

(食事制限のせいだなんて、死んでも言えない···!)

深く突っ込まれる前に、私は加賀教官から逃げるようにしてグラウンドを走り出した。

【寮監室】

その夜。
急に呼び出しをくらい、私は今、東雲教官の前に正座をさせられていた。

東雲
呼ばれた理由、わかるよね?

サトコ
「······」

(もしかして···昼間の加賀教官の講義のこと···?)

東雲
わかってんじゃん

サトコ
「エ、エスパー!?」

東雲
最近、キミの体力が低下してるって色々な人から話を聞くんだけど···
まあ、どうせくだらないダイエットとかが原因なんじゃないの?

サトコ
「···!」

(バレてる···恥ずかしい···)

東雲
で、どんなダイエットをしてるの?

サトコ
「···食事制限をしました」

東雲
食事制限?

サトコ
「少量のサラダだけにして、一日一食にしてたんです」

東雲
はぁ?
ダイエットするのは勝手だけど、肝心な体力落としてどうすんの
前々からバカなことは知ってたけど、ここまでだったとはね···

サトコ
「すみません···」

ごもっともな教官の意見に、自分が情けなすぎて頭が上がらない。
大きなため息をついた教官は、立ち上がりどこかへ向かう。

(恥の上塗りをしてしまった···)
(もう、どんなお叱りでも真摯に受け止めよう···)

すると、しばらくして大きなお盆を持った教官が私の元に戻って来た。

東雲
野菜だけじゃ、タンパク質や脂質は補えない
それに、野菜だけだとリバウンドすることだってあるしね

そう言いながら教官は、私の前に美味しそうな料理を並べる。

サトコ
「あの···この料理って」

東雲
カロリー計算してあるから、ぜんぶ食べても大丈夫

サトコ
「もしかして、教官が作ってくれたんですか···?」

東雲
まあね

教官が作ってくれた料理は、本当にダイエットになるのかと疑うぐらいに美味しそうで豪勢だ。

東雲
このハンバーグは、豆腐とおからを使ってて、こっちはササミだから脂肪分も少ない
夜だからお米は少ないけど、他のおかずがあれば大丈夫でしょ

サトコ
「教官···」

私のためにダイエットメニューを作ってくれた教官に、涙が溢れそうになる。

サトコ
「私、すごい浅はかでした···ごめんなさい」

東雲
本当にね
ダイエットするのはキミの自由だけど
別に、見た目でキミのことを選んだわけじゃない
キミはそのままで···

さっきまで呆れた顔をしていた教官が、今は優しい顔を見せる。
グッと堪えたはずなのに、また私の目頭が熱くなる。

サトコ
「では、早速···いただきます!」

一口食べると、想像以上の美味しさにもう箸が止まらない。

サトコ
「美味しい···美味しい···!」

東雲
まったく···今までどんだけひもじい食生活してたの

サトコ
「教官を心配させないためにも···ダイエットは今日で止めます!」

東雲
···キミさあ···

教官は睨みながら私の脇腹をきゅっとつまむ。

サトコ
「ひゃっ!くすぐったいです、教官···」

東雲
前言撤回、太っていいとは誰も言ってないし

サトコ
「えっ!?」

東雲
じゃあ、これ食べたら50Km走りに行こうか

サトコ
「へ!?」

調子に乗りすぎた私は、一晩中教官の愛のムチに翻弄され続けたのであった。

Happy  End

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