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彼氏力チェック 難波

お題:落ち込む彼女の慰め方

【個別教官室】
東雲
それで?なんでオレが頼んでないモノがここにあるわけ?
キミって買い物もまともにできないの?時間もかかり過ぎだし

サトコ
「すみません。もう一度買いに行ってきます!」

東雲
はぁ···もういい
キミを待ってたら何時になるのか分からないし

東雲教官の呆れたため息を背に、私は教官室から出た。

【廊下】

(店員さんにちゃんと聞いて選べばよかった···)
(買いに行く前にだって、東雲教官に確認できたはずだよね)

意気消沈して教官室を出ると、出会い頭に誰かとぶつかってしまった。

???
「···おっと」

サトコ
「す、すみません!」

難波
サトコ

サトコ
「室長···!」

難波
なんか暗い顔だが、大丈夫か?

サトコ
「···!」

(私、顔に出ちゃってたんだ···!まずい···)

サトコ
「だ、大丈夫です···!ちょっとぼーっとしてただけですから···」
「失礼します···」

難波
······

【階段】

数日前、東雲教官の補佐官が体調を崩してしまい、
私が代理を務めるよう後藤教官から言われた。

(慣れない事ばかりだけど、東雲教官にも室長にも迷惑かけないようにしっかりしなきゃ‥)

とぼとぼ寮に向かっていると、ポケットの中のスマホが震える。

サトコ
「室長···?」

スマホの画面には、室長からのLIDEが届いたことを知らせる表示。

サトコ

「『終わったらまっすぐ家に寄るように』···?」

【難波 マンション】

室長のマンションに着き、心を弾ませながらインターホンを押す。
しかし、なかなかスピーカーから室長の声が聞こえてこない。

難波
···ああ!やっちまった···!!

サトコ
「え!?し、室長!?」

難波
待たせてすまん。鍵開いてるから、入って来てくれ

サトコ
「わかりました!」

(ど、どうしたんだろう?何があったのかな···?)

【キッチン】

サトコ
「お邪魔します···」

(なんか、美味しそうな匂いのような焦げ臭いような···)

難波
お疲れさん

笑顔で迎える室長の手には、焦げたフライパンが握られていた。

サトコ
「室長、それどうしたんですか!?」

難波
ああ、コレか?
ちょっと失敗しちまって···慣れない事はするもんじゃないな

恥ずかしいのか、室長は頬をポリポリと掻きながら苦笑いする。

難波
ちょうどできたとこだ、入れ

【リビング】

リビングの机には、できたての美味しそうな料理が所狭しと並んでいた。

サトコ
「すごい···これ全部室長が!?」
「美味しそう!」

難波
なんだか茶色ばっかになっちまったな

最後の一品を手に、室長は笑いながら私の元へとやって来る。

サトコ
「でも、どうしたんですか?室長が料理なんて···」

難波
なんとなくな。洒落たもんは作れねぇが、間違いなく美味い
冷めるから、早く食え食え

サトコ
「室長···ありがとうごさいます!」

難波
ああ。いっぱいあるから、おかわりしろよ

サトコ
「はい!いただきます」

私のために作ってくれた優しさが嬉しくて、口いっぱいに室長の手料理を頬張る。

難波
どうだ···?しょっぱくないか?

サトコ
「はい!おいひいです!」

難波
ハハハ、そうか

室長の料理が本当に美味しくて、思わず笑みがこぼれてしまう。

難波
ひよっこ···

すると、スッと伸びた室長の手が私の口元に触れ、拭きとってくれる。

難波
コレ食って、明日から頑張れよ

自分の親指に付いたタレを、チュッと舐めとり室長は優しく微笑んだ。

サトコ
「し、室長···!」

【キッチン】

食べ終わった食器を流しへ運ぶと、
キッチンの隅に小さな紙切れが目に入った。

サトコ
「これ···」

メモには “おばちゃん直伝レシピ” と書かれている。
私の頭には、すぐに室長と仲良しの巣鴨のおばちゃんたちが浮かぶ。

(もしかして、元気づけようとしてくれたのかな···?)

難波
おい、洗い物は置いとけ···

サトコ
「ふふ」

難波
??なんだ?

サトコ
「いえ‥なんでもないです」

きっとおばちゃんに作ったこともないレシピを聞いて、頑張ってくれたのだろうと頬が緩む。
室長なりの優しさに、いつの間にか今日の疲れも吹き飛んで行ったのだった。

Happy  End

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