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誘惑ランジェリー 難波1話



【難波マンション 寝室】

サトコ
「なんか久しぶりですね。こんな風にゆっくり過ごすの」

難波
そうだな

忙しい毎日が続いて、ようやく休みが合ったその日。
私は室長の腕の中で穏やかな夜を過ごしていた。

サトコ
「やっぱり、ここが一番落ち着くな···」

呟く私の頭を、室長が愛しげに撫でてくれる。

難波
悪いな、なかなか休めなくて

サトコ
「しょうがないですよ。犯罪は待ってくれませんから」

難波
でももうすぐ、ひと段落しそうなんだ
今度まとまった休みが取れたら、旅行でもするか···

サトコ
「嬉しい···!」

難波
どこがいい?

サトコ
「そうですね···ちょっとおしゃれで、でも温泉もあって···」

難波
欲張りだな

サトコ
「だって、滅多にないチャンスなんですよ?」

難波
じゃあ、神戸なんかどうだ?

サトコ
「それ、ピッタリかもですね!」


【新幹線】

数週間後。

私たちは約束通り、神戸に向かう新幹線の中にいた。

(楽しみだな···着替えとかもあれこれ悩み過ぎて、結構な大荷物になっちゃったけど···)

室長の小荷物と比べると、私のはしゃぎようが目に見えるようで恥ずかしい。

(でもしょうがないんだよね。女の子は色々と必要なものが多いんだから···ん?)

何気なくカバンの中を見て、ハッとなった。

(下着ポーチが、入ってない!?)


【レストラン】

室長が夕食の場所に選んでくれたのは、
神戸港傍のショッピングモールに入っているレストランだった。

サトコ
「イルミネーション、キレイですね~」

難波
だろ?ここ、夜景がキレイなレストランだって評判らしいぞ

サトコ
「へえ···」

(室長、色々と事前リサーチしてくれたんだな)
(ここならショッピングエリアに下着店もありそうだし、よかった···)
(食事を終えたら、タイミングを見てひとりで買いに行こう···!)

【ショッピングモール】

サトコ
「室長、そろそろタバコ吸いたいんじゃありません?」

レストランを出るなりそう言うと、室長はちょっと苦笑した。

難波
いいよ、そんな気ぃ遣わなくて

サトコ
「室長こそ、一緒にいる時はあんまり喫煙所に籠らないようにしてくれてますよね?」

難波
それは、まあ···

サトコ
「私、お土産買ってきますから。その間、よかったら吸ってきてください」

難波
そ、そうか···?
お前がそこまで言うなら···

室長とは30分後の待ち合わせを約束し、私は下着店へと急いだ。

【ランジェリーショップ】

サトコ
「うーん、どれがいいだろう?」

時間制限がある上に、今夜室長に見られる可能性を考えると、
気持ちばかり焦ってなかなか商品を決められない。
それでもなんとか、いつも通りのシンプルでかわいい系と、
室長が好きそうな大人系の2種類に絞り込んだ。

(いつも通りの方が私は落ち着くけど、どうせ今日買うなら室長の好みを優先すべき?)

決められないままにふと店の外を見ると、向かいの本屋さんに室長の姿がある。
慌てて時計を見ると、約束の時間までもう5分もないようだ。

(こうなったら···!)

【ショッピングモール】

サトコ
「室長、ちょっと来てもらってもいいですか?」

難波
ん?

室長は私に手を引かれるまま、本屋さんから出てきた。

難波
どうした?切羽詰まった顔して

サトコ
「どうにも決められなくて···」

難波
そんなに重要な土産なのか···?

サトコ
「い、いえ、お土産ではなく···私の、下着···です···」

難波

サトコ
「忘れちゃったので買いたいんですけど、どれがいいか、室長が決めてくれませんか···?」

恥ずかしさに頬を赤らめる私を見て、室長はフッと笑った。

難波
しょうがないな。どこだ?


【ランジェリーショップ】

サトコ
「一応、この2種類のどちらかという所までは絞ったんですけど···」

室長は候補の下着をチラリと一瞥して、大人っぽい方を指差した。

難波
こっちだな

サトコ
「じゃあ、こっちにします」

難波
すみません

室長は店員さんを呼ぶと、クレジットカードを差し出した。

難波
これでお願いします

サトコ
「そんな、いいです!自分で買いますから」

難波
いいって、たまにはプレゼントだ
俺、先出てるから、カード受け取っといてくれ

サトコ
「あ···はい」

(プレゼントしてもらっちゃった···)
(でもやっぱり、室長の好みは間違いじゃなかったみたい)

【旅館 温泉】

旅館に着くと、私たちは早速お風呂に入ることにした。

難波
貸切りだし、一緒に入るよな?

サトコ
「え、ええ···」

(初めてってわけじゃないけど、やっぱりこういうシチュエーションは緊張するな···)

先に湯船に入り、なんとなく背を向けて室長を待つ。

ちゃぽん······

室長が入ってきた気配がして、鼓動が早まった。

難波
おお、やっぱり温泉は気持ちいいな~
この白濁具合、堪らんねぇ

サトコ
「そ、そうですね···」

ゆっくりと向き直ると、思いのほか近くに室長の身体があった。

一糸まとわぬ姿が急に心細くなって、思わず立てた膝をしっかりと抱きしめる。

難波
そうか···今から思えば、下着を買わせないという選択肢もあったな

サトコ
「ちょ、室長!な、な、なんてことを···っ!」

難波
なーんてな、冗談だよ

サトコ
「もう···!」

難波
でも下着屋に入ったのなんて人生初だぞ
どこ見たらいいか分からなくて困るな、ああいう所は

サトコ
「そうですよね···すみません。恥ずかしい思いさせて」
「その上、プレゼントまでしてもらっちゃって···ありがとうございました」

難波
いいよ、礼なんて
でもあのデザインは、ひよっこにはまだちょっと早かったかもな~

室長は私の下着姿を想像するように目を瞑ってから、おかしそうにちょっと笑った。

サトコ
「な、なんですか、それ···!」

(ひどい!私もそのこと、実は気にしてたのに···)
(しかも今、想像したよね?想像した上で、笑ったよね?)

難波
ウソ、ウソ···きっと似合うよ

サトコ
「もういいです。先に出ますので、ごゆっくりどうぞ」

難波
ちょっと待てって···
あ、もしかして、先に出て俺に下着姿を見せる準備か?

サトコ
「ち、違いますから!もう、室長なんか知りませんっ」

冷やかす室長に、大してつかめもしないお湯を投げつけて、私は先に風呂場を後にした。


【脱衣所】

(もう···室長ったら、私のことからかって···!)
(私だってこう見えて、結構似合うかもしれないんだから···)

室長をアッと言わせてやろうと、意気込んで下着を身に着けた。
室長が選んだのは、全体が透け感のあるレースで包まれていて、
谷間の存在感を強調した紺の下着だ。

(ダ、ダメだ···全然似合ってない···)
(室長の好みに合わせてこれを候補に入れたのは私だけど···)
(この姿を見られるのはさすがに、ちょっと···)

私は慌てて浴衣で下着姿を隠すと、室長が出てくる前に急いで部屋に戻った。

【部屋】

部屋には、もうすでに布団の準備ができていた。
ぴったり二組の布団がくっついて並んでいる。

(こうなったら、先に寝ちゃうのが一番だよね)
(そして明日は、先に起きて素早く着替える!)

浴衣姿で布団にもぐり、ギュッと目を瞑る。

スー、パタン······

襖の開く音がして、人の気配が近づいてきた。

(室長だ···!)

うっすらと目を開けると、私の枕元で、室長があぐらをかいているのが見えた。

(寝たふり、寝たふり···)

難波
サトコ?

サトコ
「······」

難波
···悪かったよ。さっきはからかいすぎた

サトコ
「······」

あくまでの寝たふりを続ける私の頭に、そっと手が触れる。
その手はそのまま、優しく私の髪を梳いた。

難波
見せてくれねぇかな···さっき買ったヤツ···

室長のねだるような口調に、私はついチラリと目を開けた。
じっと見つめていた室長と、視線が絡む。

サトコ
「!」

難波
······

室長は目だけで笑うと、それ以上何も言わずに私の布団に入ってきた。
そしてギュッと、私の身体を抱きしめる。

難波
許してくれるよな?

サトコ
「······」

素直に謝ってくる室長を前に、
いつまでも意地を張っている自分が妙に子どもっぽく思えてしまう。

サトコ
「私も、あんなことでムキになり過ぎました」
「あまりに自信なさ過ぎて···ごめんなさい」

難波
大丈夫だって···ちゃんとお前に似合うと思って選んだんだから

室長は耳元で優しく言うと、私の身体を起き上がらせた。

電気を消し、シュッと帯の結び目を解く。

(どうしよう···また笑われたら本気でへこむ···)

室長の手が肩を滑り、それと同時に、私の肩から浴衣が滑り落ちた。
室長は黙ったまま、いつまでも私の身体を見つめている。

難波
······

サトコ
「あの···大丈夫ですか?私···」

難波
······

室長は無言のまま、下着のヒモをゆっくりとなぞった。

難波
こっち見て

サトコ
「······」

恥ずかしさに抗い、顔を上げて室長を見る。
でも鏡に映った自分の姿を思い出し、再び顔を伏せた。

難波
この下着···俺のためなんだろ?

サトコ
「そ、それは···」

難波
サトコの好みは、もう一つの方だもんな

サトコ
「······」

無言でただ頷くと、室長の手が私の髪をかき上げた。
無防備になった額に、室長のキスが落ちてくる。

難波
···嬉しいよ

サトコ
「室長···」

難波
そんな顔するなって
そうやって自信なさげにするから、似合わない気がするんだよ
もっとちゃんと、俺を信じろ

サトコ
「······」

室長の言葉に、凝り固まっていた不安が徐々に解きほぐされていくのが分かった。

(そうだよね···室長が、自分の好みだけで選ぶわけないんだから)
(それに今はこの下着にピッタリしなくても、いつか、きっと···)
(室長の隣で、少しずつでも女として成長していけたら···)

私の想いを導くように、室長はそっと下着のホックに手を掛けた。
温泉上がりの室長の肌は、いつもにも増して熱を帯びている。
その熱に浮かされるように、私は夢中で室長の身体を抱きしめた。

難波
今ならきっと、すげぇ似合うぞ
あの下着···

室長に耳元でささやかれ、一瞬で顔が赤くなる。

(恥ずかしいけど、ちょっと嬉しいかも···)

どんどん室長の色に染まっていく喜びに包まれて。
今夜もまた一歩、私は大人への階段に足を掛けた。

Happy  End



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