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加賀兵吾の再調教 カレ目線



【応接室】

パーティーでサトコを拉致した後、首尾よく檻の中へ監禁した。
目を覚ましたサトコは戸惑う様子を見せたが、あえて目を合わせていない。

(あいつのことだから、俺に考えがあることは理解してる)
(問題は、どうやってこの状況をあいつに伝えるか、だが···)

組織幹部
「いやあ、ずいぶんと手際がよかったな。見事だったよ」
「これで、先方の機嫌を損ねずに済む!助かった」

人権団体とは名ばかりで、その裏では人身売買を行っている組織だと分かった。
最初に追っていた工作員とは別件だが、一気に摘発するチャンスを逃す理由はない。

(一般客から “商品” を見繕うと聞いて、咄嗟にサトコを囮に使うことにしたが)
(工作員は、十中八九あの看守···)

それを、なんとかしてサトコに伝える必要がある。
手に入れた手帳に書かれた暗号を解読する乱数表は、看守が持っているに違いない。

(ハニートラップでも仕掛けて、乱数表を奪わせるか···)
(指示さえあれば、あいつならできる···が)

看守のことを伝える術が、今はない。
主催者が出て行ったあと、部下たちがサトコの話をしているのを耳にした。

部下1
「あの女、ここ最近の “商品” にしては上玉じゃねぇか」

部下2
「向こうに渡す前に味見しても、バチは当たらねぇだろ」

加賀
······

睨みをきかせると、部下たちが慌てた様子で首を振った。

部下1
「じょ、冗談ですよ。もちろん、商品に手を出すなんてことはしませんけどね」

部下2
「でもほら、おこぼれをもらうくらいは」

加賀
くだらねぇこと言ってねぇで、さっさと持ち場に戻れ

舌打ちすると、部下たちが逃げるように応接室を後にする。

(···冗談じゃねぇ)
(他の男になんざ、触られてたまるか)



【牢屋】

サトコに状況を伝える方法がないまま、話す機会がやってきた。
こちらの様子を窺いながら、なんとかして俺の考えを探ろうとしてるのがわかる。

(あからさまなことはできねぇ···だが、次に接触できるのは富豪が来た時だ)

それでは遅いし、サトコが動くとしたら早い方がいい。
檻の中へ入ると、サトコの顎を持ち上げて部下たちの前でキスをする。

サトコ
「っ·········!」

なんの感情も込めないキスを、サトコが拒絶した。
舌を噛まれ、口の中に血の味が広がる。

サトコ
「何っ···」

加賀
···いい目してんじゃねぇか

(テメェじゃなきゃ、こんな無茶は任せねぇ)
(指示がなくても俺の思惑通りに動けるのは、テメェだけだ)

横目で確認すると、看守が心配そうにサトコを見ている。
女が少ない環境で情でも移ったのかもしれないが、今は好都合だ。

加賀
看守といい、男をたぶらかすのが特技か

サトコ
「······っ」

加賀
あと数日、自由を楽しみやがれ

傷ついた顔をしたあと、サトコがその場に崩れた。

(···今のじゃ、伝わってねぇだろうな)
(だが、“看守” というキーワードはあいつの頭に残ったはずだ)

相変わらず、博打のような作戦だ。
サトコがこれに気付かなければ終わりだし、それよりも先に富豪の手に渡る可能性もある。

(だが、そうはさせねぇ)
(···それに、俺の犬なら気付くだろ)

サトコを気にしてなかなか立ち去ろうとしない部下を促して、その場を後にする。

(俺のもんに手を出そうなんざ、千年早ぇ)
(あいつは、テメェらが手に負えるような女じゃねぇ)

サトコの視線を感じながら、地下を出た。


【応接室】

富豪にサトコを紹介した後、あいつの胸元からネックレスが落ちる。
踏みつけてサトコを止めたあと、あいつは涙を堪えながら檻へと戻って行った。

部下
「邪魔くせぇな。捨てちまいますか」

部下が、ネックレスを拾い上げようとする。

加賀
いい、俺が始末しておく

先にそれを拾い上げて、ジャケットのポケットに入れた。

サトコ
『あ···!』

加賀
商品が、勝手な行動してんじゃねぇ

加賀
·········

傷ついたサトコの目が、忘れられない。
ポケットの中で、無意識のうちにネックレスを握りしめた。


【加賀マンション】

工作員と人身売買、両方の事件をまとめて解決した夜。
サトコは念のため、ひと晩検査入院となった。

(ずいぶんヤワな身体じゃねぇか)
(点滴2、3本打ってもらって、さっさと戻って来い)

ネックレスをテーブルに置き、壊れたチェーンをつなげようと四苦八苦する。
細かい作業に苛立ちが募り、何度も投げ出そうとその場を離れた。

加賀
·········

飲み物を飲みながらも、浮かんでくるのは涙を堪えたサトコの顔だ。

加賀
···チッ

舌打ちして作業に戻る。

(こんなもん、また買えばいいだけのことだ)
(だが···あいつはそれじゃ、喜ばねぇんだろ)

投げ出す気になれず、ようやく直った頃には、夜が明けていた。


【寝室】

直したネックレスを首に掛けようとした瞬間、サトコがびくりと震えた。
どうやら、あのときの首輪の恐怖が消えないらしい。

(···普通はそうだろうな)

今まで、こっちがどんなに突き放しても食らいついてきた。
だからというわけではないが、知らずのうちに、こいつの “無償の想い” を信じていた。

(さすがに、女なら逃げ出したくもなる)
(···そろそろ、愛想が尽きたか)

今までもこれからも、仕事のためならどんな選択でもする。
自分の女にトラウマを抱えさせることだって、厭わない。

(それに、いいも悪いもねぇ。そういう仕事だ)
(今まで、そう割り切ってきた···)

それなのに、そんな自分に嫌気がさしているのも事実だ。
すると、俺の顔を覗き込みながらサトコが腕の中に入ってきた。

サトコ
「···私、加賀さんを信じてよかったです」
「ちょっと不安になったりもしたけど、きっと加賀さんには何か考えがあると思ったから」

あんな目にあったのに、サトコは笑顔を見せた。
おそらく、俺が気にしないようにと思っているのだろう。

(首に触られそうになっただけでビビるほど、怖がってたくせに)
(何が『よかった』だ···テメェはどこまで、俺についてくる···?)

そう思うのに、ホッとしている自分がいる。
唇でサトコの柔らかい肌をなぞりながら、じっくりとその反応を見ていた。

(···初めて会った時から、こいつは何も変わらねぇ)
(俺が教えた通りに反応して、俺が触れた時だけ、よさそうな声を出す···)

加賀
·········
···おい

手を止めると、サトコが潤んだ目を開けた。

サトコ
「はい···?」

加賀
テメェ···痩せたか

サトコ
「えっ」

加賀
あんだけ、柔らかさをキープしとけって言っただろうが

サトコ
「いや、だって···今回の潜入捜査は過酷だったから」
「檻の中の食事、豆のスープとパンだけだったんですよ···!」

加賀
知るか

言いつけを守れなかった仕置きに、サトコの好きなところを焦らすように攻める。
もどかしそうに身をよじり、サトコが吐息を熱くした。

サトコ
「ーーーぁっ···か、加賀、さっ」

加賀
黙ってろ

サトコ
「っ······」
「---っ···」

加賀
声我慢してんじゃねぇ

サトコ
「だって、黙ってろって···!」

口ごたえできないように、サトコの手を掴んでベッドに押し倒した。
頬を染めてとろけ始めているサトコの全身に、キスを落とす。

加賀
あの看守に、どこ触られた

サトコ
「えっ···」

加賀
ハニートラップ仕掛けたんだろ
触られたところ、全部吐け

サトコ
「ま、待って···あれは、仕事で」
「それに、そういう指示をしたの、加賀さんじゃないですか···!」

加賀
喚くな

確かにその通りだが、それとこれとは話が別だ。

(指示通りやったのは褒めてやる)
(だが、放っておくとは言ってねぇ)

加賀
消毒してやる

サトコ
「ひ、ぁっ···」

唇をなぞると、サトコが腰を震わせる。

サトコ
「そんなところっ···さ、触られてな···」

加賀
黙れ

サトコ
「ほ、本当です···!触られる前に、捻り上げ···」
「っーーー······!」

いい反応を見せるサトコを、さらに追い詰める。
合間にキスをしてやると、至近距離で目が合ったサトコが、潤んだ目でつぶやいた。

サトコ
「好き···」

加賀
······

サトコ
「加賀さん···好き···大好き···」
「何があっても···どんなに厳しくても···」

ついさっきまで重苦しかった気持ちは、いとも簡単に晴れていた。

(···駄犬のくせに、やりやがるじゃねぇか)

満たされていくのは、こいつだからだ。
何度も唇を重ねて、初めて抱いた時のように、イチから教え込んでやった。


【道】

数日後、この間の事件の褒美に外へ連れ出してやった。

サトコ
「どこに行きましょう?この前売り切れだった羽二重餅を買いに行きましょうか」

加賀
ああ···

はしゃぐサトコと一緒に歩いていると、犬を連れた男とすれ違った。
一度だけ振り返り、サトコが自分の首をさする。

サトコ
「·········」

加賀
なんだ

サトコ
「いえ···加賀さんに首輪の鎖を引っ張られたのを思い出して」
「加賀さんのことは信じてましたけど、迫力がすごすぎて混乱しましたよ」

加賀
······

サトコの苦笑いを見ながら、思い出すのはあのときのことだ。

【牢屋】

サトコ
『や、やめ···』

加賀
喚くんじゃねぇ

鎖を引っ張ったとき、確かにサトコの顔は強張っていた。
気丈に振る舞ってはいたが、混乱と恐怖で、目には涙が滲んでいた。

加賀
······

よろけて、こちらに倒れ込んでくるサトコ。
怯えるその姿を見て、ぞくりと背筋に何かがせり上がってくるのを感じた。

(···くだらねぇ)

自分の女をそんな目にあわせていることへの、罪悪感。
だがそれとはまた別の、抗えない感情に対する背徳感ーーー

【道】

あのときは、サトコに悟られないよう振る舞ったが、いまだにあの感覚は残っている。

(こいつが泣くのを堪える姿に、快感を覚えるなんざ···)

だが、そんなことをバカ正直に言えるはずもない。

サトコ
「あのとき、一瞬、加賀さんは本気で私を犬扱いしてるのかと思いましたよ」

加賀
···テメェが、ドMだからな

サトコ
「そうなんですよね···」
「え!?ち、違いますよ!?そういうことじゃなくて···!」

会話を誤魔化し、サトコの手を引いて散歩を続けるのだった。

Happy  End



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