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ボーイズトーク⑤ 東雲

「兵吾さんとしりとり」

【教官室】

東雲
はあ···

深夜の教官室に、何度目かのため息が響き渡った。
オレと兵吾さんが担当している捜査が難航して、徹夜での待機を余儀なくされたからだ。

(眠···限界···)
(仮眠···)

でも、近くのデスクで仕事をしている上司はしっかり起きている。
仮眠を取りたいのはやまやまだが、さすがに上司を差し置いては気が引けた。

(兵吾さんも寝てくれればいいのに···)
(あの人、体力オバケだからな···三日間くらい寝なくてもいつも通りだし)

東雲
はあ···

加賀
歩、うるせぇ

オレよりもさらに寝ていない兵吾さんは、すこぶる機嫌が悪い。
さっきから、近くにいなくてもそのイライラが伝わってくるようだ。

加賀
···きのこ

東雲
は?

オレを見ながら、兵吾さんがボソッとつぶやく。
意味が分からず問い返すと、兵吾さんの表情が険しくなった。

加賀
どう考えても、しりとりだろうが

東雲
いや、そんなのわかるわけないし···

加賀
いいから、さっさと続けろ

(しりとりって···)
(今、明らかにオレの頭見て言ったじゃん)

どうやら、兵吾さんなりの眠気対策らしい。

(めんど···)
(でも、そんなこと言ったらなおさら不機嫌になるな、あの人···)

“きのこ” に続く言葉を考えて、ぽつりと口にした。

東雲
湖畔

加賀
······

東雲
「 “こはん” 」

加賀
テメェ、ふざけんじゃねぇぞ

いきなり “ん” のつく言葉でしりとりを強制終了させたことに、兵吾さんが静かに怒る。
だから、わざと笑ってみせた。

東雲
負けを認めるんですか? “ん” から始まる言葉なんて、いくらでもありますよね
ンビラとか、ンドレ、とか

加賀
なんだそりゃ

東雲
「 “ンビラ” は楽器で、“ンドレ” はカメルーン料理です
他にも···

加賀
チッ···相変わらず、かわいげのねぇガキだ

舌打ちしながら、兵吾さんがタバコを持って立ち上がる。
どうやら、眠気覚ましにタバコ休憩に行くらしい。

(はあ···やっとひとりになれた)
(まあ、あの人のことだから、オレが限界だってわかってたんだろうけど)

だからあえて、退室したのだろう。
それでもようやく、ずっと願っていた仮眠の時間が訪れたことには違いない。

(それにしてもあの人、よく寝ないでいられるよ···)
(すごいとは思うけど、真似したくはない)

デスクに突っ伏して、目を閉じる。
兵吾さんが戻ってくる束の間の時間、眠りに身を委ねた。

Happy  End

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