「颯馬VS黒の刺客」
【教官室】
颯馬と東雲のふたりが、教官室で仕事をしていたある日。
バタバタと廊下を走ってくる音が聞こえて、東雲がため息をついた。
東雲
「またうるさいのが来た···」
颯馬
「フフ、足音を聞いただけで誰なのかわかりますね」
黒澤
「歩さーん、周介さん、ここにいるのはわかっ···」
東雲
「透、うるさい」
黒澤
「そんな、かぶせ気味に!」
颯馬
「黒澤は本当にここが好きですね」
東雲
「すっごい迷惑なんだけど」
黒澤
「好きなのは教官室じゃなくて、歩さんとか周介さんとか後藤さんとかですよ!」
東雲
「キモ」
黒澤
「あと、石神さんとか難波さんも」
東雲
「兵吾さんは違うんだ」
黒澤
「あ!た、たまたま言い忘れてただけで···!」
颯馬
「まあ、黒澤はしょっちゅう加賀さんから喝を入れられてますからね」
黒澤
「あれは、喝ってレベルじゃないですよ···ヤキです···もしくは制裁、しごき···」
「それはそれとして、聞いてくださいよ。さっき、ここに来る前に···」
そのとき、3人の視界の片隅で何かがうごめく気配があった。
素早くそちらを振り向いた全員が、そこに現れた姿に固まる。
黒澤
「ゴッ···」
東雲
「言うなよ。おぞましい」
黒澤
「うわあ、最悪···こんなところで目撃するなんて」
東雲
「家に出たらもっと嫌だけどね」
黒澤
「はあ···びっくりしすぎて一瞬硬直しましたよ」
「とりあえず、どうします?なんとかしないと···」
颯馬
「失礼」
ふたりが話している間に、颯馬が窓を開けた。
近くにあった新聞紙を掴んで丸めると、“奴” が飛び立とうとする前にさっと薙ぎ払う。
東雲
「えっ、なに今の、剣道の素振り?」
黒澤
「速すぎて見えなかった···」
「あ! “奴” はどこに行ったんですか!?」
颯馬
「窓から逃がしましたよ」
「後処理するのも嫌ですからね」
あまりにも素早い動きとスマートな行動に、東雲と黒澤が呆然となる。
颯馬
「おや···驚かせてしまいましたね」
「すみません、手が勝手に動いてしまって。美しくないものは見ているのも嫌なんです」
黒澤
「周介さん···!かっこよすぎません!?」
「男のオレでも惚れそうなんですけど!ねえ、歩さん!」
東雲
「···ヤバい」
颯馬
「······」
黒澤だけでなく、あろうことか東雲まで羨望の眼差しで自分を見ている。
そのことに気付いた颯馬は、深いため息をついた。
颯馬
「私は、男には興味ありません」
黒澤
「そう言わず!周介さん、抱いて!」
颯馬
「迷惑です」
黒澤
「周介さんになら抱かれてもいい!ねえ歩さん、そう思いません!?」
東雲
「キモ···」
黒澤
「えーっ、さっきまで歩さんだって頬染めてたじゃないですか!」
東雲
「ウザ···」
黒澤
「歩さん!単語以外も喋って!」
颯馬
「ふたりは相変わらず仲が良いですね」
今日も平和な教官室だった。
Happy End