カテゴリー

刑事が浴衣に着替えたら 加賀

【お祭り会場】

加賀さんと夏祭りを回る約束した夜。
以前、加賀さんにプレゼントしてもらったかんざしを髪につけてきた。

サトコ
「これ···」

加賀
さっき見てただろ

サトコ
「え!?あのかんざし、買ってきてくれたんですか···?」

加賀
たまには飼い犬に褒美もやらねぇとな

(懐かしいな···これもらったの、結構前だよね)
(加賀さんと付き合ったばかりの頃、私が欲しいと思ってたことに気付いてくれて)

加賀
気色悪ぃ

サトコ
「ぎゃっ」

背後から声をかけられて、飛び上がるほど驚いた。
後ろに、いつの間にか加賀さんが眉をひそめて立っている。

サトコ
「な、なんで怒ってるんですか···?」

加賀
テメェがひとりでニヤニヤ笑って、気味が悪ぃからだ

サトコ
「笑顔を『気味が悪い』って言われたの、初めてです···」

がっくりと肩を落としながらも、加賀さんの言葉を待つ。
でもいくら待っても、加賀さんはかんざしに気付いてくれた様子はない。

(はぁ···いや、そうだよね。加賀さんが私の外見なんて気にしてくれるはずがない···)
(浴衣着てきたけど、その感想すらないし)

加賀
早くしろ

サトコ
「はい···」

加賀
テメェが花火見てぇって言ったんだろうが

サトコ
「あ、そうでした!今日の花火大会はかなり大規模らしいですよ」

花火のことを思い出して、沈みかけた気持ちが浮上する。
加賀さんと一緒に、花火がよく見えるところへと移動した。

【花火大会会場】

花火大会会場では次々に見事な花火が打ち上がり、歓声を上げて見入った。

サトコ
「加賀さん!今の見ました!?こんな大きい花火、初めてです!」

加賀
うるせぇ

サトコ
「だって···あ!今の、なんの形ですかね!?」
「最近は変わった花火が多いですよね。スイカとか、ハートとか」

加賀
···ガキか

呆れたように、加賀さんが吐き捨てる。

(綺麗な花火を見たら、加賀さんも少し優しくなるかも···なんて、甘かった···)
(でも、こうして一緒に見られるだけでも十分だよね)

自分にそう言い聞かせても、なんとなく気持ちは盛り上がりきらない。

(加賀さんが花火に夢中になってくれるとは元から思ってなかったけど)
(でも···かんざし、やっぱり気付いてくれないか···私にとっては、大事な思い出なんだけどな)

最後のほうに向うにつれ、打ち上がる花火の数も増えていく。
盛り上がる周りの人たちとは対照的に、加賀さんの隣で静かに花火を見上げた。

加賀
···おい

不意に、後ろから加賀さんに抱きしめられた。
微かに煙草の香りをさせて、加賀さんが私の耳元に唇を寄せる。

加賀
似合ってんじゃねぇか

サトコ
「え···」

一瞬だけかんざしに触れられたけど、その感触はすぐに消える。
思わず振り向く私に、加賀さんは意地悪に笑うばかりだった。

サトコ
「もしかして···気付いてくれたんですか?」

加賀
なんの話だ

サトコ
「か、かんざし···」

でも、加賀さんは何も答えてくれない。
そのかわり、まるで混雑する周囲から守るように、私を抱きしめ続けてくれた。

(加賀さんの唇が耳に触れる感触、まだ残ってる···)
(気づいてたのに黙ってるなんて、ずるい···)

暑いのは、夏のせいだけじゃない。
背中から伝わる加賀さんの心地よい鼓動に身を任せながら、打ち上がる花火を眺め続けた。

Happy End

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする