カテゴリー

東雲 出逢い編 シークレット2

Episode 7.5
「弱点は耳たぶで···♡」

【モニタールーム】

サトコ
「うーん···」

(やっぱりカッコいいなぁ、藤咲瑞貴···)

スマホを開いた私は、先日某所で隠し撮りした写真をこっそり眺める。

(今って確か警護課でSPをやってるんだよね)
(元アイドルでSP···どこまでも花形って感じ···)

東雲
···なにニヤけてんの

サトコ
「ぎゃっ!」

慌てて隠そうとしたスマホは、あっさり取り上げられてしまう。

東雲
へー、ふーん···
キミ、盗撮趣味があったんだ

サトコ
「ちっ、違います!その写真は、その···」
「あくまで盗撮の練習であって···」

東雲
そんなの教えてない

バチンッ!

サトコ
「痛っ」

(で、デコピンするなんて···っ!)

東雲
で、オレが出した課題は?

サトコ
「もう終わってます。どうぞ」

東雲
ふーん···
······
···全問正解ね

サトコ
「ホントですか!?」

(よっしゃ!)

東雲
ま、当然だよね
解くのに1時間かけていれば

(う···っ)

東雲
で、いつから藤咲巡査部長のストーカーなの?

サトコ
「だから違いますってば!」

東雲
じゃあ、盗撮した理由は?

サトコ
「それは···っ」

東雲
······

サトコ
「その···昔ファンだったことがあって···」

東雲
······

サトコ
「ちょ···ちょっとだけですよ!?」
「本当にちょっとだけ···」

東雲
へー、ふーん···

(この顔···絶対バカにしてる···)
(でも好きだったのは10代の頃の話だし!)
(それくらいの頃って誰でも1度や2度は芸能人に憧れたことが···)

東雲
写真ほしい?

サトコ
「えっ···」

東雲
今から渡す課題プリントを、キミが30分で解けたら写真をもらってきてあげるよ

サトコ
「本当ですか!?」

東雲
ほんとほんと。しかもサイン付き···

サトコ
「やります!氷川、頑張ります!」

私はすぐさま筆記用具を握りしめる。

東雲
じゃあ、課題のプリントはこれね
用意···スタート!

サトコ
「···できましたっ!」

東雲
早っ

東雲教官は心底嫌そうな顔をしながら、腕時計に目を向ける。

東雲
···15分
ほんとキモいね、キミ···

サトコ
「キモくて結構です。採点お願いします!」

東雲
ハイハイ···
······
······
···全問正解

サトコ
「やったーっ!」

(写真ゲット···っ!)

東雲
···ま、いいか。約束だしね
サイン貰ってきてあげるよ

サトコ
「ありがとうございます!」

(どうしよう、どこに飾ろうかな)
(新しい写真立て、買ってきちゃう?それとも···)

東雲
······

【個別教官室】

1週間後。

東雲
はい、氷川ちゃん
例のもの、もらってきたよ

サトコ
「やったー!ありがとうござ···」
「!?」

東雲
どうかした?

サトコ
「だ、だってこれ···鳩の写真···」

東雲
ああ···それね、彼が飼ってる鳩だよ
名前は『ノイン』だったかな

サトコ
「そ、そでにこのサインの文字も···」

東雲
良かったね。『藤咲瑞貴』って書いてあって···

サトコ
「嘘です!これ、教官が書きましたよね!?」
「このハネのあたり、教官の文字の癖と同じじゃないですか!」

東雲
そんなの把握してるの?
キミ···本当にキモいね

サトコ
「余計なお世話です!」
「ていうかヒドイです、約束破るなんて!」

東雲
べつに破ってないよ
そもそもオレ、言ったっけ?
藤咲巡査部長のサインをもらってくるって

サトコ
「!」

東雲
ただ『サイン付きの写真』をもらうとしか言ってないよね

(い、言われてみれば確かに···)
(でも···でも···っ!)

サトコ
「やっぱりヒドイものはヒドイです」
「勘違いしてるの分かってて、期待させるなんて」

東雲
······

サトコ
「こんなの···期待してた分だけ悲しいです」

東雲
······

サトコ
「そりゃ、この鳩もちょっぴり可愛いとか思い始めてますけど!」
「でも、私が欲しかったのはあくまで···」
「ひゃっ!」

突然、東雲教官が私の耳たぶに触れてくる。

サトコ
「な···っ、なにを···」

東雲
キミってさー
怒ると耳たぶが赤くなるんだ?

サトコ
「そ、そんなこと···」
「あ···っ!」

東雲
しかも、耳···弱いんだ?

サトコ
「違···っ」

(違わないけど···っ)
(本当はめちゃくちゃ弱いけど···!)

東雲
ふーん···案外カワイイとこ、あるんじゃん

サトコ
「ちょ···っ!離してくださいっ!」

東雲
だって、耳弱くないんでしょ?

サトコ
「!」

東雲
違うなら平気だよね、触っても

サトコ
「!?」

東雲
こういうことしても平気だよね?

(そりゃ、確かに違うって言ったけど···っ)
(こんなの、なんか···っ)

東雲
そう言えばキミって···

サトコ
「···っ」

東雲
あれ···囁かれるのもダメ?

(違···耳引っ張るから···っ)

東雲
そんなはずないよね
今までは平気だったもんね?
涙目になってるのも···気のせいだよね···

(ひゃ···っ)

東雲
じゃあ、こういうのは···

(もう無理!これ以上いろいろされたら···っ)

サトコ
「ごめんなさい···っ!」

ドカッ!

東雲
!?!?
ど···どこ蹴って···っ

(しまった!まさかの大事な場所を···)

サトコ
「すすすみません、すみません!」

東雲
······

サトコ
「私、そんなつもりじゃ···」

けれども、教官はうずくまったまま動いてくれない。

(こ、こういうときってどうするんだっけ!?あ、温める?それとも冷やす?)
(えっ、じゃあ濡れタオルとか!?)

ひとまず洗面所に行こうと、私はドアを開ける。
ところが!

後藤
······

サトコ
「ご、後藤···教官···?」

後藤
あ···その···
立ち聞きするつもりはなかったんだが···
···邪魔したな

サトコ
「違···っ」
「待ってください、教官!」
「誤解です!なにも邪魔してなんか···っ」

東雲
呪う···

サトコ
「!?」

東雲
キミのこと···末代まで呪ってやる···

(ぎゃーっ!)

その後5日間ほど、私は東雲教官に定食のエビフライを奪われ続け···
さらに10日間ほど、後藤教官から目を合わせてもらえなかったのだった。

Secret End

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする