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東雲 恋の行方編 8話



【カフェテラス】

週明け。
私はタブレット端末で、「トイッター」をチェックしていた。

······『笹野川、やっぱりやらかしてた』

······『この人、愛妻家じゃなかったっけ?』

······『週刊誌ネタはアテにならない』

······『乱交ww 終わってるww』

······『秘書も交じってるとかスゲー』

(この『秘書』って、さちさんのダンナさんじゃないよね)
(真面目で優しそうな人だったし、確かまだ新婚だって···)

千葉
「氷川、今ちょっといい?」
「颯馬教官が呼んでるんだけど」



【モニタールーム】

颯馬
先日はお疲れさまでした
貴女の活躍のおかげで、歩の疑いも無事に晴れましたよ

(活躍っていうか、東雲教官の手の上で転がされていただけなんだけど···)

颯馬
ところで、今日はまた貴女の力を借りたいと思いまして
この週刊誌はもう読みましたか?

颯馬教官が取り出したのは、例の男性週刊誌だ。

サトコ
「···笹野川議員の記事だけ読みました」

颯馬
それなら話は早い
実はこの記事が掲載されてから、例の愛人が姿をくらましまして

サトコ
「愛人って、確かテロ組織と関係が···」

颯馬
そうです。それで我々も困っているのです
そこで、氷川さんに手伝っていただきたいことがあるのですが···

サトコ
「私にできることなら何でも言ってください!」

颯馬
ありがとう
では、この7本の記録メディアが貴女の担当です

サトコ
「?」

颯馬
この中に、重要箇所の監視カメラ映像が3日分入っています
そのどこかに愛人が映っていないか確かめてください

(ええっ!?)

颯馬
詳細は千葉くんに、ではあとは頼みましたよ

千葉
「頑張ろうな、氷川」

サトコ
「う、うん···」

(まさか、また監視カメラのチェックをするなんて···)

1時間後···

(これは···違う。この人も違う···)

千葉
「···どう、氷川」

サトコ
「今のところ全然。千葉さんは?」

千葉
「俺もまったく」

(うう、やっぱりこの作業ってキツいな)
(でも、なんとかして監視対象者を見つけ出さないと)

3時間後···

サトコ
「ふわぁ···」

(やっぱり眠たくなってきた···)
(こういうときは···)

サトコ
「えいっ···えいっ···」

千葉
「氷川、なにしてるの?」

サトコ
「ツボ押し、このツボ、眠気覚ましって言われてるんだ」

千葉
「ほんとに?俺もやろうかな」
「えいっ···えいっ···」

サトコ
「えいっ···えいっ···」

コンコン!

黒澤
こんばんは!調子はいかがですか~

千葉
「うわ···っ」

サトコ
「お、おつかれさまです」

黒澤
ははっ、やっぱり眠たそうですねー
カフェテラスでコーヒーなんてどうですか?

サトコ
「でも、まだ仕事が···」

黒澤
ノンノン!適度に休まないとかえって効率が悪くなります
ぶっ続けで働けるのはサイボーグと呼ばれる石神さんだけです
さ、千葉さんも。一緒にカフェテラスに行きましょう

千葉
「···そうですね」



【カフェテラス】

コーヒーを飲みながら、黒澤さんは例の週刊誌をめくる。

黒澤
ほんと、困ったことをしてくれましたよねー。この出版社も

千葉
「エゲつない暴露記事ですよね」

黒澤
まーったく、『元秘書が告白』ってのも胡散臭いし···
ただの記事の真偽はともかく、愛人の写真が載っちゃったのはなー

サトコ
「それが、監視対象者が逃げた原因ですか?」

黒澤
ひとまず『可能性1』ってところです

サトコ
「『1』?」

黒澤
『単に目的を果たしたから愛人は失踪した』···これが『可能性2』
つまり、週刊誌の件とは関係なくドロンしたかも···ってことです

千葉
「···そっちの方が大ごとですよね」
「テロリストが要人に近付くのは」
「たいてい『情報収集』か『テロ活動の協力要請』が目的なわけですから···」

黒澤
そうなんです
なので、加賀さんと後藤さんはそっちの可能性を探ってるみたいですよ

サトコ
「後藤教官もですか?」

黒澤
はい。加賀班の人手が足りないとかで
歩さんは、例の幼なじみの女性に付き添ってるみたいですし

(え···)

千葉
「幼なじみって···確か関塚って秘書の奥さんとかいう···」

黒澤
そうです。週刊誌が発売になった翌日だったかな···急に倒れたらしくて
ダンナさんは今、海外に行ってるとかで、代わりに歩さんが付き添ってるんですよ

(···そうだったんだ)



【モニタールーム】

その後、全部の映像を確認したものの、ララ・リーの姿は発見できなかった。

颯馬
2人とも、お疲れさまでした
講義には午後から出席できるように手配しています
ひとまず午前中は寮で休んでください

千葉
「はい···」

サトコ
「おつかれさまでした···」

【廊下】

千葉
「ふわぁ···」
「やば···寮に戻ったら、速攻で眠りそう···」

サトコ
「·····」

そんな千葉さんの隣で、私は数時間前に聞いた話を思い出していた。

(教官との食事がキャンセルになったの···さちさんが原因だったんだ)
(···仕方ないよね。倒れた人を放っておくわけには行かないし」
(しかも、相手は教官にとって大切な人で···)

千葉
「どうかした?」

サトコ
「え」

千葉
「なんか、その···泣きそうな顔してるから···」

サトコ
「ああ、これは···」
「日差しが目に染みるなーなんて」

千葉
「······」

サトコ
「やっぱり完徹って辛いよね」

千葉
「だよなー」
「あ、俺、こっちだから」

サトコ
「···ああ、もう!」

(とりあえず寝よう!寝て、頭をスッキリさせよう!)
(あれこれ考えるのは、それからで···)


【教場】

ところが、数時間後···

(あれから一睡もできなかった)
(布団に入っても、つい、いろいろ考えちゃって···)

鳴子
「ちょ···なにそのひどいクマ!」

サトコ
「うん、自分でもそう思···」
「ふわぁ···」

(まずい、今ごろ睡魔が···もうすぐ午後の講義が始まるのに)

サトコ
「眠気覚ましのツボ···眠気覚ましのツボ···眠気覚ましの···」

ピーンポーン♪

難波
氷川サトコ、氷川サトコ、17時に教官室に来い
繰り返す···

(珍しいな···校内放送で呼び出しなんて)

【室長室】

そして夕方···

サトコ
「失礼します、氷川です」

難波
おー来た来た
って、ずいぶん眠たそうだな。大丈夫か?

サトコ
「はい、なんとか···」

難波
じゃあ、今日最後の仕事ってことで、お遣い頼まれてよ

室長は、引出しから小さな袋を取り出す。

難波
届け先は、えっと···なんだっけ···例の笹野川の秘書の···

サトコ
「···関塚さんですか?」

難波
そう、関塚
そいつの家に歩がいるから、これ、渡してきて

サトコ
「え···」

難波
あ、もちろん嫁さんに気付かれないようにな
それじゃ、よろしくー


【電車】

(教官、今日もさちさんに付き添ってたんだ···)
(さちさんの具合、そんなに悪···)

サトコ
「すぅ···」

危うく意識が遠のきかけたところで、車体がガクンと大きく揺れる。

サトコ
「···っ!」

(やば···今、本気で寝落ちそうになってた···)
(ダメダメ、ここはなんとか踏ん張らないと···)

けれども睡魔のせいか、その後、何度も道を間違えて···

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【マンション】

空に星が瞬きはじめたころ···
ようやく私は、関塚夫妻の住むマンションへとたどり着いた。

(部屋番号は···802号室か···)
(誰が出るのかな。さちさんの具合が悪いなら、たぶん教官が···)

さち
『はーい』

(あれ?)

サトコ
「夜分申し訳ありません。東雲の部下の氷川と申しますが···」

さち
『お待ちしてましたー。どうぞー』

のんびりした返事とともに、エントランスの自動ドアが開く。

(なんか元気そう···気のせい?)

(ここだ···802号室···)

インターフォンを押すと、中から「どうぞー」とほがらかな声がする。

(いいのかな、勝手に入っても···)

恐る恐るドアを開けたとたん、パァンッ!と弾けるような音がした。

サトコ
「ぎゃっ!?」

(く、クラッカーの紙テープ···?)

さち
「はじめまして、関塚さちです」

サトコ
「あ···東雲の部下の氷川と申します」

さち
「ふふっ、『部下』だなんて」

なぜか意味ありげに笑うさちさんの背後から、教官がひょっこりと顔を出す。

東雲
ほら···だからクラッカーはダメって言っただろ
彼女、ハトみたいな顔になってるじゃん

さち
「でも、歓迎したかったんだもん」
「歩くんが、初めてカノジョさんを紹介してくれるって言うから」

(···『カノジョさん』?)

さち
「あ、どうぞあがって」

サトコ
「いえ、私は···」

東雲
遠慮しなくていいって
ほら、あがりなよ。サトコちゃん

(『サトコちゃん』!?)

東雲
あがるよね、もちろん

サトコ
「は、はぁ···」

(なんだかよくわからないことになってるんですけど···!)


【リビング】

きれいに片づけられたリビングには、いくつもの写真立てが飾ってある。
そのどれもが、当たり前だけどさちさんと関塚さんの写真だ。

(さすが、新婚家庭···)

そう考えれば考えるほど、週刊誌の記事は嘘に思えて仕方がない。

(笹野川議員はともかく、関塚さんは絶対に浮気なんてしそうにないよね)

さち
「飲み物を淹れるわね。なにがいいかしら」

東雲
サトコちゃんにはカフェオレでいいよ。無糖のヤツ
で、オレのは···

さち
「砂糖多めでしょ。わかってまーす」

さちさんがキッチンに消えるなり、私は教官に向き直った。

サトコ
「あの!なんですか、『サトコちゃん』とか『カノジョ』とか···」

東雲
仕方ないだろ
キミをここに呼ぶための理由が欲しかったんだから

サトコ
「だからって、そんな嘘···っ」

東雲
それより、室長からの預かりもの、さっさと出して

サトコ
「···これです」

教官は袋の中身を確かめると、すぐにそれをポケットにしまいこむ。

サトコ
「あの···さちさんって具合悪いんじゃなかったんですか?」

東雲
悪かったよ。一昨日までは

(『一昨日』まで?)

サトコ
「じゃあ、どうして今も付き添いを?」

東雲
え···キミ、聞いてないの?
目的は『付き添い』じゃなくて『張り込み』
オレがここにいるのは、関塚さんの動向を探るため···

さち
「お待たせー」

さちさんがやってきたので、私たちは慌てて口をつぐむ。

さち
「はい、カフェオレね」
「こっちがサトコちゃんで、こっちが歩くん」

サトコ
「ありがとうございます」

さち
「どういたしまして···」
「あら?」

ふいに、さちさんがじーっと私の顔を覗き込んでくる。

さち
「前に、どこかでお会いしたことなかったかしら」

サトコ
「あ、以前···」

東雲
気のせいじゃない?
ほら、彼女、どこにでもいそうな顔立ちだから

(な···っ、いちおう私、『恋人役』なんじゃ···)

さち
「ふふ、やだわ、歩くんったら。照れてるのね」

東雲
えっ

さち
「そうよね。初めてのカノジョさんだもんねー」

東雲
べ、べつにそういうわけじゃ···

さち
「ほら、やっぱり照れてる」

さちさんは無邪気に笑うと、私の隣に腰を下ろす。

さち
「ね、サトコちゃん。歩くんのどこが好き?」

サトコ
「!」
「あ、え···えっと···」

<選択してください>

A: 優しいところ

サトコ
「優しいところ···でしょうか」

東雲
···バカ。なに本気で答えてんの

サトコ
「えっ、ダメでしたか?」

東雲
そういうわけじゃないけど···

さち
「ふふっ、歩くん、耳まで真っ赤」

B: 意地悪なところ

サトコ
「えっと···意地悪なところ···とか···」

さち
「意地悪?歩くんが?」
「そうかしら···歩くん、優しいわよね」

(そりゃ、さちさんに対しては優しいに決まって···)

東雲
ふーん···

(な···っ、めっちゃ睨まれてるんですけど!)

C: 髪のサラサラ具合

サトコ
「髪の毛のサラサラ具合でしょうか」

さち
「わかる!わかるわ!」
「歩くん、小っちゃい頃から髪がサラサラで天使の輪ができてたのよね」

東雲
ああ···それなら···
今でもできるけどね

(なんで、そこで髪をかきあげて···)

プルル···

東雲
あっと···
ごめん、ちょっと電話

ベランダに出て行く教官を、私はつい目で追ってしまう。

(教官···やっぱり普段と全然違う···)
(笑顔が多いし、喋り口調が甘めだし、それに···)

さち
「思ってたとおりの人だったわ」

サトコ
「え···」

さち
「歩くんのカノジョさん」
「想像してたとおりの人で、すごく嬉しいの」

(そんな···)
(本当は違うのに。私『カノジョ』なんかじゃないのに)

サトコ
「あの···さちさんと教官は、幼なじみなんですよね?」

さち
「ええ」

サトコ
「だったら、その···今まで教官を好きになったことって···」

さち
「あら、心配?」

サトコ
「えっ···あ、えっと···」

さち
「ふふ、大丈夫よ。歩くんは『自慢の弟』だもん」

サトコ
「弟···?」

さち
「私も彼も一人っ子だから、お互い姉弟みたいなものなの」
「もっとも、私には出来過ぎなくらいの、すごい『弟』だけど」

サトコ
「······」

さち
「私ね、恥ずかしい話だけど、子どもの頃から勉強がさっぱりで···」
「でも、歩くんはあのとおり頭がいいでしょ」
「だからね、よく勉強を見てもらってたの」

サトコ
「······」

さち
「制服が素敵で憧れてた高校も、私は受験すらできなかったけど、歩くんは余裕で入学できて···」
「警察官になる夢も、私には無理だったけど、歩くんが『オレが代わりに叶えるよ』って···」

(えっ···)

さち
「だからね、歩くんは私の自慢の『弟』なの」
「生まれてくる子どもに『歩』って字の入った名前をつけたいくらい···」

さちさんはやわらかく微笑むと、自分のお腹をそっと撫でる。

(まさか、さちさんが倒れたのって···)

東雲
さち、オレ、そろそろ帰るよ
サトコちゃんを家まで送っていきたいし

さち
「ふふっ、わかったわ」

東雲
明日また来る

さち
「え···でも、歩くん、お仕事は···」

東雲
平気、今、有給消化中だから
それより、明日はカレーが食べたい
その···もちろん、さちが平気だったらだけど

さち
「大丈夫。私、つわりはそんなにひどくないみたいだから」

東雲
やった!楽しみにしてる

その笑顔を目にしたとたん、疼くように胸が痛む。

(そんなの、知ってた···)
(ずっと前から、イヤになるくらい知ってたけど···)


【帰り道】

マンションを出るなり、教官はスマホを取り出した。

東雲
東雲です。今、マンションを出ました
···はい。明日は12時からです
それまで関塚家の監視をお願いします

(『監視』って本当だったんだ···)

東雲
···送るの、駅まででいい?
このあと本庁に行かないといけないんだけど

サトコ
「あ、はい···」
「でも、どうして関塚さんの動向を探ってるんですか?」

私の質問に、教官はちらりと視線だけを寄越す。

東雲
笹野川の愛人がいなくなった話は?

サトコ
「聞きました。週刊誌に記事が載ってすぐに行方知れずになったって」

東雲
実は同じタイミングで、関塚さんもいなくなってる

サトコ
「!」

東雲
表向きは『海外に行ってる』ってことになってるけど···
あまりにもタイミングがよすぎるってことになってさ

サトコ
「それで、教官が監視を?」

東雲
そう。オレなら不自然じゃないから
ずっと、さちのそばにいても

サトコ
「···そうですね」

(確かに教官なら疑われない。でも···)

<選択してください>

A: 辛くないですか?

サトコ
「辛くないですか?」

東雲
なにが?

サトコ
「その···好きな人を監視とか···」

東雲
べつに。どうして?

サトコ
「私はしどかったですから」
「教官を見張れって言われたとき」

東雲
···ふーん

教官は視線を落とすと、なぜかそのまま歩みを止める。

B: 嬉しいですか?

サトコ
「嬉しいですか?」

東雲
なにが?

サトコ
「その···さちさんのそばにいられて···」

東雲
バカなの、キミ
あんな新婚丸出しみたいな家にいて、楽しいと思う?

(あ、確かに···)

自分の発言を気まずく思っていると、教官はなぜか急に歩みを止める。

C: 妊娠してたんですね

サトコ
「妊娠してたんですね」

東雲
······

サトコ
「何ヶ月ですか?」

東雲
聞いたけど忘れた

サトコ
「···そうですか」

(もしかして話題にしない方が良かったかな···)

自分の発言を気まずく思っていると、教官はなぜか急に歩みを止める。

東雲
ごめん

サトコ
「?」

東雲
土曜日。急にキャンセルして

サトコ
「あ、いえ···っ」
「聞いてますから。さちさんに付き添ってたって」
「それに、その···」
「教官から電話をもらったとき、実はすでに寮に戻ってて!」
「だって約束の時間より、1時間も過ぎてたし!」

東雲
······

サトコ
「だから、あまり気にしなくていいっていうか···」

東雲
······

サトコ
「それより良かったですね。顔の腫れ、だいぶ引いたみたいで」

東雲
···ああ

サトコ
「まだ痛みますか?」

特に深い意味もなく、私は教官の頬に手を伸ばす。
けれども、次の瞬間···

パシッ!

(えっ···)

教官に弾かれた手は、行き場を失くして宙にとどまった。

東雲
あ···
ご、ごめん

サトコ
「いえ、私のほうこそ。急に触ろうとして···」

東雲
······

サトコ
「その···湿布、きれいに貼れてますね」

東雲
ああ···さちに貼ってもらったから

サトコ
「!」

(そっか···それで···)
(それなら、誰にも触られたくないよね)

東雲
···行こうか

サトコ
「はい···」

先に歩き出した教官のあとを、私は黙ってついて行く。
さすがに今は、追いかけて隣に並ぶ気にはなれそうにない。

(もう、どんなに努力しても無理なのかな)
(教官のこと···あきらめるしかないのかな)




【ラーメン屋台】

サトコ
「って、そんなのわかってましたからーっ!」

おじさん
「······」

サトコ
「あ、すみません。つい···」

(良かった···他にお客さんいなくて···)

私は改めて箸を持ち直すと、味噌ラーメンをちびちびとすする。

(なにやってんだろ、私···こんな時間に1人でラーメンなんて···)
(でも、正直このまま帰りたくなかったっていうか···)
(帰ったら、またいろいろ考えてドーンと···落ちこ···)

サトコ
「すぅ···」
「······」
「···っ!」

(あ、危なかった···今、丼に頭を突っ込むところだったよね)
(そう言えば私、昨日からほとんど寝てなくて···)

???
「···なにしてんだ、クズが」

(へ···)

加賀
寝るか食うか、どっちかにしろ

サトコ
「か、加賀教官!」

教官は「いつもの」とおじさんに告げると、私の隣に腰を下ろす。

加賀
歩はどうした

サトコ
「え···」

加賀
歩に会ってきたんだろうが

サトコ
「あ、はい···でも今は本庁に···」

加賀
なにか変わったことは?

サトコ
「いえ、なにも···」

(そうだ、なにも変わってない···)
(教官は、さちさんのことが好きなまま···)

そこまで考えたところで、再び頭がかくんと沈む。

加賀
おい、どうした

(すみません···もう無理···)

加賀
食わねぇのか、このクズ

(食べたいです···でも眠たすぎて···)

そのままテーブルに突っ伏していると、なぜかふわりと身体が浮き上がる。

加賀
2人分、釣りはいらねぇ

おじさん
「はいよ」

加賀
おら、行くぞ

(行くってどこに···?)

けれども、すでにまぶたが重たすぎて···
私は、そのまま眠りの淵へと落ちていった。

to be continued



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