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東雲 恋の行方編 9話



【加賀マンション】

翌朝。

サトコ
「ふわぁぁ···」

(よく寝た···)
(おかげで、頭がスッキリ···)

サトコ
「!?」

(えっ···こ、この部屋は一体···っ)

加賀
おい

サトコ
「ぎゃあっ!」

加賀
騒ぐな、クズ
シャワー浴びるならとっとと浴びろ

サトコ
「いいいいえっ···滅相もない!」
「ひとまずおいとましますっ」

バタン!

加賀
······

【帰り道】

(お、思い出した···っ)
(昨日は睡魔に負けて、ラーメン屋で寝こけて···)
(気づいたら加賀教官の部屋で、いろいろ話を聞いてもらって···)
(それで、そのあと···)

サトコ
「うわあああっ!」

(バカ、なんであんなことを···っ!)



【学校 廊下】

ひとまずシャワーを浴びてから学校にやって来る。
けれども、頭の中は昨日の夜のことでいっぱいだ。

(ダメだ···考えれば考えるほど、冷や汗しか出てこない···)
(いくら寂しかったからって···私のバカっ!)

東雲
氷川さん

(ひ···っ!)

サトコ
「おおおはようござい···」

東雲
カフェモカ買ってきて
チョコレートシロップ・ダブルで

サトコ
「りょ···了解です」

すると、なぜか東雲教官は私の顔をじーっと見つめてくる。

サトコ
「ほ、他にもなにか···?」

東雲
···べつに
10分以内で持って来て

サトコ
「わかりました!至急持って行きます!」

【教官室】

サトコ
「お待たせしました」
「カフェモカ・チョコソースダブルです!」

東雲
······

サトコ
「···10分過ぎてましたか?」

東雲
ううん、9分28秒
それより···

教官はカフェモカを1口飲むと、また私の顔をじーっと見つめてくる。

東雲
キミ···今日雰囲気違うよね
なにかあった?

サトコ
「!」

東雲
妙にシャンプーの香りしてるし
血色もやけにいいし

サトコ
「!!」

東雲
こういうときの女の子って、だいたい朝帰り···

バタン!

加賀
やっぱりここにいたか

(か、加賀教官···っ)

加賀
このスマホ、お前のか

サトコ
「あ···」

加賀
ベッドの下に落ちてたぞ、このクズが

東雲
···ベッド?

加賀
ああ、うちのベッドだ

(きゃあああっ!)

東雲
···なに?キミ、本当に朝帰りだったの?

サトコ
「違うんです!」
「いえ、違わないんですけど、これにはわけが···」

(って消えないで、加賀教官···っ!)

東雲
ふーん···
オレの次は兵吾さんか

サトコ
「違います!」

東雲
じゃあ、なんで朝帰り?

サトコ
「そ、それは···」

東雲
······

サトコ
「一晩かけて悩み相談を···」

東雲
なんの?

<選択してください>

A: 恋愛について

サトコ
「恋愛についてです」

東雲
具体的には?

サトコ
「···言えません」

東雲
······

サトコ
「教官にだけは、言えません」

東雲
···あっそう

B: 将来について

サトコ
「将来についてです」

東雲
将来の、なにについて?
『やっぱり私、公安には向いてません』とか?

サトコ
「そ、そんなことは···」

東雲
じゃあ、なに?
オレには言えないようなこと?
オレがキミの担当教官なのに?

サトコ
「······それでも、言えません」

(言えるわけないよ···加賀教官になにを話したかなんて···)

東雲
···あっそう

C: 私のあだ名について

サトコ
「私のあだ名についてです」

東雲
は?

サトコ
「私、昔からほんとにいろいろなあだ名があって···」
「『長野のカッパ』とか『長野のスッポン』とか···」
「それに、最近は教官に『ウラグチ』···」
「って、まだ話してる途中じゃないですか!」

東雲
だったらもう少しまともな嘘ついてよ
レベル低すぎて付き合い切れないんだけど

(うっ、バレてる···)

東雲
ま、どっちにしろ軽率だよね
男の部屋に簡単に泊まるなんて

サトコ
「······」

東雲
あ、でもキミなら心配ないか
キミなんかに兵吾さんが手出すはずないし

教官は資料の高さを均等に並べると、テイクアウトカップを手に立ち上がる。

東雲
そういえば室長から伝言
仕事を頼みたいから、朝礼が終わったら来てくれって

そのまま脇を通り抜けて行く教官を、私は慌てて呼び止める。

サトコ
「教官はなにかありませんか!」
「私に頼みたい仕事とか···」

東雲
べつに
オレはさちのトコに行くだけだし

サトコ
「······」

東雲
じゃあ、おつかれ

サトコ
「···おつかれさまです」

(さちさんのところ···か)
(って、こんなとこでヘコんでる場合じゃないってば!)
(それより室長からの仕事ってなんだろう。またお遣いかな)


【室長室】

サトコ
「潜入捜査···?」

難波
うん。実はようやく例の『ララ・リー』の行方がわかってなー
今は、建設会社社長の愛人になっているらしいんだけが···

室長は、私に資料を見せてくれる。

サトコ
「殿井建設···殿井雄之介···」
「今はこの人の愛人なんですか?」

難波
そう。しかも、昼間は殿井建設の契約社員として働いててね
こちらとしては、社長の愛人になる他に、『殿井建設で働く理由』があるんじゃないか···
と踏んでいるってわけだ
そこで氷川にも殿井建設に潜入して、ララ・リーを見張って欲しくてね

サトコ
「···わかりました」

私は、改めて資料を確認する。

サトコ
「えっと···潜入するのは私だけですか?」

難波
後藤も一緒だ。あいつには派遣社員として明日から潜入してもらう
氷川は清掃員ね。それなら後藤の潜入できない場所にも行けるだろう
それで···

コンコン!

後藤
後藤です

難波
あー入って

後藤
失礼しま···

(うっ···)

一瞬、「昨夜のこと」が頭を過って、私は慌てて目を逸らす。

難波
···なんだ、お前ら、赤くなって

後藤
い、いえ···なんでも···
それより明日の件ですが···

難波
ああ、それだけど···

こうして私たちは念入りに打ち合わせを進め···


【殿井建設】

私にとって初の潜入捜査が始まった。

清掃員
「次は3階ねー。ここもトイレ清掃は午前に1度、午後に1度···」
「各部屋のゴミ回収は夕方に1度」

サトコ
「はい!」

(このフロアに、後藤さんとララ・リーのいる『総務課』があるんだよね)
(確か、場所は端っこのほう···)

サトコ
「ん?」

(あそこにいるのは···)

後藤
······

(やっぱり後藤さんだ!)
(なんだか女子社員に囲まれてるみたいだけど···)

清掃員
「はぁぁ~、噂どおりハンサムだねぇ」

サトコ
「えっ···ハンサ···?」

清掃員
「あそこにいる彼だよ」
「一昨日から、総務課に派遣で来ている『一柳玉三郎』さん」
「名前もハンサムだよねぇ」

サトコ
「はぁ···」

(『一柳玉三郎』って、なんでそんな偽名を···)
(あっ、こっち見た!)

清掃員
「はわわっ···目が合っちゃったよ~」
「こりゃ、たまげたねぇ」

サトコ
「そ、そうですね···」

(こんなに注目されてたら、潜入捜査に支障が出るんじゃ···)
(後藤教官、大丈夫なのかな)

結局、特に報告するようなことはなく初日は終わった。
そのまま2日···3日···と日は過ぎて···

【トイレ】

5日目の午後。

サトコ
「ふぅ···」

(これで洗面台はピカピカになった···っと)
(次は個室の掃除をしないと···)

サトコ
「!」

トイレに入ってきた女性の姿を、私は鏡越しに確認する。

(『ララ・リー』だ)

3つあるトイレの個室は、どれもすべて空いている。
彼女はその中の一番奥に入ると、少し乱暴な手つきでドアを閉めた。

(びっくりした。総務課以外で会うの、初めてだよね)
(って言っても、トイレだと特に収穫は···)

ララ
『〇〇××△···』

(え、何か話し始めた?)

ララ
『××〇〇□△···!』

(ケータイで電話してる···英語じゃないのは確実だよね)
(どこの国の言葉だろう。とりあえずスマホ、スマホっと···)

私は録音アプリを起動させると、窓際に置いてトイレを出た。

そして5分後···

彼女が出て行ったのを確認して、無事にスマホを回収した。

(音声は···よし、録れてる)
(ひとまず、これを室長に送って···)

【総務課】

その日の夕方。

清掃員
「アンタは、左半分のゴミ回収を頼むよ」
「私は玉三郎様エリアのゴミを回収するから」

サトコ
「わ、わかりました」

(それより、ララ・リーは···)
(あれ、いない?まだ就業時間中なのに)

慌ててボードを確認すると「早退」の文字が記されている。

(私が彼女を見かけたのって、確か2時間前だよね)
(じゃあ、そのあと帰ったってこと?)

後藤
すみません。ゴミ回収中ですよね

(後藤教官···!)

後藤
これも捨てておいてください

サトコ
「···わかりました」

受け取ったプリントの表紙には6文字の英数字が記されている。

(これは···『今日19時・A駅西口』の意味···)
(やっぱりなにかあったんだ!)


【駅前】

約束の19時。
駅前に立っていると、黒い車が少し先に停まった。
私はナンバーを確認すると、素早くドアを開けて助手席に滑り込む。

【車内】

サトコ
「おつかれさまです。進展はありましたか?」

後藤
女が資料室から設計図を盗み出した

サトコ
「!」

後藤
なんの設計図かまでは調べきれなかったが···
どうやらそれを、今日の8時に品川周辺の倉庫で受け渡すらしい

サトコ
「では、今からそこに?」

後藤
そうだ···お手柄だったな
お前の録音で取引場所が判明した

サトコ
「えっ、さっき室長に送ったやつですか?」

後藤
そうだ。よくやったな

(良かった。あの録音、役に立ったんだ···)

後藤
あとは連中の目的を探るだけだ
倉庫に入ったら、まずは女の行方を探す
もし取引現場を目撃出来たら···

サトコ
「逮捕···ですか」

後藤
そこは状況次第だ
様子を見るか、捕まえに行くかは現場で判断する
氷川は、必ず俺の指示に従って欲しい

サトコ
「わかりました」

(一番の目的は、彼女たちの目的を知ること)
(『なんのため』に笹野川議員や殿井建設に近付いたのか···)
(今日、何の設計図を盗み出したのか)

私が頭を巡らせている間、車は夜の首都高を滑り抜けてゆく。

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【倉庫】

サトコ
「ここで取引が行われるんですね」

後藤
そうだ。普段は運送会社の倉庫として使われているようだが···

教官は周囲に気を配りながら、ぐるりと周辺を1周する。

後藤
···空いていた出入口は裏の1ヶ所だけだったな
ひとまずそこから行くぞ

サトコ
「はい···っ」

【倉庫内】

(うわ···予想以上に真っ暗···)

明かりは、高窓から注ぐ外灯の光だけ。
だからこそ、電気が点いている場所はすぐに分かる。

(あの先···もしかしてあの部屋で取引を···?)

ふいに、ついていたはずの明かりが闇に消える。
さらに、ドアの開く音がして···

(うそっ、部屋から人が出てきた!?)

後藤
隠れろ

ベルトコンベアーの陰に身を潜めると、息を殺して様子を窺う。
出てきたのは、やはりララ・リーと見知らぬ男だ。

ララ
「〇×△△××〇〇」

謎の男
「××〇〇!△△×□〇···」

(これ···出口に向かってるよね)
(じゃあ、もう取引は終わったってこと?)

けれども、8時にはまだ早い。

(まさかの別の場所で取引を?)
(それとも中止になったとか···)

後藤
行くぞ

サトコ
「追うんですね」

後藤
いや、アイツらが出てきた部屋に行く

(えっ、どうして···)

室内には、いくつかの家具や道具が置いてあった。
外の月明かりのおかげで、ぼんやりと室内が見える。

(机がいくつかある···)
(あとはパソコン···電話機、ファックス、本棚···)

サトコ
「ここって、運送会社の事務所でしょうか」

後藤
表向きはな
だが、裏ではテロ組織のアジトの1つになっている

サトコ
「それで、この部屋で取引を?」

後藤
そういうことだ
それより筒状のケースを探せ。そこに設計図が入っているはずだ
色は黒。長さは1メートルほど
ララ・リーはそれを使って設計図を持ちだしているが
先ほどの2人は、どちらとも持っていなかった

サトコ
「だからここにあるってことですか?」

後藤
おそらくな
俺はデスク周りを探すから、氷川は入り口付近を頼む
それから、外の気配に気を付けろ

サトコ
「わかりました」

(筒状のケース···社内でも何度か見かけたよね)
(特に設計課のフロアに行くと、そういう人たちが何人もいて···)

ガツッ···

サトコ
「痛っ!」

後藤
どうした

サトコ
「すみません。ちょっとスネを···」

うずくまりかけた私は、床に落ちている物に気が付く。

(なにこれ···手帳?)

開いたのは、ちょうどしおりが挟んであったページだ。
無地のリフィルに、記号のような文字らしきものが記されている。

(ハングルではないよね。タイの文字···とも違うし···)
(それより、これ···前にもどこかで見たような···)
(どこだっけ···そんな昔じゃないんだよね、もっと最近の···)

後藤
誰か来る

サトコ
「えっ···こっちはなにも···」

後藤
違う。奥だ

教官が明かりを向けたその先に、ドアらしきものがある。

(うそっ、そっちにも出入口があったの!?)

後藤
いったん出るぞ

サトコ
「はい···っ」

ところが、ドアノブに手を掛けた瞬間···

謎の男
「誰ダ」

サトコ
「···っ!」

(いつの間に!?)
(足音もなにも聞こえなかったのに···)

謎の男
「手ヲアゲテ頭ノ後ロで組メ」

2人
「······」

謎の男
「何ガ目的デ、ココニ来タ?」

2人
「······」

やがて、奥のドアも音を立てて開く。
私たちは完全に逃げ場を失ってしまった。


【部屋】

捕えられた私たちは、手首を縛られて、奥の部屋に放り込まれた。

サトコ
「すみません···っ」
「本当にすみませんでした···っ」

後藤
気にするな。あの男の気配に俺も気付かなかった
それだけのヤツが、足音など立てるはずがない

サトコ
「教官···」

(後藤教官···全然焦ってない···)
(2人揃って捕まった上に、スマホも取り上げられてしまったのに···)

後藤
···手首を縛られてるときのコツは教わったか

サトコ
「いえ、まだですけど」

後藤
最初が肝心だ。今度教えてやる
それさえ覚えておけば、たいていは縛られても逃げ出せる

サトコ
「え······もしかして、今回も···!」

後藤
当たり前だ

教官が腕を動かしたとたん、ばらりと縄が床に落ちた。

(ほ···本当に解いちゃった···!)

後藤
こっちを向け。外してやる

サトコ
「ありがとうございます···!」

(良かった···後藤教官が一緒にいてくれて···)

サトコ
「あとはここから逃げるだけですね」
「すぐにでも逃げないと···」

後藤
いや、しばらく待機だ

サトコ
「でも···っ」

後藤
俺たちが倉庫に入ってから、すでに1時間が経過している
その場合、次の作戦が動く手はずになっている

サトコ
「えっ、次って···」

ガチャッ···

サトコ
「!」

カチャ···カチャ···

(ドアの外···誰かいる···?)

サトコ
「後藤教官···」

後藤
ああ

やがてドアノブがゆっくり回って、ドアが開く。
その隙間から、身体を滑り込ませてきたのは···

東雲
めずらしいですね。後藤さんがヘタ打つなんて

(教官···!?)

後藤
歩···どうしてお前が

東雲
透に代わってもらったんですよ
だってオレが来ないわけにはいかないでしょ
誰かさんまで捕まってるのに

(え···)

後藤
···そういうことか

東雲
そういうことです
それより状況報告を

後藤
そうだな

後藤教官がこれまでのことをかいつまんで説明する。

東雲
では、設計図は取り戻せていないんですね

後藤
ああ、すまない

東雲
他に何か怪しいものは?

後藤
名簿と写真を数枚手に入れた。まだ懐に入っている

東雲
氷川さんは?

サトコ
「私はなにも···手帳を見かけただけで···」

(え···あれ···?)

教官を前にしたとたん、なぜか教官室の光景が頭に浮かぶ。

(そうだ、あの文字って確か···!

(思い出した!)
(親睦会の日にいきなり資料のスキャニングを頼まれて···)

サトコ
「···ん?」

(なんだろう、この記号みたいなの)
(暗号?それともどこかの国の文字なのかな)

サトコ
「教官、この文字読めますか?」
「確か、こんな感じの文字なんですけど···」

私は手帳に並んでいた文字を、指で床に書いてみる。

東雲
···どこで見たの、その文字

サトコ
「事務所にあった手帳です」
「無地のリフィルに書いてあって、それで···」

東雲
こっちのメモ帳に書いて。できるだけ正確に!

サトコ
「は、はい···」

私は必死に思い出しながら、メモ帳に文字を書きつづる。

後藤
···なんだ、それは

東雲
連中の暗号です
以前、室長に解読を頼まれて···

サトコ
「教官、これで全部です」

東雲
貸して

ひったくるようにメモ帳を奪うと、教官は文字を睨みつける。
その表情は次第に険しくなって···

後藤
どうした

東雲
ビンゴです。これ、すぐに報告しないと···
って圏外かよ!

サトコ
「なにが書いてあったんですか?」

東雲
テロの計画
決行は明後日13時。ただ肝心の場所は判別できない···

サトコ
「ええっ」

東雲
テロが行われそうな場所···
駅、空港、劇場、大型商業施設···
違う···どれも当てはまらない
国の要人が集まりそうな場所···大使館、国会議事堂、それから···

後藤
『ジルマ・ワンダーランド』···

東雲
えっ···

後藤
ジルマ政府主導で開発された大型観光施設だ
オープンは明後日12時···当日の式典ではジルマ大使館をはじめ
多くの政府関係者が招待されている

(ジルマ···大型観光施設···)
(そうだ、そういえばニュースで···)

サトコ
「笹野川議員も招待されているかもしれないです」
「レセプションには出席していたはずですし」

後藤
そういえば、殿井建設からも社長が出席予定だ

サトコ
「じゃあ、ララ・リーが議員に近付いたり、設計図を盗んだのは···」

後藤
観光施設でテロを起こすためかもしれない
オープニングイベントの詳細は、議員から聞きだせる可能性がある
さらに、公表されていない施設や逃走経路を探るには設計図が必要だ

バラバラだった点と点がようやくつながる。
1本の線となって現れたその正体は···

(明後日行われるテロ行為···すべてはそのため···!)

後藤
歩、ここからの脱出経路は

東雲
全部で3つ
1つは正面突破···でもそれには複数の見張りを倒さないとダメ

後藤
2つ目は?

東雲
オレが使った経路。でも、オレがすでに見張りを2人倒してる
そのことに気付かれてたら、たぶんいろいろヤバいはず

後藤
3つ目は

東雲
2つ目の経路の途中にあるダストシュートに飛び込む方法
たぶん今はこれが一番確実なはずですけど···

サトコ
「そこを目指しますか?」

後藤
ああ、だが3人とも同じ経路なのはリスクが大きすぎる
少しでも確実性を高めないと···

後藤教官の視線が、私に向けられる。

後藤
氷川、行けるか

サトコ
「!」

後藤
お前が行けるなら、俺と歩がおとりになって別の経路を···

東雲
ダメです、後藤さん
この状況で、彼女1人に託すのは危険すぎます

後藤
だが···

東雲
オレたちの中で、一番確実に情報を届けられるのは後藤さんだけです
だから、おとりにはオレと彼女がなります

後藤
歩、だが···

東雲
テロは絶対に阻止しなければいけない
それが、オレたち公安刑事の役目でしょう?

サトコ
「!」

後藤
······

東雲
この足手まといはオレがなんとかします
彼女は、オレの補佐官ですから

(教官···)

東雲
それでいいね、氷川さん

<選択してください>

A: もちろんです

サトコ
「もちろんです」
「氷川、立派なおとりになってみせます!」

東雲
だそうですよ、後藤さん

B: とりあえずは···

サトコ
「まぁ、とりあえずは···」
「なんだか怖いですけど···」

東雲
なにそれ。今さら可愛い子アピール?
『長野のスッポン』のくせに

サトコ
「な···っ」

(今、ここでそれを言わなくても···!)

C: うーん···

サトコ
「うーん···」

東雲
···なに?不満?

サトコ
「不満というわけでは···」

東雲
じゃあキミ、1人で逃げ切れるの?
万が一失敗したら、大型観光施設がドカーン···

サトコ
「おとりで!氷川、おとりになります!」

東雲
···だそうですよ。後藤さん

東雲
やっぱりアナタが一番適任なんです

東雲教官はそういうと、自分のスマホを後藤教官に差し出す。

東雲
これをあなたに預けます
脱出できたら、すぐに室長に連絡してください

後藤
···わかった

東雲
では、今から脱出経路を説明します
1回しか言わないんで、頭に叩き込んでください

to be contineud



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