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東雲 ヒミツの恋敵編 6話



【教場】

(私と宮山くんが付き合ってる!?)

サトコ
「ちょ···なんでそんな···」
「付き合ってるわけないでしょ」

鳴子
「ホントに?」

サトコ
「ホントだってば」

(だいたい私には、東雲教官という人が···)

鳴子
「でも、1期下ではかなり噂になってるらしいよ」
「昨日の夜、宮山くんがサトコを抱きしめてたって」

サトコ
「ええっ、そんなことあるわけ···」

(···待って、そういえば···)

サトコ
「それじゃ、おつか···」
「ぎゃっ!」

(しまった、転ぶ···)

宮山
「バカですか、アンタ」

サトコ
「ご、ごめん···」

(···いやいやいや!)
(あれは支えてもらってたんであって、抱きしめてたなんてそんなこと···)

宮山
「おつかれさまです。氷川先輩は···」

(この声···!)

宮山
「ああ、いた」
「先輩、おつかれさまです。昨日の報告書ですけど···」

教場中の視線が、宮山くんに向けられる。
皆が様子を窺っているなか、彼の前に立ちはだかったのは···

鳴子
「聞いたよ、宮山くん」
「サトコとの噂」

サトコ
「だから違うって···」

鳴子
「ね、ほんとのところはどうなの」
「サトコと付き合ってるの?」

すると、なぜか宮山くんはにっこりと笑った。

宮山
「そうですね。良いお付き合いをさせてもらってますよ」
「···先輩後輩として」

最後に小声で付け加えられた言葉は、見事に教場中のどよめきにかき消された。

男子訓練生A
「マジで?いいのか?」

男子訓練生B
「いや、ダメだろ。指導係が手を出すとか···」

男子訓練生C
「つーか、氷川って肉食系だったんだな」

サトコ
「違うから!私たち、なんでもないから···」

千葉
「氷川···」

サトコ
「あっ、千葉さん···」

千葉
「良かったな。幸せになれよ···」

サトコ
「だから違うってば!」

(もう、なんでこうなるの!)
(私が好きなのは···本当に大好きなのは···)

サトコ
「聞いてよ、みんな!私が好きなのは···」
「警備部警護課の藤咲巡査部長なんだからーっ!」

力いっぱい叫んだところで、前のドアが音を立てて開いた。

東雲
うるさい。朝から騒ぎすぎ

(ななな···)
(なんで教官がここに···)

東雲
それと、そこの『噂の2人』

サトコ
「!」

東雲
すぐに室長のところに行って
話があるそうだから

とたんに、皆の視線が再び私と宮山くんに注がれた。

男子訓練生A
「おい、やっぱり···」

男子訓練生B
「な、言っただろ。指導係が手を出すのはヤバいって」

千葉
「だ、大丈夫だよ、氷川」
「し、真剣な交際だって分かれば、し、室長もきっと···」

サトコ
「だから付き合ってないってば」

そう、問題はそんなことじゃない。
本当の本当に問題なのは···

(知られてる···)
(宮山くんとの噂、教官に知られて···)

宮山
「行きましょう、氷川先輩」

(無理···)
(頭のなか、真っ白なんですけど···!)

【廊下】

廊下に出るなり、宮山くんは優等生の仮面を脱ぎ捨てた。

宮山
「ったく···皆ヒマすぎだろ」
「付き合ってるとか何とか、ガキじゃあるまいし···」

サトコ
「······」

宮山
「ていうか、アンタもすごい嘘つきますよね」
「藤咲巡査部長って確かアレでしょ。元芸能人で今はSPっていう···」

サトコ
「嘘じゃないもん···本当に藤咲瑞貴のファンだったもん···」
「プライベートの写真だって持ってるし···」

(ペットのハトの写真だけど···)

その写真をくれた人のことを思い出して、胸がずうんと重たくなった。

(まさか誤解してないよね)
(そんなの100万分の1もあり得ないってこと、ちゃんと分かってくれてるよね?)
(でも、教官···あんなにはっきりと「噂の2人」って···)

サトコ
「···ん?」

(待って、これってもしかして「嫉妬」?)
(元カレのハジメのときもあまり興味なさそうだった教官が?)
(今回の噂に対して、ついに···)
(ついに···!?)

宮山
「···なにニヤついてんですか、アンタ」
「気持ち悪いんですけど」

サトコ
「ハハッ、ごめんごめん」

(よし、なんか元気出てきた!)

サトコ
「さ、室長に会いに行こう!」

宮山
「···はぁ···」

(さっさと会って、今回の誤解を解かなくちゃ)



【室長室】

ところが···

難波
おお、来た来た
悪いなぁ、朝っぱらから

サトコ
「···いえ···」

(あれ、なんかいつもどおり緩め···?)

難波
歩から聞いたんだけどなぁ
お前ら、習志野学と仲良くなったって?

サトコ
「あ、はい···」
「というか、私ではなくて宮山くんがですけど」

宮山
「近いうちに取材に行く約束をしました」

難波
そうか。エライエライ
で、その取材だが···
明後日までに行ってきてくれ

(早っ)

難波
急かして悪いが、こっちも事情があってなぁ
任務の詳細は歩に伝えてあるから、詳しくはアイツに聞いてくれ

サトコ
「分かりました」

宮山
「···分かりました」

【廊下】

サトコ
「ふぅ···」
「良かったね。噂のことで呼び出されたわけじゃなくて」

宮山
「······」

サトコ
「でも、明後日までって急すぎるよね」
「何かあるのかな」

宮山
「······」

サトコ
「ま、それについては教官に聞けばいいっか」
「どうする、放課後に時間を取ってもらう?それとも···」

宮山
「すみません。俺、今日はこの後ずっと外出なんです」

サトコ
「え···」
「あ、そっか。野外訓練だっけ」
「わかった。任務の詳細は私が聞いて連絡するよ」
「アポ取りだけ、お願いできる?」

宮山
「分かりました。今日中に習志野と連絡を取ります」

サトコ
「うん、お願いね」

(宮山くんが1日中いないってことは16時からの勉強会もナシだよね)
(だったら教官には夕方から時間をもらおっかな)



【モニタールーム】

そんなわけで放課後···

サトコ
「失礼します」
「任務の詳細について伺いに来ました」

東雲
あっそう。そこに座···
なに、キミだけ?
『噂の2人』じゃないの

サトコ
「宮山くんは野外訓練でいないんです」
「なので詳細は私から伝えます」

東雲
ふーん···
残念だね、2人揃ってなくて

サトコ
「そうですね。とーっても残念です」

東雲
······
···キモ。なにニヤついてんの

サトコ
「すみません。でも···」
「教官がやきもち妬いてくれたと思ったら何だか嬉しくて···」

東雲
···は?

サトコ
「大丈夫です。心配しないでください」
「私の心はいつだって教官一筋です」

励ますつもりで、ポンポンと肩を叩く。
ところが、教官から返ってきたのは心底冷え冷えとするため息だった。

東雲
バカなの、キミ
信じるわけないじゃん、あんな噂

サトコ
「えっ、でも···」

東雲
なんだっけ、噂の根拠は···
『昨日の夜、宮山に抱きしめられていた』だっけ?
どうせコケたところを支えられたんでしょ
キミ、昨日は慣れないハイヒールを履いてたし

(うっ、当たってる!)
(で、でも···)

サトコ
「じゃあ、なんでわざわざ『噂の2人』なんて···」

東雲
別に。旬の話題に乗っただけ
もっともキミには喜んでもらえたようだけど
『教官が嫉妬してくれたー』って

(くっ、悔しい···)
(確かにその通りだけど!結構本気で喜びましたけど···っ)

東雲
···知ってるから
キミが誰を好きなのかなんて

サトコ
「!」

東雲
ほんと、分かりやすいし。しつこいし
うんざりするくらいアピールしてくるし
でも嫌いじゃない。そういうところ

サトコ
「······」

東雲
ま、仕方ないよね
スッポンで綿毛なんだから

(教官···)

さっきとは違う喜びが、じわじわと胸を満たしていく。
浮かれた感じとは違う、もっと心が温まるようなもの。

サトコ
「なんだか教官って···」

<選択してください>

A: 素直じゃないですね

サトコ
「素直じゃないですね」

東雲
だから何

サトコ
「好きです。素直じゃなくても」

東雲
······

サトコ
「超ツンツンツンツンツンツンツンツンデレでも···」
「教官のこと、私、大好きです」

東雲
···バカ

真っ赤な耳のまま、教官はゆっくりと振り返った。

B: 小学生みたいですね

サトコ
「小学生みたいですね」

東雲
······
···は?

サトコ
「クラスに1人はいますよね。こういうひねくれた男の子」
「特に好きなこの前では素直になれなくて···」
「そのせいで好きって言えなくて、いつまでも引きずって···」
「ついには初恋をこじらせちゃうタイ···プ···」

東雲
······

(あれ、なんか···怒りのオーラが···)
(さすがにちょっと言い過ぎた···?)

サトコ
「え、ええと、あの···」

東雲
もういい。そこに座れ

教官はあからさまにため息をつくと、テーブルの上にタブレット端末を置いた。

C: キノコですね

サトコ
「キノコですね」

東雲
·········
·········は?

サトコ
「え?」

(あ、あれ?なんで私「キノコ」なんて言って···)

東雲
······

(ま、まずい、この目つき···)

サトコ
「ち、違います!」
「本当は別のことを言いたかったんです!」
「それなのに、口が勝手に『キノコ』って···」
「『キノコ』って···!」

東雲
もういい。そこに座って

教官はため息をつくと、テーブルの上にタブレット端末を置いた。

東雲
任務の説明をする。用意は?

サトコ
「できています」

室内の空気が一変し、私は表情を引き締めた。

東雲
まず、これが今回必要な資料。任務前に必ず目を通して
それから任務の目的だけど···

説明を聞きながらメモを取り、転送可能な資料はスマホに送ってもらう。
それ以外のものは、今この場で頭で叩き込むしかない。

東雲
···説明は以上だけど
質問は?

サトコ
「今回の潜入目的ですけど···」
「習志野学とその関係者を探る感じでいいんですよね?」

東雲
そう。特に身内と研究関係者の情報はできるだけ手に入れて

サトコ
「例の『ありのまま団』に限らず、気になる人物がいたらどうしますか」

東雲
ひとまず名前だけチェックして

サトコ
「じゃあ、特に探ったりは···」

東雲
しなくていい
今後マークするかはこっちで判断する

さらに2、3の質問に答えてもらったところで、スマホのアラームが鳴った。

東雲
ほかに質問は?

サトコ
「いえ、十分です」

東雲
じゃあ、これで

タブレット端末をオフにすると、教官は一瞬何か言いたげな顔をした。

サトコ
「??」
「どうかしましたか?」

東雲
宮山は···

(宮山くん?)

東雲
···いい。なんでもない
ま、頑張って

サトコ
「はい!」

思えば、この時点で教官は何か気づいていたのかもしれない。
けれども、私はそれを知らないまま、現場へ向かうことになった。

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【研究所】

翌々日。
再び「長野かっぱ」「秋葉野冥土」として、私たちは研究所へやってきた。

宮山
「フリーライターの秋葉野と申します」
「本日は習志野先生と約束があって伺いました」

受付嬢
「えっ、習志野ですか?菊田ではなく···」

宮山
「はい、習志野先生ですが」

受付嬢
「···少々お待ちください」

受付嬢が、戸惑った様子で電話をかけている。
その間、私は先日目にした資料を思い出していた。

(「菊田」って、たぶん「菊田登」のことだよね)
(祝賀会で習志野学を呼びに来た、まじめそうな研究者···)

資料によると、菊田は習志野と同期で彼をサポートすることが多いらしい。

(というか菊田のサポートがないとダメなんだろうな、習志野学って)
(いかにも天才っぽい分、周りの空気とか読めなさそうだし···)

実際、研究発表や講演会は、習志野の代わりにほぼ菊田が行っている。
研究に関する取材も、菊田が引き受けることが多いようだ。

(確かに習志野学に頼んだら、平気で何時間もしゃべりそうだもんね)
(講演会の時も、軽く1時間オーバーしてたし···)

受付嬢
「お待たせいたしました。応接室に案内いたします」

【応接室】

通された部屋に、習志野の姿はなかった。
たぶん、今こちらに向かっているところなのだろう。

(本番はこれからだ)
(気を引き締めていかないと!)

宮山
「ずいぶん張り切ってますね」
「気負いすぎじゃないんですか?」

サトコ
「えっ、そうかな。だいたいいつもこんな感じなんだけど···」

(あ、でもたまに教官には注意されるよね)
(「ウザ」「暑苦しい」なんて···)

宮山
「···またですか」

サトコ
「えっ?」

宮山
「今、東雲教官のことを考えてたでしょ」

サトコ
「···っ」
「そ、そんなことは···」

宮山
「隠さなくていいですよ」
「何度も言ってるじゃないですか。先輩は顔に出しすぎだって」

(そ、そうかな。鳴子や千葉さんには一応バレてないんだけど)
(むしろ宮山くんのほうが気付きすぎっていうか···)

宮山
「不釣り合いだと思いますよ。先輩と教官」

サトコ
「!」

宮山
「絶対似合いませんって」
「いかにも『エリートとスッポン』って感じで」

(そ、そんな真顔で言わなくても···)

<選択してください>

A: それでも好きだ

サトコ
「いいの。それでも好きなの!」

宮山
「片思いのくせに···」

サトコ
「そんなの関係ないよ」
「好きになってくれたから好きになったわけじゃない」
「全然好かれてなくても好きになったんだもん」

宮山
「······」

サトコ
「だから関係ないの」
「『キノコとかっぱ』だろうと『キノコとスッポン』だろうと···」
「私は教官のことが大好きなの!」

宮山
「······」

サトコ
「···な、なに?変な顔して···」

宮山
「いや、俺···」
「『キノコ』なんて一言も言ってないんですけど」

(あ、しまった、つい···)

B: うるさい、メイド

サトコ
「うるさい、メイド」

宮山
「は?」

サトコ
「メイド···メイドメイドメイド···」

宮山
「や、やめろよ!メイドって呼ぶな!」
「どんなに『メイド』って呼ばれてもな!」
「俺はオムライスに『LOVE』なんて書かないし···」
「カフェラテに『萌え萌えマジック』なんてかけないからな!」

(···やっぱり詳しすぎるし)

C: 宮山くん、彼女は?

サトコ
「宮山くん、彼女は?」

宮山
「は?」

サトコ
「いないの?じゃあ、好きな人は?」

宮山
「···べつに」
「そういうの興味ないんで」

サトコ
「······え······」

(興味···ない···?)
(や、やっぱり宮山くんってそっち系···)

宮山
「違いますから」
「何を想像したのか、だいたい見当がつくんで言わせてもらいますけど」
「俺の理想は、清楚で控えめで賢い黒髪の女ですから!」

サトコ
「そ、そうなんだ···」

(ていうか、20代半ばでその理想もどうかと···)

そのとき、ノック音とともにドアが開いた。
現れたのは習志野ではなく、応接室に案内してくれた受付の女性だ。

受付嬢
「申し訳ございません」
「習志野ですが、急用ができてお会いできないとのことでして···」

(え···)

宮山
「急用って、だってアポイントを取ってるのに···」

受付嬢
「申し訳ございません」
「秋葉野様のおっしゃるとおりなのですが、どうしても急用ができたとのことでして···」

???
「うおおおおっ」

(えっ、なに今の雄叫び···)

???
「発見だ、大発見だ」
「今すぐ所内の···をすべて持ってきてくれ!」
「それから···と···とできる限りの···を···」

(あれ、この声···)
(それに、このものすごい早口って···)

サトコ
「あの···習志野先生ですよね?今、廊下で叫んでいるの」

受付嬢
「え、ええ···」

宮山
「どういうことですか?」
「急用ができたんじゃないんですか?」

受付嬢
「も、申し訳ございません!」
「習志野は、つい先ほど『世紀の大発見をした』とのことでして···」
「今は研究に没頭させてほしい···と···」

(そんなぁ···!)


【研究所の外】

宮山
「くそ···っ」
「これだから嫌なんだよ、天才ってヤツは!」

サトコ
「宮山くん、落ち着いて」
「ここ、まだ施設内···」

宮山
「でも普通ならあり得ないでしょう!?」
「こんなあっさりとドタキャンとか」

サトコ
「それはそうなんだけど···」

(どうしよう、まずは教官に連絡だよね)
(それで指示を仰いで、調べられることだけでも調べて···)

宮山
「···っ、先輩!」

サトコ
「えっ?」

宮山
「見てください、あの窓!」

宮山くんが示したのは、研究所の一角だ。
1階のとある部屋の窓から、男性が外に出ようとしている。
しかも、その人物は···

サトコ
「菊田···?」

窓から外に出た菊田は、白衣を脱いで周囲を見回している。
そのさまは、まるで空き巣に入った窃盗犯のようだ。

(なんで菊田があんなことを···?)
(あの部屋に、いったい何が···)
(あ···っ)

サトコ
「待って!どこに行くの」

宮山
「決まってるでしょう。アイツを追いかけるんです!」
「あの男、絶対に何かあります」
「このまま尾行すれば、ヤツの尻尾を···」

サトコ
「ダメだよ。そんな勝手なこと」
「まずは教官に報告して指示を仰がないと」

宮山
「!」

サトコ
「忘れてないよね?任務前に言われたこと」
「不審者がいても深追いするなって」
「まずは報告して、その後どうするかは教官たちが決めるって···」

宮山
「そんなの待ってたら逃げられるだろ!」

サトコ
「でも···!」

宮山
「いいのかよ、見逃しても」
「アンタだって本当は今すぐアイツを追いかけたいんだろ!?」

驚くほどはっきりと断言して、宮山くんは視線を落とす。

宮山
「東雲教官から聞いた。入校当時のアンタのこと」

(え···)

宮山
「訓練中にひったくり犯を追いかけたことがあるって」
「本当は人一倍正義感が強いんだって」

サトコ
「······」

宮山
「だから俺は認めたんだ」
「アンタのこと、指導係として」

(宮山くん···)

宮山
「菊田の行動が怪しいのは、誰が見ても明らかだろ」
「しかもアイツは、たぶん今から何かをやらかそうとしている」
「それなのに、アンタは上の判断を待ってこの機会を逃すのかよ」

サトコ
「······」

宮山
「手掛かりを掴むチャンスを、自分から投げ出すのかよ!」

真剣な眼差しに心が揺れる。
上からの指示を破るわけにはいかない。
一方で、宮山くんの言っていることが分からないわけでもない。

(窓から出てきたこと、白衣を仕舞い込んでいること)
(それに···)

答えを出しかねているうちに、菊田が動きだした。
すぐそばの裏門ではなく、なぜか敷地を取り囲む塀に向かって歩いている。

(なんで、塀に···)
(まさか、よじ登ろうとしてる?)

堂々と門から出入りできるはずの所員の不審すぎる行動。
それを見て何も思わないなら、それは···

(本当に、ただのバカだ)

サトコ
「···行こう、宮山くん」

宮山
「!」

サトコ
「菊田を、このまま追跡しよう」

宮山
「···はい!」

心臓が、うるさいくらい音を立てていた。
それでも私は、決断を覆すつもりはなかった。

to be contineud



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