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東雲 ヒミツの恋敵編 特典ストーリー



【東雲マンション】

週末···
数週間ぶりに彼女がウチにやってきた。

サトコ
「待っててくださいね」
「今日こそ、美味しいエビフライを作りますんで!」

(あーハイハイ)

東雲
どうせまたブラック···

サトコ
「エビフライです!エ・ビ・フ・ラ・イ!」
「大丈夫です。今回はレシピサイトを研究してきましたから」

やけに自信ありげに宣言して、彼女はキッチンへ行ってしまう。
1人残されたオレは、退屈しのぎにテレビのリモコンを手に取った。

司会者
『いいですか?もう一度読み上げますよ』
『「20代の女性100人に聞きました」···』
『「浮気をしたけれど一度もバレたことがない」···』
『YESが10人未満だと思う方は赤、それ以上だと思う方は青のボタンを押して···』

(···くだらなすぎ)

浮気がバレているかどうかは、相手側に聞かなければわからないことだ。
実際、気付いていても知らないふりをしている男もいるだろう。

(まぁ、うちの彼女は速攻バレるタイプだけど···)
(ていうか、半ベソかいて自己申告してきそうだけど)

チャンネルを変えて、他の番組を観てみる。
けれども、特に面白そうなものはなさそうだ。

(仕方ない、本気で読むか)

ふわ···とあくびをして立ち上がった。
確か、寝室に読みかけの本を置いてあったはずだ。



【裏庭】

(···ん?)
(え、ここ···裏庭···?)
(なんでオレ、こんなところに···)

???
「ごめんなさい!」

(この声は···)

サトコ
「本当にごめんなさい!」
「私、東雲教官が好きで···」
「本当に本当に大好きで···!」

(なにこれ···告白タイム?)
(相手の男は···)

千葉
「うん、知ってた」

(···ああ、なるほど···)

千葉
「悔しいけど俺、教官には勝てないもんな」
「東雲教官といえば、俺より頭もいいし仕事もできるし」

サトコ
「そうなの!」
「それも肌もきれいだし、髪の毛もサラサラだし」
「キッスもすごく上手だし!」

(ちょ、なに言って···)

千葉
「へぇ、そうなんだ」
「東雲教官、キッスがうまいんだ···」

(千葉もなに関心してんだよ!)
(ていうかお前まで「キッス」とか言うな!)

それにしても意外だ。
彼女が自分からオレのことを打ち明けるなんて。

(確か、鳴子ちゃんにも打ち明けていなかったはずなのに)
(知っているのは、せいぜい『**』くらいで···)

そこまで呟いたところで「あれ?」と思った。

(オレ···今なんて言った···?)
(誰かの名前···口にしたような···)

すると、突然足元がグラリと揺れて···



【個別教官室】

(···今度は···教官室?)
(なんでまたいきなり···)

???
「おつかれさまです」

(えっ···)

サトコ
「お待たせしました」
「幻のピーチネクターアイスです!」

(···アイス?)
(そんなの頼んでたっけ?)

サトコ
「···教官、アイスですよ?」
「早くぅ···受け取ってくださぁい」

上目遣いで近づいてきた彼女に、オレは思わず後ずさりしてしまった。

(な、な···なにこの子···)
(なんで胸の谷間にアイスを挟んで···)

あり得ない···
絶対にあり得ない!

(彼女に「こんな谷間」とか···)
(いや、申し訳程度にあった気はするけど···)
(アイスを挟める谷間とか···!)

サトコ
「どうしたんですかぁ、教官」
「受け取ってくれないんですかぁ?」

(いや、だから···)

サトコ
「ぐすっ···ひどいですぅ···」
「私、近所のコンビニ100軒まわったのに···」

(ないから!)
(このへんに100軒もコンビニないから!)

サトコ
「···もう···分かりました」
「だったらお駄賃だけください」

(···は!?)

サトコ
「ちょうだい、教官···」
「お駄賃の···キッス···」

(···っ!)
(誰だよ、お前···っ)

背中がぞわぞわっとして、オレは目の前の「女」を押しやった!

モッピー!お金がたまるポイントサイト

(どこだ···どこに行った?)

色気のかけらも、胸の谷間もない···

(でも、オレにとって特別なあの子は···)

【資料室】

次にオレが足を踏み入れたのは資料室だった。

(そうだ···あの子···)
(最近はここで勉強してるって···)

カタン、と物音がした。
驚いて振り向くと、彼女が本棚に手を伸ばしていた。

サトコ
「うーん···」
「うーーーん···っ」

(ああ、一番上の棚の本が欲しいのか)

けれども、彼女の背丈では背伸びしても厳しいのだろう。
さっきから形のいいふくらはぎがプルプルと震えている。

(しょうがない)
(オレが取ってあげて···)
(···っ)

ふいに、シャツの裾がめくれて彼女のわき腹が見えた。

(なに、これ···)
(なにこの学園ドラマみたいなシチュエーション···!)

頭では否定しているのに、オレの喉はコクンと鳴る。
だって肌の白さが、なんだか妙にまぶしくて。

(そうだ、あの子···)
(ああ見えて意外と色白だった···)

しかも、触ると、すぐに力が抜けて···
くったりとしながら、オレにもたれかかってきて···

(ちょ···バカ、こんなときに思い出すな!)

蘇りかけた記憶を無理やり頭から追い出して···
オレは、彼女に近づいて行った。

サトコ
「あ、教官···」
「···えっ、あの本、取ってくれるんですか?」

べつに、こんなの大したことじゃない。
なのに彼女は、頬を上気させてオレを見上げている。

(ほんと、安すぎ···)
(これくらいどうてことないのに···)

そう油断した矢先だった。

サトコ
「教官···いつもありがとうございます」

(え···また上目遣い?)

サトコ
「私のこと···見守ってくれて···」
「大事に、大事にしてくれて」

ひゅっ、と喉が鳴った。
気が付けば、腕に柔らかなものを押し付けられていた。

(ちょ···なに···)
(当たってる!当たってるって···)

サトコ
「逃げないで、教官···」

(いや、無理···)

サトコ
「どうして逃げようとするんですか?」
「私、魅力ないですか···?」

(だから···っ)

サトコ
「教官に···」
「抱いて···ほしいなぁ···」

あまりにもストレートなその言葉に、頭の中が真っ白になりかけた。

(違う、この子···)
(やっぱり別人···!)

マズい、逃げないと。
逃げて「本当の彼女」を探し出さないと···



【廊下】

廊下を走る。
ひたすら走る。
なのに···

サトコ
「教官ーっ」
「本当に我慢できるんですかーっ」

(ちょ···)
(なんで追いかけてきて···)

サトコ
「じゃあー」
「卒業すればいいんですかーっ?」

(···っ)

サトコ
「私が···卒業すれば―っ」
「私のことー、抱いてくれるんですか―?」

(抱くよ!)
(いくらでも抱くよ!)
(って、なんでオレ、こんなこと口走って···)

そのとたん、あたりがいきなり真っ白になった。

夕闇が消え、景色がぐにゃりと歪み、そして···



【講堂】

(ここは···講堂?)
(なに···今度はいったい···)

成田
「何をやってるんだ、キミは」
「もうすぐ式がはじまるぞ」

(式?)
(えっ、まさか···)

石神
ついに卒業か

後藤
おめでとう、歩

(いや、オレに「おめでとう」って言われても···)

颯馬
ついにこの日が来ましたね

難波
今までよく我慢したな
エラかったぞ、歩!

(だから、なんで今その言葉···!)

黒澤
いよいよですね、歩さん
サトコさんがお待ちかねですよ

(透、お前まで···)

加賀
歩···
抱きつぶすんじゃねぇぞ

(はぁぁぁぁっ!?)

頭がついていかなかった。
心もついていかなかった。
何がなんだか分からないまま、気が付いたら卒業式は終わっていて···

【東雲マンション】

サトコ
「教官···」
「いえ、あゆむん···」

(···はい?)

サトコ
「ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いいたします」

(···なに、これ)
(なんで三つ指をついてるの、この子···)

ダメだ。
とんだ茶番を見せられてる気分だ。

(···分かった、夢だ)
(これは夢なんだ···)
(ていうか夢じゃないと困る···)

サトコ
「服、脱いだ方がいいですか?」

!?!?

サトコ
「それとも···」
「脱がせてくれますか?」

(いや、ちょ···)
(待って、少し落ち着いて···)

サトコ
「···教官?」
「どうして何もしてくれないんですか?」

(どうしてって···)

サトコ
「やっぱり私···」
「抱いてもらえないんですか?」

(違···そうじゃない!)
(そうじゃなくて···)

おかしい。
何かがおかしい。

(この子じゃない···)

···でも、どう見ても「彼女」だ。

(まるで別人だ···)

···いや、案外これが彼女の本心だったのかも。

(どこだ?どこにいる?)
(誰よりも大事な「うちの彼女」はいったいどこに···)

サトコ
「···分かりました」
「もう無理なんですね」

(···え?)

サトコ
「だったらこれ···」
「教官にお返しします」

(これって···)
(ホワイトデーにキミにあげた···)

サトコ
「決めました、私」
「『**』のものになります」

(···は?)

サトコ
「だって、教官ってばヘタレだし」
「卒業キッスもしてくれないし!」
「でも『**』は好きって言ってくれたし」
「私、『**』のものになったほうがいいかなぁって」

(えっ、ちょ···)
(待って···なに言って···)

サトコ
「今までお世話になりました」
「さよなら!お元気で···」

(だから待ってって···!)

気が付いたら、身体が勝手に動いていた。
背中を向けかけた彼女を、オレは抱きすくめ、押し倒していた。

サトコ
「あっ、教か···」
「ふ···っ」

言葉を紡ごうとした彼女の唇を、半ば強引に自分の唇で塞ぐ。

(嫌だ、聞きたくない···)

これ以上、どんな言葉も···
誰の名前も聞きたくはない。

サトコ
「教か···苦し···」

ベッドのスプリングが、何度も跳ねる。
もがく彼女に構うことなく、シャツの中に手を差し入れる。

サトコ
「あ···っ」

やわらかな感触。
淡く白く光る肌。

サトコ
「や···」
「待って···教官···」

嫌だ、待たない。

サトコ
「いいんですか···ほんとに···」
「ほんとに私···教官のものに···」

する。
オレのものにする。
絶対、誰にも渡さない。

(だから行くな)

そばにいて。
オレの隣にいて。

(お願いだから···)

カシャッ···

(···ん?)

カシャッ···カシャッ···
カシャッ···

(なに···このシャッター音···)

うっすらと目を開けてみる。
真っ先に視界に入ってきたのは···

(···スマホ?)

しかも、そのスマホをオレに向けているのは···

サトコ
「あ···」

東雲
······

サトコ
「え、ええと···」
「ご飯できましたよ、なんて···」

彼女のシャツを、グッと引っ張った。
きゃあっと悲鳴が上がったけど、気にせず胸元を覗きこんだ。

サトコ
「ななな何するんですかっ」

(···あった)

オレがあげたガーベラのペンダントトップ。

(大丈夫だ···)
(突っ返されてなんかいない···)

ついでに谷間も見えた。
······どう頑張っても、アイスは挟めそうになかった。

(つまり、さっきのはぜんぶ夢···)

サトコ
「あの···教官···?」
「もしかして、怒ってたりしてます···?」

東雲
······

サトコ
「そりゃ、その···」
「隠し撮りはいけなかったのかもしれないですけど···」
「『うたた寝教官』は私的にレアで···」
「特に腹チラとか腹チラとか···」
「腹チラとか、すごくこう···そそられたっていうか···!」

東雲
······

サトコ
「···教官?」
「聞こえてますか、教官···?」

彼女は、不思議そうに首を傾げると···
ちゅ、とかすめるようなキスをしてきた。

サトコ
「···起きましたか?」
「目、覚めましたか?」

東雲
······

サトコ
「覚めてないなら、もう1枚撮っちゃいますよー」
「···なんて···」

てへっ、と笑ったその顔が、なんだかひどく懐かしくて···

(ああ、「彼女」だ···)

色気がなくて、胸もなくて···
笑顔がバカっぽい「うちの彼女」···

東雲
キス···

サトコ
「え?」

東雲
もう1回···して···

サトコ
「···はい···」

ちゅ、と再び軽くぶつかった唇。
でもその程度では物足りなくて、また「もう1回」と呟いたりして。

サトコ
「なんだか珍しいですね···」

東雲
······

サトコ
「やっぱり寝起きだから···かな···」

彼女は照れ臭そうに笑うと、唇を近づけてきた。
そのときだった。

プルル···

サトコ
「あ···」
「ちょっと待ってください、教官···」

サトコ
「···っ」

なぜか、彼女は緊張したように身体を強張らせた。

東雲
···誰?

サトコ
「あ、ええと···」
「宮山くん···で···」

(みややま···?)

サトコ
「ど、どうしたのかな···」
「なにか勉強で分からないことでも···」
「あ···っ」

皆まで言わないうちに、オレは彼女のスマホを取り上げた。

サトコ
「ちょ···教か···」
「ん···っ」

次に、強引に唇を塞いだ。
夢の中で、そうしたみたいに。

サトコ
「待っ···」
「ちょっ···電話···」

東雲
あとにして

サトコ
「でも···」
「ん···んん···っ」

自分でもロクでもないなと思った。
それでも、どうしてもキスを止められなかった。

サトコ
「···っ」

東雲
······

サトコ
「教か···」

オレを押しやろうとしていたはずの手は、いつの間にか首裏に回っていた。
そのことが嬉しくて、さらに深く彼女の唇をむさぼった。

(行くな···)

サトコ
「ん···」

(行くな···どこにも···)

もし、うちの彼女が浮気をしたら···
それを見抜く自信は間違いなくある。

(でも、それ以前に···)
(この子は絶対に浮気なんかしない···)

知っている。
そんなこと、だれよりもよく知っている。
だから、こんなに心が揺れるのは···
きっとオレ自身の問題なのだ。

Happy End

※レアな腹チラ



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