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東雲 ふたりの卒業編 4話



【資料室】

その日の夜···

東雲
PCに細工?

サトコ
「そうです、たとえば···」

私は、昼間思いついたことを2人に説明した。

宮山
「そうか、『修理を呼ぶには壊れればいい』···」
「『壊れない』なら『壊せばいい』ってことですね」

サトコ
「うん、実際は『PCトラブルを起こす』ってイメージなんだけど」
「とにかくそれで教官が研究2課にで婿ことができれば···」

宮山
「堂々とPCに触ることができる」
「さらに同じネットワーク上の他のPCデータも探れるってわけですね」

サトコ
「そうなの!だから···」

東雲
雑すぎ

サトコ
「えっ···」

東雲
1、どうやってPCトラブルを起こすのか
2、トラブルが起きたとき、オレが出向けるとは限らない
この2点の対処法は?

サトコ
「1については、先月の颯馬教官の講義でやり方を習っています」
「2についてですが···」
「『噂』を流そうと思うんです」

東雲
噂?

サトコ
「たとえば『南雲さんはPCトラブルをすぐに解決してくれる』とか」
「『すごく優秀で優しくて頼りがいがある』とか」

東雲
くだらない。そんな噂でうまくいくはずが···

宮山
「そうでもないですよ。システム開発部、すごく評判悪いですから」

サトコ
「!」

宮山
「この会社、古いハードに新しいシステムを入れているせいか」
「PCトラブルが結構多いんです」
「それなのに、システム開発部の対応はすごく悪い」
「トラブルが起きて連絡すると『その程度のことも直せないのか』と嫌味を言われる」
「だから『システム開発部に連絡したくない』って人、結構多いそうです」

サトコ
「じゃあ、噂が上手く広まれば···」

宮山
「教官の指名率は高くなります。だから···」
「俺は、先輩の案は『有り』だと思います」

(宮山くん···)

東雲
だったら好きにすれば
オレは協力しないけど

(え···)

宮山
「必要ありません。俺が先輩に力を貸しますから」

東雲
···あっそう

サトコ
「教官、どこに···」

東雲
モニタールーム。他に仕事があるから
あとは2人で話し合って

資料室のドアに手をかけた教官に、私は···

<選択してください>

A: 必ず成功させます

サトコ
「必ず成功させます!」
「教官が研究2課のPCに触れるように」

東雲
······

サトコ
「だから、どうか信じてください!」

東雲
······

B: やっぱりやめようか

サトコ
「やっぱりやめようかな」
「教官があそこまで言うってことは、たぶん失敗···」

宮山
「何言ってるんですか、もっと自分の提案に自信を持ってください」
「俺が力になりますから!」

サトコ
「宮山くん···」

C: 意地悪キノコめ···

(うう、意地悪キノコめ···)
(キノコキノコ···キノコの呪い···)

東雲
なにか言った?

(ひっ)

東雲
キミ、今なにか言ったよね?

サトコ
「い、いいい言ってません、なにも言ってません!」

東雲
············ふーん

(怖っ、わざわざ戻ってくるなんて···エスパーか!)

音を立ててドアが閉まり、宮山くんはため息をついた。

宮山
「すごい自信家ですよね。東雲教官って」
「自分が正しいと思ったことは絶対に曲げない···」
「他人の意見は聞き入れない!って感じで」

サトコ
「そんなことないよ」
「必要な時はちゃんと聞いてくれるよ」

宮山
「······」

サトコ
「それに、自信家かもしれないけど独善的ってわけじゃない」
「それだけは分かってほしい」

つい、言葉に熱がこもってしまう。
そんな私に対して、宮山くんは再びため息をついた。

宮山
「東雲教官を庇うのは、好きな相手だからですか?」

サトコ
「ううん、尊敬する人だからだよ」
「2年間、補佐官をやってきて···」
「『好き』とはべつに尊敬もしているから」

宮山
「······」

サトコ
「ってことで、教官のことはここまで!」
「そろそろ具体的な作戦を練らないと···」

宮山
「そのことですけど···」
「噂を流すのは、俺に任せてもらえませんか?」

サトコ
「えっ、いいの?」

宮山
「ええ、俺にちょっとした案があるんです」

結論として、ここで宮山くんに任せたのは大正解だった。



【個別教官室】

3日後、出社前ミーティングにて。

東雲
······

サトコ
「あの、どうしたんですか?」
「なんだかずいぶん疲れてるみたいですけど···」

東雲
べつに。昨日、内線電話が鳴りっぱなしだっただけ

宮山
「PCトラブルについての問い合わせですよね」
「それも女性社員ばかりから」

(えっ···)

東雲
···やっぱりキミが原因?

宮山
「ええ、一昨日の総務部の飲み会で『南雲駆』の噂を流したんです」
「それも社内一の『噂好き』という女性社員の前で」

東雲
なるほどね···
やるじゃん

宮山
「ありがとうございます」

(ということは、噂を流すのは成功したわけで···)

東雲
次の手は?
『研究2課のPCに意図的にトラブルを起こす』って話だったけど

サトコ
「17時~18時の間に研究2課に潜入して作業します」

東雲
どうやって?

私は用意していた紙をテーブルの上に置いた。

宮山
「これは···清掃員のシフト表と清掃時間ですよね」

東雲
もしかして、清掃員に変装するってこと?

サトコ
「はい」

【四ツ橋ケミカル】

時刻はもうすぐ17時をまわろうとしている。
清掃員に変装した私は、ごみ袋を手に研究2課のあるフロアに足を踏み入れた。

(あと30秒で17時になる···)

ポケットに忍ばせているのは、今朝こっそりと借りた清掃員用のフロアパス。
もちろん、普段はこれで研究2課に入ることはできない。

(でも、17時から1時間だけ、ごみ回収のために出入りできるようなる)
(本物の清掃員がこのフロアに来るのは17時30分以降)
(その10分前には撤収しないと)

スマホが震えて17時を告げた。
私はカードリーダーにパスを近づけた。

【研究2課】

悪目立ちしない程度に挨拶をして、ざっと室内に視線を走らせる。

(着席しているのは3人だけ)
(イケる···これなら時間内にすべてを済ませられるはず)

まずはごみを回収しながら、どこ席に仕掛けるのかを考える。

(できれば女性社員のPCがいいんだよね)
(研究2課の女性社員は3人···そのうち2人はこの列に···)

サトコ
「!」

(これ···!)

PCのディスプレイに貼られたピンクの付箋。
そこに記された「システム開発部・南雲 内線4589」の文字。

(決めた、この席にしよう)
(ここならギリギリ見られずに作業できるはず)

迷っているヒマはない。
まずは、机の上のPCに仕掛けを施した。

(···できた。これでスリープ解除時にエラーメッセージが出るはずだ)
(あとは盗聴器を設置しないと)

今度は、床のごみを拾うふりをして机の下に潜り込む。

(引き出しの脇だと目に付きやすいよね)
(あ、でもここなら···)

作業する指先にすべての意識を向けて、なんとか盗聴器を設置した。

(よし、あとは撤収···)

???
「あのぉ···なにしてるんですか?」

サトコ
「···っ」

(マズい、設置に気を取られすぎてた!)

すぐさま、シャツのボタンに手をかける。
それを力任せに引きちぎると、私はうつむき気味に立ち上がった。

サトコ
「すみません。ボタンを落としてしまって···」

(うん?この香りは···)
(やっぱり!前に食堂でぶつかった···)

動揺を見せないように、素早く彼女に頭を下げる。
あとは誰とも目を合わせないようにして、残りのごみ回収をすべて済ませた。

(あぶなかった···)
(でも、これでやるべきことはすべて終わらせたよね)
(あとはPCがトラブルを起こしてくれれば···)

???
「あれぇ?」

女性社員
「どうしたの、さっちん」

さっちん
「パソコンが···なんかヘンみたい···」

(よっしゃ、任務完了!)

内心ガッツポーズしながら、私は研究2課をあとにした。

【廊下】

(よかった、無事に終わらせることができて)
(一時はどうなるかと思ったよ)

何はともあれ、やるべきことはすべて済ませた。
あとは、あの女性が教官に連絡するように祈るだけだ。

(それにしても、彼女···やっぱり誰かに似ている気が···)
(誰だっけ···うーん···うーん······)

サトコ
「あ···」

ふいに、数メートル先に見知った人が現れた。

(教官···!)

教官は、私に気付くなりスッと目を逸らした。
けれども、すれ違いざま···

東雲
おつかれ

指と指がこつんとぶつかった。
とたんに、いろんな思いが胸から溢れそうになった。

(よかった、うまくいったんだ)

ここから先は教官の仕事だ。

(教官なら必ず必要な情報を見つけ出してくれるはず)
(「さっちん」さんのPCを修理しながら、きっと···)

サトコ
「あ···」

ふいに、頭の中でふたりの人物が重なった。

(そうだ···彼女、誰かに似てると思ったら···)
(さちさんに似てるんだ)

それはさておき、捜査は順調に進んでいるように思えた。
次のミーティングでは何か新たな進展があるはず···
そう思っていたのだ。
まだ、この時点では。



【個別教官室】

ところが3日後···

宮山
「えっ、どういうことですか!?」

東雲
どうもこうも今言ったとおりだよ

宮山
「そんなの納得できません!」
「あり得ないですよ、1000万円が『リンゴジュース』に化けたなんて」

東雲
だとしても事実は事実
前に話したよね、研究2課の阿川っていう開発者のこと
その彼が1日に何本も高級な『リンゴジュース』を飲んでるんだよ
1本5940円のやつ

(高っ)

東雲
さすがに、ここまで高いジュースは経費で落とせない
けれども会社としては阿川を手放したくない
そこで『四ツ橋ケミカル』の社長が、『研究費』の名目でお金を振り込んでいたってわけ

サトコ
「じゃあ、振込主の『フォー・ピース・ワールド』は···」

東雲
『四ツ橋ケミカル』の社長が関わってる会社
ちなみに代表取締役は社長の愛人

宮山
「嘘だ!」

東雲
嘘じゃない。疑うなら自分で調べなおせ

宮山
「···っ!」

サトコ
「待って!宮山くん···」

バタン、と大きな音が響いた。
それが、彼の憤りを表しているように思えた。

(めずらしいな、宮山くんがあそこまで感情的になるなんて)

東雲
いいの、追いかけなくて

サトコ
「えっ?」

東雲
宮山のこと。このまま放っておくつもり?

サトコ
「いえ、もちろんフォローしますけど」
「少し時間を置こうと思って」
「ひとりの方が宮山くんも冷静になれると思いますし」

東雲
···ふーん
よくわかってるんだね、宮山のこと

<選択してください>

A: そりゃ、まぁ···

サトコ
「そりゃ、まぁ···教育係ですし」
「なんだかんだで結果一緒にいますし」

東雲
そうだね
······よりも

サトコ
「えっ、今なんて···」

東雲
べつに。なんでもない

サトコ
「??」

B: そんなことない

サトコ
「そんなことないですよ」
「私が知ってる宮山くんのことって言えば···」
「頭がいいのと、オレンジジュースが好きなのと···」
「市販のおにぎりのセロファンを上手に剥がせないのと、それから···」
「ああ、後藤教官に憧れているってことですね!それと···」

東雲
もういい

サトコ
「えっ?」

東雲
お腹いっぱいだから、もう

サトコ
「···そうですか?」

C: 今のやきもち?

(あれ、今の···)

サトコ
「やきもちですか?」

東雲
···は?

サトコ
「そうですよね?今、絶対にやきも···」
「ふぐ···っ」

東雲
何言ってんの、キミ

(な、なんで唇をつままれて···)

東雲
誰が、誰に、やきもちだって?

(唇···唇がつぶれる···っ)

東雲
···で?
宮山をひとりにするためだけなの?キミがここに残った理由は

サトコ
「···いえ」
「教官からまだ報告を受けていないことがあると思いまして」

東雲
······

サトコ
「研究2課の『テロ組織への技術提供』···」
「そっちも、もちろん調べていますよね?」

教官は、かすかに眉を上げるとテーブルの上に記憶媒体を置いた。

サトコ
「これは···」

東雲
オレからキミに報告することは何もない
調べたければ自分で調べれば?

(···そうくるか)

【資料室】

というわけで、さっそくPCを手に資料室へとやってきた。

(まずは、この記憶媒体のなかのデータを開かないと···だよね)
(このフォルダの番号は···個人IDか)
(あ、独自ソフトのデータも入ってる。こっちは···)

そうして調べているうちに、時間はあっという間に過ぎ···

サトコ
「ふわぁ···」

(さすがに眠たくなってきたな。今、何時···)

サトコ
「!!」

(やば、消灯時間まで10分もない!)
(急いで戻らないと!)


【寮 廊下】

サトコ
「はぁ···はぁ···」

(よかった、なんとか間に合った···)

サトコ
「ん?」

部屋のドアノブに、なぜかコンビニの袋がぶら下がっている。

(なにこれ···ペットボトル?)
(いったい誰が···)

鳴子
「あれ?サトコ、今帰ってきたの?」
「もう消灯5分前だよ」

サトコ
「うわ、そうだった!」

そんなわけで、この日は就寝までバタバタしてしまい···

【寮 自室】

翌朝···

サトコ
「ふわぁぁ···」

(久しぶりによく寝たなぁ。土曜日サイコー···)
(って、のんびりしている場合じゃないってば)
(データ閲覧、まだ1/3も終わってないんだから)



【資料室】

いつもよりも早めに朝食を済ませて、数時間ぶりに資料室へ戻ってきた。

(昨日は阿川のデータでつまずいたんだよね)
(メールの内容が意味不明すぎるし、研究内容も難しすぎて···)

もっとも、教官によると阿川は「優秀な開発者」らしい。

(そのテの人って変わった人が多いのかな)
(『サイキ・エレクトロニクス』の習志野学もそんな感じだったし···)

サトコ
「あ···」

宮山
「おつかれさまです」

サトコ
「おつかれさま。調べもの?」

宮山
「はい。昨日の件、どうしても納得できなくて」

(えっ···)

サトコ
「もしかして疑ってるの?東雲教官のこと···」

宮山
「違います。ただ腑に落ちないだけです」
「だから納得がいくまで、とことん調べてみようと思って」
「東雲教官にも『自分で調べ直せ』って言われましたし」

淡々とした口調の中に、強い意志を感じる。
どうやら意地を張っているわけではなさそうだ。

(そうだよ···本来は私より冷静な人だもん、宮山くんって)

そのことを私はよく知っている。
これでも1年間、彼の教育係だったのだ。

(だったら···)

サトコ
「わかった。一緒に調べよう」

宮山
「えっ、でも···」

サトコ
「納得いっていないんでしょう?」
「東雲教官の報告をおかしいって思ってるんだよね?」

宮山
「···はい」

サトコ
「だったらとことん調べよう」
「宮山くんが納得いくまで付き合うから」
「ちょうどここに阿川のPCデータもあるし」

宮山
「!!」
「先輩、それは···」

サトコ
「昨日、教官から預かってきたの」
「ここにも何かヒントがあるかもしれないよね」

宮山
「······」

サトコ
「ほら、座って。早く調べよう」
「けっこう謎が多いから、この阿川って人」

宮山
「···はい!」

それから2人がかりで経理関係の資料や阿川のPCデータを確認してみた。
さらに、振込主の「フォー・ピース・ワールド」についても調べてみた。
けれども···

サトコ
「···こっちもないね」

宮山
「······」

サトコ
「これで、今調べられるところは全部見たかな」
「悔しいけど、これ以上に調べてもたぶん結果は同じ···」

宮山
「······」

(···宮山くん、黙り込んじゃった)
(そうだよね。これだけ調べても結果が出なかったんだもん)
(でも、このまま放っておくわけには···)

サトコ
「よし、ごはんに行こう」

宮山
「どうぞ、行ってきてください」

サトコ
「なに言ってるの、2人で行くんだよ」

宮山
「いえ、俺は···」

サトコ
「ダメだよ、先輩命令」
「ほら、行くよ。立って立って!」
「今日はおごるから」


【ファミレス】

さて、1時間後···

宮山
「渋谷まで連れてきて、結局ファミレスですか」

サトコ
「いいの!このお店の唐揚げ定食、めちゃくちゃ美味しいんだから」
「ほら、早くメニューを選んで」

宮山
「······」

サトコ
「宮山くん?」

宮山
「今日はすみませんでした」
「せっかく付き合ってくれたのに時間の無駄になってしまって」

(時間の無駄?)

サトコ
「なに言ってるの。無駄なことなんて何もなかったよ」

宮山
「いいです。そういう慰めは」
「結局、何も見つからなかったのに···」

サトコ
「そうだよ。それが『分かった』んだよ」

宮山
「え···」

サトコ
「公安的には疑わしいことは『何もなかった』」
「テロ組織との関連性が『なかった』」
「それが分かるって大事なことだよね?」

宮山
「······」

サトコ
「逆に、気になることがあるのに放っておくほうが大問題だよ」
「私たちは事件を未然に防ぐことができるのに」

宮山
「あ···」

サトコ
「疑問点を無視しなかった宮山くんは間違ってない。正しい」
「だから『何もない』って結果が『分かって』良かったんだよ」

宮山
「先輩···」

ようやく、宮山くんの眉間のシワが消えた。
それを嬉しく思いながら「ハイ」とメニュー表を差し出した。

サトコ
「さ、頼んで。なんでもいいから」

宮山
「じゃあ、サーロインステーキ定食・ドリンクバー付で」

サトコ
「!?それ、一番高いメニュー···」

宮山
「なんでもおごってくれるんですよね?」

(あ、笑った···)

サトコ
「···しょうがないなぁ、もう」

(よかった。これで少しは元気になれたかな)


【店外】

宮山
「あー、いっぱい食べた!」
「俺、お腹いっぱいです」

サトコ
「···でしょうね」

(おかげで、私のお財布はスカスカなんですけど···)

宮山
「先輩···やっぱり俺、払いますよ」

サトコ
「い、いいよ!」

宮山
「でも、先輩さっきからずっと涙目で···」

サトコ
「大丈夫!最初から私が払うって約束だったから···」

すると、周囲からクスクスと小さな笑い声が聞こえてきた。

(えっ、なに?)

男1
「女に払わせるとか···」

女1
「ちょ···見ちゃダメだよ」

(ん?)

女2
「ありえない···」

男2
「たしかにな」

(なにがありえないんだろう)
(ごはんくらい、女性がおごったって···)

宮山
「先輩、ここ···」

サトコ
「え···」

(うそ、ラブホ街!?)

サトコ
「み、宮山くん、まさか···」

宮山
「誤解です!」
「曲がり角を1本間違っただけで···」
「···っ」
「先輩、こっちに来て」

サトコ
「えっ、なに···」

宮山
「いいから!早くこっち!」
「ここに隠れて、あそこを見て」

サトコ
「あそこ?」
「!!」

宮山くん示したのは、右斜め前にあるシックな造りのラブホだ。
そして、そこから女性と腕を組んで出てきたのは···

宮山
「あれ、東雲教官ですよね?」

サトコ
「······」

宮山
「一緒にいる女性は···」

サトコ
「さっちん」

宮山
「え?」

サトコ
「研究2課の···」

オリエンタル系の香りが記憶によみがえる。
そんななか、2つの人影が1つに重なった。

宮山
「えっ」

見間違いではなかった。
彼女が教官の手を引き、教官はそれに応えるように身体を屈めた。
2人は、キスをした。
間違いなく、キスしていた。

to be contineud



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