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恋の行方編 後藤2話



【教官室】

一柳昴
「お前たちには···SPになってもらう」

サトコ
「!?」

後藤教官との潜入捜査に必要な特別訓練。
臨時教官としてやってきたのは警備部警護課のSP一柳教官だった。

一柳昴
「女ひとりで特盛餃子を食える女だ。肝は据わってるんだろうな」

後藤
特盛餃子?何の話だ

サトコ
「以前、学校近くの中華料理屋で顔を合わせたことがあって···」

一柳昴
「氷川はもちろんだが、後藤、お前にもSPの基礎から叩き込んでやる」
「オレのもとでは、氷川もお前も同格だと思え」

後藤
万に一つお前から学ぶことがあるならな

一柳昴
「桂木班を甘く見るんじゃねーよ」

颯馬
相変わらず仲が良くてうらやましいね
ここまで仲が良いと妬けますよね?サトコさんも

<選択してください>

 A:妬けますね 

サトコ
「ふふっ、そうですね。ちょっと妬けちゃいます」

一柳昴
「それだけの余裕があるなら、遠慮なくしごけるな。女でも特別扱いしねーから」

後藤
···しっかりやれよ、氷川

サトコ
「は、はい!」

 B:いいコンビですね 

サトコ
「後藤教官と一柳教官っていいコンビですよね」

後藤・一柳
「どこがだ!」

サトコ
「そういうところがです···」

後藤
······

一柳昴
「······」

 C:仲良いように見えないです 

サトコ
「私には仲良いように見えないんですけど···」

颯馬
一緒に訓練すればわかりますよ。2人は本当に仲良しですから

一柳昴
「やめてくださいよ、周さん」

後藤
氷川は素直に信じるじゃないですか

颯馬
百聞は一見にしかず···
訓練後のサトコさんの反応が楽しみです

(仲良しって···本当にそんなふうに見えるようになるのかな?)

石神
後藤と氷川には、ターゲットのSPとして潜入捜査に入ってもらう
一柳から一通りのレクチャーを受けるように

一柳昴
「お前ら、自分たちは協力を拒否するくせに、他の部署に要請する時は強引だよな」
「桂木さんからの指示じゃなかったら、断ってるところだ」

後藤
お前が断れば、もっと優秀なSPが来て俺たちも助かったんだがな

一柳昴
「そういう大口は訓練を終えてから言うんだな」
「捜査のためと言っても」
「桂木班に入るなら、それ相応の仕事はできるようになってもらわなくちゃ困る」
「一朝一夕でどうにかなるものでもないが···」
「まあ、怪しまれない程度には基礎を叩きこんでやるよ」
「それにオレたち以上に優秀なSPはいないからな」

後藤
偉そうに···

一柳昴
「何か言ったか?」

後藤
別に

(訓練も大変そうだけど、この2人と一緒に過ごすのも大変そう···)

すぐに火花を散らせる後藤教官と一柳教官に、こちらは冷や汗ものだ。

サトコ
「と、とにかく···一柳教官、よろしくお願いします!」

一柳昴
「ああ。礼儀は訓練生の方が弁えてるようだな」

後藤
······

(訓練、順調に進められるのかな···?)

一抹の不安を抱きながら、さっそく訓練が開始されることになった。



【訓練場】

一柳教官のもと、射撃、護衛法、礼儀作法などのSP研修が通しで行われる。

一柳昴
「後藤、お前愛想笑いのひとつもできねーのかよ」

後藤
護衛するのにヘラヘラ笑う必要があるのか

一柳昴
「オレたちの仕事は要人警護だ」
「偉そうな政治家にヘラヘラ笑って返さなきゃいけねぇ時もあるんだよ」

後藤
ああ、だからお前はいつも締まりのない顔をしてるのか

一柳昴
「テメェな···しくじってもフォローしねーからな」

サトコ
「あ、あの···私はどうでしょうか?少しはSPらしくなったとか···」

一柳昴
「···お前、本当に剣道しか取り柄がないんだな」

一柳教官の声にどこか哀れむ色があるようで、私もガクリと肩を落とす。

サトコ
「う···はい···」

後藤
氷川の剣道の腕のおかげで、子供を助けられたがな

一柳昴
「何の話だ?」

後藤
子供を人質にしようとした犯人に、氷川がホウキで応戦して守った
あれは氷川の剣道の腕があってこそできたことだ

サトコ
「後藤教官···」

(そう言ってもらえると嬉しいな)

一柳昴
「特技が何もねーよりはいいが···」
「訓練だけ続けてても仕方がない」
「外で実践演習するぞ」

サトコ
「は、はい!」

一柳昴
「訓練に割いてる時間もあまりない。お前たちには1週間程度で全部覚えてもらう」

(1週間でSPの仕事を全部···覚悟はしてたけど、厳しい)

東雲
あれ?一柳さん、来てたんですか

加賀
俺の班への配属願いでも出しに来たか?

訓練場を出ようとすると、加賀教官と東雲教官が通りかかった。

一柳昴
「加賀さん。悪いが、オレは桂木さんの下にしかつきませんよ」

加賀
桂木···あの朴念仁石頭より、俺のところの方がお前は伸びるぞ、一柳

東雲
同族嫌悪に近いものがあるんじゃないですか?加賀さんと一柳さんは

一柳昴
「オレは加賀さんほど性格悪くねーよ」

加賀
俺は一柳ほど甘くねーよ

東雲
ほら、ちょっと似てる

後藤
捜査のための下準備です。今度はターゲットにSPとして接近する任務なので

加賀
まだあのヤマ追ってんのか

後藤
解決するまで諦める気はありません

加賀
執念だけで捜査続けんじゃねぇぞ

後藤
加賀さんを見習ってるだけですよ

加賀
お前、そういう嫌味なとこ眼鏡野郎に似てきてんぞ

加賀教官は嫌そうに眉をひそめた。

東雲
サトコちゃんも潜入捜査に駆り出されてるんだ。訓練生なのに大変だね

サトコ
「今回は女性警察官がいた方がいいということなので···」
「足手まといにならないように訓練から頑張ります!」

東雲
後藤さんと一緒の任務なんだから、尚更失敗できないね?

(ま、また意味深な笑い方を···)

サトコ
「も、もちろんです」

加賀
デカい獲物が見つかったら、石神じゃなくてコッチに流せよ。一柳

一柳昴
「石神に回すくらいなら、回しますよ」
「ただ、そっちの争いごとに首突っ込む気ないですから」

後藤
これから外で実践訓練なので、俺たちはこれで

加賀
ああ

サトコ
「失礼します」

加賀教官と東雲教官に頭を下げて、私は後藤教官と一柳教官と一緒に校外へと出た。


【街】

一柳昴
「今から、後藤を警護対象だと思って警護してみろ」

街に出て、一柳教官から出された指示はそれだけだった。

(いきなり街中で後藤教官を警護だなんて···難しい···)

後藤
······

後藤教官の隣を歩きながら、私は周囲に目を巡らせる。

(一柳教官の妨害から後藤教官を守って、学校まで無事に辿り着くこと···)
(ここから学校までは約5キロ、集中すれば何とか···)

人通りの少ない歩道を歩いていると、いつの間にか後ろから一柳教官につけられている。

(どこかで撒かないと···)

サトコ
「後藤教官、次の角を曲がったら走ります」

後藤
わかった

角を曲がった途端駆け出すと、私はビルの隙間の細い路地に入った。
建物の陰に身を隠し、通りを確認する。

サトコ
「一柳教官が来る気配はない···」
「後藤教官、どうやら無事に···」

撒けた···と言おうと振り返った私の額に人差し指が突きつけられる。

一柳昴
「バン」

サトコ
「い、一柳教官!」

私の目の前、逃げ込んだ路地の奥から現れたのは一柳教官だった。

一柳昴
「任務失敗だな」

サトコ
「ど、どうしてここに···後ろをつけていたはずなのに···」

一柳昴
「もう少し地理を勉強しておけ。この細い道には、曲がり角の手前の横道から入れる」
「ショートカットしようと思ったら、お前らがまんまとココに隠れたってわけだ」

サトコ
「地理の把握まで頭が回っていませんでした。すみません」

一柳昴
「これで減点1だ。表通りに戻って続けろ」

サトコ
「はい」

一柳教官は入り組んだ路地に再び姿を消し、私と後藤教官は表通りに戻る。

後藤
訓練じゃなかったら、俺は死んでたわけか

<選択してください>

 A:あくまで訓練ですから 

サトコ
「あくまで訓練なんですから大げさですよ」

後藤
訓練だと思って甘く見ていると、実践でできるようにならないぞ

サトコ
「そ、そうですよね。訓練だと思わず真剣に頑張ります!」

 B:以後、気を付けます! 

サトコ
「すみません。以後、気を付けます!警護するときはルート確認を万全にしておきます」

後藤
突然の訓練だからな。アンタが地理を把握できていないのも仕方ない
訓練だからこそ、失敗もできる。しっかり覚えて行け

サトコ
「はい!」

 C:現実なら目を挺して守ります! 

サトコ
「現実なら、SPとして身を挺して後藤教官を守ります!」

後藤
SPの任務は要人の盾になる事と言われているが、それは自分の命を軽視することじゃない
己の身の安全を確保することがマルタイの安全につながることもある。それを忘れるな

サトコ
「はい!わかりました」

後藤
SPの仕事は常時一定の集中力で周囲に気を配ることだ
公安とはまた違った集中力が必要とされる。気を引き締めて行け

サトコ
「はい!」

そして、学校に戻るまでのわずかな道のり。
一柳教官の減点を次々にもらいながら、何とか学校までたどり着いた。


【校門】

一柳昴
「氷川、お前に任せられるのは部屋番くらいだな」

サトコ
「次はもっと頑張ります···!」

一柳昴
「まあ、田舎の交番勤務から公安の訓練生になったばっかりって考えれば及第点だけどな」
「まだまだ吸収できる余地があるってことで、今日は大目に見てやる」

サトコ
「ありがとうございます!」

(一柳教官の動きを少しも予測できなかった)
(それだけ一柳教官の経験値が高くて、いろんな現場を経験してるってことなんだ)
(後藤教官と対等にぶつかるだけあって、すごい人なんだな···)

一柳昴
「数日、こっちで訓練したあとは実際のSPルームで話をする」
「SPはチームワークも大切だ」
「後藤はともかく、氷川に桂木班のメンバーを紹介しなくてはな」

サトコ
「はい!よろしくお願いします!」

一柳昴
「また明日、来てやる。今日のこと復習しとけよ」

一柳教官が帰っていって、後藤教官がため息をついた。

後藤
やれやれ···よりによって一柳のもとで訓練をして、氷川とSPになるとはな

サトコ
「一柳教官と一緒は嫌ですか?」

後藤
ああ、何かとやかましい男だからな

(でも、やっぱりケンカするほど仲がいいって感じがするのは気のせいかな?)

後藤
通常の講義と並行で大変だとは思うが、SPの訓練も頑張れよ

サトコ
「今日学んだことを、さっそくメモしておきます!」

(後藤教官に抱きしめられたことは···ただのアクシデントなんだから···)
(訓練に関係のないことは忘れよう)


【官邸】

数日後······
学校での訓練を終え、
私は後藤教官と一緒に総理官邸にあるというSPルームを訪れることになった。

(ここが総理官邸···官邸の中ってこんなふうになってるんだ)

一柳教官は官邸にある一室のドアを開ける。
続いて後藤教官が中に入ると、SPの方らしき声が聞こえてきた。

???
「研修って誰かと思えば、スパイの手下かよ~」

(スパイの手下?スパイって、協力者のこと?)
(でも、後藤教官が協力者の手下ってことはないし···)

一柳昴
「これも仕事だ。今回は面倒を見てやれ」

後藤
仕事なら恩着せがましい言い方すんじゃねーよ

???
「部下の面倒をみてやるんだから、スパイも菓子折りのひとつも持ってくるべきだよね」

???
「それなら僕、羊羹がいいです」

???
「オレはハムセットとかがいいけどな」

???
「食い意地の張ったことを言うな。みっともない」

(SPルームって賑やか···もっと静かなところかと思ってた)
(でも、桂木班といえばSPチームでも最優秀だと言われてるチーム)
(中には屈強な男たちが···)

サトコ
「失礼します」

SPルームの中に入って頭を下げる。

【SPルーム】

顔を上げると、そこには······

(イ、イケメンぞろい!?)

SPたち
『誰?』

???
「···彼女できた報告とかやめろよ」

後藤
これだから、お祭り課は···そんなことしか考えつかないのか

???
「お前ら、少し静かにしろ」

後藤
桂木さん、よろしくお願いします

桂木大地
「ああ。後藤はみんな知ってると思うが、彼女は氷川サトコさん。公安の訓練生だ」

???
「ああ、そういえばそんな訓練校ができたって聞きましたね」

桂木大地
「後藤と氷川さんは捜査のために、一時的に警護課に編入することになった」
「しばらくの間、任務を共にすることになる」

サトコ
「氷川サトコです。よろしくお願いします!」

末広そら
「オレは末広そら。女の子には優しいけど···」
「君はスパイの手下の手下か···」

サトコ
「あの、さっきから気になっているんですが、スパイというのは···?」

広末そら
「スパイっていうのは、石神のこと」
「どんな情報でも持ってるから、スパイ・石神」
「な?瑞貴」

藤咲瑞貴
「そう呼ぶのはそらさんくらいですけどね」
「初めまして、藤咲瑞貴です」

サトコ
「え···藤咲さんって···あのアイドルの藤咲さんですか!?」

藤咲瑞貴
「昔の話ですよ。今は桂木班で一番年下のただのSPです」

秋月海司
「オレは秋月海司」
「公安の訓練校は男ばっかだって聞いてたけど、女の子もいたんだな」

サトコ
「はい、今期の女子は私ともうひとりの2人です」

藤咲瑞貴
「そういえば、颯馬さんや歩くんも特別教官になっているんですよね」

サトコ
「大変お世話になっています」

秋月海司
「そうそう、颯馬警部の剣道の講義もあるんだっけ。それは受けてみてーな」

藤咲瑞貴
「海司さんは柔道馬鹿一直線でいいと思いますよ」

秋月海司
「柔道馬鹿ってお前な···」

藤咲瑞貴
「やだな、褒め言葉です」
「そのうち、海司さんにも柔道の臨時教官の話が来たりするかもしれないなって」

秋月海司
「まあ、そうなったら公安のモヤシ連中に叩き込んでやるけどよ」

広末そら
「オレはスパイたちと協力し合うなんてゴメンだけど···」
「サトコちゃんはサイボーグ臭しないし、女の子だから許す!」

サトコ
「あ、ありがとうございます」

秋月海司
「許すって何を許すんですか?」

広末そら
「まあ、それは色々と。仲良くしようって意味」

楽しげな雰囲気にほっと胸を撫で下ろす。

(公安課と警護課は仲良くはないみたいだけど、煙たがられてる感じはないみたい。よかった)

桂木大地
「警護課にいるうちは他の班員と区別はしない。しっかりと任務に励むように」

後藤
はい

サトコ
「はい!」

桂木警部と一柳教官から説明を受け、私と後藤教官は午後から実際の警護任務に就くことになった。



【会議室】

一柳教官と広末さんと一緒に警護に就く仙崎国土交通大臣のもとに向かう。

一柳昴
「本日付で警備部警護課に配属された新人です」

仙崎
「新人か···」

後藤
後藤誠二です

サトコ
「氷川サトコです」

後藤・サトコ
「よろしくお願い致します」

一柳昴
「先に控えたサミットまで、先崎大臣の警護を担当します」
「2名とも警護課の経験は浅いですが、我々がしっかりサポートを致します」

数カ月後に国際的なサミットが予定されている。
緊張関係にある東アジア国家との会談も控えているため、
仙崎大臣にも警護をつけることになったらしい。

仙崎
「SPなど誰でもいい」
「いざという時に私の盾になれるのならばな」

仙崎大臣は書類に目を落としたまま興味なさそうに呟く。

(要人の盾になるのがSPの仕事なんだろうけど···冷たい言い方···)

末広そら
「もちろんです。SPとしての心得は充分に叩き込みましたので、ご安心を」

後藤
日本のため、仙崎大臣のため命を捧げる覚悟は出来ています

サトコ
「覚悟は出来ています」

仙崎
「ああ、わかった。せいぜい役に立ってくれよ、それがお前たちが仕事なんだからな」

一柳昴
「お任せください」

(あんな言い方されても、一柳教官も末広さんも笑顔で対応してる。凄い···)
(私も見習って、SPの任務を全うすることだけを考えよう)

to be continued



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