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愛しいアイツのチョコをくれ プロローグ

【シャワー室】

今日も厳しい演習が終わり、鳴子と一緒にシャワー室で汗を流す。

サトコ
「今日も鬼のようだったね···」

鳴子
「ほんと、教官たちって私たちをしごいているときはイキイキしてるね」
「それはそうとサトコさん、14日のご予定は?」

サトコ
「うーん、今のところ何も···鳴子、千葉さんにはあげるよね?」

鳴子
「そうだね~、2年間頑張ってきた同志だしね」
「それより···成田、どうする?」

サトコ
「えっ、どうするって···まさか鳴子、あげるの!?」

鳴子
「卒業前だしさ~、もうあいつともお別れかと思うと」
「あのおかっぱ頭がかわいく見える···」

サトコ
「それ、気のせいだから。目覚ましなよ!」

鳴子
「だってさぁ、私の本命は颯馬教官と一柳さんだから、絶対に報われないし」
「卒業前くらい、お祭り騒ぎみたいなバレンタインを楽しみたいんだよね」

サトコ
「なんかそれ、黒澤さんみたいな考え方だね···」

鳴子
「サトコは?もちろん本命にあげるんでしょ?」

ちょうどシャワーを止めたタイミングだったので、鳴子の声がやたらとシャワー室に響いた。

サトコ
「わ、私は別に、あの···」

鳴子
「赤くなってる~!あっやし~!」

サトコ
「そんなことないよ···!早く着替えて戻ろう!」

(急に “本命” なんて言われるから、焦った···!)
(まさかあの人が好きだって、ば、バレて···ないよね!?)

【教官室】

(とは言いつつ、バレンタインの時期って年度末だから、実は浮かれていられないんだよね)
(教官たちは忙しくなる頃だし、私たちは年度末の考査が控えてるし)

去年もその前も、いろいろあって、結局ゆっくりバレンタインを過ごすことはできなかった気がする。

(きっと今年も、簡単には過ごせないだろうな···)
(鳴子が言うように卒業前だし、今年くらいは···って思うけど)

黒澤
ハーイみなさん!ハッピーチョコレート!

教官室のドアが開くなり、黒澤さんが満面の笑顔で入ってきた。

サトコ
「それを言うなら、ハッピーバレンタインじゃ···?」

黒澤
バレンタインよりチョコレートですよ!
チョコレートをもらえないとハッピーになれないんです!
皆さん、今年のバレンタインはどう過ごすんですか~?

後藤
黒澤、うるさい

石神
どう過ごすも何も、仕事に決まっているだろう

難波
黒澤はこの時期、特に元気だよなぁ

颯馬
黒澤、もっとしっかり仕事しましょうね

加賀
それ以上喚くなら埋めるぞ

東雲
怠···

(すごい···室長も教官たちも、みんなまったく興味なさそう)

黒澤
皆さん、目が淀んでますよ!もっと覇気を持って!
せっかくのバレンタインじゃないですか!頑張りましょうよ!

石神
そうか。ならこの書類に目を通すのを手伝え

後藤
ちょうどいい。こっちの手伝いもやっていけ

黒澤
さーて!忙しい忙しい!早く戻らないと!

逃げるように、黒澤さんが教官室を出ていく。

(さすが石神教官と後藤教官、黒澤さんの扱いをよくわかってる···)
(それにしても、バレンタインか···)

チラリと教官たちの顔を見たけど、その表情からは何を考えているのかまったく読み取れない。

(みんな、大人だし···今さらチョコレートでもないのかもしれないな)

【カフェテラス】

(でも、たとえ一緒には過ごせなくても、少しはあの人の心が和らぐようなことをしてあげたい···)

男子訓練生1
「でさあ、どうなの?バレンタインって。毎年手作りのチョコとかもらうの、きつくね?」

男子訓練生2
「だよなー。重いっつーか」

ちょうど鳴子と千葉さんとお茶していた時、近くのテーブルからそんな声が聞こえてきた。

サトコ
「重い···」

鳴子
「いきなりテンション下がる話なんだけど···」

千葉
「まあまあ、感じ方はひとそれぞれだから」

男子訓練生3
「俺は今年、オメゴの腕時計の予定だけど?」

男子訓練生1
「はあ~?あのバカ高いやつかよ!」

男子訓練生3
「持つべきものは、年上の彼女ってね」

(物騒な盛り上がり方をしている···)

鳴子
「ねぇ、どうなの···どうなの千葉さん」

千葉
「いや、俺は高い時計よりも、好きな人から貰えるチョコの方が嬉しいから」

鳴子
「模範解答だ···百点満点の回答だ」

サトコ
「そうだね···千葉さん、ありがとう」

千葉
「慰めてるんじゃなくて、本当にさ」

鳴子
「でもまあ、あいつらは最低だけど、確かに毎年手作りとかはマンネリかもね」

サトコ
「マンネリ···」

鳴子
「サトコは?結局今年はどうするの?」

サトコ
「私は···」

(なんて答えよう···?カレのこと、バレないようにしないと)
(それにしても、マンネリ···マンネリ!?そうなの?じゃあ、そうならないようにするためには)

みんなの言葉がぐるぐる回り、一瞬、言葉を失う。

鳴子
「サトコ?」

サトコ
「わ、私···」
「今年は、バレンタインやらないし!」

千葉
「え···」

(しまった···!動揺して、大きな声が)

サトコ
「いや、あの、今のは」

鳴子
「サトコ···後ろ···」

サトコ
「え?」

振り返ると、そこにいたのは···

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