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最愛の敵編 カレ目線 加賀6話


【公安課ルーム】

江戸川謙造の件とウェン重工の事件が片付いても、公安は相変わらずだ。
ただ、以前ほど班同士のピリピリしたものはなくなっている。

サトコ
「加賀警視!差し入れどうぞ!」

加賀
···ああ

以前サトコが言っていた老舗和菓子屋の、支店限定の最中らしい。
返事をして受け取る俺に、サトコは嬉しそうに笑っている。

(まあ、もう無視するような雰囲気でもねぇ)
(だが···返事したくらいで、喜びすぎだ)

クズが···と心の中で罵った時、最中を受け取った歩が、それを俺のデスクに置いた。

東雲
兵吾さん、どうぞ

サトコ
「美味しいから東雲警部補も食べてくださいよ!」

東雲
やだよ、なんか盛られてたら怖いし

サトコ
「東雲警部補相手に、そんな恐ろしいことしません···」

東雲
っていうかキミ、この前オレを酒に誘おうとしたでしょ

サトコ
「!?」

東雲
ほんと、何考えてるかわかったもんじゃないよね

黒澤
やや!?それは聞き捨てなりませんよ!
サトコさんの最近のお気に入りは、歩さんってことですか!?

サトコ
「ちが···ちょ、黒澤さん、声が大きいです···!」
「東雲教官!なんでバラすんですか!?」

東雲
キミがそういう女だってこと、みんなに知らせておこうかと思って

サトコ
「違います···!違うんです!」

(くだらねぇ···どうせ歩から情報抜こうとしただけだろ)

相変わらずテンパると “教官” 呼びになるサトコに、呆れてため息がこぼれる。
俺を妬かせようとしたらしい歩は、反応のなさにつまらなそうだ。

サトコ
「加賀教官···違うんです、本当に東雲教官とは」

津軽
行ってないけど、そのかわり俺と飲みに行ったもんね☆

サトコ
「えっ?」

どこからか現れた津軽が、気安くサトコの肩を抱く。
イラっとした瞬間を見逃さなかったらしい歩が、ニヤニヤしていた。

百瀬
「······」

サトコ
「ちょっ、百瀬さん、なんでそんな汚いものでも見るような目で···」

百瀬
「···調子に乗ってんじゃねーぞ」

サトコ
「だから、ちが···あれは百瀬さんもいたじゃないですか!」
「3人で行きましたよね!?ね!?」

黒澤
3人で···イッた···!?

サトコ
「黒澤さん!変な想像しないでください!」

(うるせぇ···)

石神
···騒々しいな

さすがにその石神の言葉には、賛同しかなかった。


【バー】

その日の夜、サトコに誘われてバーへとやってきた。

加賀
なんのつもりだ

サトコ
「な、なんのつもりもないですよ···たまにはこういうところもいいなって」

加賀
歩を誘った罪滅ぼしじゃねぇのか

サトコ
「違いますってば!いや確かに誘いはしましたけど···」
「あれはですね、情報を探るための苦肉の策と言いますか」

加賀
ハニートラップか

サトコ
「それは無理だって、学校時代によく学んだので···」
「実際、誘う前に東雲教官にあっかんべーされましたよ」

加賀
だろうな

他愛のない会話に、心が安らぐ。
自然と笑いがこぼれているのが、その証拠だった。

加賀
おい、寝んな

サトコ
「ふぁい···」
「すみません···加賀さんとふたりきりで飲むの、久しぶりで···」

加賀
···そうだな

確かに、最近はゴタゴタしていてそもそもふたりきりの時間が少なかった。
疲れが出たのか、サトコの酔いが回るのも早い。

加賀
そろそろ帰るか

サトコ
「もうですかぁ···?」

加賀
泊まってきゃいいだろ

サトコ
「なら、帰りまふ···」

そのとき、スマホに難波さんから着信が入った。
サトコを待たせて、店の隅へ向かう。

加賀
いえ、大丈夫です
ええ···わかりました、やってみます

電話を終えて、サトコを回収しに行く。
タクシーを呼んで、そのまま家へと向かった。


【加賀マンション】

数日後、家に来たサトコは張り切ってカレーを作った。

加賀
なんでカレーだ

サトコ
「これなら加賀さんに野菜···」
「じゃない!ご飯も美味しく食べれるじゃないですか!」

加賀
······

入っていたニンジンをよけると、サトコが悲しそうに眉を下げる。

サトコ
「もういいじゃないですか、食べてくれても···」
「ニンジンはどんなに煮込んでも溶けないから、どうしようもないんですよ!」

加賀
なら、もう諦めろ

サトコ
「諦めません!」

悔しそうに、自分で作ったカレーを食い始めた。

サトコ
「いいんです、加賀さんの面倒なんて!」
「全然、面倒じゃないですから!」

加賀
······

サトコ
「あ、意味伝わってます?加賀さんの面倒を見るのは面倒じゃないっていう···」

加賀
バカか、面倒見られた覚えは一切ねぇ

サトコ
「言うと思いました···」
「でも諦めませんよ。このカレーのルーには、ジャガイモと玉ねぎが溶けてるんです」
「つまり加賀さんは、知らずのうちにジャガイモと玉ねぎを摂取していることに」

加賀
口開けろ

サトコ
「え?」

加賀
このニンジン、全部まとめて突っ込んでやる

サトコ
「待ってください!無理、無理!」

ニンジンで誤魔化したが、一瞬、サトコの言葉に目を見張りそうになった。

『いいんです、加賀さんの面倒なんて!』
『全然、面倒じゃないですから!』

以前、深夜にサトコが連絡を寄こしてきて、ラーメンを食わせたとき。
『面倒じゃない』などと、自分も思ったこととよく似ていた。

加賀
···物好きだな、テメェも

サトコ
「え?」

加賀
まあ···俺もか

サトコ
「なんの話ですか?」

加賀
食った後、覚えとけって言ったんだ
久しぶりに、たっぷりかわいがってやる

サトコ
「······!?」
「た、食べてすぐ、あんまり激しい運動は···」

加賀
なるほどな。激しいのがお望みか

サトコ
「そ、そういうことじゃ···!」

焦るサトコに、笑いがこみあげてくる。
頬が緩むのは、気のせいではない。

(だから、こいつを手放す気になんねぇんだろうな)

結局、俺も同じだ。

(このバカなら、どんだけ面倒でもいい)
(···んなこと考える自体、だいぶやられてんな)

こうしていると、色気もクソもない。
なのに、俺だけに見せる表情がある。

(振り回されんのも···たまになら悪くはねぇ)
(そんな相手、テメェだけだがな)

幸せそうに笑うサトコを眺めながら、柄にもなくそんなことを考えていた。

Happy End



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コメント

  1. らむ より:

    こうやってサイトにまとめてくれてるのすごく感謝してます!!加賀さんの沼にハマっちゃいました♡
    もし大変でなければ新しい話もサイトに書いてくれると嬉しいです!!

    • sato より:

      らむさん

      コメントありがとうございます。
      加賀さんの沼にいらっしゃいませ。
      がんばって更新します!

      応援お願いします。

      サトコ