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このドキドキはキミにだけ発動します プロローグ

【河原】

照りつける太陽、あたりに響く清流のせせらぎ。
目の前には、ジュージューと音を立てながら鉄板の上でお肉たちが焼かれている。
木漏れ日の下ではあるものの、鉄板の熱で容赦なく汗が噴き出した。

(何だか、前にも合宿でこんなことがあったような···)

その時のことを思いながら、お肉をまた1枚とひっくり返す。

鳴子
「野菜持ってきたよー、サトコ!」

サトコ
「ありがとう!」

ことの発端は数日前···ーー



【公安課】

黒澤
夏ですよー、石神さーん!BBQしましょー!リア充しましょー!

何かを抱えてやってきた黒澤さんはキラキラと顔を輝かせていた。

石神
しない

黒澤
即答で否定しなくても···!ほら見てください、これ!

石神さんの反応にもめげず、黒澤さんは壁のあちこちにポスターを貼り始める。

サトコ
「『4周年!初夏☆BBQパーティー ~これでアナタもリア充SUMMER~ 』···?」

ポスターにデカデカと書かれた文字に首を傾げる。

石神
4周年とはなんだ?

後藤
···オリンピックですかね

颯馬
多分、違うと思いますよ

黒澤
とにかく、このポスターの通り楽しいBBQです!
それ以上でもそれ以下でもありません!ね、ね!リア充しまようよー!

その時、扉が開き加賀さんがずかずかと入ってくる。

加賀
おい、クソメガネ、この資料···

そして、いつもと様相の違う室内に足を止めた。

加賀
暑苦しい、剥がせ

サトコ
「私ですか!?」

反射的に驚きで声が出て、加賀さんに舌打ちをされてしまう。

石神
氷川はお前の所有物じゃないぞ

加賀
うるせぇな。俺の所有物は俺が決める

石神
考え方がまるで子供だな

(な、何でそこが対立始めるの···!?)

助けを求めるように後藤さんと颯馬さんの方に視線を送る。
しかし、2人は2人で黒澤さんにポスターを剥がすように迫っていた。

颯馬
こんなポスターを作る暇がよくありましたね

後藤
とにかく剥がせ

黒澤
えー嫌ですー!皆さんでリア充しましょうよー!

(こっちはこっちで黒澤さんがごねてる···!)

加賀
それに、何だこの4周年って

石神
俺にも分からん

その時、再び扉が開き津軽さんと百瀬さんがやってくる。

津軽
楽しそうだねーなんの話?

黒澤さんの話を聞き終わると、津軽さんは緩い笑みを浮かべた。

津軽
つまり、リア充っぽくBBQしたいんでしょ?
俺、さんせー!参加でよろしく

黒澤
津軽さぁ~ん!

黒澤さんに飛びつかれそうになるのを華麗にかわす。

津軽
この4周年ってのは全然意味わかんないけど

百瀬
「津軽さんが行くなら俺も行きます」

黒澤
モモさ~···

百瀬
「近付くな」

再び華麗にかわされる黒澤さん。

津軽
秀樹くんも、兵吾くんも夏なんだし、そんなに難しく考えなくていいのに~
川辺ってことは女の子の水着姿とかたっくさん見られるんだし、参加一択じゃない?

加賀・石神
「興味ない」

加賀
···かぶるな

石神
貴様こそ

再び険悪な雰囲気が漂い始めたとき、のほほんとした雰囲気を纏いつつ室長が現れる。

難波
なんだ、騒がしいな?

東雲
へぇ、BBQ。暇なんですね、津軽班って

室長の後ろから荷物を抱えた東雲さんがふん、と鼻で笑うように言い放った。
室長はポスターを上から下まで眺め、ふむふむと頷く。

難波
楽しそうじゃねーか。俺も参加にしといてくれ

全員
「!?」

難波
氷川も行くだろ?

サトコ
「え、私ですか?」

津軽
もちろん行きますよ~。津軽班は『暇』なんで

サトコ
「え!?」

(いつの間にか強制参加の雰囲気···!)

難波
じゃあ、ちゃんと水着持って来いよ。この川、水が綺麗で気持ちいいんだ

サトコ
「そうなんですね。それなら持ってい···」

私が頷き返したその時、ガタガタと急にあわただしく動き出す面々。

石神
この日程が空くようにスケジュールを調整しろ

後藤
わかりました

颯馬
昨日言っていた件は?

黒澤
は~い!お任せください!

加賀
歩、この報告書は今日中だ

東雲
わかってますって

急に騒々しくなった室内の端で、呆然とその様子を見つめる。
隣に立っている津軽さんと室長はニヤニヤしながらそれを見守っていた。

サトコ
「???」

【河原】

ということでやってきたBBQ当日。

鳴子
「それにしても驚いたよ~」

サトコ
「ね、まさかこんなに集まるなんて。鳴子も来てくれてありがとう」

鳴子
「私も千葉さんもちょうど時間空いてたから。むしろ誘ってくれて感謝だよ」
「じゃなくて、さっきの教官たちの対応のこと!」

サトコ
「もう私たちの教官じゃないって···。さっき?」

鳴子
「ほら、サトコが蚊に刺されたとき、妙に気にされてたじゃん?」

サトコ
「ああ。虫よけスプレーに虫刺され用の薬って、用意周到でさすがというか」

鳴子
「いや、そういうことではなく···」

言い淀む鳴子に、ふとその時の千葉さんの表情も思い出す。

(そういえば、千葉さんもすごく驚いてたけど···)

鳴子
「あ、サトコ!こっちの肉焦げそう!」

サトコ
「うわ、ありがとう!」

男性陣の多さに肉を焼く量も半端じゃなかった。

(水着を着たものの、これじゃほとんど遊ぶ暇もないかもなぁ···)

延々と肉をひっくり返しながらそんなことを思い始めた。
その時、後ろから名前を呼ばれたような気がして振り返るとそこには···

選択してください

加賀兵吾

石神秀樹

颯馬周介

難波仁

後藤誠二

東雲歩

黒澤透

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