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最愛の敵編 東雲1話

【公安課ルーム】

東雲
······

(あ、教官と目が合った)
(えっ、何か言ってる?ええと···)





(見るな、バカ!?)
(ひどい!そりゃ、ふたりのこと、バレたらマズいけど)
(だからって「バカ」まで言うのは···)

津軽
それじゃ、うちの班の皆にも紹介しようか
ついてきて、新人ちゃん

サトコ
「はい」

難波
がんばれよ~、ひよっこ

朗らかな難波室長に見送られて、私は津軽警視のあとをついて行った。

津軽
はーい、みんな注目~

津軽警視が手を叩くと、数人の捜査員が顔を上げた。

津軽
うちの班に、今日から新人ちゃんが入ります
なんと!あの公安学校に首席入学した超エリートさんです

(うっ、首席入学のことは···)

津軽
名前は、ええと···
······
······ごめん、なんだっけ?

サトコ
「氷川です」

津軽
そうそう、氷川ちゃんね
それじゃ、自己紹介をしてもらおうかな

津軽警視に促されて、私は一歩前に進み出た。

サトコ
「初めまして、氷川サトコと申します!」
「まだまだ未熟ですが、ご指導ご鞭撻のほどお願いいたします!」

津軽
······

サトコ
「······」

津軽
え、それだけ?
面白くないなぁ。もっと自分をアピールしていこうよ

(アピール?)

津軽
例えば、公安学校時代のこととかさ
たしか、君の担当教官は···

サトコ
「東雲教官です」

とたんに、周囲の空気がザワッと揺れた。

捜査員1
「東雲って、加賀班の?」

捜査員2
「ああ、最年少で配属された···」

捜査員3
「そういえば、あいつ、公安学校に関わっていたな」

(名前だけで、この反応···)
(東雲教官って、部署内でも評価が高いんだ···)

津軽
そっか、歩くんのもとにいたんだね。じゃあ···
歩くんの好きなところ、ひとつ挙げてみて

サトコ
「えっ」

津軽
元補佐官なら、ひとつくらい余裕だよね?
はい、どうぞ

サトコ
「は、はぁ···」

(どうしよう···好きなところ···)
(ここは無難な答えの方がいいよね)

<選択してください>

根気強いところ

サトコ
「根気強いところでしょうか」

津軽
へぇ。たとえば?

サトコ
「訓練生時代の私は、決して優秀とは言えませんでしたが」
「東雲教官は、根気強く指導してくださいましたので」

津軽
なるほど。つまり···
『落ちこぼれ担当に向いてる』ってことだね

サトコ
「は、はぁ···」

(さらりと痛いところを···)

髪の毛がサラサラ

サトコ
「髪の毛がサラサラなところです!」

津軽
ああ、たしかに···
彼はいつも『天使の輪』ができてるね

サトコ
「そうなんです!しかも1ヶ月に1回、美容室に···」

津軽
でもさ

(え······)

津軽
君もだいぶサラサラだったよ
さっき、触った時

(近い近い近い!)
(津軽警視って、やっぱり公安学校にはいなかったタイプだよ)

かなり毒舌

サトコ
「かなり毒舌なところでしょうか」

津軽
歩くんが?

サトコ
「はい。しかもズバッと毒を吐いたり、チクチク刺すようだったり···」
「バリエーションもかなり豊富って言うか···」

津軽
へぇ、あの歩くんが···なんだか意外だなぁ
俺にはいつもニコニコ対応だけどね

サトコ
「は、はぁ···」

(そうなんだ···)

津軽
それじゃ、自己紹介タイムも澄んだってことで
超期待のスーパーエリート新人さんに、さっそくお仕事を頼もうかな

(来た!初仕事···)

津軽
どんなことができるの?

サトコ
「ひととおりのことは学んできました」
「『潜入捜査』や『張り込み』、『監視対象者の追跡』もできますし」
「『クラッカー撃退』も何度か任されました」

津軽
へぇ、すごいなぁ。さすが、公安学校卒業者
それなら、どんな仕事を任せても問題なさそうだね

サトコ
「はい、ぜひお願いします!」

津軽
うんうん、それじゃ、まずは···

サトコ
「失礼します!」
「津軽班の氷川です。資料を届けに参りました」

捜査員1
「ああ、ありがとう」

(よし、次!)

サトコ
「おつかれさまです!津軽班の氷川です」
「津軽警視より、こちらを預かってきました」

捜査員2
「なんだ、これ···」
「···ああ、例のブツか。そこに置いておいて」

サトコ
「わかりました!」

(ええと、次は···)

サトコ
「おつかれさまです」
「こちら、津軽警視より預かってきました」

受付の女性1
「あっ、これこれ、LMKの限定リップグロス!」

受付の女性2
「すごい!津軽さん、わざわざ取り寄せてくれたんだ?」

(う、ううん?)

その後も、警察庁内を走り回っているうちに時間ばかりが過ぎていき···

サトコ
「はぁ···はぁ···」

(おかしいな···なんで私、こんなことをしているんだろう)
(しかも、この既視感···)
(前にも同じことがあったような···)

サトコ
「···あ!」

東雲
まずは、そうだな···
買ってきて。幻のピーチネクター

サトコ
「···これだ」

(そうだよ、同じだよ···公安学校に入学したばかりの頃と)
(でも、今回は警察庁の中だけだし、まだまだ全然マシ···)

???
「退け」

(こ、この声は···)

加賀
邪魔だ、クズが

(やっぱり!)

サトコ
「お、おつかれさまです」

(そうだ、加賀警視にも渡すものが···ええと···)
(···あった!)

サトコ
「この袋、受け取ってください」

加賀
···は?

サトコ
「津軽警視から預かってきました」
「おそらく、仕事関係のものかと···」

加賀
······
チッ

(えっ、舌打ち?)

加賀
石神に持っていけ

サトコ
「で、でも加賀警視に···」

加賀
黙れ
言う通りにしろ、このクズが

(ええっ!?)

(いいのかな。津軽警視は「加賀警視に」って言ってたのに···)

サトコ
「おつかれさまです。津軽班の···」

石神
自己紹介は必要ない。用件は?

(ええと···)

サトコ
「津軽警視から頼まれた、加賀警視宛てのものをお届けに伺いました」

石神
···?
だったら加賀に渡せ

サトコ
「いえ、それが、加賀警視は『石神警視に渡せ』と···」

すると、近くの席にいた颯馬警部が「おや」と首を傾げた。

颯馬
それはプリンですね。今、人気の『アーロウ』の

(えっ、そうなの?)
(ってことは、また仕事と関係のない届け物···)

石神
そうか。ひとまず受け取ろう

サトコ
「···よろしくお願いします」

颯馬
他に、うちの班に何か届け物はありますか?

サトコ
「はい、後藤警部補宛てのものがひとつ···」

颯馬
後藤ですか、困りましたね
彼の座席はここなのですが···

(こ、この散らかりっぷりは···)

颯馬
仕事の資料なら、直接渡したほうがいいですよ
ここに置いても、埋もれる可能性がありますし

サトコ
「そ、そうですよね。それで、後藤警部補は···」

颯馬
資料室にいますよ
では、気を付けて。伝書鳩さん

(うっ···)

(伝書鳩、か)
(なんだかなぁ。ほんと、何をやってるんだろう、私)

もちろん、いきなり「潜入捜査」などに加えてもらえるとは思ってない。
でも、これが刑事として「最初の仕事」なのはどうなのだろう。

(他の皆も、こんな感じなのかな)
(鳴子や千葉さんも···)

後藤
···氷川?

サトコ
「あ、おつかれさまです!」

(よかった、ここで会えて)

サトコ
「津軽警視から資料を預かってきています」
「こちらです」

後藤
わざわざ届けに来てくれたのか?
机の上に置いておいてくれれば···
っと、そういえば散らかしたままだったな
すまない、手間を掛けた

気まずそうにため息をついた後藤警部補は、ふと私の手元に目を向けた。

後藤
その荷物は?

サトコ
「他の部署への届け物です。津軽警視に頼まれまして」

後藤
ああ、なるほど
顔見せというわけか

(···え?)

後藤
お前を様々な部署に出向かせることで、顔見せをさせているんだろう
津軽さんらしい配慮だな

(顔見せ···そっか···)
(そういう事だったんだ···!)

サトコ
「あの···!」
「ありがとうございます、後藤警部補」

後藤
??
礼を言うのは、俺のほうなんだが

サトコ
「いえ、大切なことを気付かせていただきました」
「ありがとうございます!」

後藤
···そうか

(頑張ろう)
(頑張って、他の部署の人たちに顔と名前をしっかり覚えてもらおう!)
(せっかく津軽警視がその機会をくれたんだから)

そうして気合を入れ直したこともあって···
刑事としての「初仕事」は、午前中のうちにすべて終えることができた。

(他の部署の人たちにも、名前と顔を覚えてもらえたし)
(後藤警部補と津軽警視には、感謝しかないなぁ)

(よーし、午後も頑張るぞー!)

津軽
···ああ、いたいた
新人ちゃん、最初に仕事はもう終わったんだよね?

サトコ
「はい!」

津軽
それじゃ、次の仕事をお願いしようかな
次は、そうだなぁ···これを着て···

(えっ、これって···)
(清掃員のユニフォーム?)

サトコ
「ぐっ、う···っ」

(···なにこれ)
(なんで給湯室に、こんなにしつこい油汚れが···)

サトコ
「あっ、取れた!」

(よかった、これでガスコンロの掃除がだいぶラクに···)

サトコ
「って、違ーう!」

(なんで給湯室の掃除?これも顔見せ?)
(違うよね。どう考えても、ただの雑用···)

サトコ
「······」

(ううん、そんなことないよ)
(きっと、これも何か理由があるはず···)

捜査員1
「なあ、聞いたか?今度の新人の噂」

廊下から聞こえてきた声に、私は思わず聞き耳を立てた。

捜査員2
「ああ、津軽班のか?公安学校卒の···」

捜査員1
「そうそう、そいつ」
「さっそく、銀室長に釘を刺されたらしいぜ」
「『ここでは女の力は通用しない』って」

捜査員2
「へぇ···ってことは、そういうやり方で卒業したってこと?」

(え······)

捜査員2
「やばいな。そういうの、得意そうに見えないのに」

捜査員1
「いや、案外いろいろ『デキる』んじゃねーの?」

(できないよ!そんなこと)

正直、入学の経緯についてはまったくもって胸を張れない。
けれども、卒業については後ろめたいことは何ひとつないのだ。

(東雲教官や、他の教官たちがいろいろ教えてくれて···)
(だから、こうして刑事になれたのに)

捜査員1
「ま、コネ配属なら、そのうち逃げ出すだろ」
「なにせ、銀室長は厳しいことで有名···」
「うわっ!」

給湯室に入ってきた先輩方が、なぜか驚いたように後ずさった。

捜査員1
「び、びっくりした。すみません、清掃中に」

(えっ)

捜査員2
「おつかれさまでーす」

サトコ
「······おつかれさまです」

先輩たちは、カップにお湯を注ぐと、再びお喋りしながら去って行った。
私の方は、ちらりと見向きもしないで。

(これって、もしかして···本物の「清掃員」に間違えられた?)

たしかに、さっきまで油汚れを落としていた。
しかも、今は清掃員のユニフォームを着ている。

(でも、私···今朝、皆の前で挨拶したよね?)
(なのに、まったく顔を覚えてもらってないって···)

???
「なんで言わないの」

サトコ
「!」

東雲
言えば良かったじゃん
『津軽班の新人・氷川です』って

サトコ
「教官!」

思わず声を上げると、教官は不機嫌そうに眉をひそめた。

東雲
違う
もう教官じゃない

(そうだった、つい···)

息を整えて、ビシッと背筋を伸ばす。
敢えて真正面に立つと、私はまっすぐ元教官を見つめた。

サトコ
「おつかれさまです、東雲警部補」

東雲
ふたりきりだけど、今は

サトコ
「!」

東雲
ふたりきりのときは?

サトコ
「······歩さん、です」

まだ呼び慣れていない名前を、そっと口にする。
教官···ではなく、歩さんはからかうように目を細めた。

東雲
忘れてないんだ?いちおう

サトコ
「それは、まあ···」

(名前で呼ぶって決めたの、私自身だし)

サトコ
「ただ、まだちょっと言い慣れていないだけで」

東雲
ふーん
そのユニフォームは、なかなか馴染んでいるのにね

(うっ)

東雲
めずらしいよね
掃除するために、公安刑事になる子って

<選択してください>

そんなつもりはない

サトコ
「そんなつもりはありません」

東雲
······

サトコ
「今は、本来の業務とはかけ離れたことをしていますけど」
「私が目指すのは、あくまで教官たちのような『公安刑事』です」

東雲
······

サトコ
「それに···」

ですよね~

サトコ
「ですよね~」
「この際だから、いっそ清掃員に華麗なる転職を···」
「って、なんでやねん!」

東雲
······

(あれ、すべった?)

東雲
バカなの、キミ
ノリツッコミしてる場合なの?

(そ、それは···)

サトコ
「でも···!」

意地悪キノコめ

サトコ
「意地悪キノコめ···」

東雲
···は?
誰がキノコだって?

(えっ、つっこむの、そっち?)

東雲
······

サトコ
「え、ええと···それはさておき···」

サトコ
「今こうして掃除をしているのも、理由があってのことっていうか」
「津軽警視なりに、何か狙いがあるのかもしれないですし」

東雲
狙いって、なんの?

サトコ
「それは、その···」
「まだ、よくわかりませんけど」

(きっと、何か理由があるはずだよ)
(午前中の「顔見せ」のような理由が、きっと···)

東雲
···ま、いいけど
他班の人間が口出しすることじゃないし

(えっ)

東雲
「じゃ、頑張って」

サトコ
「!!」
「待ってください!教か···」
「じゃなくて、あゆ···しの···っ」

(···行っちゃった)

サトコ
「口出しすることじゃない、か」

歩さんの発言は、間違っていない。
今の彼は「他班の先輩」であって、もう私の担当教官ではないのだ。

(それに、銀室長だって···)


『銀室では、各班の馴れ合いは不要だ』
『仲間意識を捨て、常に相手を蹴落とす心積もりで上を目指せ』

(···そうだ、もう歩さんには頼れない)
(私が、指示を仰がなければいけないのは···)

サトコ
「おつかれさまです」
「頼まれていた清掃、すべて終わりました」

津軽
へぇ、さすが公安学校出身だね!エラい、エラい

サトコ
「いえ、そんなことは···」

(というか、公安学校と掃除は関係ないような···)

津軽
それじゃ、モモ。行こうか

サトコ
「!」

(もしかして、これから捜査に行くとか?)
(だったら···)

サトコ
「あの!もし、よろしければ私も同行···」

津軽
ああ、ごめんね。今日はひとりいれば十分だから

サトコ
「···っ」
「でしたら、何か他にお仕事を···」

津軽
そうだね。だったら···

津軽さんは、開封済みのペットボトルを手に取った。

津軽
これ、捨てておいて

サトコ
「!」

津軽
それと、今日はちゃんと定時で帰ってね
残業が多いと、上がうるさいから
それじゃ、あとはよろしく~

(そんな···)

結局、そのあとは、特に仕事らしいことはしないまま···

(···あ、定時だ)

サトコ
「お先に失礼します」

捜査員たち
「「······」」

(···誰も振り向かない)
(なんだか空気みたいだな、私)

サトコ
「はぁぁ···」

(なんでこんなに疲れているんだろう)
(仕事らしい仕事は、何もしていないのに)

しかも、どうやらおかしな噂まであるらしい。

(大丈夫かな。初日からこんな調子で···)

サトコ
「···ってダメダメ!」

(しっかりしろ、私!)
(こんなの、初めてじゃないんだから)

公安学校時代も、勉強を頑張っているうちに陰口を叩かれなくなった。
それなら、今回も仕事に対する姿勢で噂を跳ねのけるしかない。

(問題は、その仕事を「いつ任せてもらえるか」なんだよね···)
(まさか、このままずーっと清掃員なんてことは···)

???
「ねえ、そこのキミ」

(···うん?)

キラキライケメン
「警察庁ってこの建物?」

(うっ、まぶしい···)
(なんで、こんなキラキラした人が霞が関に···)

サトコ
「そ、そうですけど」

キラキライケメン
「良かった~。ポーピくんのグッズ買いたくてさ」

(ポーピくん?)

サトコ
「だったら、警視庁に行ったほうがいいですよ」
「ポーピくんは、警視庁のマスコットキャラクターですから」

キラキライケメン
「えっ、そうなの?」
「知らなかった~。ありがと~」

サトコ
「はぁぁ···びっくりした」

(でも、いい目の保養だったな)
(実は、芸能人だったりして···)

ブルル···

サトコ
「あ、LIDE···」

(鳴子からだ)
(えっ、千葉さんとご飯?)

鳴子
「それじゃ、初日おつかれさまってことで」
「かんぱーい!」

サトコ・千葉
「かんぱーい!」

3人で勢いよく生ビールのジョッキを合わせる。
喉が渇いていたこともあって、あっという間に中身は残り半分になった。

鳴子
「はー疲れた!」
「ほんと、初日から厳し過ぎ」

サトコ
「えっ、どういうこと?」

鳴子
「どうもこうも、初日から『張り込み』に駆り出されちゃってさ」
「人手が足りないとかで、5時間ずーっとだよ」

千葉
「監視対象者は?」

鳴子
「某団体のおエライさんの愛人」
「資料を確認する時間もなくてさ」
「張り込み現場で、口頭で伝えられたんだから」

サトコ
「···そうなんだ」

(鳴子、いきなり現場だったんだ)
(なんか···すごいな···)

サトコ
「サトコはどうだった?」

サトコ
「!」
「私は、その···今日はずっと雑用だったかな」

鳴子
「だよね!それが普通だよね?」
「配属初日だもん。まずは配属先に慣れるところからだよね?」

サトコ
「う、うん、まぁ···」
「あの、千葉さんは?」

千葉
「それが···」

(あれ、なんだか様子が···)

千葉
「俺の場合、雑用ですらなくてさ」
「実は、ずーっと動画サイト見せられて」

サトコ
「動画サイト?」

鳴子
「それって、WeeTubeとかTicToocとか?」

千葉
「うん。なんかそんな感じの」

千葉さんは、ため息をつきながら動画アプリを立ち上げた。

サトコ
「動画投稿者···『みちゃと』?」

千葉
「今、人気急上昇中のWeeeTuberだって」

サトコ
「へぇ···」

(女子大生かな。たしかに可愛いかも···)

サトコ
「でも、どうしてこれを?」

千葉
「上司の娘さんが、彼女の動画にハマってるんだって」
「『俺、こういうの理解できないんだよー』って言いながらさ」
「一日中ずっとだよ、ずーっと」

サトコ
「うわ···それはつらいね」
「今晩、夢に出てきたりして」

鳴子
「いいじゃん。美人WeeeTuberが出てくるなら」

千葉
「でも俺、女子大生はちょっと···」

鳴子
「えっ、彼女、社会人でしょ。20代半ばくらいじゃない?」

千葉
「いや、女子大生だろ」

サトコ
「私もそれくらいだと思う」

鳴子
「違うって!若作りしてるから、そう見えるだけだって!」

そんな他愛のない話をしながら、内心ホッとしている自分がいた。

(よかった、私だけじゃない···)

(千葉さんも、同じような感じだった)
(むしろ、初日から現場に出された鳴子が例外なのかも)

もちろん、焦りや不安はある。
けれども「自分だけじゃない」という事実には、やっぱり安堵してしまう。

サトコ
「よし···焦らない、焦らない」

(まずは、与えられた仕事をちゃんとこなそう)
(どんなことでも仕事は仕事だし、きっと津軽警視にも考えが···)

サトコ
「···え?」

ふと、背後から聞こえる足音が耳についた。

(この足音···さっきからずっと付いてきているよね)
(偶然?それとも···)
(誰かに尾けられてる?)

to be continued

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