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クリスマス2018 プロローグ2話

???
「メリークリスマース!」

サトコ
「!?」

(いったい、何事!?)

突然のことに口をポカンと開けているとーー

黒澤
ようこそ、パーティー会場へ!

明かりが灯ると同時に視界に飛び込んできたのは、手作り感溢れる飾りの数々。

サトコ
「これって···」

加賀
ボサッと口開けてると突っ込むぞ

(何を!?)

石神
相変わらず品のない奴だ

後藤
誰か事態を説明してやらなくていいのか?

東雲
見ればわかるでしょ

颯馬
わかっていないような顔にも見えますが···

難波
サプラーイズってやつだろ?

津軽
はい、お疲れ様~。ウサちゃんの席は、こっちこっち
モモ、案内したげて

百瀬
「······」

津軽
モモ

百瀬
「···了解」

入り口で立ち尽くす私を百瀬さんが渋々と中へと連れて行く。
視線の先にあるのは、会議室にありそうな長テーブルに白い布が被せられたもの。

津軽
はい、どうぞ

サトコ
「あの、ここは俗に言うお誕生席というやつでは···」

黒澤
今日の主役はサトコさんですから

サトコ
「主役って···私、何かしでかしました!?」

後藤
どういう意味だ?

颯馬
これはサトコさんが “入庁してからよく頑張りました歓迎会兼忘年会” ですよ

サトコ
「え···何か恐ろしいことが待っているわけではなく···?」

東雲
恐ろしいことをされる心当たりでもあるんだ

サトコ
「ま、まさか!でも、だったら、もっと普通に招待してくれても···」

石神
どういう意味だ?

サトコ
「この怪文書···」

私はずっと持っていた手紙を石神さんに見せた。

石神
招待状は任せろと言ったのは···

後藤
黒澤だったな

皆さんの視線が一斉に黒澤さんに向けられた。

黒澤
ほら、フツウの招待状じゃ面白味がないじゃないですか
せっかくだから、刑事が受け取るのにぴったりな感じに···

加賀
ツラ貸せ

黒澤
ええー!せめて石神さんたちの無言の耳ツマミとかで済ませてくださいよ!

東雲
あーあ。兵吾さんに捕まったらアウト

黒澤
後藤さーん!助けてくださーい!

後藤
何も聞こえないな

颯馬
サトコさんは前を向いていましょうね

(うっかり後ろを向かないように、颯馬さんの手で頭が固定された···)

黒澤
ちょ、それトウガラシ!?なぜ、そんなものが!?

津軽
これ、トウガラシモチっていうお菓子。食べると口の中でどんどん膨らむよ

加賀
死ぬほど味わえ

黒澤
ほんとうに死···もごごっ

(黒澤さん、大丈夫!?)

サトコ
「あの、ちょっと驚いただけなので、ほんと、もう···」

後藤
···水を持って行ってやる

(やっぱり後藤さんは優しい!)

しばらくしてから、若干唇が腫れたような黒澤さんが戻ってきた。

黒澤
いや、味覚ぶっ壊れるかと思いましたよ。実際壊れたかも···

難波
ははっ、痛覚ぶっ壊されなくてよかったじゃねぇか

黒澤
それ、随分な慰めですね!?

颯馬
主役を放っておくわけにはいきませんし、そろそろ乾杯にしましょう

それぞれがシャンパングラスを手に取り、私には津軽さんが手渡してくれた。

津軽
じゃあ、ここはサトコちゃんの責任者として、俺が音頭を

加賀
ただの班長だろうが

石神
全くだ」

津軽
はい、やっかみは、そこまで。乾杯!

全員
『乾杯!』

喉が渇いていたこともあり、一気に飲み干すと、すぐにグラスがいっぱいにされた。

黒澤
今年1年を忘れ去る勢いで、どんどん飲んでくださいね!

東雲
ワインにビール、ブランデー、日本酒に焼酎···ひと通り揃ってるから

難波
ほら、端から利き酒してけ

サトコ
「いやいや、そんなにグラスを並べられても飲めませんって!」

後藤
飲む前に、腹に入れた方がいい

サトコ
「はい。どっちかっていうと、お腹が空いてるかも···」

津軽
クリスマスと言えば、ローストビーフだよね
はい、あーん

サトコ
「自分で食べられますから···」

百瀬
「······」

(百瀬さんからの睨みと圧が凄いんですが···)

津軽
あーん。こら、モモ、待て。これはウサちゃんの分

(これは早く食べたほうが楽になる!)

サトコ
「いただきます···ん、美味しい!口の中で蕩ける!」

津軽
兵吾くんイチオシの肉だからね~

後藤
ソースがついてる

サトコ
「あ···」

どこ···と聞く前に、クシャッとしたハンカチで後藤さんが私の口元を拭いてくれる。

後藤
···洗濯はしてある

サトコ
「いえ!それよりハンカチ汚しちゃって···」

後藤
気にするな

加賀
角切りの熟成肉だ

石神
肉ばかりだと飽きるだろう。バケツプリンの用意もある

東雲
口直しにピーチネクターいるでしょ?

黒澤
冷えてきたので、腰掛けどうぞ

颯馬
胃薬、頭痛薬、ウコンドリンク···ひと通りの用意がありますからね

難波
いざとなったら、俺が背負って送ってやるよ

サトコ
「······」

私の周りに集まる皆さん。
それはまるで私に仕える執事か、もてなしてくれる王子様のようで。

(これはいったい、何事···夢でも見てるの?)
(それか、ここから一気に転げ落とすような恐ろしいことが!?)

ここまでしてもらっては年末年始無休くらいでは済まない。

サトコ
「あの、ネタばらしがあるなら、そろそろお願いしたいんですが」

颯馬
可哀想に···そんなに人間不信になって

黒澤
何もありませんよ。純粋に楽しんでください!

(本当に?本当に何も考えずに楽しんでいいの···?)

箸を止める間もなくお皿に用意されるご馳走と、決して空にはならないグラスを前に。
時間は過ぎて行ってー

黒澤
じゃあ、この辺で余興を始めましょうか
まずは班別対抗リレーから!

サトコ
「班別だと、人数調整しなきゃいけないですね」

津軽
うちは大丈夫だよ。全部モモが走るから

百瀬
「ああ」

サトコ
「それリレーって言わないんじゃ···」

難波
一番人数が多いのが石神んとこだろ。じゃあ、俺が加賀んとこ入るわ

サトコ
「石神班が4人、加賀班が3人、津軽班が3人···」

黒澤
サトコさんはバトンなので、数に入れちゃダメですよ

サトコ
「あ、そうなんですね。私はバトン···って、ええ!?」

黒澤
オレが各班のタイムを計るから抜けます。なので、3、3、2になりますけど···
百瀬さん、本当に大丈夫ですか?

百瀬
「心配するなら、この女の身柄を心配しろ」

サトコ
「いや、待って···私はどういう扱いに···」

黒澤
ではでは、班長のクジ引きで加賀班からのスタートになりました!

(皆さんお酒が入ってるせいで、いつにも増して話を聞いてくれない···)

黒澤
各班のゴールまでのタイムを競う競技ですからね
加賀班の第一走者は班長・加賀さん!位置について···

加賀
······

サトコ
「あの、私は···っ」

黒澤
ヨーイ、ドンッ!

加賀
来い、クズ!

サトコ
「うぐっ」

(お腹から思いっきり担ぎ上げられたぁ!)

かなり身を低くして、大きなスライドで走る加賀さんが
次の東雲さんに辿り着くまであっという間だった。

加賀
おらよ

東雲
はいはい。しっかりつかまってなよ。はい、難波さん

サトコ
「え、東雲さん3歩しか進んでなくないですか!?」

東雲
班内での振り分けは自由だし

難波
しっかりつかまってろよ、ひよっこ!

サトコ
「わああっ!」

(皆さん、どうして俵持ちスタイルなんですかー!)

黒澤
難波さんゴール!加賀班、30秒63!
続いて、石神班いきます!第一走者、オレの大好きな後藤さん!

後藤
いらん紹介はするな。···悪いな、氷川

サトコ
「こ、これ、皆さん楽しいですか?」

後藤
もうそんなことを考える次元じゃないんにゃ···

サトコ
「にゃ!?」

後藤
···聞き間違いだ

(もしかして···後藤さん、結構酔ってる!?)

黒澤
位置について、ヨーイ···

後藤
しっかりつかまってろ

後藤さんは私をお姫様抱っこで抱き上げてくれた。

(担がれてない!)

酔ってるかと思った後藤さんだが、足取りはしっかりしたもので驚くほど加速していく。

後藤
周さん!

颯馬
任せて

サトコ
「え···」

フワッと身体が浮いたかと思ったら、後藤さんの腕から颯馬さんの腕に移っていた。

(何、この連係プレー···)

キャッチと共に颯馬さんが時間のロスなく走り出す。
前方では眼鏡がキラリと光るのが見えた。

颯馬
石神さん!

石神
10秒でいく

今度は石神さんの方に投げられ、私が心の中で願うのは···

(どうか、石神さんの眼鏡を壊しませんように!)

身体を丸めるようにしてキャッチされながら、気が付いた時にはゴールしていた。

黒澤
ゴール、ゴール、ゴール!石神班のタイムは···30秒63!
なんと、加賀班と全く同じです!両班の班長の仲の良さが現れて···

加賀
0.0001秒くらいの差があんだろ

石神
おおざっぱなお前が、その単位まで知っているとは驚きだな

加賀
テメェもサイボーグなら、もっと正確に測れ

黒澤
ちょ、オレを挟んで凄み合わないでください!
津軽班は百瀬さんひとりで走るって言ってますし···リレーじゃ決着つかなそうですね

難波
男が決着つけるなら、相撲だ
石神、加賀、お前らも口先じゃなくて、がっぷりよつで決着つけろ!

石神
···いいだろう

加賀
その眼鏡叩き割ってやるよ

言うが早いか、お二人がバンッと上半身裸になる。

サトコ
「あああああのー!?えっ!?いや、どうなんですかね?そういうの!」

後藤
···日頃のストレス解消だ。好きにさせた方がいい

眩しい筋肉たちから目を逸らせるように、スッと後藤さんが目を伏せる。

難波
よーし、オジサンも張り切っちゃうぞー

津軽
モモも行っておいで

百瀬
「勝つ」

突然の相撲大会が始まり、嵐のような時間が過ぎていってーー

黒澤
では、本日のメインイベント、ビンゴ大会!
あ~んなものから、こ~んなものまで!オ・ト・ナのグッズが揃えました!

颯馬
楽しみですね

サトコ
「は、はは···」

(不安しかない···)

皆さんには強運の星がついているのか、次々と景品をゲットしていくなか···

東雲
ウソ、まだ真ん中だけしか開いてない子いるの?

隣にいた東雲さんが覗いてきて、鼻で笑われる。

サトコ
「これから!これからですよ···!」

颯馬
これだけ当たらないのも、ある意味スゴイ運ですよ

サトコ
「···それ、慰めになってます?」

百瀬
「日頃の行いだな」

サトコ
「え」

(百瀬さんから、そういうマウントとられるとは!)

後藤
···今度、一緒に神社か寺にでも行くか?

サトコ
「私、そんなに徳を積まなきゃいけない感じですか···」

黒澤
ここに黒澤大明神がいますよ~★

加賀
カスみてぇな運しかねーなら、諦めろ

石神
時には諦観が救いになることもある

サトコ
「こういう時だけ意見が一致するなんて···くっ···!」

(こうまで言われたら、絶対に当てたい!)
(当たれ、当たれ、当たれ~!)

津軽
目が血走って、ほんとのウサギみたいになってるよ?

サトコ
「当たれ~!!」

念が通じたのか、最後の最後でーー

サトコ
「ビンゴ!ビンゴしました!」

黒澤
おめでとうございまーす!

(景品、最後の1個だけど、残り物には福があるっていうし)

黒澤
はい、どうぞ

サトコ
「ありがとうございます!」

貰った景品の袋を開けてみると、中に入っていたのは。

(え、コレ···?)

私が引いたビンゴの景品はーー

<選択してください>

『高級エステサロン』チケット (颯馬周介)

ジンテンドーSwtich (加賀兵吾)

『スイーツヘブン』ペアチケット (石神秀樹)

サンタのコスプレ (黒澤透)

駄菓子 (難波仁)

ハイブランド化粧品 (後藤誠二)

ドライヤー (東雲歩)

激辛バナナ青汁シェイク (津軽高臣)

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