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本編① 津軽Bad End

······
·········

(私は···)

目を開けると、白い天井が見える。
鼻腔をくすぐる独特の匂いが、ここは病院だと教えていた。

サトコ
「研究所で···」

(津軽さんと研究所から脱出しようとして、麻酔ガスが···)
(津軽さんは···?)

周囲を見回すも、病室には誰もいない。

(あれから、どうなったんだろう···)

私の身体に痛みなどはない。
整理のつかない、様々なことが頭に浮かんできては消え···を繰り返していると。

百瀬
「まだ起きないんですか」

津軽
ああ

ガチャッとドアノブが回る音がして、つい目を閉じてしまった。

(寝たフリする必要ないのに···)

一度目を閉じれば、次のタイミングがわからなくなる。

百瀬
「いっそのこときっぱり諦めさせた方がいいんじゃないですか」

(え···)

ベッドサイドから聞こえてくる声。

津軽
···そこまではできない

百瀬
「今後すべての捜査から外されるんですよ?いる意味があるとは思えません」

(すべての捜査から外される···?私が···?)

百瀬
「殺人ガスを作動させ周りを危険に晒した挙句、自分は気絶」
「現場で動けるほどの力はないと判断されて当然です」

(私は取り返しのつかない失態を···)

津軽
俺にも責任はある
この子にこんな怪我させたのは、俺の判断ミスだ

自分を責めるような彼の声を初めて聞く。

百瀬
「津軽さんのせいじゃありません。俺がもっと早く到着していれば···」
「それに、こいつが未熟なのは、こいつの責任です」

津軽
俺は班長だ。この子を連れて行くと決めたのも、俺
···起きたら、伝えないと

百瀬
「いっそのこと目を覚まさない方が幸せかもしれませんね」

津軽
モモ

諫めるように津軽さんが名を呼ぶ。

津軽
医者からは起こしていいって言われてるし
とりあえず、見舞いのフルーツでも買ってきてから起こそう

百瀬
「はい」

しばらくして、バタンーーとドアが閉じられる音。

サトコ
「···っ」

さらに強く目を閉じて、零れそうな涙を堪える。

(全ての捜査から外される···私の力不足で、多くの人を危険に晒した挙句)
(全部、ダメになった···)

一度閉じた目を開ける勇気は、いつまでも出なかった。
閉じこもっていたい、この真っ暗な世界に。

Bad End

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