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本編カレ目線 津軽5話

ALILANDと五ノ井ラボの一件が片付いたあと。
新たな捜査が始まり、ウサことサトコも懸命に働いていた。

津軽
うん、大丈夫。何も心配しないで、俺を信じて

協力者の女と電話していると、屋上のドアが開く音がする。

サトコ
「······」

(ウサだ)

こちらを見て軽く目を見張る彼女に、しっと人差し指を立てる。
サトコは大豆を鼻に入れられたような妙な顔でこちらを見ている。

(俺のイケボに文句でもあるわけ?)

心外な反応だと思いながら電話を切って、彼女の方に行く。

サトコ
「ほんとにハニトラ得意なんですね」

津軽
前提で三馬身リードしてるからね

サトコ
「そこまで自分の顔に自信あるんですか?」

津軽
あるけど

サトコ
「ですよねー···」

(ウサにもハニトラって効くのかな)

ちょっとした出来心から、彼女の行く手を塞いで身を屈めた。

サトコ
「何ですか?」

津軽
ドキッとしない?

サトコ
「え···」

その顎を持ち上げ、顔をグッと近づける。

津軽
······

サトコ
「······」

(この子の顔、まじまじと見たの初めてかも)
(顔面偏差値は並みだなー)
(小鼻をひくつかせたり、口をもごもごさせるところが小動物っぽいけど)
(こういうの愛嬌って言うのかな)

しみじみとその顔を観察していると。

サトコ
「この睫毛の長さで逆さ睫毛があったら悶絶しますね」

白けた顔で、ふいっと顔を背けた。

津軽
この顔の感想が、それ?

サトコ
「わざとドキッとさせようとしても、そういうのはちょっと···」
「それに津軽さんの顔は、割と見慣れてきましたし」

津軽
かっわいくないなー!

(こんな反応されたことあったかな)
(この子って、俺の顔の良さはよーく知ってるけど、それを基準に俺を見たりしないんだよな)

こんな子会ったことがない。
天然記念物並みに希有なウサギだと思う。

(田舎者···いや、ぬくぬくのびのび育ってきたんだろうな)
(今回のことで、きっと傷つく)

この捜査で彼女を嵌めることになっている。
銀室から閉め出すために。

(あー···また “良心” が···いや、なんか違うな)
(なんだ?この妙な···)

微かに胸が締め付けられるような、経験のない感覚に襲われる。

(動悸とか勘弁しろよ?まだそんな歳じゃないし)
(今年の健康診断だって異常ナシだったんだから)

サトコ
「任務とはいえ、津軽さんは可愛い芹香さんとデートするんだからいいじゃないですか」
「可愛い女性とのデートはきっと、楽しいでしょうね~っ」

(鼻息荒い顔、面白いなー)
(この顔だったら、ずっと見てられるかも)

津軽
まあ、かわいい女の子とのデートは悪くないけど
君といる方が断然楽しい

サトコ
「は?」

(ほら、この顔も面白い)
(ごめんな、ほんと。ほんとに、ごめん)

今回の事件の鍵となる花巻芹香とのデートは雨の日だった。
初回のデートが雨でも、影響ない。

花巻芹香
「津軽くんって、ほんとイケメンだよね♪」
「あっちの女の人なんて、ず~っと見てるもん。優越感だな~」

津軽
それは俺のセリフだよ

花巻芹香が見ているのは、俺だけ。
窓の外の風景を気にする気配など全くない。

(そうそう、これが正しい反応なんだよ)
(俺って外見でしか価値観を見出されない。それが当たり前なのに)

俺が接近すると、あからさまに嫌そうな顔をするウサがいる。

花巻芹香
「でね!うちのパパって、ほんとヤスさんに頼りっきりで~」

津軽
撮ること以外は助手に任せきり?

花巻芹香
「そうなの。うちのこと、パパよりヤスさんの方が詳しいんじゃない?」

(やっぱりホシは花巻富士夫じゃなくて、助手の方か)

予想の確証を得られ、この時間は決して無駄にはならなかった。
成果に満足し上機嫌だった。
いい気分、だったのにーー石神が余計なことをしでかしてくれた。

to be continued

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