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本編カレ目線 津軽6話

百瀬
「津軽さん、ちょっと」

津軽
ん?

デスクで明太胡麻チョコレートを食べていると、モモがレコーダーとイヤホンを持ってきた。
俺が何か言うまでもなく、俺の耳にイヤホンをつける。
聞こえてきたのはーー

後藤
何か飲むか?

サトコ
『ありがとうございます。じゃ、アイスコーヒーで』

(誠二くんとウサ?)

黒澤
オレもロイヤルミルクティーのおかわりと、チーズケーキ追加で!

石神
どれだけ食べる気だ

(透と秀樹くんもか。石神班がウサに接触した?)

録音を聞いているうちに、モモがこれを持ってきた理由が分かった。

石神
公安学校の卒業生がことごとく捜査から外されているそうだ

(あいつ、余計なことを···)

百瀬
「銀さんに報告しますか?」

津軽
いや、俺が話す

(久しぶりに石神のこと、クソ眼鏡って呼びたくなってきた)

津軽
おい、クソ眼鏡

石神
······

津軽
あ、ごめん。心の声が口に出ちゃった

石神
お前は時々、ひどく下品になるな。猫を被るなら永遠に被れ

廊下で呼び止めると、石神は眉間にシワを寄せながら振り返った。

津軽
君、真面目そうな顔して、やること汚いよね

石神
···何の話だ

津軽
喫茶店、アイスコーヒー、チョコケーキ

石神
外でサボりたいなら、ひとりで行け

津軽
俺が君をデートに誘うと思う?

石神
お前の考えが分かるほど、俺の頭はどうかしていない

津軽
ほんと、クソ眼鏡

石神
話がそれだけなら、もう行くが?

津軽
それだけもなにも、まだ始まってもないでしょ
うちのウサに余計なこと言わないでくれる?

石神
余計なことと言うのは、公安学校の卒業生を故意に捜査から外しているという件か?

石神と視線がぶつかり合う。

(このサイボーグとタイマンすんの苦手なんだよな)
(インテリは住む世界が違うっつーか···)

石神は根っから利口で頭がいい。
とってつけた勉強で、ここまできた俺とは人種が違う。

津軽
根も葉もないウワサを流すの止めてって言ってんの

石神
そんなウワサなら放っておいても問題ないだろう
お前がわざわざ俺を呼び止める必要性があるとは思えないが?

津軽
ねえ、わざとまわりくどい言い方してんの?頭いいアピール?

公安学校卒業生が捜査から閉め出されている中。
サトコだけを使っているのはALILANDの件で、それなりの結果を出してしまったから。

(より効果的に捜査から外すために、今使ってるけど)

石神班の情報網は正直侮れない。
銀さん側の思惑も動きも、ほぼ把握されていると思った方がいいだろう。

(けど、今のウサは石神班じゃないだろ。引っ込んでろっての)

津軽
真偽がどうだろうと、上司に疑念を持ったままじゃ仕事に支障が出るじゃん

石神
疑念を持たせないようにするのは、お前の仕事だろう

津軽
正論って、そんなに楽しい?

石神
ああ。特にお前のような男相手にはな

津軽
君が桂木班に嫌われてる理由がよくわかるよ

石神
······

桂木班の広末そらは石神を見れば “サイボーグ” だの “横ワケ課” だの言って避けている。

石神
お前が今後、どう対処するか知らないが···ひとつ教えておいていやる

津軽
···なに

今は石神からのアドバイスなんて受けたくないという意地もあるのに。
その先が聞きたくて仕方がない。

石神
どんな結果になろうと、アイツはお前を信じ続けるだろう

津軽
は?

(この先、嵌められるってのに···それに気付いたら、いくらウサだって···)

津軽
俺をバカにしてんの?それともウサちゃんの脳みそがウサギ並みって言いたいの?

石神
確かに、お前はバカだな

津軽
···クソ眼鏡

石神
お前は公安学校での氷川の2年間を知らないだろう

最後に口角を上げて石神は立ち去っていく。
昔の俺だったら、その背中に飛びかかっていただろう。

(スッゲームカつく···)
(なに、マウント?)

ウサの2年なんて知る訳がない。
出会ってなかったんだから、知りようもないじゃないか。

to be continued

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