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本編カレ目線 津軽8話

津軽
······

(なにやってんだ?俺···)

自分で自分のやったことが理解できず、ゴンッと壁に頭をぶつける。

サトコ
「つ、津軽さん!?」

津軽
これか。誠二くんの匂いがするってヤツ

サトコの手から誠二くんの時計を外す。

サトコ
「あ···」

津軽
これ、着けてなさい

サトコ
「津軽さんの時計···でも、津軽さんは···」

津軽
会議を盗聴される可能性だってあるからね。こんなの着けちゃダメだよ

サトコ
「でも、後藤さんがそんなこと···」

津軽
するわけない?油断は禁物。誠二くんは公安課のエースなんだから

(あの誠実の申し子みたいな誠二くんが、ウサの時計に盗聴器仕込んだりするかよ)
(つーか、そこはもっと強く言い返せよ。誠二くんが可哀想だろ)

津軽
いや、なんで誠二くんの味方俺がしてんの
そもそも、昨日電話で···

後藤
シャワー、先に浴びるか?

サトコ
『!』

津軽
ねぇ、今の声って···

ロクに話をしないまま、一方的に切られた。

津軽
何だよ···

(15秒っつったけど、切るタイミングを決めるのは俺だろ)

百瀬
「どうかしましたか?」

津軽
ねえ、ウサと後藤って付き合ってんの?

百瀬
「は?···聞いたことないですけど」

津軽
そう

(けど、家に泊まって時計まで借りるとか···むしろ付き合ってなきゃ、なんなの?)
(歳も近いし、いつもコーヒーとか差し入れちゃって仲良いし)

津軽
誠二くん、いい子だからな
······

後藤だって明るい過去ばかりでないのは知っている。
それでも俺とあいつの差はーーきっと『家族』だ。

(だとしても、銀室は恋愛禁止だろ。少しは隠せよ!)
(わっかりやすく男物の腕時計してくなっつの!)

もう一度ゴンッと壁に頭をぶつけ、そのまま固まる。

(···とられたくない)
(これ、ただの独占欲だ)

津軽
クソ···

壁にぶつけた頭が痛い。
けれど、別の意味でもっと頭が痛い。

(女なんてよりどりみどりなのに、何であの子なんだよ)
(よりによって世界が違う)
(あの子の “日常” が俺の “日常” になればいい)
(だけどもし、俺の “日常” が彼女の “日常” を侵したら)

津軽
······

俺の “日常” が蘇る。
あれは法廷でのことーー

???
『お前もさ···殺してやれたらよかったな』

(俺が生きてんのは、偶然、生き残ったから)
(この辻褄合わせはいつかきっとくる)

その辻褄合わせに、あの子を巻き込むわけにはいかない。

百瀬
「···津軽さん、なにしてんですか」

いつの間にかモモが横に立っていた。

津軽
頭鍛えて石頭になろうかと思って

百瀬
「おでこ真っ赤になってますよ」

津軽
うん、痛い

百瀬
「···こっち来てください」

モモが俺をトイレから連れ出す。
こういう時のモモは、ほんとに役に立つ。

誰もいない会議室に入ると、モモは保冷剤を持ってきた。

百瀬
「冷やしといたほうがいいです。痣にでもなったら、せっかくの顔が台無しですよ」

津軽
ん。モモはさー

おでこに保冷剤を乗せて、上を向く。

津軽
俺がゴリラみたいだったら、どうする?

百瀬
「···胸毛は?」

津軽
モッサリ

百瀬
「いいんじゃないですか?それはそれで」

津軽
そっか

百瀬も、どんな俺でも受け入れてくれる。
けれどサトコと違うのは、自分の世界へと引き込もうとしないところだ。

百瀬
「氷川と後藤の事ですが」

津軽
ん?うん

百瀬
「多分、付き合ってるとかはないと思います」

津軽
どうして?

百瀬
「腕時計以外からは、後藤の匂いがしませんから」

津軽
そっか

ヨシヨシとモモの頭を撫でる。
でも、もともと俺が気にしていいことじゃない。
サトコと後藤が、どうなっているかなんて。

to be continued

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