？？？
「あれ、氷川さん？」
（え···）
真壁憲太
「やっぱり。ご無沙汰しています」
サトコ
「真壁さん！お久しぶりです」
（って、後ろにいるのは···）
広末そら
「なぁ、あれ、スパイたちじゃね？」
秋月海司
「しっ！そらさん、聞こえますよ」
藤咲瑞貴
「ふふ、すてきな偶然ですね」
一柳昴
「いや、どう見ても偶然じゃないだろ」
桂木大地
「お前たち、頼むから静かにしてくれ」
（やっぱり、警護課の皆さん···）
後藤
「おい、なぜお前らがここにいる？」
一柳昴
「なんだと、パジャマ」
後藤
「質問に答えろ、ローズマリー」
黒澤
「ハイハーイ、皆さーん、落ち着いて」
（えっ、透くん？）
黒澤
「いやぁ、眼福ですね。イケメンばかりがこうして集まると」
「ね、鳴子さん！」
佐々木鳴子
「はい！」
（ちょ、鳴子···！）
藤咲瑞貴
「皆さんは、今日はどうしてこちらに？」
佐々木鳴子
「研修です！研修旅行です！」
広末そら
「なんだ、一緒じゃん」
秋月海司
「いや、一緒じゃないと思いますよ」
「うちはほとんど訓練みたいなものですし」
後藤
「いや、俺たちも訓練みたいなものだ」
（えっ、そうだったの？）
一柳昴
「とかいって、どうせすぐこの滝まで散歩する程度だろ？」
後藤
「···っ、そんなはずあるか。うちの組織を舐めるな」
一柳昴
「だったら、こっちの訓練について来られるか？」
後藤
「当然だ。余裕でこなしてやる」
（うわぁ···すごいな、後藤さん）
（警護課の訓練って、めちゃくちゃ厳しそうなのに···）
佐々木鳴子
「···決めた！私も行ってくる」
（ええっ！？）
サトコ
「待ってよ、鳴子！」
「今日はこのあと温泉卵の食べ比べに行くんじゃ···」
佐々木鳴子
「ごめん、サトコ」
「イケメンは正義だから」
サトコ
「ちょ···鳴子···！」
（···行っちゃった）
（仕方ない。こうなったら、ひとりで食べ比べを···）
黒澤
「残念でしたね」
「今日の研修先はどちらでしたっけ？」
サトコ
「このあたりの温泉一帯です」
「予定では温泉卵の食べ比べをするはずだったんですけど」
（ていうか、この話、少し前に透くんにもしたような···）
黒澤
「食べ比べ！いいですね」
「そういうことなら、鳴子さんの代わりにオレが···」
真壁憲太
「黒澤さーん！」
旅館を出て行ったと思っていた真壁さんが、タタタッと戻ってきた。
真壁憲太
「すみません、案内するのを忘れていて」
「さあ、行きましょう」
黒澤
「えっ、あの···？」
真壁憲太
「聞きましたよ、石神さんから」
「黒澤さんが、僕たちの合宿訓練に参加したがっているって」
黒澤
「！？」
真壁憲太
「桂木さんも大歓迎だそうです」
「それじゃ、案内しますんで、行きましょう」
黒澤
「ま、待ってください！なにか誤解が···」
「オレ、食べ比べ希望なんですけどーー」
（···行っちゃった）
？？？
「まったく」
（···うん？）
石神
「今回のことは、全部あいつの仕業だな」
サトコ
「仕業って、なにがですか？」
石神
「······」
（え、なんかめちゃくちゃ見られてる？）
石神
「······」
「···まあいい。お前はハメを外すなよ」
サトコ
「？？ はぁ···」
（ハメを外す機会なんて、特にないような···）
石神さんの言葉の意味が、何となく分かったのは···
夜になってからのことだった。
佐々木鳴子
「はぁぁ···すごかった···」
「久しぶりに公安学校時代に戻ったかと思ったよ」
サトコ
「警護課の訓練、そんなに厳しかったんだ？」
佐々木鳴子
「もうね、すごかった！」
「イケメンがいなかったら、途中で脱落してた！」
千葉大輔
「そこなんだ、佐々木の心の支えは」
佐々木鳴子
「当然じゃん！ほんと、イケメンは正義だから」
千葉大輔
「わかった。わかったから、落ち着いて」
千葉さんが、鳴子のグラスに瓶ビールを注ぐ。
宴会が始まって３０分、すでに周囲はグダグダな雰囲気だ。
千葉大輔
「うちから参加したのは、佐々木だけ？」
佐々木鳴子
「ううん、後藤さんと黒澤さんも」
「後藤さんはさすがだね。最後まで昴さんと張り合ってたよ」
千葉大輔
「そりゃ、もともと俺たちの教官だもんなぁ」
サトコ
「あの···黒澤さんはどうだった？」
佐々木鳴子
「黒澤さん？」
「あー最後の滝行で沈みかけてたよ」
（やっぱり···）
（透くん、身体を動かす系の訓練、苦手そうだもん）
千葉大輔
「そうか、それで今日の宴会は静かなんだな」
サトコ
「いつもなら率先して仕切ってるもんね」
佐々木鳴子
「そうそう！いきなりギターを持ってきたりして···」
黒澤
「やだなぁ、オレの話ですか？」
（うわっ）
真壁憲太
「今日はお疲れさまでした」
黒澤
「はーい、ビールどうぞー」
佐々木鳴子
「ありがとうございます」
千葉大輔
「なんだかすみません···」
黒澤
「いえいえ」
真壁憲太
「氷川さんもどうぞ」
サトコ
「ありがとうございます」
「それじゃ、真壁さんにも···」
真壁憲太
「あ、僕はビールじゃないんです」
サトコ
「えっ、飲んでないんですか？」
真壁憲太
「実は、このあと今日の訓練の反省会があって···」
黒澤
「桂木さんの部屋に、皆さんで集まるんでしたっけ」
「まさに『イケメン大集合』って感じですね」
佐々木鳴子
「！！」
とたんに、鳴子がソワソワし始めた。
サトコ
「待って、鳴子。落ち着いて···」
佐々木鳴子
「サトコ、私···」
「反省会に参加してくる！」
（ちょっと！）
佐々木鳴子
「いいですよね、私！今日の訓練に参加してますし！！」
真壁憲太
「はい、大歓迎です」
千葉大輔
「俺も参加することはできますか？」
「警護課の反省会、どんな感じなのか見てみたいですし」
真壁憲太
「ええ、ぜひ」
「じゃあ、そろそろ行きますか？」
鳴子・千葉
「はい！」
（ええっ、なんでこんなことに···）
黒澤
「いやぁ、皆さん、やる気に満ち溢れていますね」
「感心、感心」
サトコ
「それは、まあ、そうですけど···」
（···なんだろう、この違和感）
（何か引っかかってるっていうか···）
黒澤
「温泉卵はいかがでしたか？」
サトコ
「ああ、ええと···」
「隣の旅館のが一番美味しかったですね」
「黄身の固まり具合がちょうどよくて」
黒澤
「そうでしたか」
「オレもそっちに行きたかったなぁ」
（え···）
（ちょ···っ！）
黒澤
「クタクタなんですよ、今のオレ」
「予定外の訓練のせいで」
（だ、だからって、なんで私の太ももに···）
黒澤
「なんだか落ち着きますねー、サトコさんの膝枕」
サトコ
「わ、私は落ち着かないです！」
素早く周囲を見回すと、私は透くんの耳を引っ張った。
サトコ
「退いて、透くん！」
黒澤
「えー、聞こえないなぁ」
サトコ
「いいから、早く退いて！」
「こんなの誰かに見られたら···」
黒澤
「大丈夫ですって」
「どうせ、オレが酔ってふざけてるとしか思われない···」
？？？
「おや、あれは···」
颯馬
「見てください、歩」
「あそこに、酔っ払いのふりをした、ふざけた者が１名いますよ」
（ほら、バレてる···！）
黒澤
「いやだなぁ、周介さん。オレ、本当に酔っ払ってますって」
「ねー、サトコさん」
サトコ
「ひゃっ」
（な、なんで膝をサワサワって···）
東雲
「ていうか、これ、セクハラじゃない？」
「後輩が拒めないのをいいことに、膝枕を強要するのって」
サトコ
「そ、そうです！セクハラです！」
ここぞとばかりに、私は透くんの身体を力いっぱい転がした。
黒澤
「ちょ···痛っ」
サトコ
「···っ、ごめ···」
（じゃなくて！）
サトコ
「すみません、つい···」
東雲
「いいよ、サトコちゃん。謝らなくて」
「キミにセクハラしたそいつが悪いんだし···」
？？？
「へぇ、誰がうちのウサちゃんにセクハラを？」
（う、この声は···）
津軽
「はーい、顔見せて？」
「セクハラ野郎は誰かなー？」
（や、やっぱり···津軽さん···！）
to be continued