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出逢い編 颯馬 シークレット1

Episode 2.5
「ヒミツ訓練の後で」

(颯馬教官の補佐官になったんだ···なんだかとても嬉しい)
(よし、これからも張り切って行こう!)

剣道の稽古を終えて、道場を隅々まで掃除し終えた。

(うん、すっきりした!)
(道場の掃除が終わったことを颯馬教官に報告して、と)

道場の外に出ると、鳴子と東雲教官が話しているのが見える。

(珍しい組み合わせだな)
(ん?なにか2人で見てるみたい···)

佐々木鳴子
「サトコ!ちょっとこっちに来てよ!」

サトコ
「···?」

近付いてみると、2人は雑誌を見ているようだった。

佐々木鳴子
「これ、凄いんだから!」

サトコ
「 “イケメン特集・これでアナタのハートもGET!” 」
「···鳴子、何見てるの?」

(なんか古臭いワード満載の雑誌···)

佐々木鳴子
「そこじゃない。これっ!」

サトコ
「ん?」

そこには···
颯馬教官が爽やかに笑ったり、頬杖をついてアンニュイな横顔を見せて
インタビューに答えている記事があった。

サトコ
「ええ!?そ、颯馬教官!?」

(アイドルみたいなポーズを決めてるものまであるんだけど···)

サトコ
「 “私のキスが欲しかったら、上手におねだりしてください” ···って」
「 “女は所詮楽器のようなもの。上手く弾けなきゃ男は失格ですよ” 」

(目を疑うようなノリノリの記事。本当に颯馬教官が言ったのかな···)

佐々木鳴子
「なんか意外だよね、颯馬教官がこんな人だったなんて」

サトコ
「確かに···若いけど、どこから見ても颯馬教官だよね」

(昔はこんなチャラ···じゃない、イケイケだったのかな?)

東雲
······

雑誌を持ってきたらしい東雲教官はずっとニヤニヤしている。

後藤
どうした?

石神
騒がしいぞ

そこに後藤教官と石神教官が通る。

佐々木鳴子
「あ、あの···これ···」

後藤
······

石神
······

2人ともその記事を覗くと、ため息をついた。

後藤
またか···

石神
もう何も言いたくない

2人ともそう言って足早に去ってしまった。

(またかってどういうこと···?)
(しょっちゅうこんなインタビューに答えてるのかな···)

鳴子と雑誌を見続けていると、

東雲
その雑誌、颯馬さんに見せてあげてね
絶対だよ

そう言って東雲教官はどこかに行ってしまった。

佐々木鳴子
「颯馬教官はこの雑誌知ってるのかな?」

サトコ
「というか、見せていいのかな···本人も忘れたい過去かもしれないよ···」
「かなり前の雑誌だし···」

サトコ
「失礼します」

とりあえず教官室に入って颯馬教官を探した。

(加賀教官しかいないみたい)

キョロキョロしていると、加賀教官は私の持っている雑誌に目を付けた。

加賀
その雑誌···寄越せ

サトコ
「えっ!いえ、あのこれは···」

加賀
······

私の制止も虚しく、ページを開いてじっくりと読んでいる。

加賀
「 “女は強引な男にすぐ足を開く生き物” 
 “ギャップで女を釣ろうなんて図々しい。男は身体がモノを言うんだクズが” ハッ···くだらねぇ

そこまで読んで興味がなくなったのか、加賀教官は私の方に雑誌を投げた。

サトコ
「ひっ!」

加賀
アイツ、全然凝りてねぇな···

そう言って怒りながら教官室を出て行ってしまった。

サトコ
「······」

(加賀教官すごく不機嫌だった···)
(懲りないっていうほどたくさんインタビューに出てた過去でも···)

颯馬
どうしました?

ハッと振り向くと、そこには颯馬教官が立っていた。
雑誌を拾い上げている。

サトコ
「ああっ!それは見ない方が···!」

颯馬
······

颯馬教官はぱらぱらと雑誌をめくって、ふと手を止めた。

(あぁ···どうしよう···)

颯馬
フフッ···

サトコ
「あ、あの···教官···?」

颯馬
割とよくできていますね

サトコ
「えっ···」

颯馬
これ、合成ですよ

サトコ
「えっ!?」

颯馬
歩が合成でもしたんでしょう

サトコ
「ええええっ!?」

颯馬
フフ、技術の無駄遣いですね

(合成とは思えない、凄いクオリティ···東雲教官、なんてモノを作って···)

颯馬教官はまだ雑誌を見てくすくすと笑っている。

颯馬
ほら。他のページも

別のページには加賀教官が載っている。

(あ、さっき加賀教官が怒っていたのは、このページだったんだ)

颯馬
こっちにもありますね

指差す先には石神教官が濡れた髪をかき上げて、プールサイドに横たわっている写真が載っている。

サトコ
「えーと “真夏の恋はアンビバレント” ···意味が全く分かんないですね」

颯馬
これもですよ

そこには、後藤教官が派手な柄スーツでイスに堂々と座っている写真が載っている。

サトコ
「 “夜の帝王・でもハートはロンリネス” ···さすがにこの辺りになると嘘だってバレますね」

(東雲教官~!)
(石神教官と後藤教官がこれが気付かなくてよかった···)

颯馬教官はずっと記事を見て笑っている。
私が呆れてページを捲っていると、もう一人見覚えのある人を見つけた。

サトコ
「黒澤さん?」

そこには黒澤さんがニパッと笑って雑誌に載っていた。

サトコ
「あれ、でもこれはイケメン特集じゃないですね」
「なになに··· “ザザ虫は炙りが一番ですが、焼きもたまりません” 」
「 “タツノオトシゴは海以外の出会いもハートフル。揚げると新たな出会いが待っています” 」
「···なんで黒澤さんだけゲテモノ食いのページを合成したんでしょうね」

颯馬
フフ、違いますよ
その記事は本物です

サトコ
「!」

(黒澤さんのゲテモノ好き···)

颯馬
黒澤だけが唯一、この雑誌を作りたいって賛成しているんですよ
他の人は呆れてますけどね、公安のいたずらコンビには

(確かにあの2人は気が合いそう···)

颯馬
そういえば、道場の掃除は終わりましたか?

サトコ
「はい、すでに終わっています」

颯馬
お疲れさまです。今日はもう頼むこともないので帰って大丈夫ですよ

サトコ
「はい」

(やっぱり現実の颯馬教官は優しくて素敵だなぁ)

そんなことを考えながら、教官室を後にした。

雑誌はコッソリと手に持ちながらーー

Secret End

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