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恋の行方編 颯馬 エピソード1

Episode 2.5
「教官の怪しい行動」

颯馬教官と週末だけ夫婦のフリをするため、マンションで同棲を始めて少し経った頃。

サトコ
「失礼します。報告書を持ってきました」

黒澤
いや、でも明らかにおかしくなかったですか?

東雲
まあ、少し慌ててはいたよね

後藤
確かに、周さんが慌てるのは珍しいな

ザワザワしている中に、颯馬教官の姿はない。

(颯馬教官が慌ててた?もしかして、事件?)

黒澤
あっ、サトコさん、ちょうどいいところに!

サトコ
「え?」

東雲
サトコちゃん、何か知らない?今、颯馬さんがちょっと焦った感じで出て行ったんだけど

黒澤
その前に、電話がかかってきて···女の声だったんですよね

サトコ
「女性···」

なんとなくモヤッとしたけど、ここ最近の颯馬教官のことを思い返してみる。

サトコ
「週末は一緒に過ごしていますけど、特にそういう電話がかかってきたことはないですよ」

黒澤
ってことは、サトコさんにも秘密の関係か···

サトコ
「いや、というか別に、私と颯馬教官は···」

黒澤
これは、何か怪しい匂いがしますね!

東雲
颯馬さん、モテモテだね

加賀
間違いなく女だろ

後藤
周さんが、そう簡単に俺たちに気付かれるような真似はしないと思いますが

石神
どうでもいいだろう。仕事をしろ

黒澤
いや、でも考えてみてくださいよ!普段、あれだけポーカーフェイスの周介さんが···

私そっちのけで盛り上がる教官たちの話に、つい聞き入ってしまう私だった。

その週の金曜日、学校からマンションへと帰って来た。
私より遅く帰って来た颯馬教官と一緒に食事をとり、いつも通りの時間が過ぎていく。

(特別、おかしいところはないよね···)
(だけどもし、教官たちの話が本当なら)
(颯馬教官には彼女がいるかもしれないってことなんだよね···)

ぼんやりと食器を洗っていると、寝室の方から颯馬教官の声が聞こえてきた。
恐る恐る、微かに開いたドアの隙間から寝室を覗いてみる。

颯馬
···ええ。では、それでお願いします
嬉しいですよ。ずっと待っていたんですから

(優しい笑顔···相手の声は聞こえないけど、何となく女性のような気がする)
(協力者の人?それとも···)

電話が終わりそうだったので、慌ててドアから離れた。

(盗み聞きみたいなこと、しちゃダメだよね!それに、私が気にすることじゃない)
(なのに、なんでこんなにモヤモヤするんだろう?)

週末の月曜日、教官室へ向かうと、教官室に入るなり東雲教官と黒澤さんに詰め寄られた。

黒澤
サトコさん、待ってましたよ!

サトコ
「え?」

東雲
で?

サトコ
「な、何の話ですか?」

黒澤
も~、わかるでしょ!周介さんですよ!何か掴めました?

東雲
週末、何か変わったことなかった?

サトコ
「変わったこと···」

週末の出来事を、東雲教官と黒澤さんに伝える。
すると、黒澤さんが腕組みをして考え込んだ。

黒澤
これは···確実に黒ですね

サトコ
「く、黒!?」

黒澤
サトコさんというものがありながら···!

サトコ
「ど、どうでしょう···」
「わざわざ寝室で話すってことは、聞かれたくないのかなっていう気はしますけど」
「どうします!?こうなったら周介さんに直接聞いてみますか!?」

東雲
ていうか···こっちでさっさと調べた方が早くない?
捜査の基本は尾行。ってことで、颯馬さんを尾けてみる?

サトコ
「び、尾行!?」

黒澤
いいですね!刑事は足で情報を稼がないと!
サトコさんも、もちろん来ますよね?教官を尾行するなんて、いい訓練になるし

訓練、と言われると断りにくい。
後藤教官たちを見たけど、巻き込まれたくないのか、こちらを見ようとはしなかった。

黒澤
さあ、そうと決まればレッツゴー!

東雲
まずは颯馬さんを探そうか

サトコ
「ほ、本当に行くんですか···?」

2人に引きずられるようにして、教官室を出た。

3人で手分けして颯馬教官を探すと、携帯に黒澤さんから『見つけました!』という連絡が入り、
私と東雲教官は、黒澤さんがいるところに集合した。

東雲
どう?やっぱりいつも通り?

黒澤
それが、今···

颯馬
ええ、そうですか。わかりました、今から向かいます
大丈夫ですよ。やっと会えるんですから、多少の無理はさせてください

その言葉に、思わず3人で顔を見合わせる。

黒澤
今のって

東雲
これは、決定打だね

(じゃあ、本当に颯馬教官に恋人が···)

なんとなく落ち込みそうになった時、黒澤さんに腕を引っ張られた。

黒澤
サトコさん、ぼんやりしてる場合じゃないですよ!
ホシが動きます!追いますよ!

サトコ
「ほ、ホシって···!」

(まさか、本当に恋人との密会場所まで追いかけるの!?)

颯馬教官が学校を出ると、私たちもそれを追って気付かれないように尾行を続けた。

黒澤
相手、どんな人なんでしょうね~

東雲
颯馬さんの好みは、サトコちゃんみたいなタイプじゃなかったってことか

(東雲教官、サラッと傷つくようなことを···)
(それにしても、こんな尾行、颯馬教官に気付かれちゃうんじゃ)

東雲
あれっ?透、颯馬さんは?

黒澤
今、あの角を曲がりました!ほらほらサトコさん、早く!

2人に急がされて、突き当りの角を曲がる。
でもその瞬間、そこにいるはずのない人が立っていた。

颯馬
···

サトコ
「そ、颯馬教官!?」

颯馬
どうして貴女がここに?

サトコ
「い、い、いえ!これは、その···黒澤さん!東雲きょうか···」

振り返った時、そこに2人の姿はなかった。

(えええ!?)

颯馬
少し、はしゃぎすぎ···のようですね

サトコ
「は、話を聞いてください!これは···」

颯馬
さあ、行きますよ

がっちり手を掴まれ、逃げることができない。
不吉な笑顔を浮かべた颯馬教官に、そのまま連行されてしまった。

連れて行かれたのは、オシャレなフラワーショップだった。

サトコ
「あの···颯馬教官」

颯馬
いいから一緒に来てください
こんにちは

店員
「いらっしゃいませ!お待ちしてましたよ」

可愛らしい女性の店員さんが、颯馬さんに笑顔を向ける。

店員
「本当にもう鳥に来られたんですね」

颯馬
ええ。ずっと入荷するのを待ってましたから

店員
「こちらが、ご予約されていた盆栽です」

サトコ
「···盆栽?」

店員さんは、奥から小さな盆栽を持ってきた。

颯馬
ステファニーもここで買ったんですよ

サトコ
「じゃあ、『やっと会える』っていうのは···」

颯馬
ええ、これのことです。この盆栽は、希少価値でなかなか手に入らないんですよ
もう半年前から、入荷するのを待ってたんです

(ぼ、盆栽···恋人じゃなかったんだ)

ホッとしたような、それ以上に恥ずかしいような気持になる私に、教官がニッコリと笑う。

颯馬
それじゃ、戻りましょうか

サトコ
「は、はい···」

(颯馬教官の笑顔、まだ怖い···帰ったら、とんでもないことが起こりそうな気がする)

盆栽を持って教官室に戻ると、颯馬教官がゆっくりと奥へ歩いて行く。
その先には···東雲教官と黒澤さんの姿。

颯馬
歩。黒澤?

黒澤
···!

東雲
な、なんですか?

颯馬
2人には、じっくりとお灸を据えてあげなければならないようですね

満面の笑みを浮かべる颯馬教官とは対照的に、2人は、恐怖に凍り付いた表情を浮かべたのだった···

Secret End

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