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本編カレ目線 颯馬5話

「大胆告白」

失踪した市民たちをがいると情報を聞き、山奥のパーティー会場にやって来た。
ここで私とサトコさんは、再び夫婦役として潜入捜査することになる。

(サトコさんがドレスを着る姿は、初めて見るな)

普段とは違う大人っぽい姿を見て、思わずドキリとする。
まじまじ見ているとサトコさんと視線が合い、私は優しく微笑んだ。

颯馬
そのドレス、馬子にも衣裳ですね

サトコ
「馬子···!」

颯馬
冗談ですよ。とても綺麗です

(普段なら、もっとスマートに褒められるんだけど···)
(サトコさんを前にすると、どうしても勝手が違ってくるな···)

今までなかった感覚に戸惑いつつ、私はサトコさんに手を差し出した。

パーティーが始まり森尾が壇上で挨拶を終えると、自分でも情報が険しくなるのが分かった。

颯馬
二手に分かれましょう

サトコ
「え?」

颯馬
私は森尾を追います。貴女はセレブたちの動向を見張っていてください

そうサトコさんに指示を出し、私たちは二手に別れた。

サトコさんから連絡を受け、セレブたちが集まる部屋の前に急ぐ。
様子を窺っていると、森尾が少し手前の別室へ入って行った。

(ここで取り逃がすわけにはいかない···!)

颯馬
······行きましょう

石神
待て!何があった?

サトコ
「森尾が別室に入ったんです!」

颯馬
何かあれば突入できるように待機します

石神
2人で突入は無茶だ。応援を待て

(石神さんの判断は正しいだろう。だけど、犠牲者もたくさん出ているのも事実だ)
(時間もないのに、応援なんて待っていられない)
(···ここは、サトコさんを置いてひとりででも······)

そう覚悟を決めるも、サトコさんは自分も行くと言い出す。

颯馬
サトコさん···

サトコ
「危険なのは分かっています。でも···私は颯馬教官の補佐官です」
「こんな時に補佐できなかったら、補佐官失格です!」

颯馬
ですが···

(彼女の意見はもっともだろう。1人で行くよりも、2人で行く方がいい)
(だけど···危険な目に合わせるわけにはいかない)

サトコ
「お願いします···教官!」

(この子は、本当に···)

真っ直ぐな瞳を向けられ、私は観念して首を振った。

颯馬
分かりました。でも、絶対に私のそばを離れないでください

サトコ
「はい!」

(例えここで置いて行っても、サトコさんは絶対に追いかけてくる。この子はそういう子だ)

私はそんなどこまでも真っ直ぐな彼女を連れ、部屋に突入した。

部屋に突入したものの森尾に気付かれてしまった私たちは、奥の部屋の閉じ込められてしまった。
石神さんから待機指示が出るも、途中で通信が途切れてしまう。

(石神さんからは、待機指示。だけど、そんな時間はない···)

私はサトコさんに指示をし、通気口から別室に移動することに成功する。
しかし、その先の部屋も鍵がかかっていた。

(くそっ、一刻も早く森尾たちを捕まえなければならないのに···!)

ドアノブに向かって何発も銃を撃つも、ドアはビクともしない。

颯馬
弾切れか···

(仕方ない···)

私はバン!と、ドアに体当たりを始めた。

サトコ
「教官、止めてください!」

颯馬
何を言ってるんですか!ここで私たちが動かないでどうするんです!?

サトコ
「っ···」

全身でドアに体当たりし続けると、腕に血が滲み始めた。

(っ···森尾に撃たれたところか···だけど、ここで止めるわけには···!)

サトコ
「教官···止めてください!なんとか石神教官たちと合流しましょう!」

颯馬
その前に、逃げられたら?ここにいても応援は来ない。オレが行くしかない

サトコ
「応援は来ます!必ず···石神教官と後藤教官が来てくれます!」

颯馬
彼らは来ない

(そう、あの時と同じだ。信じる者はバカを見る。だから、オレは···)

未だに忘れられない過去。
あの時の···妹のことが脳裏を過った。

(公安を信じて何になる?彼らを信じたって、誰も救えないんだ···)

サトコ
「どうして···」

颯馬
オレは1人で行く。貴女はみんなのところに······

サトコ
「いい加減にしてください!」

颯馬
っ···

サトコさんの声に驚き、ピタリと身体が止まる。

サトコ
「もっと自分を大切にしてください!」
「みんなを信じてください!教官に何かあったら、みんなを悲しむんですよ!」

颯馬
···貴女には分からない

(オレとは違って、平穏無事に暮らしてきて···)
(綺麗な理想を掲げて、公安になろうとしている彼女には、オレの思いが絶対に分かるはずがない)

颯馬
オレの何が分かる?何を知ってる?

サトコ
「わかりません!でも、分かりたいと思うんです!」
「私は、颯馬教官が大切なんです!ずっとそばにいたいんです!」

颯馬
···!

サトコ
「教官に何かあったら、私が一番悲しみます。だから···」
「お願いです。必ず来てくれますから···信じて待ちましょう!」

懇願するようにしがみついてくるサトコさんに、憑き物が落ちたように肩の力が抜けた。

(まさか、こんな時にこんな気持ちになるなんて···)

サトコさんの言葉に、先ほどまで考えていたことが吹っ切れた。

(この子は、こんなオレに一生懸命に語りかけて···)
(その上、こんな状況にもかかわらず、告白してしまうとは···)

颯馬
フフ···

サトコさんの一連の行動に、思わず笑みがこぼれる。

(純粋で真っ直ぐな言葉というのは、こんなにも心に響くものなんだな···)

いつまでもどんな時でも一生懸命で···真っ直ぐなサトコさんの姿を、
愛おしく感じている自分がいた。
それからしばらくすると、ドアの外から声が聞こえてきた。

???
「おい、こういうのはお前の得意なんだろう」

???
「クソが···こういう時ばっかり使いやがって」

そして声が止んだかと思うと、勢いよくドアが開かれる。
そこには、私たちの応援に来た石神さんたちの姿があった。

無事に森尾たちが逮捕され、サトコさんは教官たちに告白のことをからかわれていた。

(まさか、本当にみなさんが助けに来るなんて···)
(今回ばかりは、サトコさんの言うことが正しかったってことか···)

東雲
あのあとも、断片的に2人の会話は聞こえていたんだよね
それでなぜか、あの瞬間だけはやたらはっきり聞こえて

サトコ
「ぎゃーーー!」

サトコさんは顔を真っ赤にしながら、叫び声を上げる。

(サトコさんは、本当にオレのことが好きなのか···?)
(それに、オレもサトコさんのことが···)

気付いたら、サトコさんの反応を見て、どこか嬉しいと思う自分がいた。

(しかし、私たちは教官と生徒という立場)
(それに、サトコさんの公安への真っ直ぐな気持ちを、私がダメにしてしまうのでは···?)

サトコさんの気持ちに応えたい···
でも、それに応えていいのだろうか?という思いの狭間で、悩み続けた。

to be continued

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