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魅惑の!?恋だおれツアー! プロローグ

???
「どこに行った?」

???
「さっさと探せ!」

???
「そう遠くには行ってないと思いますが···」

???
「待って。あと少しで監視カメラのデータ集まるから」

???
「勘に頼った方が早い」

???
「データか人力か···どちらが向いているんでしょうね。彼女には」

ロッカーの影で息を潜める、件の彼女。
追っ手から逃れるために、助けてくれたのはーー

これはまだ、例の事件が起きる前日のこと。

サトコ
「こ、これは···!」

郵便受けから取ってきたDM類の中から見つけた、ひとつの封筒。
期待と共に封を開けると、そこにはーー “ご当選おめでとうございます” の文字が。

サトコ
「やった!」

(よっし!こうしちゃいられない!)
(さっそく準備に取り掛かろう!)

翌日。
庁内の空調が心地良く感じられる夕暮れ時のこと。

(2箱いっぺんに運ぶのは、ちょっと厳しかったな···)

書類の詰まった段ボールを運んでいると。

???
「無理すんなよ」

サトコ
「え?」

横から伸びてきた手がひょいとダンボールを持って行く。
同時にフワッと香ったのは、きっと高級シャンプーの香り。

一柳昴
「相変わらず、力仕事担当か?あれだけ男がいんのに」

サトコ
「一柳さん!」

(道理で華麗な動きでいい匂いがするわけだ)

サトコ
「新人の仕事ですから。自分で運びます」

一柳昴
「俺も行くから、ついでだ」

私の手が届く前にサッと歩き出すのが、一柳さんが一柳さんたる所以だと思う。

サトコ
「一柳さん、本当に大丈夫ですから!」

一柳昴
「じゃあ、ここに置いとく」

???
「一柳?」

(あああ、やっぱり一番に反応するのは···)

後藤
ローズマリー野郎が何してやがる

一柳昴
「今日もスーツの下はパジャマか?」

後藤
わざわざケンカ売りに···

石神
いい加減にしろ。それ以上続けるなら、後藤を桂木班の合宿に参加させるぞ

後藤
···わかりました

石神
それで一柳。何の用だ

一柳昴
「ほら、桂木さんの届け物」

石神
ああ···ご苦労だった

一柳さんが石神さんに分厚い封筒を渡すと、ふと何か思い立った顔でこちらを振り返った。

一柳昴
「そういえば、お前···」

伸びてきた長い指先が私の髪に触れた。
さらさらっと指の間を髪がこぼれ落ちていく。

(これ、王子様の仕草だ···)

一柳昴
「随分キレイになってるけど、男か?」

全員
「!」

(恋愛禁止の銀室で、何て爆弾を!)

サトコ
「そ、そんなわけないじゃないですか!」
「それはその···ちょっと楽しみにしていることがあって」

全員
「······」

(な、なんか···皆さんの視線が突き刺さっているような···なぜ!?)

一柳昴
「へぇ···」

私が感じた気のせいではないと証明するように、一柳さんが課内に視線を巡らせて笑った。

一柳昴
「あんまり可愛いとこ見せると、食われるぞ」

サトコ
「く、食われ!?」

誰に食われるのかと、反射的に背後を振り返ると、
皆さんに睨まれーー見つめられている。

一柳昴
「じゃあな」

サトコ
「爆弾落としまくって爽やかに去っていくなんて···!」

(いっそのこと、私も一緒に···!)

東雲
これ、青山の美容院のトリートメントだね

サトコ
「はい!?」

眩しいほど艶やかな髪が目の前で揺れたかと思えば、至近距離に東雲さんが立っている。

黒澤
裏取れました。昨日の19時の予約ですね

サトコ
「え、ちょ、あの···!」

颯馬
「その後に駅前のZAZAで新しい服を購入していますね。カードで」

(どうして私の行動の裏取りを!?)
(これ以上、ここにいてもロクなことに···)

サトコ
「あ、あー!もうこんな時間だ!定時退庁推奨週間でしたね!」

石神
なんだ、そのマヌケな演技は

加賀
ああ゛?なめてんのか?

サトコ
「け、決してそういう訳では···失礼します!お疲れさまでした!」

私がカバンを持って公安課を飛び出すのと、皆さんが席を立つのが、ほぼ同時だった。

(捕まったら、間違いなく残業コース!)

今日は津軽さんが不在なこともあり、誰のサポートにされてもおかしくない。

(いつもならお手伝いしますけど···今はダメなんです!)

追っ手をやり過ごすために、隠れているとーー

津軽
ウサちゃん?こんなとこで、かくれんぼ?

サトコ
「津軽さん!」

意外なことに救世主になってくれたのは、私の班長だった。

翌日の朝、私は新宿のバスターミナルに立っていた。

(昨日は津軽さんが帰してくれて助かった···津軽さんも、たまにはいいことするんだな···)

今日は久しぶりの休み。
そして、楽しみにしていることーーバスツアーに参加する日だった。

(バスに乗るときは、酔わないためにも万全な体調で行かなきゃいけないから!)
(昨日だけは残業できなかったんです!)

心の中で皆さんに謝ってから、深呼吸で気持ちを切り替える。

(よし!今日は楽しむぞ!)

サトコ
「···って、ええ!?」

(どうして!?)

張り切って乗り込んだ先にいたのはーー

難波仁

黒澤透

加賀兵吾

石神秀樹

颯馬周介

東雲歩

後藤誠二

津軽高臣

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