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魅惑の!?恋だおれツアー! 加賀2話

『現地でCOOK!クッキングツアー☆これでアナタもお料理上手♪』ーーー

このツアーに、私が参加した最大の理由は···

先生
「はい、では次はイチゴ大福を作ります!」

サトコ
「やった!待ってました!」

加賀
······

サトコ
「あっ···すみません、はしゃいじゃって···」

加賀
···作るもんは最初から決まってたって言ってたな

サトコ
「はい!プリンはオマケで、イチゴ大福のために参加したんです!」
「スイーツ作りも上手くなって女子力もアップして、更に加賀さんの好きなものを作るんです」
「こんなツアー、最高じゃないですか!」

加賀
······

小さく溜息をついて、加賀さんがぐしゃっと髪を撫でてくれる。

加賀
···クズが

サトコ
「ふふ···だから本当は、加賀さんも誘いたかったんですけど」
「でも手作りを渡して驚かせるのもいいかな、って思ったんです」

(だけど結局こうやって一緒に参加できたし、本当に良かった)
(よし!それじゃ張り切って、加賀さんと一緒に美味しいイチゴ料理を···)

加賀
···そういや

サトコ
「はい?」

加賀
料理ツアーなのに、なんで美容室行ったり新しい服買ったりした

サトコ
「あ、それは···ちょっとした旅行を楽しみたくて」

加賀
あ?

サトコ
「こんな遠出するのも久しぶりですから、せっかくだしと思って」
「この服、似合ってますか?あと、髪も···」

加賀
テメェ···

サトコ
「え!?なんで怒ってるんですか!?」

優しく髪を撫でてくれていた手が、思い切り両頬をつねる。

サトコ
「いひゃい!」

加賀
紛らわしい真似しやがって

サトコ
「はまひはおひゃへしはいほ、おんはほひえ···」

加賀
何言ってるかわかんねぇ

サトコ
「ひゃあははひへふはあい···!」

必死に懇願して、ようやく痛みから解放された。

(うう···おめかししたことをこんなにも怒られるなんて)

サトコ
「···加賀さん」

加賀
なんだ

サトコ
「手に片栗粉ついてますよ!」

加賀
それがどうした

サトコ
「だってその手で、私の···」
「あ!髪も頬も粉だらけ!」

鏡で確認すると案の定、髪と頬が白くなっている。

サトコ
「ひどいですよ、もう···!」

加賀
···いいからさっさと作るぞ

サトコ
「!」

(い、今の微笑み···!激レア···!)
(ああ、私···このツアーに参加して本当に良かった)

先生
「イチゴ大福のあとは、蒸したプリンに飾りつけしますよ~」

加賀
···

サトコ
「!!!」

(せっかくの激レア微笑みが、また般若みたいに···!)

サトコ
「か、加賀さん!プリンはプリンでも、プリンアラモードですから!」

加賀
同じだろ

サトコ
「生クリームとかフルーツとか乗ってる分、石神さんを思い出す要素が減るじゃないですか」
「とにかく、イチゴ大福作りましょう!」

加賀
···ああ

先生の言う通りに大福作りを始める加賀さんの隣で、こっそりイチゴに包丁を入れる。

(これをこうして···こうすれば···)
(よし、できた···!何日も前から考えておいてよかった!)

“ある細工” をしたイチゴ大福を完成させた直後、後ろから加賀さんに覗き込まれた。

加賀
何してやがる

サトコ
「みっ、見ないでください!」

加賀
ほう···

サトコ
「食べる時のお楽しみです!あとで絶対分かりますから···!」

加賀
バカが。慌てすぎだ

加賀さんの手が伸びてきて、親指で目元を拭われた。

サトコ
「なんですか?」

加賀
テメェで粉付けてりゃ世話ねぇな

サトコ
「あっ···すみません。ありがとうございます」

(さっきは粉を付けられたけど、今度は拭いてくれたんだ)

言葉も態度もいつも通り強引で乱暴だけど、その指先はやっぱり優しい。
その後、無事にプリンアラモードも作り終え···

加賀さんの部屋に帰ってくると、イチゴ大福を食べるためにお茶を淹れる。
加賀さんが後ろに立った気配がした瞬間、包み込むように抱き締められた。

サトコ
「かっ、加賀さん···?」

加賀
···俺のために作るつもりでツアーに参加したのか」

サトコ
「イチゴ大福のことですか···?もちろんです」
「加賀さんの好きなものを手作りできるなんて、すごく幸せなことですから」

加賀
···本当にテメェはどうしようもねぇな
だが···悪い気分じゃねぇ

サトコ
「······!」

耳をくすぐるように、加賀さんの声が甘く響く。

(どっ、どっ、どうしちゃったの···!?)
(私をいじめては笑い、困る私を見ては愉しそうにする加賀さんらしくない···!)

でもやっぱり嬉しくて、心臓は今までにないくらいに激しく脈打っている。
身体を通じて加賀さんにその音が聞こえてしまいそうで、急に恥ずかしくなった。

サトコ
「か、加賀さん···あの···」

加賀
なんだ

サトコ
「私···加賀さんが喜んでくれるなら、このくらいなんでもないです」
「加賀さんが笑ってくれるだろうなって思うだけで、何をしてても楽しいですから」

加賀
······

チュ、と軽く頬に唇が触れた。

加賀
···今日は珍しく忠犬だな

サトコ
「ん···」

加賀さんの柔らかい唇が、耳をなぞるようにしてうごめく。
くすぐったさと抗い難い快感に、思わず手で口を押えた。

加賀
聞かせろ

サトコ
「ぁっ···」

加賀
その声で、いつも俺を悦ばせてんだろ

(今日の加賀さん、甘すぎてっ···頭がくらくらする···)
(嬉しいけど、やっぱり恥ずかしい···!)

サトコ
「い、イチゴ大福っ···食べませんか···?」

加賀
あとでいい

サトコ
「だけど、お茶っ···は、はいりました、から···」

指で妖しく耳をいじられた後、耳たぶを舌先でなぞられた。
ぞくりと背中からせり上がってくる快感を拒むことができず、足に力が入らない。

サトコ
「加賀、さっ···」

加賀
ん···?

サトコ
「っ······」
「あ、あのプリンっ···せっかくだから、石神さんにあげましょうかっ···」

加賀
······
テメェ···

(···しまったーーー!)

今の今までイチゴ大福よりも甘い雰囲気だったのが、いきなり禍々しい空気になる。
ぎこちなく振り返れば、そこには魔王と化した加賀さんの姿があった。

(ああーーー!私のバカ!バカバカバカ!)
(よりのもよって石神さんの名前を出すなんて···!)

加賀
···おい

サトコ
「ハイ···」

加賀
わかってるな?

サトコ
「死にたくないです···」

加賀
恨むならテメェの浅はかさを恨め

サトコ
「死にたくない···!」

ピンク色に見えていた周囲は、今やおどろおどろしいオーラが渦巻いている。
優しかった加賀さんの手はいつものように強引になり、半ば強引に私の顎を持ち上げた。

加賀
「こういうとき、他の男の名前を出す」
「その意味がわからなねぇわけじゃねぇだろ」

サトコ
「ハイ···加賀さんのお怒りを買うという意味です···」

加賀
俺を怒らせたかったのか

サトコ
「めっそうもない···!加賀さんに喜んで欲しい一心なんです、いつも!」
「いや、ただちょっとだけ···」
「し、嫉妬して···ほしいな~って、思わくもないですけど···」

加賀
······

サトコ
「すみません···」

加賀
テメェはどこまでも、どうしようもねぇ駄犬だな

(···あれ?あんまり怒ってない?)

そう思ったのも、束の間···

加賀
イチから躾ねぇとわかんねぇか

サトコ
「!!!」
「わ、わかってます!ちゃんと!」
「だから、夜通し抱き潰しの刑だけは、どうか···!」

加賀
俺に指図できる立場か

サトコ
「指図じゃなくてお願いです!」
「加賀さん、手加減なしだから···!本気で次の日足腰立たないんですよ!」

加賀
鍛え方が足りねぇ

サトコ
「そんな特殊な鍛え方してる人、いませんからね···!?」
「それに明日は、加賀さんも確か捜査が···」

加賀
人の心配してる余裕あんのか

サトコ
「あっ···」

無理やりソファに押し倒されて、抵抗する前に動きを封じられた。
両手を頭の上でまとめられて、大きな手が服を乱していく。

加賀
俺の怒りを鎮めてぇなら、大人しく啼いてろ

サトコ
「ひ、ぁっ···」

(さっきまでの神のような優しさはどこへ···!)
(魔王に戻った加賀さんを止めるなんて、私には···)

息つく暇もないくらい、激しく求められ···
そのあとは寝る間もないほど、夜通し愛され抜いたのだった···

翌朝、仮眠程度の睡眠のあと、ベッドから起き出してリビングへ向かう。
そこには、ひと足先に起きた加賀さんの姿があった。

サトコ
「加賀さん、寝ました···?」

加賀
3日くらいなら寝なくても死なねぇだろ

サトコ
「いや、普通の人なら2日寝ないだけで多分気を失いますから···」
「···あれ?今食べてるのって、もしかして···」

(間違いない···!私が作ったプリンアラモードだ!)
(加賀さんがプリン食べてるなんて、レア···!)

サトコ
「···もしかして、自分のはもう食べちゃったんですか?」

加賀
冷蔵庫に入ってる。食いたきゃ食え

サトコ
「へ?」

加賀
間違っても、あのクソ眼鏡にやろうなんざ考えるなよ

サトコ
「···もしかして、石神さんの手に渡る前に私が作ったプリンを食べた···とか···?」

加賀
あんな雑魚に食わせるプリンはねぇ

嫉妬だとわかり、何をされるか予想はできたけどついニヤけてしまう。
そしてその直後、予想通りアイアンクローを食らった。

サトコ
「い、痛い···うふふ···」

加賀
何笑ってんだ

サトコ
「痛いけど、嬉しいんです」

加賀
マゾが

(この分だと、まだイチゴ大福食べてないよね)
(仕事に行く前に一緒に食べるか···それともオフィスに持って行って、3時のおやつに出そうかな)

私が施した、“ある細工” ···大福に入れたイチゴを、ハートの形にしたこと。
加賀さんがそれに気づくのは、もう少しあとになりそうだった。

Happy End

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