カテゴリー

本編③カレ目線 津軽5話



捜査のために引っ越し作業。
ウサの部屋に溢れるガタイのいい男たち。

サトコ
「······」

津軽
ねぇ、スマホのカメラ起動させてなにやってんの

サトコ
「ちょ!人の携帯の画面勝手に見ないでください!」

津軽
つまり、やましいことしてるわけだ?

サトコ
「べ、別にソウイウワケデハ···」

津軽
ウサって、ほんとわかりやすすぎ

ひょいとその手からスマホを取り上げる。
写真アプリを開けば、額に汗して引っ越し作業をしている桂木班の面々が写っていた。

津軽
ウサちゃんの盗撮魔

サトコ
「ち、ちがっ!これは鳴子にどうしても送って欲しいって頼まれて!」
「それに黒澤さんも撮っていいって言うから!」

津軽
ふしだら

サトコ
「は!?」

津軽
あのさ。男を無防備に部屋に入れるって、何考えてんの?

(俺・以・外・の!)

サトコ
「津軽さんが引っ越し丸投げするからじゃないですか!」

津軽
······

ウサのおでこにビシビシとチョップをくらわしていく。

サトコ
「いだっ!な、なんでっ」

津軽
ほんと、君って手がかかるんだから

サトコ
「納得いかない···」

とりあえず写真を全部消去して、俺の顔を撮ってからスマホを返してあげる。

サトコ
「うわあぁっ、私の写真フォルダが津軽さんの顔だらけに!」

津軽
ロックとホーム、両方に設定しておいたからね

サトコ
「うぅ···」

ウサがスマホの画面と横に立つ俺を交互に見つめていると。

藤咲瑞貴
「サトコさん、このプリザーブドフラワーはどうしますか?」

サトコ
「!」

津軽

(······えっ?)

見覚えのある花。

サトコ
「こ、これは···っ」

聞こえてくるウサの声は明らかに動揺している。
ということはーー

(いや、だって、あの時さ···)

津軽
そういえば俺があげたあの花、まだある?

サトコ
「な、ないです!」

津軽

サトコ
「枯れたので捨てました!」

(捨てたって言ったよね?かなーりあっさりと)
(俺、けっこうあの時、傷ついたんだけど?)
(ていうか、なんでそんな嘘を···)

正直者のウサがわざわざ嘘を言ったのか。
わからなくて横を見てみれば。

サトコ
「~っ」

真っ赤な顔と目が合った。

(あ···)

大事だから、とっておいた。
顔に書かれた気持ちを読み取った瞬間、気持ちが心の容器から溢れかえった。

ーー嬉しい。

言葉が呑み込めない。

津軽
···嬉しいよ

サトコ
「!」

多分、君が考えるより、予想しているよりずっと。
茶化せないほどに。
だって君もあれがデートだって思ってくれていた証だから。

サトコ
「~っ!ギョウザクッション!!」

津軽
は!?

真っ赤な顔がギョウザになる。

(ほんとに、この子は···)

カニ歩きをしながらギョウザ顔のまま立ち去っていく。

(変な子)

だから、好きなんだけど。

藤咲瑞貴
「じゃあ、置いていきますね」

津軽
待って
俺が自分で梱包するから、緩衝材だけくれる?

藤咲瑞貴
「わかりました」

アイドルくんは綺麗な笑顔でプチプチを渡してくれる。
置いていってもよかったんだけど。
初めて一緒に暮らす家に飾ってみたかった。

後藤
氷川、重いだろ。俺が運ぶ

サトコ
「すみません、ありがとうございます」

玄関の方で話す姿が見える。
今だけは、あのふたりを微笑ましく見られると同時に。
期待をかけてしまいそうな自分にブレーキをかけた。

佐内ミカド
「たかおみー!」

外から聞こえる声に窓から顔を出す。

阿佐ヶ谷タクヤ
「テキトーに荷物積んだけど」

津軽
ん、今行く

山本コースケ
「たかおみのパンツって、まだトイーー」

津軽
今行くっつってんだろ

近くに会ったオレンジをコースケの口めがけて投げた。
それが命中したのかどうかは、わからないけれど。
あの日手にあった花束を、そっと丁寧に包んで抱えた。

to be continued



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする