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子供と戯れる彼が見たかったので 加賀2話

喧嘩の仲裁に入った加賀さんが、子供たちから怖れられてしまった。

男の子1
「ごとーせんせー!あーそーぼー!」

後藤
ああ···何をして遊ぶ?

男の子1
「あっちに川があった!なんか滝もあるって!」

後藤
何···?滝だと?

黒澤
後藤さん、水場は危ないからダメですよー

後藤
···わかってる
あとでひとりで行くか···

女の子
「そーませんせー、あゆむせんせー、いっしょにはなかんむりつくろー!」

東雲
いいよ。上手にできたらプレゼントするね

颯馬
花冠なんて、可愛らしくていいですね

男の子2
「なーモモセ!鬼ごっこしようぜ!」

百瀬
「呼び捨てにすんな。クソガキ」

あれ以来、子供たちは加賀さんを避けるようにして他の大人たちと遊んでいる。

サトコ
「加賀さん···」

加賀
なんてツラしてやがる

サトコ
「だって···」

加賀
ガキってのは気まぐれだからな
俺に注意されてビビらねぇのは花くらいだ

(確かに花ちゃんなら、加賀さんに注意されても逆に言い返しそうだけど)
(でも···本当にこれでいいのかな。加賀さんも···子供たちも)

サトコ
「···みんなー!」

我慢できず大きな声で呼びかけると、子供たちが驚いたように振り返った。

加賀
おい···

サトコ
「みんなに、聞きたいんだけどー!」
「加賀先生と遊んで楽しかった人ー!」

黒澤
はーい!

東雲
透、黙って

石神
そもそもお前は遊んでもらってないだろう

颯馬
オレも~って仲間に入ろうとして蹴り飛ばされてましたよね

黒澤
そういうスキンシップも含めて、オレは楽しかったですよ!

女の子1
「うん···私も楽しかった」

女の子2
「私も!かがせんせー、たくさん遊んでくれるから」

ひとり、またひとりと手を挙げ、最後には全員が手を挙げた。

サトコ
「みんな楽しかったのに、今はどうして遊ばないの?」

男の子1
「だって、かがせんせー怖いし···」

男の子2
「うん、おこるし···だから···」

サトコ
「じゃあふたりは、さっき喧嘩したままの方がよかった?」
「お友だちを叩いて、ふたりとも悲しい気持ちのままの方がよかったのかな」

男の子2
「···ううん」

男の子1
「せんせーがいなかったら、きっともっといっぱい叩いてた:

サトコ
「うん。ふたりが今も仲良しなのは、加賀先生が言ってくれたおかげだね」

ふたりは顔を見合わせると、おずおずと加賀さんのところへ歩み出た。

男の子1
「せんせー···ごめんなさい」

男の子2
「叩くなって言ってくれてありがとう」

加賀
別に怒っちゃいねぇ

男の子1
「本当に?」

加賀
ああ。お前ら如きに腹も立たねぇだろ

男の子1
「じゃーあそぼ!ぼく、ほんとはせんせーと遊びたかった!」

男の2
「僕も僕も!びゅーんってやつやって!」

ふたりが加賀さんにぎゅっと抱きつくと、それを合図に他の子も集まりだす。

女の子3
「私も!たかいたかーいして!」

女の子4
「私もー!じゅんばーん!」

加賀
めんどくせぇな···

文句を言いながらも、加賀さんは子供たち全員の要望通りにしてあげている。
しかもみんなにせがまれ、全員にハグ付きだった。

(い、いいなあ~~~!)

ママ1
「いいなあ~~!」

サトコ
「えっ?」

ママ2
「ああ~私も加賀先生にハグして欲しい!」

(その気持ち分かる···!)
(···じゃなくて!)

子供たちと遊ぶ加賀さんの姿を、ママたちはこぞって撮影している。

(私も撮りたいけど、我慢···!今は仕事中なんだから)
(それに私のスマホのアルバムには、花ちゃんと戯れる加賀さんの秘蔵写真がたくさんあるし···!)

ぐっと我慢しながら他の子たちと遊んでいると、休憩がてら加賀さんがこちらにやって来た。

加賀
テメェにフォローされるなんざ、ヤキが回ったな

サトコ
「フォロー···?」

(そうか···さっき自分でも思ったけど、今は仕事中なんだ)
(じゃあ私、知らないうちに加賀さんを支えてたってこと···?)

そう気づき、急に嬉しくなった。

<選択してください>

フォローなら任せて

サトコ
「加賀さんのフォローなら、今後も私に任せてください!」

加賀
調子に乗るんじゃねぇ

サトコ
「ぎゃっ!痛い!」

思い切りデコピンされて痛がる私を見て、子供たちが声を上げて笑う。

女の子
「私も!私も!」

サトコ
「ダ、ダメ···!みんながこの衝撃を受けたら首が吹っ飛ぶ···!」

もっと頼って

サトコ
「じゃあ、これからはもっと私を頼ってください!」

加賀
······

サトコ
「うわぁ···すごく不服そうな顔···」

(いや、これは不服なんじゃない···『テメェに何ができる』って思ってる時の顔だ···)

もっと遊びます?

サトコ
「あ、じゃあもっとみんなと遊びます?」

男の子
「遊ぼう!かがせんせー、あそぼー!」

女の子
「私も!もっと遊びたい!」

加賀
···チッ

『余計なこと言いやがって』という顔をしつつも、加賀さんはどこか満更でもなさそうだ。

こうして、親子ともども大満足のまま遠足は終わりを告げたのだったーー

その日は現地解散となり、私は報告書を書くため本庁へ戻って来た。

(最後に親御さんと子供たち、両方にアンケートを取ったけど)
(『楽しかった』がほとんどだった···満足度98%?)

喜びの中で各報告書は、自然と筆も乗る。
でも気付けば、加賀さんがいかに素晴らしくイクメンかということが報告書を埋め尽くしていた。

(いけない···!こんなの提出したら加賀さんと石神さんから大目玉を食らう···)
(とにかく、今回の遠足は大成功だったし···銀室長にもいい報告ができそう)

報告書を書き終えたところで、加賀さんからLIDEが届いた。

(『下にいる。さっさと終わらせろ』···迎えに来てくれてるんだ)

急いで帰り支度を済ませ、公安課ルームを飛び出した。

本庁から少し離れたところに停まっていた車に乗り込み、助手席のドアを閉める。

サトコ
「加賀さん、お疲れさまです」

加賀
ああ

(···いつもの加賀さんだ)
(子供たちと接してたときも楽しそうだったけど···)
(やっぱり、普段の加賀さんがいいな)

その後、近くのレストランで軽くご飯を食べ···

加賀さんの部屋にお邪魔すると、入れ替わりでお風呂に入ってのんびりタイムを迎えた。

サトコ
「今日は結構ハードでしたね···子供たちの相手があんなに大変だとは」

加賀
テメェは体力がなさすぎだ。ガキ相手にしてたらあのくらいは当然だろ

サトコ
「さすが、普段から花ちゃんと遊んでる加賀さんが言うと説得力がある···」
「でも子供たちもみんな、楽しそうでしたね」

加賀
さあな

(そんなこと言って、最後には全員の名前を覚えるくらい楽しんだのに)
(加賀さんって、意外に子供好きなんだよね)

サトコ
「最初はどうなることかと思いましたけど、加賀さんも楽しそうで良かったです」

加賀
テメェの目は節穴か

サトコ
「ふふ···でも、ちょっとだけさみしかったこともあります」

ソファに並んで座りながら、ふたりきりだと思うとつい本音が零れる。

サトコ
「加賀さんが子どもと遊んでる時の顔は、本当は独り占めしていたかったんです」
「普段、花ちゃんといるときはすごく楽しそうだから」

加賀
ほう···

何やら含みのある笑みを浮かべ、加賀さんがこちらに体重をかける。
そのまま、ソファの端に追いやられながら押し倒される形になった。

サトコ
「かっ、加賀さん···?」

加賀
独り占めか
花もあのガキ共も知らねぇ顔を、テメェだけは知ってるはずだがな

(それって···)

聞き返す前に、唇を軽く食まれた。

サトコ
「んっ···」

加賀
それとも、わざわざ見せてやらねぇとわからねぇか

サトコ
「···はい。わからないです」
「見たいです。私しか知らない加賀さんの顔···」

加賀
···上等だ

大好きな笑みを浮かべ、加賀さんが迷いなく私のシャツの裾から中に手を差し入れた。
下着をつけていない肌を指でいたぶりながら、じっくりと味わうように追い詰める···

加賀
テメェも、俺しか知らねぇ顔を晒すことが条件だがな

サトコ
「そんなの···」

いくら我慢しようとしても、加賀さんに攻め立てられればあっさり陥落してしまう。
その夜も結局、求められるまま加賀さんの下で甘い声を上げたのだった。

翌日、いつものように時間をずらして出勤するとすでに津軽さんがいた。

サトコ
「おはようございます。昨日はお疲れさまでした」

津軽
ウサちゃん、報告書できてる?

サトコ
「はい。銀室長に持って行く前に確認をお願いしていいですか?」

津軽
はいはい

私の報告書に目を通した津軽さんが、ニヤニヤ笑いだして加賀さんを振り向いた。

加賀
うぜぇ···

津軽
だってさあ、この報告書にもあるけど、兵吾くん、ほんと大人気だったよねー

加賀
······

サトコ
「わ、私は忠実に書いただけですよ···!」

黒澤
おはようございまーす!
あっ、加賀さん!昨日は楽しかったですね!
保育士加賀先生の雄姿、オレはずっと忘れませんよ★

加賀
後藤

後藤
はい

ガン!と後藤さんが後ろから黒澤さんの脳天に肘落としを食らわせた。

黒澤
いったーーー!
後藤さん、本気でオレを殺しにかかってます!?
だいたい、なんで加賀さんの言いなりなんですか!?後藤さんは石神班ですよね!?

後藤
当然だ。それは揺るぎない
だがお前がうるさいのとは別の話だ

黒澤
オレは場を和ませようとーーー!

後藤さんに引きずられ、黒澤さんが公安課ルームから退場する。

(黒澤さん···どうかご無事で···)

津軽
ねえ兵吾くん、いっそ保育士に転職した方がいいんじゃない?

加賀
くだらねぇ

津軽
もったいないなー。あのスキルは子供たちの前でこそ活きると思うけど
でもまあ、いいパパになればいいのか
ねっ、ウサちゃん?

サトコ
「えっ?ハハハ!そうですね!」

探りを入れるような津軽さんの言葉に、笑って誤魔化す。

加賀
···いい父親なんざ、知るか

誰にも聞こえなかったであろうその声は、私の耳にだけ届いた。

(···加賀さんは、きっといいパパになります)
(きっと···お父さんとは違う、父親に)

その背中を見つめながら、そっと、心の中でそう呼び掛けたーー

Happy End

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