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子供と戯れる彼が見たかったので 購入特典

手元には、エプロンをした班長や公安課の先輩たちの集合写真。
この間仕事で行った、幼稚園で遠足に行った時に撮った一枚だ。

(最初はどうなることかと思ったけど、無事に大成功で終わって良かった)
(それに、すごく楽しかったな。子供と戯れるみなさんの姿···)

加賀
おい

サトコ
「ひぇっ」

加賀
······

サトコ
「す、すみません···!決してサボってたわけじゃ」

加賀
···やる

サトコ
「へ···?」

デスクに置かれたのは、老舗和菓子屋の紙袋だった。

サトコ
「あの」

お礼を言おうと振り返ったときには、加賀さんはすでにオフィスを出て行くところだった。

(早い···!でもどうしてこれを私に···?)
(あっ、これ、テレビで話題になってた新作の柔らか豆大福だ)

サトコ
「あとで会ったら、ちゃんとお礼言おうっと」
「和菓子···となると、コーヒーよりも···」

(確か、給湯室にお茶の葉と急須があったはずだよね)

サトコ
「いつもはコーヒーだけど、たまには日本茶もいいかも」

颯馬
おや、サトコさん。ちょうどいいところへ

サトコ
「颯馬さん、お疲れさまです」
「···ちょうどいいところへ、って?」

颯馬さんの手元には、茶筅やお茶碗など、本格的にお茶を点てる道具がある。

サトコ
「もしかして、ここでお茶を点てるんですか?」

颯馬
ええ、貴女のために抹茶を用意しようかと

サトコ
「えっ?」

(私のために···?)
(っていうかあのお茶の道具、家から持って来たのかな)

聞きたいことはたくさんあったけど、颯馬さんの見事な手さばきに見惚れて言葉が出ない。

颯馬
どうぞ

サトコ
「あ、ありがとうございます···でも、どうして」

颯馬
いつも頑張っているサトコさんに、ささやかなご褒美ですよ

(颯馬さんに頑張ってるって言われると嬉しいな)
(それにこれなら、加賀さんから貰った豆大福ともども美味しく頂ける···!)

颯馬さんに改めてお礼を言い、お茶碗を持って給湯室を出た。

抹茶を持って戻ってくると、さっきまではなかったものがいろいろとデスクに置かれていた。

(これは···プリンにこんにゃくスポンジ、それに···カラオケの優待券?)
(あ、メモが置いてある···何なに、プリンは石神さんからだ)

他班なのに、いつも手伝ってもらってすまない
これはほんの気持ちだ。たまには休め

サトコ
「美味しそうな壺プリン···!本当に、もらちゃっていいのかな」

(石神さんがプリンをくれるのは、仕事ぶりを認めてくれた証···!多分!)
(それに、こっちは···東雲さんから?)

最近疲れてるんじゃない?そんな顔見させられるこっちの身にもなってくれる
これ使ったら少しはマシになるかもね。続けないと意味ないけど

(こんにゃくスポンジ、ずっと気になってたんだよね)
(これで肌をマッサージするとスベスベになるって鳴子が言ってたから)

サトコ
「でも、なんでこんにゃくスポンジの存在を東雲さんが知ってるんだろう···」
「相変わらず、女子力が高い···」

(カラオケの優待券は···やっぱり黒澤さんからだ)

ストレス溜まってませんか?これで思いっきり発散してください!
なんなら、オレ渾身の合いの手で盛り上げますよ★

(···黒澤さんの合いの手!?)
(確かに、疲れもストレスも吹き飛びそうな気がする)

サトコ
「それにしても、加賀さんといい颯馬さんといい、他の人たちといい···」

なぜこんな何でもない日にプレゼントをくれるのか、それだけが気になる。

サトコ
「もしかして、これから大きな事件が待っているとか···?」
「その生贄になるのが私だから、今のうちに飴をあげておこう的な···」

(あれ?今度はLIDE···難波室長から?)

(『今度美味い日本酒の店に行こう。〆はラーメンな』···)

サトコ
「室長からのお誘いなんて、恐れ多い···!」
「嬉しいけど、でもやっぱりおかしい···みんな、何か隠してるんじゃ」

後藤
何がおかしいって?

サトコ
「あっ、後藤さん···!」

後藤
難しい顔して、何かあったのか

サトコ
「実は···誕生日でもなんでもないのに、皆さんがいろいろくれるんです」
「あと、心なしか少し優しいような···後藤さん、何か知りませんか?」

後藤
そうだな···

まぜか少し笑ったあと、後藤さんがカレンダーを振り向いた。

後藤
今月は感謝月間だから、みんなアンタに優しくしてるんだろう

サトコ
「感謝月間···?」

後藤
日頃お世話になった人への感謝の気持ちを忘れないよう、定められたらしい

(お世話って···私の方が皆さんに助けられてばかりなのに)

後藤
もうみんなから十分もらってるかもしれないが、俺のも受け取ってくれ

そう言って、後藤さんはチョコレートの詰め合わせを私のデスクに置いていった。

(私にも、皆さんのお役に立ててるところがあるんだな···)

そう考えると、嬉しさで思わず頬が緩みそうになる。

サトコ
「というか、こちらこそ学生の頃からたくさんお世話になってるし、今度感謝のしるしにお菓子でも」

津軽
ウッサちゃーん

サトコ
「ギクッ」

津軽
うわ、ギクッて口に出す人初めて見た

サトコ
「だって、津軽さんがそんな上機嫌に呼びかけてくるときって」
「絶対、なんかよからぬ事態が···あと、よからぬ食べ物が」

津軽
ひどいなー、俺はいつだって、純粋にウサちゃんに美味しいものを提供しようと

(やっぱり···!きっと今日も私の味覚を破壊しようとしてくる!)

いつものように無理やり食べさせられるのを防ぐため、とっさに口を引き締める。
でも津軽さんは、持っていたものを私のデスクに置くだけにとどまった。

サトコ
「え···?」

津軽
この前、捜査で滋賀に行ったんだよね

目の前に置かれたのは、ちりめん細工のウサギ人形だった。

サトコ
「え!?可愛い!」

津軽
何、『え!?』って

サトコ
「だって、津軽さんがこんなに可愛いお土産···え!?」

津軽
いらないならモモにでもあげるけど

サトコ
「いります!ありがとうございます!」
「っていうか、百瀬さんこそコレもらっても困るんじゃ」

私の言葉など聞こえないかのように、津軽さんはさっさといなくなってしまった。

(まさかの津軽さんまで、プレゼントをくれるなんて···)

濃い目の抹茶をおともに、柔らかい豆大福と壺プリンをいただく。
ひと息つくと、こんにゃくスポンジで顔をマッサージしながらカラオケの優待券を眺めた。

(おっと、室長に返事しなきゃ)
(『ぜひご一緒させてください』っと···)

最後にチョコレートを食べながら、ちりめん細工のウサギ人形をデスクにいい感じに飾った。

(何事かと思ったけど···みなさん、普段はあんなに厳しいし怖いし辛らつなのに)
(なんだかんだ言って、こうやって優しくしてくれるんだよね)

サトコ
「よし、美味しいものをいっぱい食べて可愛いものを見て元気出たし」
「今日の残りの仕事も、しっかり頑張ろう!」

気合を入れて、今日の仕事を片付けるため、席を立った。

Happy End

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