カテゴリー

本編④(後編) 津軽5話

賢く貯めるならモッピー。1P=1円で交換先も多数!

取り調べを終え、『礼愛会』を運営する宗教法人団体に捜査に向かう途中。
百瀬さんが運転し、助手席に津軽さん、私は後部座席に座っていた。

百瀬尊
「あのクソ女、マジで使えねぇ」

津軽
モモ、お口が悪いよ

百瀬尊
「津軽さん相手に口割らねぇとか」
「···テメェのせいだ」

ミラー越しに視線で殺しにかかってくる百瀬さん。

サトコ
「···返す言葉もございません」

売春の客と、どこで会っているのか···結局、純恋ちゃんはーー

新生活をお得に始めるならモッピー 新規申込・切替でポイントが貯まる!

蔀純恋
「私が···私が、男の人たちと会ってた場所は···」
「············」
「···············」
「······言いたくありません」

(いい線いってると思ってた···だけど、最後の最後で完全に口を閉ざしちゃって)
(私の後押しが上手くいかなかったんだ)

津軽さんが途中で来た時点で、すでに上手く進んでいなかった可能性もある。
まだまだ未熟だ。

津軽
ウサ、取り調べでお昼食べはぐったでしょ

サトコ
「そう言われれば···」

緊張で空腹を意識しなかったけど、言われればお腹が鳴る。

津軽

サトコ
「え···いくら私でも、丸めたアルミホイルとか食べませんよ···!?」

津軽
バカ。おにぎり

サトコ
「おに···ぎり···?どこかのお弁当屋さんのですか?」
「あ!もしかして、百瀬さんの彼女さんの···?」

百瀬尊
「あ゛?」

サトコ
「ひっ」

津軽
俺の

サトコ
「はい?」

津軽
津軽さんお手製おにぎりだよ?よかったね

サトコ
「津軽さん···お手製···」

津軽
ノアの幼稚園で一緒に作ったよね~。モモも食べる?

百瀬尊
「いえ、俺は昼飯食ったんで」

真っ直ぐ前を向き、即答する百瀬さん。

(百瀬さんが食べないってことは···)

サトコ
「あの、あんまり食欲ない、かも···」

津軽
ん?

百瀬尊
「津軽さんの手作りなんて、涙が出るほど嬉しいそうですよ」

津軽
はは、だよね~

(この班にいる限り、食べないという選択肢はない···)

<選択してください>

それでも食べない

アルミホイルを少し捲った途端、妙な匂いがした。

サトコ
「あの···酸っぱい匂いがするんですが···腐ってるんじゃ···」

津軽
腐りにくいように酢飯にしたよ

サトコ
「······」

(腐ってたとしても、分からないってこと···)
(これから捜査なのに、おなかを壊すのは困る!)

サトコ
「だ、大事すぎるので、今はしまっておいて、味わって食べれるときに食べますね!」

津軽
いつでも作ってあげるのに

サトコ
「はは···」

覚悟を決めて食べる

サトコ
「いただきます···お酢っぽい匂いがするんですが!」

津軽
腐りにくいように酢飯の爆弾おにぎりにしたよ

サトコ
「爆弾···」

覚悟を決めて食べればーーまさに口の中が爆発した。

サトコ
「······っ」

(お茶···!)

ペットボトルのお茶を持っていてよかった。
無心で一気に爆弾を流し込む。

(あとは頑張れ、私の胃···!)

津軽
美味しかった?

百瀬のカバンに入れておく

サトコ
「······」

目に入ったのは、後部座席にある百瀬さんのカバン。

(百瀬さんの大好きな津軽さんの手作りおにぎりですよ)
(あとで美味しくいただいてくださいね)

そっとカバンに忍ばせようとした、その時。

百瀬尊
「おい」

サトコ
「ひっ」

ミラー越しに殺されそうな視線が突き刺さる。

(な、なんでわかるの!?死角のはずなのに!)

津軽
どうかした?

サトコ
「な、何でもないです···」

笑って誤魔化しながら、仕方なく自分のカバンに隠したのだった。

(とにかく話題を変えよう!)

サトコ
「···聞きたいことがあるんです」

これ以上突っ込まれる前に、話の矛先を変える。

サトコ
「津軽さんは純恋ちゃんが嘘をついてるって···」
「茶円に一方的に利用されてるわけじゃないって、いつから気付いてたんですか?」

津軽
シトミちゃんの名前を聞いた時からかな

サトコ
「スミレって名前を···ですか?どうして、それで?」

津軽
「『Ti-love』のアナグラム全部言ってみな

サトコ
「えっ、アナグラム全部!?」

(そんな簡単に脳内でバラせない···!)

手帳を取り出して書き出そうとすると···

百瀬尊
「violetですね」

サトコ

(はやっ!violet、スミレ···)

サトコ
「アナグラムに気付くのもすごいですけど、それでよく嘘を見抜けますね···」

津軽
確証はなかったけど。ただの被害者だったら、JKビジネスの看板にならないでしょ
アナグラムにまでして仕込みたい···それって、かなりの思い入れだよね
あの子の視野の狭さを考えたら、誰のことしか頭にないか···予想するのは難しくない

(最初から純恋ちゃんのこと、いろんな角度で見てたんだ)
(私はやっと、少し前に裏があるかもって気付いたのに)

着眼点の多さと鋭さ、踏んでる場数の差の違いを思い知らされる。

津軽
それに、あの子は俺に似てたから

サトコ
「え···?」

ポツリと付け足された言葉を聞き逃しはしなかった。
前を見れば、どこか居心地の悪そうな顔を見つける。

サトコ
「似てるって···どこがですか?」
「似てないですよ。全然」

津軽
······

(どうして、そんな風に思ったのか···純恋ちゃんを見て、居心地が悪くなったのは私の方だ)
(好きな人のためなら、どんなことでもできる···そんなところが自分にもあるのか気になった)
(純恋ちゃんみたいに何もかも投げ出して、好きになれてたら···)

もっと違う未来が手に入ったんじゃないか。
そんなことを一瞬でも考えてしまう自分が···
恥ずかしくて、情けない。

津軽
······

百瀬
「······」

サトコ
「······」

不意に落ちてしまった沈黙が落ち着かなくて、再び私から口を開く。

サトコ
「純恋ちゃんとの取引の時、顧客名簿だけでも手に入れたいって···」
「あれは···一番の目的は茶円の逮捕じゃなくて名簿の回収だと思っていいんでしょうか?」

津軽
···そろそろ話しておかないと、かえってマズイか

少し考える顔を見せてから、津軽さんがそう答えた。

津軽
このJkビジネスの顧客には警察上層部の人間が含まれていると踏んでいる

サトコ
「お偉方が女子高生を買ってると···?でも、公安が動くってことは···」
「今から向かう『礼愛会』を運営している宗教法人団体が公安の監視対象なんですよね」
「ということは···『Ti-love』の顧客である上層部が公安の監視対象団体と癒着してる···?」

この関係性がなら、これまでの捜査方法にも納得がいく。

津軽
アナグラムはダメだったけど、そこはよくできました

サトコ
「上層部が絡む事件だから、極秘捜査だったんですね···」

津軽
暴力団の金も老人ホームを通してクリーンにすれば、流しやすい
監視対象の団体が警察への賄賂に使うにはもってこいだ。おまけに女の子も買えるわけだし
警察にも膿はある。それを出すのが、銀さんの仕事

(それは過労で倒れるような心労も重なるよね···)

ミラー越しに少し映る津軽さんを見れば、その顔はどこか誇らしげでもあった。

(私が津軽さんたちの背中を追いかけてるように、津軽さんも銀さんの背中を追いかけてるんだな)

サトコ
「純恋ちゃんが、最初の取り調べの時に茶円を悪者にしたのは···」

津軽
被害者ぶって同情を買い、捜査を攪乱させるため

(まんまとはまってしまったわけだ···情けない)

サトコ
「百瀬さんは知ってたんですか?」

百瀬尊
「知らねぇ」
「津軽さんがわかってるなら、俺が知る必要はない」

津軽
あっはっは。カワイイ右腕だなー

(盲信に関しては、百瀬さんの方面を目指すことにすれば心配はいらないかもしれない···)

初めて、百瀬さんの忠犬ぶりに救われた。

宗教団体の調査は圧力をかけることが目的だったらしく、情報を得るわけではなかった。
課に戻ると、銀さん退院の報が入ってくる。

サトコ
「いいお知らせですけど、急ですね」

津軽
本当なら、もう2、3日様子見のはずだったんだけどね
検査結果の数値が良かったから、銀さんが出るって

百瀬尊
「津軽さん、あとは残りますか?俺、ひとりでも」

津軽
いや。仕事ほっぽって迎えに行っても叱られるだけだし

津軽さんと百瀬さんは、これから『礼愛会』周辺の本格的な調査に出ることになっていた。

津軽
口頭での尋問報告、今日はできないけど仕方ないか

百瀬尊
「明日、朝イチで···」

サトコ
「尋問報告でしたら、私が行けます」

津軽
え···

百瀬尊
「お前···」

津軽さんと百瀬さんの声に続いて、静かだった課全体からザワッとした、どよめきが上がった。

公安員A
「口頭報告だぞ!?」

公安員B
「あの銀室長に···」

公安員C
「やっぱり心臓に毛が生えたメスゴリラだったんだな···」

(さりげなく失礼な発言が···)

百瀬尊
「ゴリラが···」

サトコ
「ゴリラ関係ないですよ!」

津軽
ほんとに···銀さんにだよ···?白神さんとかにじゃないんだよ?

サトコ
「誰ですか、白神さんて···」

津軽
···まぁ、ウサがそう言うなら
取って食われたりはしないと思うけど、粗相のないようにね
むやみに鼻をひくひくさせるんじゃないよ?

サトコ
「何の心配ですか···」

(まぁでも、確かに少し前の私なら考えられないかも···)

銀さんに自分から話に行くこと。
変わって失う関係もあれば、変わって得られる関係もある。
変化を受け入れて、前に進んで行くしかないんだ。

to be continued

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする