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Kaga’s home 2話

【花 宅】

花ちゃんと3人で帰ってくると、買ってきたものを冷蔵庫にしまう。

サトコ

「やっぱり、ホテルはこの時期って忙しいんですね」

加賀

らしいな

だいたい毎年、週末は俺が花の面倒を見ることになってる

サトコ

「毎週ですか?」

加賀

ホテルの繁忙期が終わるまでだ

(そうだったんだ‥毎年なんて大変そうだけど)

(ん?じゃあ、花ちゃんが2歳の時も1歳の時も、加賀さんが面倒見てたんだよね)

加賀

なんだ

サトコ

「いえ‥あの、もしかして花ちゃんにミルクあげたり、オムツ替えたりしたことも」

加賀

他にやる奴がいなきゃ、やるしかねぇだろ

(加賀さんが、赤ちゃんのオムツ替え‥!)

(ミルクまであげてたなんて‥!み、見たい!)

加賀

今はだいぶ楽だな。離乳食も終わったし

面倒なのは、好き嫌いがあることだが

サトコ

「それを言ったら、加賀さんだって野菜が‥」

加賀

なんだ?

サトコ

「いえ‥」

慌てて口を閉じて、ハンバーグの準備を始める。

(花ちゃんも、ママたちがいなくて寂しいだろうな)

(仕事をしながら子どもを育てるって‥やっぱりすごく大変なんだ)

加賀

冷蔵庫に入ってるおかずは、勝手に食っていいらしい

サトコ

「美優紀さん、作り置きしていってくれたんですね」

加賀

花がどうしても食わねぇ時は、それを食わせる

たまにワガママ言うことがあるからな

仕事と子育ての両立の大変さを思い知りながら、花ちゃんと一緒にハンバーグを作った。

ハンバーグが完成すると、ニンジンのグラッセとほうれん草のバター炒めを添えた。

サトコ

「完成!」

「おいしそう!」

サトコ

「サラダとスープも作ったし、いっぱい食べようね」

「うん!いただきまーす!」

早速3人で食べ始めると、当然ながら加賀さんが一番食べるのが早い。

(あ‥でも、さりげなくニンジンとほうれん草をお皿の隅に避けてる‥)

<選択してください>

A: ちゃんと食べなきゃ

サトコ

「加賀さん、野菜もちゃんと食べなきゃダメですよ」

花ちゃんに聞こえないようにこっそり耳打ちする。

加賀

食わなくても死なねぇ

サトコ

「でも、花ちゃんがマネしちゃいますよ」

加賀

バレなきゃいいだろ

サトコ

「汚い大人の発言が‥」

B: 野菜入れちゃってすみません

サトコ

「すみません、うっかり野菜入れちゃって‥」

加賀

俺のだけ入ってなきゃ、花が怪しむ

サトコ

「そうですけど‥でも、残すのも花ちゃんの教育上よくないんじゃ」

加賀

‥‥‥

C: ごはんおかわりしますか?

サトコ

「加賀さん、ごはんおかわりしますか?」

加賀

ああ

(花ちゃんが見てる前で野菜を残すのはマズイよね)

(花ちゃんに気付かれる前に、こっそりお皿を下げて‥)

「あー、ひょうご、ダーメ!」

ガタン!と立ち上がり、花ちゃんが加賀さんのお皿を指す。

「にんじんとほうれんそう、のこしてるー!」

(気付かれた‥!)

加賀

チッ‥

‥後で食うんだよ

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舌打ちしながら、加賀さんが渋々、お皿の真ん中にニンジンとほうれん草を戻した。

「すききらいは、ダメ!」

加賀

だから、食うって言ってんだろ

「ひょうご、おっきくなれないよー」

(3歳児に注意されてる‥)

必死に笑いを堪えながら、加賀さんにおかわりのご飯を渡す。

でも、笑っているのがあっさりバレてしまった。

加賀

‥ガキが寝たら、覚悟しとけ

サトコ

「!?」

(ま、まさか‥花ちゃんの家で、変なことしないよね‥?)

そう思うのに、加賀さんなら容赦なくお仕置きしてきそうで怖い。

(前に、花ちゃんが寝てる横で押し倒されたことあったし‥)

「ひょうご、せーの、でいっしょにたべよっ!」

加賀

あ?

「はなねー、ほいくえんできらいなものがでたら、みんなでいっしょにたべるの!」

「そしたら、たべれるの」

サトコ

「そうだよね。みんなで食べたら、嫌いなものも美味しいよね」

「そうなの!だからひょうご、せーの!」

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加賀

‥‥‥

嫌そうに、加賀さんがニンジンをフォークに刺す。

そして花ちゃんの合図で、一緒に食べた。

(加賀さんが野菜食べてるところ、初めて見た!)

加賀

‥‥‥

甘い

サトコ

「花ちゃんでも食べれるように、甘いグラッセにしたんですよ」

「ニンジンは元々甘いですけどね」

加賀

野菜が甘いのはおかしいだろ‥

「おかしくないよー!おいちいよ!」

「はい!つぎはほうれんそう!」

3歳の花ちゃんに主導権を握られながら、加賀さんは結局、野菜を全て食べ終えた。

食器の片付けが終わると、今度は花ちゃんとお風呂に入る。

加賀

ずいぶん長風呂だったな

サトコ

「花ちゃんが、お風呂でお店屋さんごっこを始めちゃって‥」

「いらっちゃい、いらっちゃい!かちこまりまちたー!」

パジャマを着せると、花ちゃんが自分の部屋に絵本を取りに行った。

加賀

‥疲れただろ

サトコ

「そんなことないですよ。すっごくかわいいです」

加賀

3日くらい一緒にいると、もうしばらく会わなくてもいいって気になる

また余計なことを言って睨まれそうになった時、花ちゃんが絵本を持って戻ってきた。

サトコ

「なんの絵本?」

「どーぶつ!」

サトコ

「わぁ、いろんな動物がたくさん載ってるね」

「あのねー、これはペンギンしゃん!こっちはライオンしゃん!」

サトコ

「あ!加賀さん、明日も休みだし、せっかくだから3人でお出かけしませんか?」

加賀

めんどくせぇ

サトコ

「そんなこと言わずに!花ちゃんもお出かけしたいよね?」

「はな、どーぶつえんいきたい!」

「シロクマしゃんがみたい!れっしゃーぱんだもみたい!」

サトコ

「レッサーパンダ、私も見たいです!」

加賀

‥‥‥

心の底からめんどくさそうに、加賀さんが私たちを見る。

そして、小さくため息をついた。

加賀

しょうがねぇな

サトコ

「やった!じゃ、ここから一番近い動物園を探しますね」

加賀

多少遠くてもいい。デカい方がいいだろ

サトコ

「でも、運転するの大変じゃないですか?」

加賀

花も、その方が楽しいだろうからな

(なんだかんだ言って、花ちゃん思いだよね‥)

(それに心なしか、加賀さんもちょっと楽しみにしてるような‥?)

急いでスマホを操作して、動物園を調べ始めた。

【動物園】

翌日、休日ということもあり、動物園は混んでいた。

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サトコ

「花ちゃん、何から見る?」

「えっとね、らいおんしゃんとぞうしゃんとくましゃんと‥」

「あ!ひょうご!おしゃるしゃん!」

加賀

あ?

花ちゃんが、加賀さんの手を引っ張って猿山の方へ歩いていく。

加賀

おい、引っ張るんじゃねぇ

「おしゃるしゃーん!」

加賀

ったく‥これだからガキは

舌打ちしながらも、加賀さんが私を振り返る。

加賀

園内マップ、持ってるか?

サトコ

「はい!さっき入口のところでもらいました」

「ちょうど順路は猿山の方だから、このまま進んで大丈夫そうです」

加賀

ああ

【猿山】

「ひょうご、ひょうご!ほら、おしゃるしゃんがいっぱいいるよー」

加賀

ほら、これならよく見えるだろ

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加賀さんが花ちゃんを抱っこして、猿山の方へ歩いていく。

(ふふ‥加賀さん、楽しそう)

(『これだからガキは』なんて言ってたけど、加賀さんもそんなに変わらない気が)

加賀

猿山に入れられてぇのか

サトコ

「え!?」

(こ、心の声が読まれてる‥!)

(顔に出さないように気を付けないと‥!)

猿山を見た後、順路に沿って歩いていると、係員が風船を配っていた。

「あー、ふーせん!はなもほちい!」

加賀さんの手を離して、花ちゃんが風船の方へ走っていく。

加賀

アイツは、ああやって迷子になるタイプだな

サトコ

「でも、人混みでは絶対加賀さんの手を離しませんよね」

加賀

そうだな。どっかのどいつとは大違いだ

<選択してください>

A: 私のこと?

サトコ

「もしかして‥私のことですか?」

加賀

他に誰がいる

サトコ

「で、でもそんなに迷子になった覚えは」

加賀

カウントダウンイベント

サトコ

「うっ‥」

加賀

水族館

サトコ

「あ、あれは迷子になってないですよ‥ちょっと人に流されただけで!」

B: 加賀さんのことですね

サトコ

「加賀さん、すぐ手を離しちゃいますもんね」

加賀

なんで俺だ

サトコ

「違うんですか?」

加賀

自覚がないなら、迷子癖は直んねぇな

(もしかして、私のこと‥?)

C: お互い気を付けましょう

サトコ

「そうですね。お互い気を付けましょう」

加賀

‥‥‥

テメェは一生、迷子癖が直んねぇな

サトコ

「えっ?もしかして私の話ですか?」

加賀

他に誰がいる

「ひょうご!サトコ!ふーせんもらった!」

係の人にかわいい風船をもらい、花ちゃんがこっちに手を振っている。

加賀

ったく‥勝手に行きやがって

サトコ

「でも、すごく楽しそうですね」

加賀

ああ

加賀さんと一緒に、花ちゃんのもとへ駆け寄った。

加賀

すみません

係員

「いえ、すごく喜んでくれましたよ」

サトコ

「花ちゃん、風船もらえてよかったね」

「はなねー、このふーせんがいちばんかわいかった!」

サトコ

「そっかー、そうだね。ピンクがかわいいね」

係員

「ふふ、仲が良くて素敵なご家族ですね」

サトコ

「え?」

(ご、ご家族?)

(もしかして私たち、親子だと思われてる?)

思わず加賀さんを見ると、鼻で笑われた。

加賀

ガキを2人連れてるようなもんだがな

サトコ

「ええ!?」

(加賀さんだって、花ちゃんと一緒に動物園を楽しんでたのに‥!)

でも、『家族』と思われた嬉しさと照れくささに、頬が熱くなるのを感じた。

to be continued

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