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誘惑ランジェリー 加賀1話



【加賀マンション 寝室】

深夜、目を覚ますと加賀さんの腕の中だった。

(···加賀さんって、こうやって私を抱きしめながら寝るのが癖···?)

加賀さんに抱かれた夜は、目が覚めるといつも腕の中にいる。
嬉しく思いつつ、加賀さんを起こさないようにそっと腕から抜け出した。

(このままじゃ恥ずかしいし、せめて下着くらいはつけておこう···)
(えーと、私の下着は···)

さっき加賀さんに脱がされたのを思い出してひとりで照れながら、下着を探す。
お互いの熱の激しさを物語るように、服も下着も、ベッドの下に落ちていた。

(前に、加賀さんがクリスマスにプレゼントしてくれた赤い下着···)
(ここへ来るときには、なんとなくこの下着をつけることが多いんだよね)

下着を拾い上げて、身に着ける。
でも不意に後ろから引っ張られて、つけたはずのホックを外された。

サトコ
「え?」

加賀
······

サトコ
「か、加賀さん···起きてたんですか?」

加賀
···勝手なことしてんじゃねぇ

サトコ
「下着をつけただけで、その言われよう!?」

加賀
うるせぇ

サトコ
「すみません···」

声のトーンを落として、再び下着をつける。
でも加賀さんの手が伸びてきて、またもやホックを外された。

サトコ
「······」

加賀
······

サトコ
「······」

加賀
······

(···何度つけても、そのたびに外される!)
(何···!?加賀さん、こういうことするキャラじゃないよね!?)

サトコ
「あの···もしかして、寝惚けてるんですか?」

加賀
あ゛···?

サトコ
「なんでもないです···」

(これ、絶対寝惚けてるな···)
(加賀さんが寝惚けてるところなんて、ものすごく貴重だけど)

それを喜ぶ間もなく、またホックを外される。
その上、今度は肩紐をずらされて下着を脱がされそうになった。

サトコ
「かっ、加賀さん!?」

加賀
喚くな

サトコ
「いや、だって···なんなんですか···!?」

加賀
······

必死に下着を押さえる私を、ベッドに寝そべりながら加賀さんが眺める。
そして、どこか呆れた様子で口を開いた。

加賀
···またそれか

サトコ
「え?」

加賀
寝ろ

聞き返した私の言葉には答えてくれないまま、加賀さんがこちらに背を向ける。

(『またそれか』って···もしかして、下着のこと···?)

確かに、『またか』と言われてもおかしくないくらいの頻度で身に着けている気がする。

(でもこれ、加賀さんがプレゼントしてくれたからお気に入りなのに···!)

加賀さんの真意が分からず、広い背中を見つめることしかできなかった。


【ランジェリーショップ】

数日後、私はずらりと並んだ下着の前に立っていた。

(今日は、加賀さん好みの新しい下着を買う!)
(···って勢い込んで来たのはいいけど、加賀さんの下着の好みって聞いたことない···)

サトコ
「赤いのをくれたってことは、派手なのが好きなのかな」
「大胆で大人っぽい、派手なデザインの下着は···」

“カレを悩殺!男性をトリコにする下着” というポップを見つけて、そちらへ向かう。
黒いレースの派手な下着を見つけて、身体に合わせてみた。

(···なんか、あんまり似合う感じがしない)
(我ながら、子どもが背伸びしてるみたいな印象が···年齢的には問題ないはずなのに···)

サトコ
「···いや!これが加賀さんの好みなら、頑張って似合う女にならないと!」
「よし···今度のお泊りの時には、これをつけていこう!」

思い切って下着を購入し、そう決意した。


【加賀マンション 寝室】

数日後、早速お泊りのチャンスがやってきた。
満を持して、あの黒い下着をつけて部屋にお邪魔する。

(私にはまだあまり似合ってない···けど、きっと加賀さん好みのはず!)
(私が年相応な大人の女性に成長すれば、いつか似合う日が···)

加賀
······

私をベッドに押し倒し、加賀さんがいつものように少し強引なキスをくれる。
でもブラウスのボタンを外されて下着があらわになった瞬間、その手が止まった。

サトコ
「···加賀さん?」

加賀
···チッ

サトコ
「舌打ち!?」

その視線は、あの黒い下着に注がれている。
呆れたようなため息の後、加賀さんは私から身体を離して顎でバスルームを指した。

加賀
行け

サトコ
「ど、どうして···」

加賀
上がってもそれつけてたら、ただじゃおかねぇぞ

サトコ
「!」

(『それ』って···この下着のこと···?)
(そ、そんなに似合ってなかった···!?)

寝室から出て行った加賀さんを、呆然と見つめる。

そのあとは、加賀さんに言われた通り、バスルームへ行くしかなかった···

【バスルーム】

シャワーを浴びながら、自分の行動を激しく後悔していた。

(やってしまった···いくら加賀さん好みの下着が欲しかったからって···)
(もう絶対、こんな自分らしくないバカな真似はしない···!)

頭を抱えながらシャワーを浴びて、ようやくバスルームを出る。

バスタオルで身体を拭いていると、ある違和感に気付いた。

(······あれ、なんで!?)

【寝室】

バスタオルを身体に巻き、勢いよく寝室のドアを開けた。

サトコ
「加賀さん、脱衣所に置いておいた私の下着がないんですが···」

加賀
それがどうした

サトコ
「ええ!?一大事ですよ!」

加賀
たいしたことじゃねぇだろ

サトコ
「下着がなくなったのに!?」

呆然と立ち尽くす私を一瞥し、加賀さんが吐き捨てるように言った。

加賀
あんなセンスの欠片もねぇものがなくっても、誰も困らねぇ

サトコ
「うっ···」

(やっぱり、センスないって思われてた···)
(確かに、自分でも全然似合ってないのは分かってたけど)

サトコ
「で、でも···下着がないと、着るものが」

ないです、と言う前に、加賀さんに腕を引かれる。
ベッドに座っていた加賀さんの膝の上に、後ろ向きに座らされた。

サトコ
「ど、どうしたんですか···?」

問いかけには答えてくれないまま、加賀さんが私の背中に手を伸ばす。
バスタオルを取られ、慌てて胸元を抑えたけどあっさりその手をよけられた。

サトコ
「ちょっ···待っ···」

加賀
脚上げろ

サトコ
「え···」

耳元で、加賀さんの囁くような声が聞こえた。
その手には、見たことのない新品の下着。

サトコ
「それ···」

加賀
さっさとしろ。手間かけさせんじゃねぇ

言葉は厳しく冷たいのに、その声はいつもよりも穏やかに聞こえる。
何も身に着けていない身体を、加賀さんが慈しむように腕の中に包み込んでくれた。

サトコ
「この下着···どうして」

加賀
黙ってろ

一蹴されて、それ以上は何も聞けなくなる。
加賀さんの手が太ももをなぞり、下着が肌に触れた。

(なんか、照れる···)

下着が、つま先から膝、太ももへと引き上げられる。
加賀さんの吐息が、時おり耳や頬にかかった。

(加賀さん、どうしてこんな···)

いつも私を攻め立てる指先が、太ももの内側を掠める。
くすぐったさとはまた違う刺激が身体に走り、声を出さないように必死だった。

加賀
······

サトコ
「い、今···笑いました?」

加賀
ずいぶん敏感だな

サトコ
「だって、加賀さんの触れ方が···」

いつも以上に優しいから、とも言えず、黙り込んでしまう。
加賀さんは何も聞かず下着を穿かせてくれると、再び耳元で静かに告げた。

加賀

サトコ
「は、はい···」

腕を伸ばすと、今度はショーツとおそろいのブラジャーをつけられた。
背中でホックを止めたあと、加賀さんが私の肩に唇を押し付ける。

サトコ
「ひゃっ···」

加賀
テメェは、これでもつけとけ
あの下着は、没収だ

加賀さんが着せてくれた下着は、上品で色気のあるものだった。
薄い白のレースからは肌が透けているけど、綺麗なデザインのおかげでいやらしさがない。

サトコ
「これ···加賀さんが選んでくれたんですか」

加賀
じゃなきゃ、誰が選ぶんだ
テメェに似合うのがどんなもんかも、わからねぇらしいな

サトコ
「うっ···加賀さんは、大胆でセクシーな下着が好みだと思ったんです」
「だから、前のクリスマスにあの赤い下着をくれたのかなって」

加賀
······

私を後ろから抱きしめ、膝を立てて座りながら加賀さんがため息をつく。

加賀
ただ好みだけで、テメェに似合わねぇもんを選ぶと思うか

サトコ
「え?」

加賀
自分の好みを押し付けるつまりはねぇ
押し付けたところで、テメェに着こなせるとも思えねぇがな

サトコ
「それはごもっともです···」
「あの···ちなみに、加賀さんの好みって具体的には」

加賀
······

意味深に笑いつつも、加賀さんは答えてくれようとしない。

(教えてくれないつもりだ···自分で気付けってこと?)

後ろから伸びてきた手が、私を振り向かせる。
顎を持ち上げられ、着せられた下着よりも激しい大人のキスで理性が絡め取られそうになる。

サトコ
「っ······待っ」

加賀
待たねぇ

背中で、加賀さんの手がうごめく。
くすぐったさを感じる間もなく、ホックを外された。

サトコ
「え!?」

加賀
···なんだ

サトコ
「だ、だって···なんで脱がせるんですか!?」

加賀
脱がせる前に着せたんだろうが

(そうなの···!?)

サトコ
「もしかして、加賀さんの女性の服を脱がせるのが好き、とか···」

加賀
······

サトコ
「そんな『テメェはバカか』みたいな目で見なくても···」

加賀
クズが、よく分かってるじゃねぇか
服なんざ、着てねぇのが一番だ

サトコ
「それって、裸···」

加賀
だが···

言いかけて、加賀さんが言葉を止める。
顔を上げると、意味ありげに笑う加賀さんがいた。

サトコ
「なんですか···?」

加賀
なんでもねぇ
自分に似合うもんくらい、テメェで見つけられるようになれ

唇が重なり、外された下着がぱさりとベッドに落ちる。
身体中が熱くなるようなキスに必死で応えながら、恐る恐る、加賀さんに尋ねてみた。

サトコ
「この下着···私に似合ってますか?」

加賀
聞かなきゃわからねぇか
似合わねぇと思うもんを買うほど、暇じゃねぇ

それは、加賀さんなりの『似合ってる』という褒め言葉のように思えた。
下着をすべて脱がしながら、加賀さんがもったいぶるように肌をなぞる···

サトコ
「···都合よく解釈しちゃいますよ」

加賀
好きにしろ

加賀さんの指先が、私の胸を焦がしていく。
ゆっくり、じっくりととろけさせながら、加賀さんの熱とひとつになった。

サトコ
「っ······!」
「ぁ···」

加賀
やっぱり、何も着てねぇのが一番だな

いつもの意地悪な顔で見下され、加賀さんに与えられる快感に引きずり込まれる···

(この前は赤い下着で、今回のは大胆で上品なデザイン···)
(きっとどっちも加賀さん好みで、加賀さんが私に似合うと思ってくれた下着···)

少しずつ、でも確実に、私は加賀さん好みに仕立て上げられていく。
恥ずかしさと同時に嬉しさを覚えながら、シャツを脱ぎ捨てた加賀さんの首に腕を伸ばした。

Happy  End



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