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コラボ 東雲 2話

むさ苦しい男たちとの動物園をひとしきり回った後、

ようやく彼女とふたりきりになれた。

(疲れた‥)

(仕方がないとはいえ、彼らと回るハメになるなんて‥)

サトコ

「オオワシもトラも、凄い迫力でしたね!」

「あ、見てください教官!シロクマがいますよ!」

何も気づいていない様子のうちの彼女に、ため息が出てくる。

ふと先ほどの出来事が脳裏を過る。

天王寺

『なぁ、このヤギ、なんかに似てへんか?』

花井

『言われてみれば‥』

京橋

『サトコさんではありませんか?』

サトコ

『へ‥?』

(なに、二課の初対面の人たちにからかわれてるわけ?)

(人の気も知らないで、ヘラヘラしちゃって)

サトコ

「やっぱり、1番可愛かったのはレッサーパンダですかね?」

「いや、ミニブタも可愛かったですよね!」

彼女は満面の笑顔を、オレに向けてくる。

(‥何、楽しそうにはしゃいでるんだよ)

東雲

‥ムカつく

サトコ

「いたっ!」

「痛いです教官!なんでいきなり腕をつねるんですか!?」

東雲

‥買って来て

サトコ

「え?」

東雲

ピーチネクター。喉が渇いたから、買って来て

そこの自販機に売ってたから‥30秒以内ね

サトコ

「え?えーっと‥」

東雲

はい、ゴー!

サトコ

「は、はいっ!」

彼女は忠犬のごとく、一直線に駆けていった。

【車】

サトコ

「お待たせしました‥って、教官?」

「なんで、助手席に‥」

東雲

帰りはキミが運転ね

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サトコ

「ええっ!?そんな、突然‥」

東雲

教官にずっと運転させる気?

ここから旅館までそう遠くないんだし、それくらいいいよね?

サトコ

「はい‥」

有無を言わせない笑顔で微笑むと、彼女は渋々運転席へ乗り込む。

東雲

ちょっと、コンビニ寄ってくれる?

サトコ

「はい!」

東雲

あ、やっぱりさっきのとこ戻って

サトコ

「え、さっきのとこですか?」

東雲

違う、こっちじゃないから

ナビも使えないとか、ありえないんだけど

サトコ

「す、すみません‥」

東雲

また、道間違えてるよ

サトコ

「‥はい」

あれこれ注文付けたせいか、彼女はぐったりしている。

サトコ

「‥‥‥」

(ちょっと、やりすぎたかも‥)

(ていうか、何であんなことでイライラしてんの‥オレ)

【旅館】

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サトコ

「えっ!?1部屋、ですか‥?」

女将

「はい。確かに、1部屋で承っております」

サトコ

「‥‥‥」

彼女は部屋の鍵を手にして、ガクリとうなだれた。

どうやら、1部屋しか予約がされていなかったらしい。

東雲

サイアク‥まぁ、キミらしいっちゃキミらしいけど

サトコ

「すみません‥」

(うちの彼女のことだ。これくらいのミスは想定の範囲内だけど‥)

(‥さて、今回はどうやって乗り切るかな)

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彼女が卒業するまで手を出さないと決めている。

でも、オレだって我慢の限界はあるわけで‥

(お風呂上りはきっと浴衣だよね)

(‥朝までどっかで時間潰そう)

【部屋】

サトコ

「ど、どうですか?」

東雲

‥‥‥

サトコ

「って、なんですか、その微妙な反応は!?」

(だって、ねぇ‥)

温泉から戻ると、彼女はおずおずと浴衣姿を見せてきた。

東雲

座敷童みたい

サトコ

「なっ‥!それが彼女に対して言うセリフですか!?」

東雲

感想聞いたのはキミでしょ?誰が見たって座敷童にしか見えないから

サトコ

「うぅっ、悔しい‥」

幸か不幸か、うちの彼女はことごとくツボを外してくる。

これなら大丈夫かも、と正直オレは安心した。

東雲

ハイハイ、似合ってるから

さっさと夕食に行くよ

サトコ

「はい!」

東雲

何、これ‥

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サトコ

「布団が1枚に枕が2つ‥ですね」

東雲

‥‥‥

サトコ

「わ、私が頼んだわけじゃないですよ!?」

「だから、そんなに睨まないでください!今、確認しますから!」

彼女は慌てて、フロントに連絡を入れる。

(なんかだいぶ前にもこんなことあったな‥)

以前は彼女が押し入れの中で寝たが、今回はそんなことさせられない。

サトコ

「はい、はい‥え?で、でも‥」

「はい、分かりました‥」

東雲

なんだって?

サトコ

「今日は満室で、布団の数も足りないみたいです」

東雲

で‥?

サトコ

「なので、これで寝てくれって‥」

「わ、私なら布団がなくても大丈夫ですから!」

「畳の上だって、きっと寝心地がいいはずですし」

「教官は、この布団で寝てください」

東雲

そんなわけにはいかないでしょ

もう、寝るよ

サトコ

「えっ‥?」

オレの言葉に驚いたのか、彼女は目を丸くする。

サトコ

「布団、一枚ですよ?」

東雲

何か問題ある?

オレ畳の上で寝たくないし

それとも、何?どうしても畳がいいって言うなら‥

サトコ

「ね、寝ます!布団で寝させて頂きます!」

東雲

あ、そう

(さすがにこれは、想定外だ‥)

背中合わせに布団に入ると、電気を消す。

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サトコ

「‥‥‥」

東雲

‥‥‥

電気を消してからしばらくすると、彼女が動く気配がした。

サトコ

「‥教官、寝ましたか?」

東雲

‥寝た

サトコ

「分かりやすいウソを‥」

東雲

明日寝坊したら知らないからね

サトコ

「そうですけど‥」

東雲

‥‥‥

サトコ

「‥教官?」

東雲

だから、寝たってば

そんなやりとりが、何回か続き‥

サトコ

「‥‥‥」

(やっと寝た‥)

(‥どっか時間潰せるところってあったっけ)

【廊下】

部屋から出てきたオレは、朝まで過ごせる場所を探しに来た。

すると‥

瑞貴

「こっちに住んでるリスさんも可愛かったな」

そら

「またキャサリンをつれてくれば~とか思ってんでしょー」

東雲

げっ‥

(あいつらもこの旅館だったのか‥)

(見つかったら面倒だし、このまま‥)

トントンッ

天王寺

「コソコソして、何してるん?」

八千草

「まさか旅館まで同じなんて‥」

「偶然て怖いですね!」

東雲

そうですね‥

(怠‥)

野村

「やっほ~、東雲クン」

東雲

‥‥‥

(警視庁の副参事官、野村忠信。なんでこんな人まで‥‥)

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八千草

「野村さんまで現れたときはさすがに驚きましたよ」

野村

「しょうがないでしょ~?俺も長官に休めって言われちゃったんだからさ」

「君たちに会っちゃったのは予想外だったけど‥‥」

東雲

‥‥

自分の部屋に向けて、じりじりと後退する。

野村

「あ、そうだ」

「これから男だけのポーカー大会をやるから、東雲クンもおいで」

東雲

結構です

天王寺

「即答かい!」

東雲

それでは、オレはこれで‥

パシッ!

通り過ぎようとすると、手を掴まれる。

野村

「部屋に帰らなきゃいけない理由でもあるの?」

東雲

そういうわけでは‥

野村

「なら、いいよね?」

東雲

‥じゃあ、少しだけ

有無を言わせない笑みに、渋々と頷く。

(こんなことになるなら、部屋から出なければ良かった‥)

【男部屋】

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そら

「さぁ、ポーカー大会を始めるよー!」

全員

「おー!」

(怠‥お祭り課もいるし‥)

「ポーカーなんて、久しぶりだな」

天王寺

「やるからには、負けへんで!」

花井

「心理戦なら得意だからな」

海司

「オレは‥苦手だな」

瑞貴

「フフ、海司さんはすぐ顔に出ますからね」

瑛希

「せっかくだし、何か賭けません?」

そら

「いいね。何もないとつまんないし!」

「それじゃあ、負けた人は『好きな女性のタイプ』を発表ってことでどう?」

京橋

「好きな女性のタイプですか」

「初心なほど燃えますね。イロイロと教えてあげたくなります」

桐沢

「ん?新米刑事ってことか?」

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野村

「さ、始めるよ~」

野村さんがカードを配り、それぞれ手に取る。

(公安のメンバーがいなくて、良かった)

颯馬さんは言わずもがな、石神さんや後藤さんもこの手の勝負は得意だろう。

(黒澤も案外、やるし‥)

(まあ、このメンバーなら余裕でしょ)

そう思ったのもつかの間‥‥

桂木

「ロイヤルストレートフラッシュ」

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東雲

なっ‥!

桂木さんは先ほどからロイヤルストレートフラッシュを1回、

ストレートフラッシュを2回出している。

浅野

「‥すごい」

花井

「このオレが、まったく歯が立たないなんて‥」

海司

「そういや、桂木さんってすっげー強いんだった‥」

そら

「完っ全に忘れてた‥」

野村

「この辺で止めにしとこうか」

天王寺

「で、ですね‥」

結局ポーカーは4回戦で終わり、それぞれ負けたのは野村さん、桐沢さん、一柳さん、オレの4人。

(まさか、オレが負けるなんて‥)

そら

「あ、飲み物がないや。オレ、買ってくるね」

海司

「オレも手伝いますよ」

2人が部屋を出て行くと、一柳さんが口を開く。

「さっさと罰ゲーム終わらせようぜ」

野村

「それじゃあ、俺から‥」

「俺の好きなタイプは、人の心に寄り添える優しさを持っていて‥」

「クジラ並みの胃袋をしている子かな?」

瑞貴

「クジラ、ですか。それは可愛いんでしょうね」

天王寺

「いやいや、胃袋の話やからな?それに、クジラって見た目もかなりゴツイで!」

野村

「え~、可愛いクジラもいるかもよ?」

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花井

「ボスはどんな人がタイプなんですか?」

桐沢

「そうだなぁ」

「オレは何事でも全力投球で、飯を美味そうに食べる子だな」

(メシ繋がり‥同じ子のことを言ってるんじゃないの?)

「オレはほっとけねぇ奴だな」

「お前は?」

(さっさと話して、終わらせよう)

東雲

オレは‥

(‥ん?アレって‥)

入口に見覚えのある浴衣の裾が見えて、ニヤリと笑みを浮かべる。

東雲

‥図々しいくらいしつこくて

なかなかオレから離れないスッポンですかね

桂木

「スッポン‥?」

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東雲

ええ

天王寺

「なんや、スッポンが好きやなんて変わっとるな」

東雲

そうですか?

桐沢

「にしても、スッポンとは‥‥」

サトコ

「い、いや‥私は大丈夫です!」

海司

「こんなところにいないで、入ればいいだろ?」

そら

「そうだよ。サトコちゃんも一緒にトランプしよ!」

サトコ

「だ、だから私は‥あっ‥」

目が合うと、彼女はパッと視線を逸らす。

そら

「‥ん?顔が赤いけど、どうしたの?」

サトコ

「な、なんでもありません!」

桐沢

「氷川も来たし、なんかするか」

浅野

「ポーカー以外で」

(まだやるの‥今、何時だと思ってるんだよ)

そう思いながらも、頬を染める彼女に口元が緩む。

野村

「なるほどね~」

意味ありげに微笑む野村さん。

(この人が一番、やっかいなタイプだな‥)

東雲

なんですか?

オレはニッコリと笑みを浮かべて、こともなげにしらを切った。

to be  continued

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