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銃をおろして聖夜だけ 黒澤

【教官室】

クリスマスを控えた教官室に行くと、何やら空気がざわついていた。

サトコ

「もしかして、何か事件でも‥?」

黒澤

そうです、大事件です!

クリスマスイブが、全校集会と納会に占領されて大変なんですよ!

これはもう、うちのクリスマス会は25日にやるしかないですね

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サトコ

「はあ‥」

(ん?)

サトコ

「‥『うちのクリスマス会』?」

黒澤

そうです!みんなでごちそうを食べたり、プレゼント交換したりするんですよ

(24日は行事で、25日は教官たちとのクリスマス会ってこと!?)

(でも、それって‥私には関係ないよね?訓練生なわけだし‥)

ふと教官たちを見ると‥みんな、渋い顔をしている。

東雲

それ、ほんとにやるの?

黒澤

やりますよ!

なんてったって、難波さんお墨付きですからね

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難波

たまにはそういうのもいいだろ

普段、プライベートも休みもないからな。お前らも少しはゆっくりしろ

室長の一声で、クリスマス会の決行が決まる。

黒澤

サトコさんは絶対参加ですからね~!

サトコ

「そうなんですか!?」

黒澤

じゃないとオレのテンションが上がらないんで!

サトコ

「はあ‥」

(歓迎してもらえるのは嬉しいけど‥)

(本当に教官たちのクリスマス会に参加していいのかな?)

ソワソワと落ち着かない気持ちでいると、後藤教官が口を開いた。

後藤

黒澤、氷川の都合も聞かずに勝手に決めるな

黒澤

えー‥

後藤

えー‥じゃない。何か予定があるかもしれないだろ

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颯馬

クリスマスですからね

東雲

それをわざわざ聞くって、後藤さんも結構酷ですよね

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後藤

俺が‥か?

颯馬

まあ、優しさは時に残酷ということで‥

サトコ

「そ、そんな最初からクリスマスの予定はないとでも言いたげな‥!」

石神

‥あるのか?

サトコ

「!」

東雲

あ、石神さんがトドメを刺しにいった

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(そ、そんな最初からなくて当然みたいな言われ方は悔しい‥けど‥)

サトコ

「‥ないですよ」

黒澤

よかったーっ!

サトコ

「黒澤さん‥」

ポツリと呟く私に、黒澤んの明るい声が被せられる。

その声に、思わず落としかけた視線を上げた。

黒澤

さっきも言いましたけど

サトコさんがいなかったら、砂漠のオアシスなし状態ですよ

一緒にクリスマス、楽しみましょうね

サトコ

「は、はい‥」

(黒澤さんに明るい顔で言われると、こっちまでテンション上がってくるから不思議‥)

(せっかくのクリスマスなんだから、楽しまなきゃ損だよね!)

サトコ

「何かお手伝いできることはありますか?」

黒澤

じゃあ‥ケータリングをお願いしてもいいですか?

あ、手料理入れてもらってもいいですよ!

サトコ

「わかりました。食事の方は私に任せてください!」

黒澤

サトコさんは優しいな~

他にも誰か優しい人が手伝ってくれたりしないかな~

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黒澤さんが他の教官方にチラチラっと視線を向けると、皆さん一斉に背を向けた。

(こういう時の呼吸はぴったりなんだよね)

黒澤

はい、皆さんは楽しむの専門ですね~

それなら今年は黒澤サンタが皆さんに素敵なクリスマスをお届けします!

こうして25日は黒澤さん主催のクリスマスパーティーが開かれることになった。

【廊下】

鳴子

「教官たちとのクリスマス会!?」

サトコ

「うん。鳴子と千葉さんもどう?賑やかな方がいいって、黒澤さんが言ってたから‥」

千葉

「クリスマスまで教官と一緒ってのもアレだけど‥氷川が行くなら、行ってもいいよ」

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鳴子

「私も行く!クリスマスは合コンで適当な男ゲットして」

「ツリー見に行こうかなって思ってたとこだし、よかった!」

千葉

「それって、駅前の広場に設置されるツリー?」

鳴子

「そうそう。24日と25日限定で見られるんだって」

サトコ

「へぇ‥見てみたいね」

(大きなツリーか‥夜になったらライトアップとかされて綺麗なんだろうな)

(何だかんだいってクリスマスっぽくなってきたかも!)

クリスマス会を控えていることもあってか、

私の心も徐々に浮き足立ってきていた。

【パーティー会場】

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そして教官たちとのクリスマス会当日。

難波

あー、メリークリスマス

全員

「メリークリスマス!」

室長の音頭で乾杯すると、それなりにクリスマスらしい雰囲気になる。

後藤

随分と豪華な料理だな

長テーブルに並べた料理を見て、感心した声を出したのは後藤教官だった。

サトコ

「ケータリングだけじゃバリエーションが少ないかと思って、私と鳴子で少し足したんです」

後藤

そうか。このミートローフ美味そうだ

鳴子

「あ、それ私が作りました。中にうずらの卵が入ってるのがポイントなんです」

後藤

ん‥美味い

鳴子

「ほんとですか!他にも自信作があって‥」

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男性が多いだけあって全体的な料理の減りは早いものの‥

(鳴子が作ったパエリアも人気だなぁ)

(一方、私が作った料理は、あまり売れてないような‥)

(やっぱり “おやき” はクリスマスっぽくなかった!?)

中でも全然減っていない “おやき” をチラッと見る。

(野沢菜が入ったものとか、あんこが入ったスイーツっぽいものとか)

(いろいろ作ったんだけどな‥)

(食べてみれば絶対に美味しいはずなのに!何せ長野名物なんだから)

さりげなく “おやき” の大皿をテーブルの中央に移動しながら、私はチキンにかぶりつく。

黒澤

いい一枚いただきました!

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サトコ

「わっ!」

目の前に黒澤さんが現れたかと思うと、携帯で写真を撮られた。

サトコ

「びっくりした‥こんな大きな口開けてるところ撮らないでくださいよ」

黒澤

いやー、チキンのCMに使えそうなほど、いい食べっぷりでしたよ

石神さんと加賀さんもサトコさんを見習ってほしいなぁ

サトコ

「お二人の写真も撮ったんですか?」

黒澤

ええ、これを見てください

黒澤さんが見せてくれた携帯に写っていたのは‥

サトコ

「わっ、真顔で並んでケーキを食べてる!」

黒澤

ケーキは甘ったるいだの、生クリームがしつこいだの‥結局プリンと大福がいいんですよね

サトコ

「でもクリスマスですからね‥クリスマスプリンとクリスマス大福というわけには‥」

黒澤

ですよね~。やっぱり食事はサトコさんのように美味しそうに食べないと

すでに多くの写真を撮っているのか、黒澤さんが携帯を操作して確認している。

(撮ってるばっかりで、黒澤さんの写真は全然ないみたい)

サトコ

「黒澤さんも写らないと。私、撮りますよ」

自分の携帯を取り出して、カメラを起動しようとすると、そっと黒澤さんが片手で止めてきた。

黒澤

オレなんか撮ってもおもしろくないですよ~

サトコ

「でも、せっかくのクリスマスパーティーですし‥」

黒澤

せっかくのクリスマスパーティーだからこそ、普段撮れないレア場面を撮らないと!

サトコ

「レア場面?」

黒澤

例えば、ほら‥

後藤さんがケーキの上のサンタを食べようかどうか迷ってる顔とか!

黒澤さんの視線の先では、後藤教官が切り分けられたクリスマスケーキと睨めっこしている。

サトコ

「あれ‥サンタのマジパンを食べようか悩んでるですか?」

黒澤

ああ見えて繊細なところのある人ですからね‥

あ!苦渋の決断の末、食べた!

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サトコ

「言われてみれば、どこか申し訳なさそうな顔をしているような‥」

(黒澤さんと一緒にいると、普段気が付かないようなことに目が行くよね)

その観察眼に感心してしまう。

黒澤

今回のクリスマスパーティーはサトコさんに手伝っていただいたおかげで

かなり助かりました

サトコ

「いえ、私がお手伝いできたのは、ほんの少しで‥」

(黒澤さんが企画して準備してくれなかったら、教官たちとパーティーなんてできなかったよね)

サトコ

「いつもありがとうございます」

「イベント事は黒澤さんの手を借りることが多くて‥本当に助かってます」

黒澤

サトコさん‥

改めてお礼を言うと、黒澤さんが軽くその目を見張った。

そしてそれはすぐにいつもの明るい笑顔に変わる。

黒澤

そう言ってくださるのは、サトコさんだけですよ

こんなことなら、もっと張り切って大きなクリスマスツリーも用意すればよかったかな

サトコ

「今の飾りつけでも、充分賑やかですよ。そういえば‥」

「駅前に大きなクリスマスツリーが期間限定で飾られているらしいです」

黒澤

え、そうなんですか?

サトコ

「はい。24日と25日限定で。時間があれば見に行きたかったんですけど‥」

「もうこの時間だし、ちょっと難しそうですね」

黒澤

なるほど、駅前にツリーが‥

頷く黒澤さんを横に、私はツリーがなくてもクリスマスらしい室内を眺める。

(こういうパーティーのセッティングもセンスが必要だよね)

サトコ

「黒澤さんってパーティー慣れしてますよね」

「おウチでも、毎年クリスマスパーティーやってたんですか?」

黒澤

え?ウチですか?

サトコ

「はい。黒澤さんの家って、何か賑やかそう‥」

黒澤

いや‥ウチでは一度もなかったですね~

サトコ

「え?そうなんですか?」

黒澤

ええ、まあ

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苦笑を浮かべる黒澤さんは、いつもの黒澤さんなのに‥

(何か‥黒澤さんの目‥笑ってない?)

言葉にはできないけれど、見えない壁があるようで私は口をつぐんだ。

黒澤

あ、ゲームが始まるみたいですよ。オレたちも行きましょう!

サトコ

「あ、はい」

(‥私の気のせいかな)

黒澤さんの話はそこで切り上げられ、私たちは東雲教官主催のゲームをすることになった。

東雲

じゃあ、王様ゲーム始めま~す。全員参加で~す

ちなみに王様はオレ

サトコ

「最初から王様決まってるって、ずるくないですか!?」

東雲

いいじゃん。王様が王様決めるのは当たり前でしょ

ね、ひょーごさん?

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サトコ

「な、なんか無茶苦茶なような‥」

加賀

‥室長、こいつにそんな飲ませたんですか

難波

いや~?普通に飲んでたつもりだがなぁ

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千葉

「‥氷川」

「東雲教官、難波室長から相当強い酒飲まされてたから、逆らわない方がいいかも」

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サトコ

「あ、そうなんですね‥」

(とにかく、どうか当たりませんように‥!)

東雲

まずは‥8番の人

サトコ

「!」

(う‥こういう時に当たるのが、私なんだよね‥)

サトコ

「私です‥」

(何をするのかわからないけど、相手は‥鳴子!‥か、千葉さんか‥)

(後藤教官か颯馬教官‥!)

(それ以外の教官は精神的にムリです‥!!)

東雲

もうひとりは‥7番って、誰?

黒澤

あ、オレでーす

東雲

透か‥何かつまんない組み合わせ

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サトコ

「黒澤さん‥」

(いや、うん!黒澤さんでもOK!)

東雲

じゃ、二人で‥

サトコ

「ふ、二人で‥」

東雲

手を繋いで買い出し行ってきて

サトコ

「て、手を繋いで買い出し!?」

黒澤

ハハッ、これってある意味クリスマスプレゼントですね~

黒澤さんは私を見て、ニコッと笑う。

(うん、まあ‥黒澤さんなら大丈夫かな?)

(このメンバーなら、むしろ感謝するべき結果かも!)

サトコ

「それじゃ、黒澤さんよろしくお願いします!」

黒澤

こちらこそ。ラブラブでいきましょう!

サトコ

「ラブラブって‥」

(わ、いきなり恋人繋ぎ!?)

指を絡めて黒澤さんがぎゅっと手を繋いでくる。

難波

ビール買ってこい、ビール

第三のやつじゃない本物な

加賀

肉も足りてねぇだろ。デカいの買ってこい

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黒澤

必要なものはメモに書いてくださいよ

それぞれの注文をまとめると、黒澤さんが私の手を引いた。

黒澤

じゃ、行きましょうか。サトコさん

サトコ

「は、はい」

仲良く手を繋いだまま‥教官たちに見送られ、私は黒澤さんと会場を後にした。

【外】

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黒澤

わ、外は寒いですねー

サトコ

「そうですね‥」

会場の外に出ても、手は繋がれたままだった。

(もう外に出たから、手を離してもわからないはずなのに‥)

(黒澤さんって、こういうところは結構真面目なのかな)

空気が冷たいせいもあって、繋がれた手を意識してしまう。

<選択してください>

A: このまま手を繋いでいる

(まあ、でも指令は手を繋いで買い物だし‥そのままでもいいかな)

黒澤

ある意味買い出しに出て正解だったかもしれませんよ

サトコ

「どうしてですか?」

黒澤

酔った歩さんの相手をするのも大変でしょうから

サトコ

「それは確かに‥」

B: さりげなく手を引いてみる

(ちょっと手を引いてみようかな?あっさり離されるかもしれないし‥)

さりげなく手を引いてみると、追いかけるように黒澤さんの手がついてきた。

(手は繋いだままでいるってことか)

私は視線を落とすと、繋がれた手をチラッと見る。

(こうして見ると、黒澤さんの手って大きいんだな‥)

C: 手を離さないのか聞く

サトコ

「黒澤さん、手‥」

黒澤

手がどうしました?

サトコ

「離さないですか?もう誰も見てませんよ?」

黒澤

サトコさん‥公安学校のクリスマス会なんですよ?

誰が尾行してるかわかりません

サトコ

「そ、そうなんですか!?」

黒澤

油断は禁物ってことです

(なるほど‥そう言われると、油断できない‥)

外の寒さに慣れた頃、段々とお互いの手の温もりも馴染んでくる。

黒澤

今回のケータリング美味しかったですね。どこのお店か、あとで教えてもらえますか?

サトコ

「はい。ネットで評判のいいところを使ってみたんですけど、美味しかったですよね」

黒澤

ええ。オレは特に “おやき” が気に入りました

サトコ

「え!あれ、黒澤さん食べたんですか?」

黒澤

はい。あったかい味がして‥今回一番のヒットですね

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(今回一番のヒット‥)

(あんなに人気のなかった “おやき” を、そんなふうに言ってくれるなんて!)

嬉しくて思わず手をギュッと握ると‥

黒澤

‥‥‥

(え‥)

同じくギュッと強い力で握り返されてしまった。

(黒澤さん‥?)

黒澤

寒いですねー

サトコ

「さ、寒いですね‥」

(寒いから、ぎゅってしたのかな)

手を握り返された理由は聞けずとも‥

(このままでいいや‥)

頬と耳がやけに熱を持つのを感じながら、私は黒澤さんの隣を歩いた。

【イルミネーション】

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黒澤

ちょうどいい頃合いでしたね。イルミネーションも全部点灯してる

サトコ

「黒澤さん‥ここって駅前ですよ?買い出しは‥」

黒澤

買い出しのついでに寄り道してもいいじゃないですか

これですよね。サトコさんが見たいって言ってたツリー

サトコ

「そうですけど‥覚えててくれたんですか‥?」

黒澤

ハハッ、オレがサトコさんと見たかっただけですよ。皆さんには内緒ですからね

サトコ

「はい‥」

(気を遣わせないように‥黒澤さんって本当に優しい人なんだな)

握っている手の温かさを意識してしまう。

黒澤

ところで知ってますか?

ツリーを見上げていた黒澤さんが、こちらに顔を向けた。

黒澤

このツリーの前で手を繋いで告白すると、必ず恋人になれるそうですよ

サトコ

「へえ‥ジンクスってやつですか?全然知らなかったです」

(だから、カップルが多いのかな)

周りに意識を向けていると、黒澤さんが繋いだ手を軽く引いた。

半歩距離が縮まり、私は彼と見つめ合う。

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サトコ

「黒澤さん?」

黒澤

試してみます?

サトコ

「え‥」

(試すって‥告白するってこと!?でも、どっちがどっちに‥)

サトコ

「いや、それはその‥」

黒澤さんのいつもの軽口だと分かっているのに、受け流す言葉が出てこない。

(な、何で?手を繋いでるから!?)

ひとり慌てていると‥

黒澤

‥ぷぷっ

サトコ

「く、黒澤さん!?」

黒澤

純粋すぎます!

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ぱっと手が離され、黒澤さんがその手で口を押えた。

黒澤

そんな都合のいいジンクス、そうそうないですよ

サトコ

「!‥ジンクス自体が嘘だったんですか!?」

黒澤

都合よすぎるから、すぐに気が付くと思ったんですけど‥すみません

いや~、これでオレとサトコさんの仲も深まるかな?なんて思ったんですが‥

サトコ

「もう‥」

(結局、からかってばっかりなんだから‥)

サトコ

「遊んでないで買い出しに行きますよ」

黒澤

はーい

いい返事をした黒澤さんが、もう一度私の手を握ってきた。

サトコ

「黒澤さん、もうからかわないで‥」

黒澤

帰った時に手が冷たいと、指令実行したって思われませんよ?

サトコ

「う‥」

(何か今日は黒澤さんに振り回されてばっかり‥無駄にドキドキしちゃったし‥)

(私のトキメキを返してください!)

お返しとばかりに、ぎゅーっと手を強くにぎってみる。

黒澤

い、痛い、痛い!サトコさん、握力、握力!

サトコ

「何の話ですか?」

黒澤

サトコさんも、いい性格してるなー

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きゃっきゃと騒ぎながら肩を寄せ合って歩く姿は‥

傍目には、きっと仲睦まじい恋人に見えることだろう。

(でも‥楽しかったから、いいかな)

私は手の力をふっと緩める。

黒澤

サトコさん?

サトコ

「メリークリスマス、黒澤さん」

黒澤

笑顔で告げると、一瞬彼の動きが止まって。

黒澤

メリークリスマス、サトコさん

白い息を吐きながら答える黒澤さんが、今日一番の笑顔を見せてくれた気がした。

Happy  End

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