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ボーイズトーク 石神

~サイボーグが見せた隙~

【廊下】

後藤
石神さん、おはようございます

石神
ああ

後藤
昨日の調査の件でちょっといいですか?

石神
わかった。教官室で聞く

教官室に向かって二人並んで歩く。
すると、後藤の視線がチラチラ自分に向いていることに気付いた石神。

石神
‥なんだ、何かついているか?

後藤
い、いえ‥その‥
珍しいと思ったので‥

石神

言い淀む後藤に、疑問符を浮かべる。

後藤
いつもどんな時でも、常に石神さんはネクタイをしっかり締めているので
今日は何だか雰囲気が違うような気がして‥

石神
‥‥‥

気になった石神は視線をおろし、自分のネクタイを見ると確かに少し曲がっていた。

(まだ曲がっていたか‥)

石神は、今朝家を出る前のことを思い出す。

【石神マンション 寝室】

Yシャツの袖のボタンを止め、襟を立てネクタイを首にかける石神。
背中に突き刺さるような視線を感じ、振り返るとサトコと目が合った。

サトコ
「‥!」

石神
そんなに見られると、穴が開きそうだな

サトコ
「す、すみません‥!」

石神
どうかしたのか?

サトコ
「い、いや‥ネクタイ‥」

石神
ネクタイ?

サトコ
「石神さんのネクタイ締める姿、いつもカッコいいので‥」

石神
‥お前は朝から、俺を惑わせるな

サトコ
「!!そ、そういうつもりじゃ‥」

石神
わかっている

顔を赤くするサトコの頭をポンッと撫で、優しく微笑む石神。

サトコ
「今日は私がネクタイを締めてもいいですか?」

石神
できるのか?

サトコ
「で、できます!やらせてください」

石神
わかった。じゃあ、頼んだぞ

サトコ
「任せてください!」

張り切るサトコを微笑ましく思った石神だったが、5分後‥

石神
まだか?

サトコ
「も、もう少しで‥あっ、長さが‥」

サトコ
「あ、あれ‥?ここをこうしてこうで、こうやって‥」

石神
‥‥‥
‥この時間で、何人分のネクタイが締められるんだろうな

サトコ
「すみません」
「自分で締める分には簡単にできるんですけど、人のネクタイとなると難しいですね‥」
「あっ!できた!!石神さん、できました!」

石神
‥はぁ

【廊下】

石神
フッ‥

後藤
石神さん‥?

不慣れながらに一生懸命ネクタイを締めてくれたサトコの姿を思い出し、つい笑みがこぼれる。

???
「あーーーーー!!!」
「石神さんが笑ってる!!!」

遠くの方から驚いた顔をし、石神と後藤を見る黒澤。

後藤
朝からでかい声を出すな

黒澤
今日は吹雪になりそうですね‥

石神
‥‥‥

黒澤
あれ?石神さん、ネクタイ曲がっていますよ?
オレが締め直しましょうか?

石神
結構だ‥
このままでいい

後ろを向いた石神は、優しくネクタイに触れる。

黒澤
‥‥‥
なんでですか?

石神
直すとしても、お前には頼まない

黒澤
そんなっ!?

後藤
当たり前だろ

納得できないのか、ブースカ文句を言う黒澤。
それに呆れる後藤を背に石神はサトコの顔を思い浮かべる。

(今度改めて、ネクタイの締め方を指導してやらなくてはいけないな‥)

教官室のガラスに映る緩んだ顔の自分を戒めるように、石神はキュッとネクタイを締めた。

Happy  End

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