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誘惑ランジェリー 石神 カレ目線

【ホテル】
(‥ん?)

頬を触られている違和感に、ゆっくりと意識が浮上する。
薄っすらと瞼を開ければ、目の前には俺の頬に触れているサトコがいた。

(こいつは何をやってるんだ‥)

サトコは、幸せそうな表情ではにかんでいる。

(寝起きにそんな顔をされると、離れがたくなるだろう‥)

半ばあきれ、半ば幸せに感じながら、サトコの手を軽く払いのけた。

石神
‥やめろ

サトコ
「!」

起きていたことに気付いていなかったのか、サトコは目を瞬く。

サトコ
「す、すみません、つい出来心で‥」

石神
お前な‥

サトコ
「むぐっ」

頬を軽くつまむと、サトコはむくれながら抗議の声を上げた。
が、抵抗しようとしているサトコでさえ、愛らしく感じるから厄介だった。

石神
仕返しだ

サトコ
「わっ‥」

思わず笑みをこぼしながら抱きしめると、サトコはわずかに身を固くした。

(いまだに緊張するのか‥)

教官と生徒という立場上、公の場で恋人らしいことはしてやれない。
きっと知らないところで、いろいろと我慢をさせていることだろう。

(二人の時くらい、さっきみたいにリラックスしてくれ)

優しくあやすように背中を撫でてやると、サトコは安心したようにすり寄ってくる。
そんな何気ない仕草に、愛しさが増していく。
微笑みながら、とろんと瞼を閉じるサトコの無防備なその姿に
もっと触れたいという欲が顔を覗かせた。

石神
サトコ

額にキスを落として、彼女の名前を呼ぶ。
想いのままに唇を塞ぐと、甘い時間が始まりを告げたーー

【道】

ホテルを出た俺たちは、予定していた海浜公園に向かって歩いていた。

サトコ
「んー、天気がいいと気持ちいいですね!」

サトコはそう言いながら、大きく伸びをする。

サトコ
「お昼ご飯はどうしましょうか?」

石神
どこか適当な店に入るのもいいが‥これだけ天気がいいから外で食べるのもいいだろう

サトコ
「いいですね!」
「あっ、それじゃあ、私行ってみたいお店があるんです」

サトコは携帯を取り出して操作すると、画面を見せてくる。

サトコ
「ここのパン屋、人気らしいんですよ」

石神
なら、そこに行くか

サトコ
「はい!」

嬉しそうに微笑むサトコにつられて、頬が緩んだ。
のんびり歩きながら会話をしているだけなのに、幸せだと感じている自分がいる。

(俺も変わったな)

心の中で苦笑しつつ、歩みを進めた。

【公園】

(あいつは何をしているんだ‥)

ハトにエサをあげ始めたのも束の間、サトコはハトに囲まれていた。

女性
「ねぇ、あの子すごくない?」

子ども
「ハトさんがいっぱいいる~!」

あまりのハトの多さに、注目を集めていた。
サトコは困ったように、俺に視線を向けてくる。

サトコ
「い、石神さん、これ‥動けないのですが‥」

石神
‥戻って来い

サトコ
「はい‥」

サトコがこちらに戻って来ようとした、その時。

サトコ
「わっ!?」

石神

ハトがサトコに向かって、一斉に飛び上がった。

サトコ
「きゃっ!?」

バッシャーン!

(なっ‥!)

驚きのあまりバランスを崩してしまったサトコが、噴水に落ちる。
慌てて駆け寄ると、サトコはずぶ濡れになりながら尻餅をついていた。

サトコ
「いたた‥」

石神
まったく‥何をしているんだ。怪我はないか?

サトコ
「は、はい、大丈夫です‥」

サトコの腕を掴み、噴水から引っ張り上げる。
もともと大量のハトで注目を集めていたせいか、人々が遠巻きにこちらを見ていた。

男性1
「なぁ、あれ」

男性2
「へぇ‥」

濡れてしまったせいか、服が身体に張り付いている。
ブラウスはうっすらと透けており、嫌な視線がサトコにまとわりついた。

ーーーそんな目でこいつを見るな。

俺は着ていたコートをサトコにかけてやりながら、男たちに強い眼差しを向ける。

男性1
「お、おい、行こうぜ」

男たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていくのを確認し、振り返ると、
サトコが申し訳なさそうに視線を落としていることに気付いた。
俺が呆れているか怒っているかを気にしているようだが‥

(そんなことより、自分の心配をしろ)

石神
ホテルに戻るぞ

サトコ
「あっ‥」

俺はサトコの手を取ると、ホテルに向かって歩き始めた。

【デパート】

石神
‥‥‥

サトコがシャワーを浴びている間にと、俺はランジェリーショップに向かっていた。

先程の、サトコとの会話を思い出す。

【ホテル】

サトコ
『だ、大丈夫ですよ!ドライヤーで乾かせば、なんとかなると思いますし』

石神
それだと効率が悪い
いいから、サトコはシャワーを浴びて来い

【デパート】

(こういう時は、頼ってくればいいものを)
(それに‥)

わざわざ下着を乾かすためだけに時間をかけるのは、もどかしく感じた。

石神
ここか‥?

ランジェリーショップの前に到着して、思わず足を止める。

(‥何をためらっているんだ)

俺は意を決して、店に入った。

【ランジェリーショップ】

店員
「いらっしゃいませ」

石神
‥‥‥

さっと店内を見回すと、女性客以外にも、ちらほらと男性の姿が見える。
しかし、その男性たちの隣には必ず女性が一緒にいた。

(まさか、こういう場にひとりで来ることになるとは‥)

そう思いつつ、すぐに頭を切り替えて下着を選び始める。

(適当に選んで‥)

石神
ん?

ふと、目に留まった下着を手に取る。

(サトコの肌に映えそうなデザインだな)
(‥これにするか)

おれはそのまま会計へと向かった。

店員
「こちらは、プレゼント用ですか?」

石神
は?

肯定も否定もし難い質問に、反射的に眉間に皺を寄せてしまう。

(こういう場合は、どう答えればいいんだ‥?)

初めてのことに戸惑いながらも、なんとか下着を購入して足早に店を出た。

【石神マンション 寝室】

数日後。

サトコ
「石神さん、この前は楽しかったですね」

サトコはベッドに腰掛けながら、俺に微笑みかけてくる。

石神
色々あったがな

サトコ
「そ、それは‥」
「‥まさか、あんなにハトが集まるなんて思わなかったんです」

石神
まあ、あれには俺も驚かされた

あの時のことを思い出し、つい口元が緩んでしまう。
サトコは小さくむくれながら、俺の肩に頭を寄せた。

サトコ
「でも‥」

どこか嬉しそうに笑みを浮かべながら、サトコはチラリと俺を見上げる。

石神

サトコ
「や、やっぱり、なんでもないです‥」

そしてすぐに視線を逸らし、頬を赤く染めた。

石神
どうした?

サトコ
「っ‥」

頬を撫でながら問いかけてみるも、サトコはなかなか口を割らない。

(こんなところも、いじらしくはあるが‥)

石神
言わないと、分からないぞ

サトコ
「!」

肩を抱き寄せ耳元で囁くと、サトコの肩が微かに震えた。

サトコ
「く、くすぐったいです‥」

せめてもの抵抗なのか身じろいでいるものの、こちらからすれば煽っているようにしか見えない。

石神
‥サトコ

抱いている腕に力を込めると、サトコの唇にキスを落とした。

サトコ
「んっ‥」

サトコは大きく目を瞬き、やがてゆっくりと瞼を閉じる。
俺の想いを受け止めるサトコに、胸の奥が疼いた。

サトコ
「っ‥」

唇を重ねたままサトコを押し倒し、洋服に手を掛ける。

サトコ
「あっ‥」

(ん?)

サトコは小さく声を漏らして、さらに顔を赤くした。
そんな彼女に違和感を覚えつつも、服を脱がしていく。
すると、先日出掛けた際に俺が買った下着が姿を現した。

(もしかして、これを着けてたから‥)

身体中にキスを落としながら、改めて下着姿のサトコを見る。
自分が選んだ下着を身に着けていのは、好みを丸裸にされているようだった。

石神
っ‥‥‥

気恥ずかしさが込み上げ、下着が目に入らないようにサトコの顔に視線を向ける。

サトコ
「‥‥‥」

サトコは何かを期待するような表情から、どこか不安な表情になった。

サトコ
「あの‥‥似合っていませんか‥?」

消え入るような声のサトコに、心臓が跳ねる。

石神
いや‥
‥似合っているから、どこを見れば分からないだけだ

サトコ
「!」

サトコは驚いたように目を丸くすると、頬を薄く染めて微笑んだ。

サトコ
「ありがとうございます‥」

そして俺の首に腕を回し、少しばかり強引に目を合わせられた。

サトコ
「じゃあ‥私の目だけ、見ててください」

石神
‥‥!

無意識に、艶やかな表情を浮かべるサトコ。
理性が飛びそうになっている俺の気など知るはずもないのだろう。

(こいつ‥いつの間にこんな表情をするようになったんだ?)

石神
そうか‥

俺は吐き出すように呟くと、サトコに口づけた。

サトコ
「んっ‥」

唇の合間から漏れ聞こえる甘い声音に、そそられる。
一度顔を離してサトコの身体に指を滑らせると、ピクリと肩が跳ねた。

(相変わらず、反応がいいな‥)

目元に涙を浮かべながら必死に耐えるサトコに、気分が高揚する。
自分が言った手前なのか、サトコは決して俺から目を逸らすことはしない。

(だったら‥)

サトコの頬を撫で、薄く視線を絡めたまま唇を塞ぐ。
俺たちは全身でお互いの熱を感じながら、感情の赴くままに愛し合った。

サトコ
「んー‥」

身体を重ね合うと、サトコは幸せそうに微笑みながら俺にすり寄ってくる。

(あの時のようだな‥)

ふと、出かけた日の朝を思い出す。
サトコは何も身にまとわず、せっかくの下着はベッドの下に落ちていた。
肌に感じる彼女の温もりに、心が安らぐ。

サトコ
「‥そういえば、この間の占い、当たってましたね」

石神
占い?

サトコ
「ホテルでの朝に、テレビでやっていた占いです」
「石神さんが洗面所にいる時、色を聞いたじゃないですか」

石神
ああ、あれか

(占いだったのか‥)

サトコ
「実は一位だったんですよ、石神さん。『思わぬ幸運に出会えるかも』って」

石神
幸運‥

確かにあの日がきっかけで、サトコの新たな一面を知れたとは幸運なのかもしれない。

サトコ
「どうしたんですか?」

不思議そうに俺を見るサトコを、優しく抱きしめた。

石神
なんでもない

腕の中で感じる愛しい温もりに、目を細める。

サトコ
「ふふっ」

はにかむサトコの頬に、自分の額を合わせる。
一気に縮まった距離に、サトコの瞳が微かに揺れた。
サトコの頬に手を添え、唇を重ねる。

サトコ
「んっ‥」

段々と深くなっていくキスに、サトコの瞼がゆっくりと下がる。
再びお互いの身体に熱が灯るのを感じながら、俺たちはもう一度想いを重ね合った。

Happy   End

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