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ふたりの絆編エピローグ 後藤1話



【街】

降り注ぐ日差しが眩しい、ある晴れた日。

(一昨日までは雨の予報だったけど、晴れて良かったなぁ···)

後藤
いい天気になったな

サトコ
「雨の予報がウソみたいですね」

賑やかな街の中を後藤さんと肩を並べて歩く。
今日は久しぶりの休日だった。

後藤
沖縄から本州に移動するはずだった台風が進路を変えたみたいだ

サトコ
「台風、来てたんですか?」

後藤
今週に入ってから、ずっと台風情報が流れてたが···知らなかったのか?

サトコ
「天気予報はアプリでチェックするだけなので···」
「後藤さんは天気予報、きちんと見るんですね」

後藤
教官室のテレビはニュースをつけっぱなしのことが多いからな
それに、今週はアンタと出かける予定もあったからな···

サトコ
「もしかして···それで天気予報、気にしてくれたんですか?」

思わず大きな声で問いかけると、照れたように後藤さんは視線を逸らせる。

後藤
···雨なら、行き先を変えなきゃいけないだろう

サトコ
「ふふ、そうですね。雨だと、こんなふうにブラブラできませんし···」

(後藤さん、私と出かけるのを楽しみにしてくれてたって思ってもいいのかな)
(どうしよう、すごく嬉しい···)

隣の後藤さんをチラッと見上げると、学校にいる時より表情が和らいでいる気がする。

(後藤さんが東京に帰ってきて事件を解決してから、しばらく忙しい日が続いていたけど)
(この休息のためだったのかと思えば、納得かも···)

幸せは突然訪れるものだ。
数週間前、後藤さんから休みの連絡をもらった時のように······

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【個別教官室】

後藤
再来週に休みが取れそうなんだが···アンタの方はどうだ?

サトコ
「再来週っていうと···」

後藤
この週末だ

後藤さんがデスクにあるカレンダーの日にちを指さす。

サトコ
「その日だったら、特に予定はありません」

(もしかして、これって···)

デートのお誘いでは···と胸を高鳴らせると、後藤さんが山積みになっている書類に目を向ける。

後藤
そろそろ、この机も片付けないと雪崩が起きそうだな···

サトコ
「あ···次のお休みに大掃除しますか?」

(デートしたいのは山々だけど、補佐官なら教官室の掃除を優先すべきだよね)

後藤
いや···これは時間を見つけて追々片付けるからいい

サトコ
「大丈夫ですか?そのセリフ、数週間前にも聞いたような···」

(それから書類の山がひとつ···いや、ふたつは増えてる気がする···)

後藤
崩壊ラインは分かっているから、心配はいらない

妙に自信たっぷりな後藤さんに、私は小さく吹き出してしまう。

後藤
笑うな

サトコ
「すみません、つい···それじゃ、次のお休みは···」

後藤
予定がないから、一緒に過ごさないか?

サトコ
「はい、喜んで!」

(1日ゆっくり一緒にいられるのって、どれくらいぶりだろう···)

後藤
なにか、したいことはあるか?

サトコ
「ええと···」

(映画とか美味しいご飯とか、後藤さんと行きたいなって場所は、たくさんあるけど···)
(最近の後藤さんは捜査続きで、休みもなかったし···)

サトコ
「部屋でのんびりするのは、どうですか?DVDでも借りて、お菓子を食べながら···」

後藤
いいのか?それで。いつもの休日と変わらないんじゃないか?

サトコ
「う···それは···」

(さすが、後藤さん···よく私の生活をわかっていらっしゃる···)

後藤
久しぶりに出かけないか?あてもなくブラつくのもたまにはいいだろう

サトコ
「あ、そういうことでしたら···都内の観光地の下見をしてもいいですか?」
「浅草とか、スカイタワーとか···」

後藤
構わないが···東京観光の予定でもあるのか?

サトコ
「今度、長野の母が東京に来るんです。それで、あちこち連れて行ってあげたくて」

後藤
お母さんが···!?
そうなのか···

サトコ
「滅多に都会に出てこられないので、今から楽しみにしてるんです」

後藤
そういう目的があるなら、行動しやすくて助かる
いい天気になるといいな···



【街】

(あの時、『いい天気になるといいな』って言ってくれた時から···)
(天気のこと気にしてくれてたんだ)

後藤さんの気持ちにジワッと胸が温かくなる。
すると、後藤さんが急に足を止めた···

後藤
···ちょっと買い物に付き合ってくれないか?

サトコ
「買い物ですか?はい、行きましょう」

立ち止まったのはブランド紳士服店の前だった。

(後藤さんが買い物って珍しい···何か欲しい服でもあるのかな···?)
(彼氏の服選びに付き合うのって、なんか恋人っぽい!)

突然のイベントに胸を弾ませながら、私はお店に入る後藤さんのあとに続いた。

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【紳士服】

サトコ
「わ···おしゃれな服がいっぱい!」
「後藤さん、いつもこういうお店で服買ってるんですか?」

後藤
いや、あまり服自体買わない。今日はちょっとな···

後藤さんが向かうのはスーツ売り場。

サトコ
「スーツを買うんですか?」

後藤
ああ···

(捜査で必要なのかな?)
(でも捜査で使うスーツなら警察内で買えるはずだけど···公安はまた特別なのかな···)

どちらかというとダークな印象のスーツを着ていることが多い後藤さんだけれど。
今日は爽やかな雰囲気のスーツを手に取っている。

後藤
このあたりにするか···

数着、スーツを選んだ後藤さんが考える顔を見せた。

サトコ
「どれも似合うと思います!合わせてみたらどうですか?」

後藤
そうだな···
すみません

店員
「はい」

後藤
試着したいのですが···

店員
「こちらにフィッティングルームがございますので、どうぞ」

サトコ
「1着、私が持ちます」

後藤
悪いな

それぞれスーツを抱えて、私たちは試着室に向かった。

(あのスーツなら、全部似合いそうだけどなぁ)

試着室に入った後藤さんを待つこと数分。

後藤
···どうだ?

サトコ
「素敵です!」

後藤
···即答だな。ちゃんと見てるのか?

サトコ
「もちろんです!いつもとちょっとだけ雰囲気が違って···そういうスーツも素敵ですね」

後藤
浮かれた感じに見えないか?

サトコ
「全然!むしろ若返って見えるくらいです!」

後藤
そ、そうか···
他のも着てみるから、感想を聞かせてくれ

サトコ
「はい!」

(どれも格好いい···!)
(もとがいいと、どんな服でも似合うんだなぁ)

次々と試着する後藤さんに、『素敵』という言葉と見惚れるため息しか出てこない。

後藤
それで···結局、どれが一番良かったんだ?

サトコ
「全部素敵でした!」

後藤
さすがに、全部は必要ないんだが···

サトコ
「あ、そうですよね。この中から1着となると···」

(せっかく後藤さんが意見を求めてくれてるんだから、ここはバシッと決めたい!)

並べたスーツと後藤さんを何度も見比べる。

サトコ
「どれも素敵でしたけど···これが一番似合ってました!」

後藤
これか···

私は後藤さんが最初に着たスーツを指さす。

サトコ
「はい。普段の後藤さんのイメージに近いけど、爽やかな印象があって···」
「一番見惚れちゃいました」

後藤
なら、これにするか

(あ、少し照れてるみたい···)

私が選んだスーツにしてくれる後藤さんが嬉しい。

(私の用事に付き合せるだけかと思ったけど···後藤さんの買い物の手伝いも出来てよかった)



【喫茶店】

ショップを出てから、駅近くにある甘味屋さんでひと休みすることになった。

後藤
ここのあんみつは有名で、遠方から食べに来る人も多いらしい

サトコ
「そうなんですね。お母さん、あんみつ好きだから、連れて来たら喜ぶかもしれません」

後藤
ここから少し離れたところにある、フルーツパーティーのパフェも美味しいと聞いた

サトコ
「パフェもいいですよね~。どっちに行こうか迷いますね···」

美味しさを想像して口元が緩みかけ、ハッとそこで気が付く。

サトコ
「後藤さん···私のお母さんのために、いろいろ調べてくれたんですか?」

後藤
いや、調べたという程じゃない
こういうことに妙に詳しい連中がいるから、雑談ついでに聞いただけだ

サトコ
「でも、気にかけてくれて、ありがとうございます!」

後藤
···アンタのお母さんだからな

ボソッとつぶやく後藤さんの気持ちが胸にしみる。

(いつか···紹介できるといいな)

後藤
サトコのお母さんは、どんな方なんだ?

サトコ
「明るく元気な人ですよ。あ、後藤さんのお母さんには負けるかもですけど」

後藤
はは···まあ、あの人のテンションは特別だからな···

(後藤さんの実家で会ったお母さん、若々しくて元気な人だったなぁ)

サトコ
「···誠ちゃん」

後藤
···それを言うな

サトコ
「あ、口に出てました!?失礼しました···!」
「でも、とっても素敵なお母さんだと思います」

後藤
アンタとお母さんは似てるのか?

サトコ
「似てるって言われることが多いですね。本人たちは全然そう思ってないんですけど」

後藤
そうか···

あんみつが運ばれてきて、その美味しさに感動する。

サトコ
「これなら、絶対にお母さんも喜びます!」

後藤
ここを出たらスカイタワーに行こう。歩いて10分くらいだ

サトコ
「はい!」

後藤
スカイタワー近くに評判の洋食屋があるそうだ。そこで昼飯にするのはどうだ?

サトコ
「そうですね。今からスカイタワーを見れば、混雑するお昼時は避けられそうですし」

(あ、お昼が遅めだから、ここであんみつを食べておいたのかな?)
(後藤さん、いろいろ考えてくれてるんだ···)

人気の東京土産が売っているところも教えてもらって、その日は楽しいデートになった。

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【教官室】

サトコ
「これ、長野の野沢菜とリンゴパイです。お蕎麦もあるので、皆さんでどうぞ···」

ダンボールいっぱいに入った長野土産を教官室の机にドンッと置く。

東雲
土産ってさ、フツウ紙袋とかに入ってるものじゃない?

サトコ
「す、すみません···でも中に小分け用の紙袋が入ってますので」

石神
そういう大ざっぱなところが、いかにも氷川らしいな

颯馬
フフ、いいと思いますけどね···そういうのも

加賀
···チッ、ゴミを増やすんじゃねぇ

サトコ
「ダンボールは、ちゃんと処分しますので。杏飴とか、疲れた時にオススメですよ!」

(お漬物と甘い物と、お蕎麦と···それぞれ分けた方がいいかな?)

サトコ
「このリンゴジュースも美味しいんですよ!」

後藤
リンゴ···?

サトコ
「あ、後藤教官!教官も長野のお土産どうぞ」

後藤
ああ···氷川、お母さんはもう来てるのか?

いつの間にか後ろに立っていた後藤さんが小さな声で尋ねてくる。

サトコ
「はい!昨日の最終新幹線で帰りました」

後藤
···!!

サトコ
「2泊だったんですけど、おかげさまで東京を満喫させてあげられました」
「教官がいろいろ調べてくれたおかげです。ありがとうございました!」

後藤
······

サトコ
「あの···後藤教官?」

後藤
いや、それならいいんだが···

(どうかしたのかな?なにか考え込むみたいな···)

サトコ
「長野土産、たくさん持ってきたので、後藤教官もどうぞ」

後藤
ああ

サトコ
「このリンゴジュース、クセになる美味しさなんですよ」

後藤
そうか···

(仕事でお疲れ気味なのかな?)
(元気を出してもらえるように、長野の美味しいもの、たくさん食べてもらおう!)

【個別教官室】

サトコ
「おはようございます」

後藤
おはよう

翌日の朝、早くに教官室に行くとコーヒーのいい香りがする。

サトコ
「後藤さんが淹れたんですか!?」

後藤
俺だって、コーヒーくらい淹れる。飲むか?

サトコ
「いただきます···それじゃ、私は書類の整理を···」

後藤
いや、もう少しで終わるところだ。アンタはコーヒーを飲んでてくれ

私にコーヒーを出すと、後藤さんはサッとデスクの片づけを始める。

(この間まであった書類の山がなくなってる!)

後藤
今日の仕事については、ここにまとめてあるから

サトコ
「は、はい···」

(朝はどこか眠そうな後藤さんが、こんなにしっかりしてるなんて···)
(後藤さんに、なにがあったの!?)

【廊下】

その日の昼休み。
後藤さんの様子を気にしながら教官室に向かっていると、携帯が鳴った。

(メール···後藤さんからだ)

後藤
週末、休みが取れた。水族館にでも行かないか?

(デートのお誘い!?いや、デートに誘われるのは初めてじゃないけど···)

サトコ
「なんか、おかしいな···」

加賀
おいクズ

サトコ
「か、加賀教官!」

加賀
妙なツラしてる暇があったら、このダンボールを資料室まで持ってけ

サトコ
「うっ···お、重い!」

加賀教官から渡された段ボールの重さに、思わず1歩よろけてしまう。

(これを軽々と持っていたなんて、さすが加賀教官···)

加賀
途中で落としたりでもしたら、ただじゃおかねぇ

サトコ
「が、頑張ります!」

(これくらい、田舎で抱っこした仔牛と同じ重さだと思えば···!)

ふんっと足に力を入れた時。

サトコ
「え···?」

後ろから伸びてきた手に、急に手元が歩くなる。

後藤
どこに持っていくんだ?

サトコ
「後藤教官!」

私の頭を越えて軽く持ち上げたのは、後藤さんだった。

サトコ
「資料室まで···でも、私が加賀教官に頼まれた仕事なので!」

後藤
俺も資料室の方に行くから、気にするな

サトコ
「でも···」

後藤
いつもの中庭に行くから、通り道だろ
気にするな

さりげなく歩き出す後藤さんのあとを私も慌ててついていく。

(なんか···様子が違う気がするのは、私の気のせい···?)

to be continued

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